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- 公開日2025.09.29
IoT業界のM&A動向(2025年)メリットデメリット/事例/成功のポイントを解説
IoT業界に関心はあるけど、「市場の全体像が見えない」「M&Aの動きがつかめない」といった不安を感じていませんか。
業界は成長を続けていますが、その一方で技術革新や競争環境の変化が激しく、最新動向を知らずに判断することはリスクが大きいです。
本記事では、IoT業界の市場規模や成長トレンド、そしてM&Aの最新動向などを、わかりやすく解説します。
目次
IoT業界の市場動向
IoT業界は日本国内でも急速に成長しており、今後も拡大が続くと予測されています。
なかでもIoTデバイス市場は、2024年に約32.7億ドル規模で、2030年には約95.8億ドルに達するとされ、年平均成長率(CAGR)は19.3%になる見込みです。
IoT市場全体の規模は、2024年に約605億ドルで、2033年には約1,860.6億ドルに拡大する見通しであり、CAGRは13.3%とされています。
さらに、Market Research Futureの調査によると、日本のIoTプラットフォーム市場は2020年代初頭で既に数十億ドル規模にあり、2030年代にはさらに大幅な拡大が見込まれています。CAGRも二桁台で推移すると予測されています。
これらの数値から、デバイスからプラットフォームまで、IoT業界の各分野は今後も力強い成長が継続すると考えられます。
【出典】Grand View Research「Japan Iot Devices Market Size & Outlook, 2024-2030」
【出典】IMAC「Japan Internet of Things Market Size, Share, Trends and Forecast by Component, Application, Vertical, and Region, 2025-2033」
【出典】Market Research Future「Japan Iot Platform Market Size, Share Report Forecast 2035」
IoT業界が抱える課題
IoT業界は着実に成長を遂げている一方で、その成長を妨げるいくつかの深刻な課題を抱えています。
本章では、主に3つの課題について詳しく見ていきましょう。
IoTに対応するIT人材が深刻に不足している
日本では、クラウドやAI、セキュリティなどIoTを支える高度なIT人材が圧倒的に不足しています。
経済産業省の調査によれば、2030年には最大で約79万人のIT人材が不足すると見込まれているのです。
この人材不足は、IoTの導入・普及の大きな障壁となっています。
【出典】経済産業省「IT分野について」
IoTセキュリティに対するリスクとコストの負担
IoT機器が急増する中で、これまでのセキュリティ対策だけでは守りきれない新たな脅威が出てきています。
特に、エッジコンピューティングを活用する環境では、デバイスとクラウドの間でセキュリティ上の問題が起こりやすいです。
さらに、セキュリティの専門人材の不足や、システムの運用の複雑化が、企業の大きなコスト負担につながっているでしょう。
データ管理とプライバシー対応が追いつかない
IoTが生み出す膨大かつ複雑なデータに対して、日本企業の多くが十分な管理体制を整備できていません。
従来のルールや制度では対応しきれず、プライバシー保護の不備も目立ちます。
その結果、IoTの活用が限定され、導入効果を最大化できていない状況です。
IoT業界のM&A最新動向
IoT業界では、技術の進展や市場の広がりにともない、M&Aの動きが少しずつ活発になっており、2024年の日本企業のM&A件数は4,700件(前年比+17.1%)で過去最多です。
2025年上期も2,509件と増勢となっております
本章では、M&Aの最新動向について、3つの観点から見ていきましょう。
【出典】Reuters「Japan hits M&A record of $232 billion, driving Asia deals rebound」
大手によるスタートアップ買収が加速している
日本の大手企業が、スタートアップをM&Aによって取り込む事例が増えています。
たとえば、村田製作所は1,000億円超規模のM&Aを検討と報道(2025年2月、Reuters)。
これは、自社で開発するよりも迅速に必要な技術や専門組織を獲得する有効な戦略といえます。
【出典】Reuters「Japan hits M&A record of $232 billion, driving Asia deals rebound」
IoTプラットフォーム統合による垂直統合が進展
IoTサービスは、デバイス・ハードウェア・クラウド・ソフトウェアなど複数の技術で構成されています。
これらを一括で提供できるようにするため、企業同士が連携する「垂直統合型のM&A」が注目を集めています。
IoTプラットフォーム市場は、今後10年間でCAGR(年平均成長率)14.3%(2025–2030)の成長が予測されており、特にスマートシティや製造業でのニーズが高まるでしょう。
【出典】Market Research Future「Japan Iot Platform Market Size, Share Report Forecast 2035」
セキュリティ・エッジ領域でのM&Aが活発に
セキュリティやエッジコンピューティングは、IoTを安全かつスムーズに動かすために欠かせない技術です。
2023年にはエッジデバイスやセキュリティ関連のM&Aが活発化し、数十億ドル規模の取引が相次ぎました。
これらのM&Aは、技術力の向上だけでなく、企業の事業基盤を強くする役割も果たしています。
IoT業界でM&Aをするメリット
IoT業界では、M&Aを活用することで、自社だけでは時間がかかる技術革新や市場展開を短期間で実現できます。
本章では、IoT業界でM&Aを実施するメリットを5つの観点から見ていきましょう。
先端技術を取り込み短期間で競争力を強化できる
