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医療機器業界のM&A動向(2025年)メリットデメリット/事例/成功のポイントを解説

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  • 公開日2025.04.21
  • 更新日2025.04.21

医療機器業界のM&A動向(2025年)メリットデメリット/事例/成功のポイントを解説

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医療機器業界では2025年、大手企業による買収や同業者間の経営統合が増加傾向にあります。市場規模は拡大する一方で、経営コスト増加や人材確保の難しさ、医療費抑制政策など、多くの課題に直面しているのが実情です。

そこで今回は、日本の医療機器業界におけるM&A最新動向やメリット・デメリット、成功するためのポイントを徹底解説します。

医療機器業界の市場動向

「矢野経済研究所」が公表した最新市場分析によれば、2023年度の医療設備機器市場は前年比2.7%増の1,998億8,510万円に達し、着実な成長を見せています。医療機器市場は電子カルテシステムから手術室照明、薬剤分包器、自動精算機まで多岐にわたる14カテゴリー27製品を網羅しているのが特徴です。

2023年度市場は、前年の「予算凍結・執行延期」からの反動増と、病院経営悪化による「グレードダウン購入」といった要因がありながらも、最終的にはプラス成長を実現しました。2022年度の前年比0.4%減(1,825億8,510万円)から明確な回復基調へと転じたのは、医療機器業界にとっての転換点といえます。

一方で、日本の医療機器業界は、複数の構造的問題に直面しています。例えば、現場のIT化です。各医療施設の物理的制約、そして高額な初期投資と継続的運用コストが足枷となり、最新の滅菌システムや、業務改善プログラムなどの導入が遅れているのです。加えて日本の加速する少子高齢化と人口減少は、長期的には国内市場縮小の不安要素になると考えられています。

【出典】株式会社矢野経済研究所「病院設備機器市場に関する調査を実施(2024年)」

医療機器業界が抱える課題

医療機器業界は世界的な成長市場でありながら、複数の大きな経営課題を抱えています。具体的に見ていきましょう。

経営コストの急増による収益圧迫

「東京商工リサーチ」の調査では、73.6%の国内企業が前年同月比でコスト増加に直面し、その多くが価格転嫁にも失敗していることが明らかになりました。医療機器業界も例に漏れません。徹底したコスト管理体制の構築、価格戦略の抜本的見直し、生産効率化、戦略的リソース配分による収益構造の再構築が急務となっています。

【出典】株式会社東京商工リサーチ「価格転嫁に関するアンケート」調査 ~」

優秀な人材の獲得

医療用機器の開発には、医療と工学の両方の知識と技術を持った人材が必要であり、医工連携が不可欠とされます。しかし、近年は労働人口の減少が進み、医療機器業界においても人材確保が困難になっています。

医療費抑制政策による市場構造の変化

政府は窓口負担増による需要抑制、医師数制限や病床削減による供給抑制を推進しています。これらの政策は医療機器需要を直撃し、国内市場における熾烈な価格競争環境を生み出しているのです。

いずれにしても、家族内承継の激減、税制問題、経営ノウハウと人的ネットワークの断絶リスクなど、経営課題は山積状態です。この危機に対処するには、M&Aを活用した事業承継戦略が鍵となってくるでしょう。

医療機器業界のM&A最新動向(2025年)

医療機器業界では2025年、M&A活動が活性化しています。大手企業による積極的な企業買収、同じ分野の事業者同士の経営統合、先端デジタル技術の獲得を目的とした企業合併など、さまざまな形での再編が進んでいます。具体的に見ていきましょう。

大手企業によるM&Aの増加

2025年に入ってからも、医療機器業界では大型のM&Aが続いています。直近の事例でいうと、2025年1月にアメリカの医療機器メーカー「Stryker」が静脈疾患治療デバイスで知られる「Inari Medical」を49億ドルで買収しました。こうした動きは、特定の医療分野における技術獲得と市場シェア拡大を同時に実現する戦略とされています。

【出典】Stryker inc.「Stryker completes acquisition of Inari Medical, Inc., providing entry into the high-growth peripheral vascular segment」

同業者同士による合併・経営統合の増加

医療機器業界では、同業者間の合併・経営統合が増加傾向にあります。特に地方の中小規模の医療機器メーカーは、単独での経営継続が難しくなりつつあり、同業他社との合併によって経営基盤の強化を図るケースが増えています。

