CINC CapitalはCINC(証券コード:4378)のグループ会社です。
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業種
- 公開日2025.04.21
- 更新日2025.04.21
ゲーム業界のM&A動向(2025年)メリットデメリット/事例/成功のポイントを解説
ゲーム業界では、市場環境の変化や技術革新により、M&Aを通じた事業拡大の機会が増えています。「M&A案件の価値評価が難しい」「成功に必要なノウハウが不足している」と悩む経営者も多いです。
この記事では、2025年に向けたゲーム業界のM&A動向や成功事例、メリットデメリット、成功のポイントを解説します。市場拡大や技術革新が進む中、正しい知識と戦略でM&Aを活用し、企業価値を最大化するための参考にしてください。
目次
ゲーム業界の市場動向
ゲーム業界は、コンシューマー、モバイル、PCゲームなど多岐にわたる分野で成長を続けています。ここでは、ゲーム業界の市場規模の推移と、現状を整理します。
ゲーム業界の市場規模の推移
約2,690億ドルと見積もられており、2030年には4,366億ドルに達すると予測されています。特にモバイルゲームはスマートフォンの普及とともに急速に拡大しており、市場の約半分を占めています。また、クラウドゲーミングやeスポーツも急速に拡大しており、今後も安定した成長が期待できる分野です。
【出典】Mordor Intelligence「GAMING MARKET」
ゲーム業界の現状
現在のゲーム業界は、技術革新とユーザーニーズの多様化により、大きな転換期を迎えています。特に注目すべきは、従来のゲームメーカーだけでなく、IT企業やエンターテインメント企業など、異業種からの参入が活発化している点です。
市場では、モバイルゲームとクラウドゲーミングが急成長を遂げています。スマートフォンの高性能化と5G通信の普及により、モバイルゲームの品質は従来のコンシューマーゲームに迫るレベルにまで向上しました。
ビジネスモデルの面では、基本プレイ無料(F2P)と課金システムを組み合わせたモデルが主流となっています。これにより、ゲーム開発企業は安定した収益を確保しやすくなった一方で、ユーザー維持のための継続的なコンテンツ提供が必要不可欠となります。
技術面では、AI技術の活用が進んでいます。ゲーム内のキャラクターの動作最適化から、ユーザーの行動分析まで、AIは様々な場面で活用されるようになりました。また、メタバースへの対応も重要なトレンドとして浮上しています。
ゲーム業界が抱える課題
ゲーム業界は近年、技術の高度化やユーザーニーズの多様化により、さまざまな課題に直面しています。ここでは、主な課題を3つ見ていきます。
開発コストの増大により中小スタジオの運営が困難になっている
ゲーム業界では開発コストの上昇が経営課題となり、特に中小スタジオに大きな影響を与えています。高品質な3Dグラフィックスやオープンワールドの制作には多額の資金と人材が必要で、技術の高度化に伴いコストは増大しています。
具体的には、ゲームエンジンのライセンス料、高性能開発機材、人件費、クラウド利用料、マーケティング費用などが主な要因です。
高度なスキルを持つエンジニアの確保が難しくなっている
ゲーム業界では、高度なスキルを持つエンジニアの確保が深刻な課題となっています。特に3D技術、AI開発、クラウド関連の専門知識を持つ人材の獲得競争が激化し、中小企業は給与や待遇面で大手と競争するのが難しい状況です。
これにより、技術力の高いスタジオのM&Aが活発化し、即戦力の確保を目的とした買収が増加しています。業界では、リモートワークの導入や社内教育強化などの対策が進められています。
ゲームの長期運営に必要な収益モデルの構築が困難になっている
ゲーム業界では、サービスの長期運営に必要な安定した収益モデルの構築が困難になっています。主な要因は、ユーザーの嗜好の多様化や競合の増加による価格競争の激化、ユーザー獲得コストの上昇、運営コストの増大です。
この課題に対処するため、ゲーム内広告、eスポーツ、グッズ販売など多様な収益源を組み合わせる動きが進んでいます。
特に、シーズンパス制やAI活用によるマネタイズ強化が注目されていますが、高度な技術や人材確保が必要です。
ゲーム業界のM&A最新動向(2025年)