M&Aを活用すれば、自社でゼロから開発するよりも早く、最先端の技術を取り入れることが可能です。
多くの企業が、IoT関連のスタートアップを買収し、革新的なサービスを市場に投入しています。
こうした買収は、技術力をすばやく強化し、競争力を高める手段として効果的です。
IoTビッグデータの解析力を高められる
IoTは多くのデータを集めることができますが、価値ある情報を引き出すには高度な解析力が必要です。
M&AでAIやクラウド分析に強い企業を取り込むことで、データ活用のレベルが一気に高まります。
その結果、IoTを活かした意思決定やサービス改善につながるのです。
垂直統合型のサービス構築が可能になる
IoTは、デバイス・通信・クラウド・アプリなど複数の要素で成り立っています。
M&Aを通じて、それらを一社でまかなう体制を整えることで、統一されたサービスが提供可能です。
これにより、顧客満足度の向上や他社との差別化が実現しやすくなります。
新市場・新分野への迅速な参入が可能
新たな分野へ進出したい場合、M&Aは時間をかけずに足がかりを作れる手段です。
医療や物流など異業種に強みを持つ企業を買収すれば、自社の事業領域を一気に広げられます。
変化の速いIoT業界では、スピード感ある展開は大きな強みです。
優秀なIoT人材とノウハウの獲得
IoT分野で活躍できる人材は少なく、採用が難しいのが現状です。
M&Aで対象企業のエンジニアや専門知識を持つチームを取り込むことで、すぐに戦力として活用できます。
同時に、新しい発想や技術文化も社内に取り入れることができます。
IoT業界でM&Aをするデメリット
IoT業界でM&Aをすることには多くのメリットがある一方で、注意すべきリスクや課題も存在します。
本章では、IoT業界でM&Aを進める際のデメリットを3つ見ていきましょう。
技術の陳腐化リスクと評価の難しさ
IoT業界では技術の進化が早く、買収した技術がすぐに古くなるリスクがあります。
買収先の部品や技術が製造終了になったり、供給が止まったりすると、運用や調達に大きな影響が出るでしょう。
そのため、導入前に技術の将来性や持続性を正しく評価するのが難しく、判断を誤ると大きな損失につながります。
主要人材の流出によるノウハウ損失
M&Aでは、重要な技術やノウハウを持つ人材が退職してしまうリスクがあります。
買収後の社内制度や働き方の違いが、キーパーソンのモチベーション低下や離職の原因になり得るからです。
こうした人材流出は、技術力や競争力の低下を招き、M&Aの価値を大きく下げてしまいます。
システム統合の難易度とコストの高さ
IoTシステムは複数の技術が組み合わさっているため、M&A後の統合はとても複雑です。
システム同士の互換性や安全性を保ちながら統合するには、高度な知識と多くの時間・コストがかかります。
準備や実行が不十分だと、業務の混乱や追加コストが発生し、M&A効果が薄れてしまうおそれがあるのです。
IoT業界でM&Aを成功させるためのポイント
IoT業界でM&Aするためには、セキュリティ対応の強化・規制対応と持続可能な運用体制の構築などが求められます。
本章では、IoT業界でM&Aを成功させるための5つのポイントについて見ていきましょう。
買収技術・サービスの早期統合と展開
M&A後に効果を出すには、買収した技術やサービスをすばやく自社に取り込むことが重要です。
そのためには、買収前からシステムの全体像を把握し、段階的な統合計画を立てておく必要があります。
統合の設計やスケジュールを丁寧に準備することで、業務の混乱を防ぎ、成果の最大化につながるのです。
セキュリティ・プライバシー対応の強化
IoTでは個人情報や機密データを多く扱うため、セキュリティやプライバシー対策が欠かせません。
M&Aでは、買収先のセキュリティ状況を事前に確認し、アクセス制御やリスク対応の仕組みを整えることが求められます。
ゼロトラストといった最新のセキュリティモデルを取り入れることで、安全でスムーズな統合が可能です。
スケールメリットを活かした効率化
M&Aによって事業規模が広がると、まとめて調達やクラウド利用を行えるようになり、コスト削減が可能です。
また、業務やシステムの重複を見直して統一すれば、無駄を省き、全体の効率を高めることができます。
こうした統合の工夫により、競争力のある経営体制を構築することができるでしょう。
規制対応と持続可能な運用体制の構築
IoT業界は分野によって規制が異なるため、M&A後も法令順守を維持できる体制づくりが欠かせません。
医療やインフラなど、規制の厳しい分野では特に注意が必要で、早い段階から対応策を整えておくことが重要です。
環境への配慮や継続的なモニタリング体制も含め、長期的に安定した運用を見据えた仕組みを作りましょう。
キーパーソンの定着と文化融合
M&Aによって企業が統合されても、技術や経験を持つ人材が離れてしまえば本来の価値を活かせません。
特にIoT業界では、買収後の環境変化に対する不安から重要な人材が離職するケースが少なくありません。
そのため、丁寧なコミュニケーションと文化のすり合わせを行い、信頼と安心感のある職場を作ることが重要です。
まとめ|IoT業界の成長とともに広がるM&A戦略の重要性
IoT業界はセンサー、通信、AIなどの先端技術が融合し、今後も高い成長が期待される分野です。
高い年平均成長率で拡大を続けており、デバイスからプラットフォームまで技術革新と新規参入が進んでいます。
このような変化の中、自社だけで成長し続けるのは難しく、M&Aによる外部資源の活用がますます重要です。
特に、大手企業によるスタートアップの買収や、IoT基盤の垂直統合、セキュリティ領域でのM&A活発化が業界再編を加速させています。
CINC Capitalは中小企業庁の『M&A支援機関登録制度』に登録された仲介会社として、多くの企業の譲渡・買収を支援してきました。
様々な経験を持つアドバイザーが、目的に応じた最適な手法を提案し、秘密厳守で安心な取引をサポートします。
この記事の監修者

CINC Capital取締役執行役員社長
阿部 泰士
リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。