先端技術獲得のためのM&A

大手医療機器メーカーは、AIや大規模言語モデル(LLM)の知見を獲得するために、IT関連企業の積極的な買収戦略を展開しています。これらの先端技術は、診断支援や医療データ分析などの分野で革新をもたらすと同時に、医療現場における業務効率化を支援すると考えられています。

医療機器メーカーがM&Aで売却するメリット

M&Aは、さまざまな経営課題を解決する戦略的な手法です。ここでは、売り手企業がM&Aを検討するメリットをご紹介します。

後継者問題を解決できる

医療機器業界では、高度な専門知識と経験が求められるため、適切な後継者を見つけるのは困難です。とりわけ中小規模の医療機器メーカーや卸売業者では、経営者の高齢化が進む中で後継者不在の問題が深刻化しています。

M&Aによって、適切な買い手企業に事業を譲渡すれば、長年培ってきた技術・ノウハウを残せます。また、医療機器業界では、製品の継続供給が患者の治療に直接影響するため、事業の安定的な承継は社会的責任の観点から重要です。M&Aによって、経営資源を効果的に引き継ぎ、事業の継続性を確保できるのは大きいでしょう。

無形資産が高く評価される

医療機器の製造販売には、「医療機器製造販売業許可」や「高度管理医療機器などの販売業および賃貸業の許可」など、さまざまな許認可が必要です。これらの許認可は取得に時間とコストがかかるため、すでに保有している企業は買い手にとって魅力的でしょう。それぞれの無形資産が適切に評価され、譲渡価格に反映されることで、長年の事業運営で築き上げた価値を金銭で回収できます。

設備投資や薬事対応の負担から解放される

事業譲渡により、今後必要となる設備投資や薬事対応の負担から解放されます。高齢の経営者にとって、将来の不確実性や投資リスクを回避しながら、これまでの事業成果を確実に回収できる点が大きなメリットです。

医療機器メーカーがM&Aで売却するデメリット

事業拡大や経営効率化などのメリットがある一方で、医療機器分野特有の課題や懸念点が存在します。詳しく見ていきましょう。

事業譲渡後の競業避止義務

M&Aでは通常、売り手側には一定期間、同業他社での就業や類似事業の立ち上げを制限する競業避止義務が課されます。この義務により、医療機器分野という限られた専門領域内でのオーナーの再就職・起業の選択肢が著しく制限される可能性があります。特に医療機器業界では、取り扱う製品の専門性が高く、代替となる業種への転換が難しいケースが少なくありません。競業避止義務の影響は他業種以上に重く感じられるでしょう。

長年築いた医療機関との関係性変化

医師は新しい機器や商材をすぐに採用せず、実績のある現在使用中の機器を継続して使用する傾向があります。M&A後、新たな営業担当者と医療機関の間で関係性が変化し、事業に何らかの影響をおよぼす可能性があります。

医療機器メーカーがM&Aで売却を成功させるためのポイント

ここからは、医療機器メーカーがM&Aで成功するためのポイントを、売り手側の視点で解説します。業界の特性を踏まえた戦略的なアプローチを意識しましょう。

薬事規制対応の整備状況を明確にする

医療機器業界では、薬機法(医薬品医療機器等法)に基づいた厳格な品質管理体制が求められます。M&Aにおいても、薬機法への対応状況は企業価値評価の重要な要素となります。QMS(品質管理システム)に関する文書や手順書、過去の薬事監査の結果、不具合報告の履歴などを整理し、コンプライアンス体制の健全性を示すことが重要です。

また、製品の薬事承認・認証の状況や、今後の薬事戦略についても明確に説明できる資料を準備しておくことで、買い手企業の不安を軽減し、スムーズな交渉が可能になります。特に海外市場への展開を視野に入れている買い手企業にとっては、CEマーキングやFDA承認の有無が大きな判断材料となるでしょう。

保有する許認可情報を整理する

医療機器の販売を行うには、「医療機器製造販売業許可」などの許可・届出が必要です。いずれも医療機器卸売業に欠かせない要件であり、M&Aにおいて大きな価値を持ちます。各許認可情報を適切に整理し、譲渡価値として可視化することで、売却価格の向上が期待できるでしょう。

医療機関との取引実績をアピールする

医療機関との取引年数や売上を具体的な数値で示しましょう。特に大規模病院や著名な医療機関との取引実績は、企業価値を高める重要な要素となります。これらの取引関係を数値化し、将来の収益予測とともに提示することで、買い手企業の関心を高められます。