2025年のゲーム業界では、モバイルゲーム市場の拡大やメタバース関連技術の進化を背景に、M&A活動が活発化する見込みです。
モバイルゲーム市場を狙ったM&Aの活発化
2025年のモバイルゲーム市場におけるM&Aは活発化し、大手企業による中小企業の買収が増加すると予測されています。
市場の成長や規模の経済を活かしたコスト削減が背景にあり、特にグローバル展開の強化、新技術対応、データ分析技術の獲得が主要な目的となっています。
北米ではM&A取引額が前年比30%増、特にカジュアルゲーム分野が活発です。アジアでも中国・韓国企業がグローバル展開を視野に買収を拡大しています。中小デベロッパーは自社の強みを活かし、適切なM&A戦略を検討することが重要です。
メタバース分野への進出を目的とした企業間提携の拡大
メタバース市場は急成長を遂げており、M&A活発化の要因の1つにもなっています。大手企業はVR/ARやブロックチェーン技術を持つスタートアップへの投資を強化し、異業種との提携も進めています。
一方で、市場の成熟度や技術革新の速さから、投資リスクの見極めが重要です。今後も企業間提携の拡大が続き、メタバース事業の発展が期待されます。
アジア市場をターゲットとしたM&A
アジアのゲーム市場は2025年に向けて急成長しており、この成長を取り込むためにM&Aが活発化しています。特に中国、韓国、東南アジアでは、モバイルゲーム市場の拡大を背景に、大手企業が戦略的な統合や買収を進めています。
中国のテンセントやネットイースは日本・欧米のスタジオを買収し、韓国ではメタバースやブロックチェーン分野への投資が加速。東南アジアでは現地企業との提携が鍵となり、文化や規制対応も重要視されています。
【売り手】ゲーム業界がM&Aをするメリット
ゲーム業界のM&Aは、企業の成長と事業継続において重要な選択肢となっています。ここでは、ゲーム業界の売り手がM&Aをするメリットを見ていきます。
大手企業のリソースを活用して開発規模を拡大できる
M&Aを選択する最大のメリットは、大手企業の経営資源を活用できる点にあります。資金力、技術力、人材、ブランド力を活かすことで、開発規模の拡大や技術の高度化が可能になります。
特に、高度なグラフィックスエンジンやAI技術、開発ツールの利用により、開発効率が向上します。また、大手の研修プログラムやブランド力を活用することで、人材確保や育成が容易になります。
マーケティング面でも、広告宣伝力や販売チャネルを活かし、グローバル展開をスムーズに進めることができます。
さらに、資金のバックアップを受けることで、大規模プロジェクトや新技術への投資が実現しやすくなり、より大きな市場へ進出する機会が広がります。
ブランド価値を高めることで市場での競争力が強化される
M&Aにより、中小ゲームスタジオのブランド価値は向上し、市場での信頼性や競争力が強化されます。大手企業のブランド力を活用することで、広告予算や販売網の拡大が可能となり、より多くのユーザーへリーチできます。
また、取引先との関係強化、グローバル展開の推進、人材採用の競争力向上といった効果も期待されます。さらに、財務基盤の安定により、大規模な開発プロジェクトへの挑戦が可能になり、市場での競争優位性が確立されます。
ただし、M&A後の統合では、企業文化や開発スタイルを維持しつつ、大手のリソースを活用する戦略が重要となります。
事業承継問題を解決し企業の存続を確保できる
ゲーム業界では、経営者の高齢化と後継者不在により事業承継が深刻な課題となっており、M&Aが有効な解決策となっています。
特に、技術革新が進む業界では、高度なマネジメント能力を持つ後継者の確保が困難です。M&Aを活用することで、企業価値を適正に評価し、従業員の雇用維持や技術・ノウハウの継承が可能になります。
また、買収企業の経営資源を活用することで、資金や人材の確保が容易になり、より大規模なプロジェクトにも挑戦できます。成功には早期の準備と適切な意思決定が重要であり、M&A専門家との連携が求められます。
【売り手】ゲーム業界がM&Aをするデメリット
続いて、ゲーム業界でM&Aを行う際の、売り手側のデメリットを見ていきましょう。
買収後に開発方針や運営方針が変更される可能性がある
買収後の開発・運営方針の変更は、売り手企業にとって大きな懸念事項です。特に、創業者の想いやクリエイティブな価値観が、買収企業の収益重視の方針と相反する可能性があります。
