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百貨店のM&A動向(2025年)メリットデメリット/事例/成功のポイントを解説

業種

  • 公開日2025.04.28
  • 更新日2025.04.28

百貨店のM&A動向(2025年)メリットデメリット/事例/成功のポイントを解説

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近年、消費者のライフスタイルの変化やEC市場の拡大により、百貨店業界はかつてないほどの転換期を迎えています。売上や来店者数の減少が続くなか、各社は生き残りをかけたM&Aのスキームを活用しており、株式譲渡や子会社化、さらにはTOB(株式公開買付)による成約事例も注目を集めています。地方百貨店と大手企業との提携や、異業種(アパレル企業など)による買収などの事例もあるため、M&Aを検討する際は参考にしてみましょう。

この記事では、百貨店業界におけるM&Aの最新動向や、実際の事例、そしてM&Aを成功させるためのポイントをわかりやすく解説します。再生や成長を目指すうえでM&Aをどのように活用できるのか、ぜひチェックしてみてください。

百貨店の市場動向

百貨店業界は長年にわたり、日本の小売業界の中心的存在として消費者に親しまれてきました。しかし、バブル崩壊後の消費低迷や、ショッピングモール、専門店、量販店、コンビニ、さらにはECサイトの台頭などにより、業界全体としては縮小傾向が続いています。

一般社団法人日本百貨店協会の調査によると、2024年の全国百貨店売上高は5兆7,722億円で、前年から約6%上昇しています。都市部の一部店舗ではインバウンド需要や富裕層向けの高級商品で好調なケースも見られますが、地方の百貨店では集客に苦戦しており、都市部と地方の格差も深刻です。

ただし、近年ではコロナ禍による行動制限の緩和や、円安を背景とした訪日外国人観光客の増加により、百貨店を含む一部の業態が回復の兆しを見せています。2023年の小売業界全体の商業販売額は、594兆500億円。前年比1.6%増となりました。百貨店・スーパーの商業販売額は21兆6,049億円(前年比4.6%)と、アウトレットモールやドラッグストアなどと並び、堅調な推移を見せています。

全体としては依然として厳しい環境下にあるものの、インバウンドや高付加価値商品の展開などを武器に、一部百貨店では回復の可能性も見られる状況です。今後はM&Aを活用して業態転換や規模のメリットを追求する動きが、業界の大きなテーマとなっていくでしょう。

【出典】一般社団法人日本百貨店協会「2024年の全国百貨店売上高」
【出典】経済産業省「2023年 小売業販売を振り返る」

百貨店業界が抱える課題

長年にわたり日本の消費文化を支えてきた百貨店業界ですが、現在は多くの構造的な課題に直面しています。今後の持続的成長を実現するためには、これらの課題への的確な対応と、柔軟な業態転換が求められています。

市場規模の縮小と競争激化

百貨店業界の最大の課題は、市場規模の縮小と多様な業態との競争激化です。衣料品や贈答品といった従来の主力商品が売上を伸ばせず、ショッピングモールや量販店、専門店、ECサイトなどに顧客を奪われている現状があります。

コロナ禍の影響で一時は売上が大幅に落ち込み、2020年4月には全国の百貨店売上高が前年同月比72.8%減となるなど、業界に深刻な打撃を与えました。現在は徐々に回復基調にあるものの、競争は依然として激しい状況です。

【出典】一般社団法人日本百貨店協会「令和2年4月 全国百貨店売上高概況」

国内人口の減少と地方店舗の苦戦

もう一つの大きな課題は、国内人口の減少による中長期的な市場の縮小です。矢野経済研究所の予測によると、国内小売市場は2030年には2022年と比較して約14%縮小するとされています。特に影響を受けているのが地方の百貨店で、人口流出と高齢化の影響により、来店客数の減少と購買力の低下が顕著です。一方、都市部では一定の需要が維持されているものの、今後は地方店舗の閉店や再編がさらに進む可能性があります。

【出典】株式会社矢野経済研究所「2030年の小売市場に関する調査を実施(2023年)」

デジタル対応の遅れとIT技術の活用不足

現代の消費者はオンラインでの買い物を当たり前のように利用しており、ECサイトの拡大は百貨店業界にとって無視できない脅威です。しかし、多くの百貨店では依然として実店舗を中心とした運営が続いており、デジタル化への対応が後手に回っている傾向があります。

一部の先進的な店舗では、ARを活用した化粧品のシミュレーションやオンライン接客などが導入されていますが、業界全体ではまだ取り組みが限定的です。今後はネット通販やデジタルサービス、デリバリーの強化に加え、高齢者にも使いやすいITサービスの導入が求められます。

百貨店のM&A最新動向(2025年)