医療機器業界のM&A事例

最後に、医療機器業界のM&A事例をご紹介します。自社のM&A検討時の参考にしてみましょう。

メディアスホールディングス株式会社によるマコト医科精機株式会社のM&A

2024年3月、メディアスホールディングス株式会社は、医療機器販売を手がけるマコト医科精機株式会社の発行済株式のうち65%にあたる39,000株を取得し、子会社化しました。

マコト医科精機は1947年創業の老舗企業で、山梨県を拠点に医療機器の地域密着型販売を展開してきました。安定した売上規模と長年の営業基盤を持つ同社を取り込むことで、メディアスHDは地域医療支援体制の強化と販路の拡大を図ります。

また、残りの株式についても今後株式交換による完全子会社化を検討しており、グループのシナジーをさらに追求する方針です。医療業界の再編が進む中、地域密着型企業のM&Aは今後も注目されます。

【出典】メディアスホールディングス株式会社「(開示事項の経過)マコト医科精機株式会社の株式取得に関するお知らせ」

株式会社メニコンによる板橋貿易株式会社のM&A

2020年12月、株式会社メニコンは、医療機器や農水産物の輸出入事業を手がける板橋貿易株式会社の全株式を取得し、100%子会社化する契約を締結しました。

板橋貿易は中国市場に強みを持ち、現地グループ会社を通じてコンタクトレンズやケア用品の販売、眼科クリニック運営などを展開しています。中国では若年層を中心に近視が急増しており、オルソケラトロジーレンズの需要が急拡大する中、メニコンは自社製品の展開を加速。

今回のM&Aにより、同社は製造・学術に加え、販売面の体制も整え、中国市場での事業基盤を本格的に強化します。今後はアジア全体への海外事業拡大がさらに加速する見込みです。

【出典】株式会社メニコン「板橋貿易株式会社の株式取得(子会社化)に関する契約締結のお知らせ」

UBE株式会社による株式会社エーピーアイコーポレーションのM&A

2024年12月、UBE株式会社は100%子会社である株式会社エーピーアイコーポレーション(APIC)を吸収合併することを決定しました。

APICは医薬原薬・中間体の製造に強みを持ち、CDMO(医薬品受託製造)事業を展開。UBEは2022年にAPICを三菱ケミカルグループから買収し、製造・品質管理技術の統合や新技術開発に取り組んできました。

今回の吸収合併により、経営資源の集約とサプライチェーンの強化を図り、成長が見込まれるCDMO市場での競争力を一層高める狙いです。スペシャリティ化学を軸とする事業ポートフォリオの強化にもつながる戦略的な再編といえます。

【出典】UBE株式会社「当社 100%子会社である株式会社エーピーアイコーポレーションの吸収合併(簡易合併・略式合併)に関するお知らせ」

まとめ|医療機器業界のM&A動向を押さえてM&Aを成功させましょう

医療機器業界におけるM&Aは、経営課題の解決と成長戦略の両面で重要性が増しています。ただし、競業避止義務による再就職制限や医療機関との関係性変化などのリスクも考慮しなければなりません。特に医療機器業界のM&Aでは、薬事法などの規制対応、各種許認可の承継、品質管理体制の整備状況など、業界特有の複雑な要素を考慮する必要があります。これらの専門性の高い課題に対処するためには、業界に精通した専門家のサポートが不可欠です。

弊社CINC Capitalは、M&A仲介協会会員および中小企業庁のM&A登録支援機関として、医療機器業界のM&Aを専門的にサポートしています。当社の3つの強みは以下の通りです。

  1. 業界最低水準の手数料体系
    医療機器業界の事業特性を理解した合理的な料金設定で、オーナー様の負担を最小限に抑えています。特に中小規模の医療機器メーカーや販売代理店の実情に配慮した料金プランをご用意しています。
  2. 経験豊富な専門アドバイザー
    業界歴10年以上または医療機器業界に精通したアドバイザーのみがお客様をサポート。薬事規制や許認可、医療機関との取引関係など、業界特有の価値評価にも精通しています。
  3. マーケティングテクノロジーの活用
    独自のマッチングシステムにより、医療機器業界に特化した買い手候補を効率的に見つけ出し、成約率を高めています。国内外の医療機器メーカーとのネットワークを活用し、最適なマッチングを実現します。

    医療機器業界での事業譲渡・事業承継にご興味のある経営者様は、ぜひCINC Capitalにご相談ください。

    この記事の監修者

    阿部 泰士

    CINC Capital取締役執行役員社長

    阿部 泰士

    リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。

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