CINC CapitalはCINC(証券コード:4378)のグループ会社です。
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- 公開日2025.09.17
デリバリー業界のM&A動向は?事例や成功のポイントを解説【2025年】
デリバリー業界のM&Aに関心がある方で、「市場はどう動いているのか」「他社はどんな戦略をとっているのか」と悩んでいませんか。
業界は変化のスピードが速く、正しい情報を知らずに進めると、判断ミスにつながる恐れもあります。
本記事では、デリバリー業界の市場動向やM&Aの最新事例、そして成功に必要なポイントをわかりやすく解説します。
目次
デリバリー業界の市場動向
日本のデリバリー(出前)市場は、コロナ禍をきっかけに急成長し、その後も高い水準を維持しています。
2023年の市場規模は約8,622億円で、前年比で11%増加しました。これは、コロナ前の2019年と比べて約2倍近い成長です。
2024年にはやや減少し、約7,967億円(前年比7.6%減)となる見込みですが、それでもコロナ前と比べて約90%増の水準を保っています。
このように、成長は一段落したものの、デリバリー市場は引き続き拡大傾向です。
また、出前館、Uber Eats、ドミノ・ピザなど複数のサービスが拮抗しており、さまざまな企業が競い合いながら市場をけん引していることが分かります。
【出典】サカーナ・ジャパン株式会社「<外食・中食 調査レポート>2024年のデリバリー市場規模は7967億円の見込み 成長率は前年比7.6%減、コロナ前比90.5%増」
デリバリー業界が抱えている課題
デリバリー業界は急成長を遂げた一方で、持続的な発展に向けていくつかの大きな課題に直面しています。
本章では、デリバリー業界が抱えている課題について3つの観点から見ていきましょう。
高コスト構造と収益性の確保
デリバリー事業は、配達員への報酬や燃料費、プラットフォーム手数料の負担が大きく、利益を圧迫しています。
たとえば、Uber Eatsの手数料は注文金額の約35%、出前館では最大38%に設定されており、飲食店側の利益を大きく圧迫する要因となっています。
その結果、飲食店は利益を出しにくく、プラットフォーム側も赤字経営に陥るケースが少なくありません。
人手不足と配達員の定着課題
少子高齢化やEC市場の拡大により、運送・配送業界の人手不足は深刻です。
2030年までに輸送能力は34%不足する可能性があるとされ、配達員の確保競争も激しさを増しています。
報酬の低下により副業から離れる人も増え、都市部では単価の下落が人材流出につながっているのです。
M&A後に安定した運営を維持するには、報酬制度や労働環境の見直しが欠かせません。
【参考】国土交通省「物流を取り巻く動向と物流施策の現状・課題」
競争激化とサービス差別化の必要性
現在はUber Eatsや出前館に加え、コンビニやスーパー、ゴーストキッチンなども参入し、競争が激化しています。
中でもゴーストキッチンは乱立しており、コンセプトや品質、配送スピードなどでの差別化が重要です。
例えば、独自の配送ネットワークを持つ企業や、特定ジャンルに強いゴーストキッチンを取り込むことで、競争優位を築きやすくなります。
デリバリー業界のM&A最新動向(2025年)
2025年現在、デリバリー業界ではM&Aが経営戦略の一環として広く活用されるようになっています。
本章では、デリバリー業界の最新動向を3つ解説していきます。
大手による地域中小事業者の買収が加速
大手デリバリー企業が地方の中小配送業者や個人店舗を買収する動きが、2025年に入ってからさらに活発化しています。
これは、自社で一から配送ネットワークを整備するよりも迅速かつ低コストに店舗・拠点を確保できるためです。
例えば、出前館は地方の配送業者を複数買収し、全国規模でのサービス提供体制を強化していることが報告されています。
M&Aによりスケールメリットを得た結果、配送効率や競争力の向上につながります。
個人・中小による参入を目的とした買収も増加
後継者不在を背景に、物流・配送事業では個人や中小企業によるM&Aが増えています。
配達員やネットワークが整った事業を引き継ぐことで、スムーズな立ち上げが可能になるためです。
給食やデリバリー業界では、事業承継を目的とした中小規模のM&Aが活発化しています。
異業種からのデリバリー参入M&Aが一般化
飲食や小売、物流などの異業種企業が、デリバリー分野への進出を目的にM&Aを活用する事例が増えています。
特にケータリングや給食業界からの参入が活発で、事業の多角化や再編を進める動きが目立ちます。
M&Aは、規模の拡大や新たな市場への早期参入を実現できる手段として、注目されているのです。
デリバリー業界でM&Aを成功させるためのポイント
デリバリー業界におけるM&Aを成功させるには、業界特有の構造や課題を踏まえた実務対応が欠かせません。
本章では、M&Aを成功させるための5つのポイントについて見ていきましょう。
配達員など現場人材の確保と離職防止
M&A後に配達員が離職すると、事業の安定運営に大きな影響を与えます。
そのため、待遇の保証や丁寧な情報共有で不安を取り除くことが重要です。
実際に、説明不足や待遇の変化によって離職が増えるケースが多く報告されています。
事前に説明会を開いたり、条件を明示した書面を用意したりすることで、従業員に安心感を与えられるでしょう。
配送ネットワークと拠点の統合
買収で得た複数の配送拠点をうまく統合すれば、コストを抑えながらサービスの品質も維持できます。
M&A直後は拠点ごとに業務のやり方が異なり、混乱が起きやすい状況です。