対策として、M&A契約時に開発の自主性を確保する取り決めや、段階的な統合プロセスの設計が重要です。売り手は、自社の強みや価値観を明確に伝え、合意形成を慎重に進めることが求められます。
従業員のモチベーション低下や離職リスクが発生する
M&Aでは、従業員の心理的影響が深刻な課題となり、不安や懸念がモチベーション低下や離職につながる可能性があります。特にゲーム業界では、開発の自由度や企業文化の変化が士気に影響を与えます。
対策として、M&A成約後の早期の丁寧なコミュニケーション、キーパーソンの確保、インセンティブ設計、開発文化の尊重が重要です。経営陣が明確なビジョンを示し、統合プロセスを段階的に進めることで、従業員の適応を促し、不安を軽減することが求められます。
ブランドや知的財産の扱いに関して意見が対立する場合がある
M&Aにおけるブランドや知的財産権の取り扱いは、売り手と買い手の間で対立を引き起こす重要な課題です。特に既存IPの継続的な活用権に関して、ゲームブランドやキャラクターの扱いを巡り意見が分かれやすく、クリエイティブな自由度の制限が懸念されます。対立の主な要因として、IPの管理方針、ライセンス収入の配分、新規展開のコントロール権などが挙げられます。
これを防ぐためには、M&A契約時に詳細な合意を形成し、買収後も定期的なコミュニケーションを行い、ブランド価値の維持・向上に向けた協力体制を確立することが重要です。
【買い手】ゲーム業界をM&Aするメリットデメリット
ここでは、買い手がゲーム業界の企業をM&Aするメリットとデメリットを整理します。
買い手側にとって、既存の開発力や知的財産を取り込むことで競争力が向上することや、新市場や新技術分野への参入が迅速に実現できることが大きなメリットです。M&Aを通じた新市場・新技術分野への参入は、時間とリスクを最小限に抑えながら、企業の成長機会を最大化できる有効な手段と言えます。
一方で、買収後の統合作業が失敗するとコストが大幅に増加するリスクがあることや、異なる企業文化の統合に時間がかかる可能性があることがデメリットです。これらのデメリットを理解したうえで、リスクを最小限にするよう対策しましょう。
ゲーム業界のM&A相場は?
M&Aに際してもっとも気になる部分といえるのが価格相場ではないでしょうか。以下では、ゲーム業界のM&A相場に関する情報を解説します。
価格は一概には決められない
M&Aの価格は多様な要因によって変動するため、一概に相場を提示するのは難しいものの、類似の取引事例などを参考に算定される場合があります。価格に影響を与える要因として、「会社の規模」「収益性」「将来性」「負債」「ブランド力」などが挙げられます。
M&Aにおけるゲーム業界の企業価値の算出方法
M&Aの譲渡価格は、「DCF法」「類似会社比較法」「時価純資産法」など複数の算定方法を状況に応じて使い分け、あるいは組み合わせて算出します。自社の価値について気になる場合は、ぜひ以下の企業価値算定シミュレーションをお試しください。
ゲーム業界がM&Aを成功させるためのポイント
ゲーム業界でM&Aを成功に導くためには、適切な準備と専門的なサポート体制の構築が不可欠です。ここでは、とくに重要な3つのポイントをお伝えします。
売却の適切なタイミングを図る
ゲーム業界でM&Aを成功させるには、企業価値を最大化できる適切な売却タイミングを見極めることが重要です。
売却の好機は、事業が成長し市場評価が高まった時期、独自技術やIPが確立し買収関心が高まった時期、競争が激化し単独成長が難しくなった時期の3つが挙げられます。
特にヒット作のリリース後や新技術の成功時が好機ですが、売上低迷や主要人材の流出時は避けるべきです。市場動向を把握し、専門家の支援を活用することで、最適な売却を実現できます。
財務状況や技術力を正確に評価すること
M&A成功の鍵は、財務状況と技術力の正確な評価です。ゲーム業界では、収益構造の持続可能性を分析し、MAUや課金率などの指標を総合評価することが重要です。
技術力の面では、開発チームの実績、独自技術、IP保有状況、運営ノウハウを精査し、AIやメタバースなどの新技術への対応力も評価します。デューデリジェンスでは専門家の知見を活用し、客観的な評価を行うことで適切な買収価格を算定してもらいましょう。
M&Aの専門家を活用する
M&Aを成功させるには、プロの力を借りることも大切です。専門知識がない状態で交渉を続けると、不当な条件で売却してしまう可能性も考えられます。プロのサポートを受け、希望の条件での成約を目指しましょう。