売上の低迷や地方店舗の閉鎖といった課題に直面している百貨店業界では、M&Aによる対応策が取られることがあります。2025年時点でも、地方百貨店の統合や異業種連携、EC領域との融合といった形でのM&Aが各地で見られます。百貨店業界におけるM&Aの最新動向を確かめてみましょう。

地方百貨店の統合による経営基盤の強化

人口減少や購買行動の変化により地方百貨店の経営環境は厳しさを増しており、首都圏の大手百貨店による地方店舗の吸収や経営統合などの動きが見られます。経営資源の集約によって、在庫や人材、マーケティング施策の一元化が可能となり、経営効率の向上と地域密着型のサービス強化が期待されています。

EC・デジタル企業との連携によるオンライン強化

百貨店のオンライン展開は、依然として成長余地が大きい領域です。近年はEC事業に強みを持つ企業の買収や業務提携が行われるケースが見られます。百貨店業界としてもデジタル化の波に本格的に対応し始めており、バーチャル接客やAIを活用した購買サポートなど、オンラインでの高付加価値サービスを目指す動きもあります。

高級ブランド・異業種との連携で付加価値を創出

富裕層やインバウンド需要を狙い、高級ブランドやラグジュアリー商材を展開する企業とのM&Aも実施されることがあります。また、最近ではエンタメや飲食業界との異業種連携の事例もあり、百貨店を「買い物+体験」の複合施設として再構築する試みが展開されています。来店の動機を創出するための、体験型施設の導入が鍵といえるでしょう。

百貨店がM&Aで売却するメリット

百貨店業界におけるM&Aは単なる経営戦略ではなく、生き残りをかけた重要な選択肢となっています。この章では、百貨店業界のM&Aにおける売り手企業側のメリットを、業界特有の事情をふまえて解説します。

雇用の維持と地域社会への貢献

百貨店は地域に根ざした雇用の受け皿でもあります。M&Aによって廃業を回避することで従業員の雇用を守るだけでなく、地域経済に与える影響も最小限に抑えられます。特に地方百貨店では、この点が重要なメリットといえるでしょう。

老朽化した店舗や運営システムの刷新

多くの百貨店では、施設の老朽化やレガシーな経営体制が大きな課題です。大手グループや外部資本の支援を受けることで、建物の改装やデジタルインフラの整備が進み、時代に合った店舗運営が可能になります。M&Aは、自力では難しい抜本的な改革を実現する手段としても活用できるのです。

取引先・仕入れルートの継承と強化

百貨店業界は、ブランドやメーカーとの信頼関係による仕入れネットワークが重要です。M&Aによって信用力の高い企業に引き継がれることで、これまで築いてきた仕入れ先との関係が継続しやすくなります。加えて、買収側の調達力や交渉力を活かせば、より有利な仕入れ条件が得られる可能性もあるでしょう。

事業承継問題の解決と円滑な引退

後継者不在に悩む百貨店経営者は多く、親族や社内に引き継げる人材がいない場合、M&Aは現実的な選択肢となります。買い手企業へスムーズに事業を引き渡すことで、店舗の存続と雇用維持を両立しながら、経営者は円満に引退できます。長年の努力を無にせず、バトンを未来につなぐ手段として有効です。

ブランド・歴史の継承

百貨店は、その地域で長年親しまれてきた「顔」のような存在です。M&Aによってブランド名や店舗の名称を残す取り組みも多く、買収後も既存顧客に対する安心感を維持できます。歴史や地域の信頼を次の世代に受け継げるのは、M&Aならではの価値といえるでしょう。

百貨店がM&Aで売却を成功させるためのポイント

百貨店のM&Aを成功させるには、一般的なM&Aの進め方だけでなく、業界特有の商習慣や顧客基盤、地域との関係性などを理解し、適切に対応することが欠かせません。ここでは、百貨店業界の売却を成功に導くための重要なポイントをご紹介します。

地域密着のブランド価値を可視化する

百貨店は長年にわたり地域住民に親しまれてきたケースが多く、地域性や顧客との関係性が大きな価値となります。こうしたブランド価値は数字に表れにくいため、歴史・地域での信頼度・顧客層の厚みなどを資料で整理し、可視化しておくことが重要です。買い手にとっても、地域密着型のブランド力がシナジーを生むかどうかの判断材料となります。

商品仕入れや取引先との関係性を維持する体制づくり

百貨店では老舗メーカーや地域の特産品業者など、特定の取引先との信頼関係によって商品の質が保たれているケースも多く見られます。M&A後もこの関係性を維持できるよう、取引先への丁寧な説明を行い、必要であれば引き継ぎの場を設けるなど、信頼の断絶を防ぐ体制を構築しておきましょう。

