CINC CapitalはCINC(証券コード:4378)のグループ会社です。
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- 公開日2025.04.24
- 更新日2025.04.24
デイサービス業界のM&A動向(2025年)メリットデメリット/事例/成功のポイントを解説
近年、高齢化社会の進展により、デイサービスの利用者数はますます増加しています。介護サービスを必要とする人々が多様化するなか、経営者にとってはサービスの質や継続性を担保することが大きな課題となっています。
このような背景のもと、デイサービス業界ではM&Aが注目を集めています。事業を大きく転換するチャンスである一方、買い手・売り手双方にリスクも存在します。
本記事では、2025年の動向を踏まえたデイサービス業界のM&Aにおけるメリット・デメリットや具体的な事例、そして成功のポイントを分かりやすく解説します。
目次
デイサービス業界の市場動向
デイサービスに対する需要増加や業界の競争激化など、市場環境に変化が生じています。今後の展望を理解するうえで、業界全体の動きを捉えることが重要です。
高齢者人口が増加する一方で、要介護認定者が多様なケアを求めるようになっています。特にデイサービスは、在宅での介護を補完するサービスとしてのニーズが高く、地域包括ケアを支える重要な役割を担っています。一方で、小規模事業者から大手企業まで、多くのプレイヤーが参入し、競争は激しくなっています。
事業拡大の手段としてM&Aを検討するケースもあり、特に経営効率化やサービス拡充を狙う中規模事業者においては積極的に検討される傾向があります。サービス品質の向上や多角的な介護サービスの提供に向け、今後も業界再編が進む可能性が高いと考えられます。
デイサービス業界が抱える課題
デイサービス業界は、高齢者支援の最前線として多くの問題に直面しています。ここでは、主な課題を3つ見てみましょう。
慢性的な人材不足
介護職員の確保が難しく、離職率も高いことはデイサービス業界全体で大きな課題となっています。人材不足によりサービスレベルに影響が出るだけでなく、既存スタッフへの負担が増え、結果的に職場環境の悪化につながるリスクも高まります。待遇改善や教育プログラムの整備など、効果的な施策を打ち出すことが不可欠です。
高齢者人口の増加による需要の増大と施設の不足
高齢化が進むなか、要介護認定者の増加は今後も続く見込みです。しかしながら、新規施設の増設ペースが需要に追いつかず、地域によっては待機が発生するケースもあります。サービスの質と量の両面を整えるために、新しい施設運営モデルや高度な経営戦略が求められます。
介護報酬削減などの改定
介護報酬の改定では、収益が圧迫される可能性があり、特に小規模なデイサービス事業者にとっては大きな負担となります。コスト構造の見直しや地域連携による集客施策など、いかに経営基盤を強化していくかが生き残りのカギです。改定の動向を注視しつつ、収益を安定させるための計画とシミュレーションが欠かせません。
デイサービス業界のM&A最新動向(2025年)
2025年に向け、業界再編に向けた動きが急速に広がっています。ここでは主なトレンドと特徴を解説します。
大手介護事業者による地域ネットワークの拡大
大手企業が複数の施設を一括で運営することで、サービス品質を一定に保ちつつコスト削減を図る動きが増えています。地域の病院や訪問看護ステーションなどとも連携しやすくなり、利用者にとっては総合的な介護サービスを受けやすい環境が整備されます。大規模ネットワーク化は事業者のブランド力向上にも寄与します。
訪問介護事業との統合を目的としたM&A
デイサービスだけではなく、訪問介護事業を組み合わせることで、在宅療養から通所介護までを包括的にカバーできる体制を整えます。利用者の多様なニーズにワンストップで対応することで、地域におけるサービスの利便性と利用者満足度が向上し、結果的に企業価値の向上につながります。
高齢者向け住宅との複合事業化
サービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホームと組み合わせることで、住環境と介護サービスを一体的に提供するケースも増えています。移動や手続きの負担を軽減し、生活の継続性を重視した介護を提供できるのが特徴です。入居者の安定確保や多角的な収益源の確保にもつながるため、多くの事業者が注目しています。
【売り手】デイサービス業界がM&Aをするメリット
株式譲渡や事業譲渡などにより、自社の持つ課題を解決できる可能性があります。ここでは、デイサービス業界がM&Aをする売り手目線のメリットをご紹介します。
後継者問題を解消し事業を継続できる
デイサービスでは、創業当初から経営に携わってきた個人経営者が高齢化し、自身の後継者を見つけられないケースが増えています。M&Aにより、新たなオーナーや大手企業の傘下に入ることで従業員の雇用を守りつつ、サービスを継続できる利点があります。事業承継におけるリスクを低減するうえで効果的な選択肢となります。