そこで、AIを活用して配送ルートや積載の効率を見直し、業務の流れを統一することで、統合の効果を最大限に引き出すことができます。
業務を支えるITシステムの導入・統合
受注や配車、配送状況の確認といったシステムをひとつにまとめ、AIを活用して業務を効率化することが、競争力の強化につながります。
近年は、自動配送ロボットやAIによるリアルタイムなルート最適化などが進んでおり、多くの企業がAIを使った配車や物流の管理システムを導入しています。
環境対応・エコ配送の戦略構築
地球温暖化への対応として、電動バイクや三輪EVバイク、再利用できる包装材の導入が進んでいます。
これらはCO2の削減だけでなく、コストの削減やブランドイメージの向上にもつながるでしょう。
すでに日本郵便やドミノ・ピザ、DHLなどが電動バイクを導入し、環境と経営の両面で成果を上げています。
専門家によるM&A実務サポートの活用
M&Aを成功させるには、許認可や法務、財務といった専門知識が必要です。
特に運送・物流業界では、買収後の労働条件の整備や従業員への対応など、実務面での準備が重要です。
公表のタイミングや交渉の進め方など、経験豊富な専門家の支援を受けることで、失敗のリスクを減らすことができます。
デリバリー業界のM&A事例
最後にデリバリー業界のM&A事例をご紹介します。自社のM&A検討時の参考にしてみましょう。
株式会社新出光によるポケットフーズ株式会社のM&A
株式会社新出光は2021年12月、宅配ピザチェーン「ピザポケット」を展開するポケットフーズ株式会社を買収し、完全子会社化しました。
新出光グループは石油依存からの脱却を掲げ、非石油事業の拡大を進めており、今回のM&Aもその一環です。
ポケットフーズは九州を中心に61店舗を運営しており、グループ傘下に入ることで新出光の資産を活用した出店強化が可能になります。
また、宅配ピザという「中食カテゴリー×デリバリー」分野に進出することで、同社はこれまでになかった「個人宅」という新たな顧客接点を獲得しました。
今後は宅配を通じた新サービスの展開やライフ分野の強化が期待され、エネルギー事業から多角化を図る新出光の成長戦略を示す事例といえます。
【出典】株式会社新出光「『ポケットフーズ株式会社』の株式取得~中食カテゴリー×デリバリーで個人宅への顧客接点を 宅配ピザ事業への参入~」
ヤマエグループホールディングス株式会社による日本ピザハット・コーポレーション株式会社のM&A
ヤマエグループホールディングス株式会社は、2022年8月10日の取締役会において、日本ピザハット・コーポレーション株式会社の全株式を取得し、子会社化することを決定しました。
同社は世界最大級の宅配ピザチェーン「ピザハット」の日本におけるフランチャイザーであり、国内で約500店舗を展開しています。
本件によりヤマエグループは、従来の「食」と「住」を基盤とした事業領域に加えて新たにBtoC事業へ進出し、サプライチェーン全体の発展に寄与することを目指します。
取得対象会社は直近3期連続で売上高約200億円規模を維持し、安定した収益基盤を有していました。
ヤマエグループにとって本件は、中期経営計画で掲げる「M&Aによる新規事業分野への進出」の実現にあたり、食品流通事業とのシナジー創出や消費者接点の強化を図る狙いがあると考えられます。
【出典】ヤマエグループホールディングス株式会社「日本ピザハット・コーポレーション株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ」
オイシックス・ラ・大地株式会社によるシダックス ホールディングス株式会社のM&A
オイシックス・ラ・大地株式会社は、2025年6月26日の取締役会において、シダックスグループの事業再編に伴い、フード事業および社会サービス事業を完全子会社化する一方で、車両運行サービスを中心とする事業を創業家に売却することを決定しました。
具体的には、シダックスコントラクトフードサービスやシダックスフードサービス、エス・ロジックス、シダックス大新東ヒューマンサービスといった給食・社会サービス関連会社の株式を追加取得し、完全子会社化します。
これにより、BtoBサブスク(給食)事業と学校給食などの社会サービス事業を中核に据え、経営資源の統合や課題解決のスピード向上を図る狙いです。
一方、車両運行サービスを展開する大新東などは創業家株主に譲渡し、経営資源をコア事業であるBtoC・BtoBサブスク事業に集中させます。
給食業界は人材不足や原材料高騰などの課題を抱える中で再編が加速しており、本件は事業ポートフォリオを絞り込み、成長分野へのシナジー強化を目指す動きと位置づけられます。
【出典】オイシックス・ラ・大地株式会社「連結子会社株式の追加取得による完全子会社化及び連結子会社の異動(株式売却)に関するお知らせ」
まとめ|デリバリー業界におけるM&A成功の鍵
本記事では、デリバリー業界の市場動向や最新のM&A事例、そして成功のためのポイントを解説しました。
市場は急成長を経て安定成長の段階に入り、今後は事業承継や競争力強化を目的としたM&Aの重要性がさらに高まっていくと考えられます。
自社に合ったM&Aを実現するには、業界の最新動向と実務面での注意点を把握し、信頼できる専門家のサポートを受けることが大切です。
CINC CapitalはM&A仲介協会会員であり、中小企業庁の登録支援機関でもあります。
業界歴10年以上の専門家が、デリバリー業界の実情に即した最適な提案を行い、譲渡や買収の目的に合わせたスムーズな取引をサポートします。
まずはお気軽に、無料相談をご利用ください。
この記事の監修者

CINC Capital取締役執行役員社長
阿部 泰士
リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。