買い手との相性を重視したマッチングを行う

百貨店は単なる物販施設ではなく、地域のランドマークや文化発信の場としての側面もあります。そのため、売却相手の企業理念や戦略が自社と相性が良いかどうかを重視することも大切です。ブランドの再構築や地域との関係性維持に理解のある企業を選定することで、M&A後の混乱を防ぎ、円滑な移行が実現できます。

従業員の不安をケアし、離職を防ぐ

百貨店は長年勤務している従業員も少なくありません。ベテランスタッフの接客技術や店舗運営力は大きな資産です。M&Aの過程で不安が広がると、優秀な人材の流出につながりかねません。売却が決定したら、できる限り早い段階で従業員に説明を行い、待遇の維持や今後の方針を丁寧に伝えることが必要です。安心して働き続けられる環境を整えることが、M&A成功の要となります。

百貨店業界のM&A事例

最後に、百貨店業界のM&A事例をご紹介します。自社のM&A検討時の参考にしてみましょう。

東急株式会社による株式会社ながの東急百貨店のM&A

2021年6月、東急株式会社は、長野県の百貨店運営会社である株式会社ながの東急百貨店を株式交換により完全子会社化しました。

東急グループの傘下で長年地域密着型の営業を続けてきたながの東急百貨店は、少子高齢化やコロナ禍、デジタルシフトの加速といった事業環境の変化に直面していました。

今後の経営体制の柔軟化と事業構造改革を実現するため、グループ内での直接的な支配体制を構築することが狙いです。

上場コストの削減や経営判断の迅速化に加え、東急グループのネットワークを活かしたテナント誘致や運営効率化によるシナジー効果が期待されています。地方百貨店の生き残り戦略として注目される事例です。

【出典】東急株式会社「東急株式会社による株式会社ながの東急百貨店の完全子会社化に関する株式交換契約締結のお知らせ」

J.フロントリテイリング株式会社による株式会社パルコのM&A

2020年3月、J.フロントリテイリング株式会社は株式会社パルコを完全子会社化し、同年3月18日をもってパルコ株式は上場廃止となりました。

本件は2019年12月から開始された公開買付けにより議決権所有割合96.43%を取得した後、会社法に基づく株式売渡請求を経て実施された二段階買収です。

パルコの成長を加速させるため、J.フロントリテイリングは同社の経営資源を統合し、不動産・商業開発領域での相乗効果を狙います。

これにより、都市部での開発力強化や既存店舗の価値向上、新業態創出などが期待されています。少数株主への配慮や公正性担保の措置も徹底され、近年の上場子会社整理の流れを象徴する事例です。

【出典】株式会社パルコ「J.フロントリテイリング株式会社による当社株式に係る株式売渡請求を行うことの決定、当該株式売渡請求に係る承認及び当社株式の上場廃止に関するお知らせ」

株式会社セブン&アイ・ホールディングスによる株式会社そごう・西武のM&A

2023年2月、セブン&アイ・ホールディングスは、子会社である株式会社そごう・西武の全株式を、米投資会社フォートレス・インベストメント・グループの関連会社である杉合同会社へ譲渡しました。

新型コロナウイルスの影響や消費行動の変化により百貨店業界が苦境に立たされる中、同社は成長性の再構築を図るべく最適な経営母体を模索。フォートレスは不動産と再生ビジネスの知見を活かし、そごう・西武の不動産活用と収益性改善を目指します。

さらに、ヨドバシホールディングスをパートナーに迎えることで、店舗価値の最大化が期待されます。大手小売グループによる事業ポートフォリオ再編の一環として、業界再編の象徴的な案件となりました。

【出典】株式会社セブン&アイ・ホールディングス「当社子会社の株式譲渡及びそれに伴う子会社異動のお知らせ」

まとめ|百貨店業界のM&A動向を押さえてM&Aを成功させましょう

百貨店業界では、少子高齢化や消費行動の変化、ECの台頭などを背景に、再編やM&Aの動きが加速しています。ブランドや地域との結びつきを活かしながら、次の成長へとつなげるM&Aが求められる時代です。売却を成功させるためには、業界特有の価値や商習慣を正しく理解し、それを買い手に的確に伝える準備が必要です。さらに、従業員や取引先、顧客との信頼関係を維持するための配慮も欠かせません。

百貨店M&Aは、地域に根ざした「想い」を次世代に引き継ぐ大きなチャンスでもあります。本記事で紹介したポイントを押さえ、適切なタイミングで専門家の力も借りながら、納得のいくM&Aを実現させましょう。

CINC Capitalは、M&A仲介協会会員および中小企業庁のM&A登録支援機関として、M&Aのご相談を受け付けております。業界歴10年以上のプロアドバイザーが、お客様の真の利益を追求します。M&Aの相談をご希望の方はお気軽にお問い合わせください。

この記事の監修者

阿部 泰士

CINC Capital取締役執行役員社長

阿部 泰士

リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。

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