買い手企業のリソースを活用しサービスの質を向上できる
医療連携の強化や設備投資、人材育成プログラムなど、単独では実現が難しかった体制を買い手企業のネットワークを活用して整備できます。買い手企業が培ってきたノウハウを吸収することで、サービスの質や運営効率の向上につながる可能性が高まります。利用者満足度の向上にも直結するため、地域に根ざしたデイサービスとしての強化が期待できます。
運営コスト削減や規模拡大により効率化が図れる
複数の事業所を統合することで、仕入れコストの削減、管理部門の効率化などが進みます。さらにブランドイメージの確立にもつながり、新規利用者の確保や職員採用の面でもメリットを得やすくなります。これらの相乗効果が、デイサービス全体の経営安定へと繋がっていきます。
【売り手】デイサービス業界がM&Aをするデメリット
M&Aには、いくつかのデメリットが存在します。今後M&Aを検討する中で、売り手側が知っておくべき注意点は以下の通りです。
買収後に運営方針が変更される場合がある
売却後は、買い手企業の経営方針や組織文化の影響を強く受けます。サービス形態やスタッフ配置などが大きく変わることもあり、人材や利用者へのフォローが不十分だと信頼を失うおそれがあります。円滑な事業運営を継続するためにも、買収後のビジョン共有と合意形成が大切です。
地域住民や利用者からの信頼を損なうリスクがある
小規模な地域密着型のデイサービスでは、経営者の人柄や長年のコミュニティとの関係性が利用者にとって価値となっていることが多いです。M&Aによって運営会社が変わると、利用者や地域住民がサービス提供の継続性や質を疑問視するケースがあります。早期からの周知や丁寧なコミュニケーションが欠かせません。
従業員の不安や離職が発生する場合がある
運営方針の変化や雇用条件の見直しが起こると、スタッフが不安を感じることが多くなります。特に、職場環境や待遇が大幅に変化する可能性がある場合、優秀な人材が離職してしまうリスクも高いです。従業員に配慮した情報共有や、スキルアップの機会を提供するなどの取り組みで不安の軽減を図ることが重要です。
【買い手】デイサービス業界がM&Aをするメリットデメリット
買い手企業にとっては事業拡大や多角化のチャンスとなる一方、買収のリスク管理や従業員との関係構築など、考慮すべき点も多く存在します。
買い手にとって最大のメリットは、すでに地域に浸透しているデイサービスの基盤を短期間で獲得できることです。認知度やノウハウを活用することで、買収後の収益を安定させられる可能性が高まります。
一方、既存スタッフや利用者との間に築かれたコミュニケーションを維持しながら、買い手企業独自の経営手法を導入するのは容易ではありません。買収先施設の財務状況だけでなく、サービス品質や組織文化にも十分な理解が求められます。
デイサービス業界のM&A相場について
M&Aに際してもっとも気になる部分といえるのが価格相場ではないでしょうか。以下では、デイサービス業界のM&A相場に関する情報を解説します。
価格は一概には決められない
M&Aの価格は多様な要因によって変動するため、一概に相場を提示するのは難しいものの、類似の取引事例などを参考に算定される場合があります。価格に影響を与える要因として、「会社の規模」「収益性」「将来性」「負債」「ブランド力」などが挙げられます。
また、デイサービス業界では、利用者数やスタッフの質、施設の状態、介護報酬の安定性などが評価に大きく影響する要素です。
M&Aにおけるデイサービス業界の企業価値の算出方法
日本の中小企業のM&Aでは、企業価値算定方法として「時価純資産+営業権法」と「マルチプル法」が採用される場合が多いです。自社の価値について気になる場合は、ぜひ以下の企業価値算定シミュレーションをお試しください。
デイサービス業界がM&Aを成功させるためのポイント
デイサービス業界のM&Aを成功に導くためには、綿密な事前準備と適切な実行プロセスの管理が重要となります。以下に、特に重要なポイントを4つ解説します。
M&Aの目的を明確にし、長期的な視点で計画を立てる
デイサービスのM&Aでは、単純に事業規模を拡大することだけが目的化されがちですが、将来的な地域包括ケアの需要や自社ビジョンとの整合性をしっかり検討することが重要です。長期的な経営戦略を明確にし、買収後の具体的な運営計画まで見据えておくことで、成功率を高められます。
対象施設の財務状況やサービス品質を正確に評価する
デイサービス業界では、建物や設備の老朽化、人材確保の課題など、財務だけでは把握しきれないリスクが存在します。デューデリジェンスを通じて経営資料から現場の運営状況まで多角的に調査し、潜在的な課題を洗い出すことが後々のトラブルを防ぐうえで大切です。
従業員や利用者との信頼関係を維持するために丁寧なコミュニケーションを図る