ゲーム業界のM&A事例
最後に、ゲーム業界のM&A事例をご紹介します。自社のM&A検討時の参考にしてみましょう。
株式会社ブシロードと株式会社ブロッコリーの資本業務提携
2020年11月、株式会社ブロッコリーは株式会社ブシロードとの間で資本業務提携契約を締結しました。本提携により、ブシロードは市場を通じて取得していたブロッコリー株式(3.89%)を活用し、両社の協力関係を強化する方針を明確にしました。
ブロッコリーは『デ・ジ・キャラット』や『うたの☆プリンスさまっ♪』などの人気コンテンツを有する企業であり、アニメ・ゲーム・グッズの企画・販売を手掛けています。一方のブシロードは、トレーディングカードゲーム(TCG)やモバイルゲームの運営に加え、IP(知的財産)展開を強みとする企業です。
本提携の目的は、両社の経営資源やノウハウを活用し、共同で新たなコンテンツや商品を企画・開発することです。その第一弾として、『デ・ジ・キャラット』のリブートプロジェクトが発表され、スマホゲーム『ロストディケイド』への期間限定参加が決定しました。
近年、エンタメ業界ではIPの多角的な展開が求められており、企業間の連携が重要になっています。本提携により、両社はコンテンツの開発力を強化し、収益基盤の拡大を図る狙いがあると考えられます。
【出典】株式会社ブロッコリー「株式会社ブシロードとの資本業務提携契約締結に関するお知らせ」
ソニー・インタラクティブエンタテインメントによるFirewalk StudiosのM&A
2023年4月、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)は、ProbablyMonsters Inc.傘下のFirewalk Studiosを買収する契約を締結しました。これにより、FirewalkはPlayStation Studiosの20番目のスタジオとして正式に加わることとなりました。
Firewalk Studiosは2018年に設立され、マルチプレイヤーゲームの開発を専門とするスタジオです。特に、元Bungieの幹部であるTony Hsu氏やRyan Ellis氏が率いる開発チームは、『Destiny』シリーズなどのヒット作に携わった経験を持ち、AAA級のマルチプレイヤーゲーム制作に強みを有しています。SIEは2021年にFirewalkとの独占的パブリッシング契約を結んでいましたが、本買収によって両社の協力関係がさらに強化される形となりました。
本買収の背景には、SIEのライブサービス型ゲームへの注力があります。近年、ゲーム業界では「一度の販売で終わる」パッケージ型から、継続的に収益を生み出すライブサービス型ゲームへのシフトが進んでいます。SIEはすでにBungieやHaven Studiosを傘下に収めており、Firewalkの買収によりマルチプレイヤーゲームの開発体制をさらに強化すると考えられます。
今後、Firewalkは約150名の開発チームを維持しつつ、PlayStation Studiosの支援のもと次世代のマルチプレイヤーゲーム開発を加速していく見込みです。本買収により、SIEはライブサービス型ゲームの競争力をさらに高め、PlayStationプラットフォームの魅力を強化する狙いがあります。
【出典】ソニー・インタラクティブエンタテインメント「ソニー・インタラクティブエンタテインメント、ProbablyMonsters Inc.傘下のFirewalk Studiosを買収へ」
まとめ|ゲーム業界のM&A動向を抑えてM&Aを成功させましょう
ゲーム業界のM&A成功には、市場動向の把握と戦略的準備が不可欠です。自社の財務・技術力を分析し、成長フェーズや競争環境を考慮した適切なタイミングを見極めましょう。専門家と連携し、PMI計画も事前に策定することが重要です。
CINC Capitalは、M&A仲介協会会員および中小企業庁のM&A登録支援機関として、M&Aのご相談を受け付けております。業界歴10年以上のプロアドバイザーが、お客様の真の利益を追求します。M&Aの相談をご希望の方はお気軽にお問い合わせください。
この記事の監修者

CINC Capital取締役執行役員社長
阿部 泰士
リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。