買収後に最も重要なのは、スタッフや利用者との相互理解を深め、不安をできるだけ軽減することです。定期的なミーティングや利用者への説明会を実施し、サービス品質を高める施策を共有していくことで、より良い介護環境の実現につなげられます。
行政の手続きを理解する
デイサービス業界は介護保険制度に基づく指定事業者であるため、M&A後の許認可の承継プロセスが重要です。また、事業譲渡の場合は新規に指定申請が必要となる場合もあります。このように、公的許認可の承継に関する事項も、予め把握するようにしましょう。
適切なアドバイザーや専門家を活用する
法務、税務、会計など多方面の知見が要求されるM&Aでは、信頼できるアドバイザーを選ぶことが成功への近道です。専門家が間に入ることで、円滑な交渉や手続きが期待でき、売り手・買い手双方のリスクを最小化する対応策を立案しやすくなります。
デイサービス業界のM&A事例
最後に、デイサービス業界のM&A事例をご紹介します。自社のM&A検討時の参考にしてみましょう。
株式会社テノ.ホールディングスによる株式会社翠明のM&A
テノ.ホールディングスは2024年4月、連結子会社の株式会社フォルテを通じて、株式会社翠明が運営する介護事業(サービス付き高齢者向け住宅およびデイサービス)を事業譲受により取得することを決定しました。譲受価額は約2億800万円で、2024年5月に譲受を予定しています。
本件は同社が掲げる「tenoVISION2030」に基づき、介護領域での事業拡大を図る一環であり、育児・家事・介護の3領域を軸に女性のライフステージ支援を強化する狙いです。既に複数の介護事業への投資実績がある中、今回の譲受によりさらなる拠点拡充とサービスの多様化が期待されます。
【出典】株式会社テノ.ホールディングス「当社連結子会社における事業譲受に関するお知らせ」
エフビー介護サービス株式会社によるスマートケアタウン株式会社のM&A
エフビー介護サービス株式会社は、2023年7月にスマートケアタウン株式会社(長野県岡谷市)の全株式を取得し、子会社化しました。
スマートケアタウンは小規模多機能型居宅介護および通所介護を行う2拠点を運営しており、同社の介護理念がエフビーグループの方針と一致したことからM&Aが実現しました。
岡谷市には既存事業所がなかったことから、地理的拠点の拡充と、近隣既存施設との連携による業務効率化を見込んでいます。被買収企業は債務超過状態ではあるものの、ノウハウ導入による早期の収益改善が期待されています。介護人材不足やコスト上昇といった業界課題に対応する動きとして注目されます。
【出典】エフビー介護サービス株式会社「スマートケアタウン株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ」
SOMPOケア株式会社による株式会社エネルギア介護サービスのM&A
SOMPOケア株式会社は、2023年7月に株式会社エネルギア介護サービス(広島市)の全株式を取得し、完全子会社化しました。エネルギア介護サービスは、介護付有料老人ホームをはじめ、通所介護、訪問介護、訪問看護、居宅介護支援といった幅広いサービスを展開しており、広島エリアで地域密着型の介護事業を運営しています。
SOMPOケアは既に広島市内で施設を運営しており、今回の買収によってサービスのフルラインナップ化と地域包括ケア体制の強化を図ります。また、中国電力との協力体制構築も視野に入れ、地域課題の解決にも貢献していく方針です。今後、両社のリソース統合により、高齢化が進行する都市部での持続可能な介護サービス提供が期待されます。
【出典】SOMPOケア株式会社「株式会社エネルギア介護サービスの株式取得(子会社化)に関するお知らせ」
まとめ|デイサービス業界の動向を理解し、M&Aを成功へ
デイサービス業界のM&Aは、今後さらに活発化することが予想されます。市場動向や課題をしっかりと把握したうえで、適切な準備と計画を行うことが成功への近道です。
高齢者人口の増加や介護報酬の見直しなど、デイサービス業界を取り巻く環境はこれまで以上に変化のスピードが速まっています。M&Aはこうした課題を解決し、事業承継やサービス拡充の糸口にもなり得る選択肢です。
買い手・売り手双方がメリットだけでなくリスクも正しく把握し、丁寧にコミュニケーションを図ることで、地域社会に求められる質の高い介護サービスを維持・発展させていくことができるでしょう。
CINC Capitalは、M&A仲介協会会員および中小企業庁のM&A登録支援機関として、M&Aのご相談を受け付けております。業界歴10年以上のプロアドバイザーが、お客様の真の利益を追求します。M&Aの相談をご希望の方はお気軽にお問い合わせください。
この記事の監修者

CINC Capital取締役執行役員社長
阿部 泰士
リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。