CINC CapitalはCINC(証券コード:4378)のグループ会社です。

お電話でのご相談はこちら(無料)

03-4500-7072

CINC CapitalはCINC(証券コード:4378)のグループ会社です。

土木業界のM&A動向(2025年)メリットデメリット/事例/成功のポイントを解説

業種

  • 公開日2025.04.24
  • 更新日2025.04.24

土木業界のM&A動向(2025年)メリットデメリット/事例/成功のポイントを解説

シェアする

土木業界では、事業承継問題に直面し、存続戦略の見直しを迫られる企業が増えています。特に中小規模の建設会社では、後継者不足や経営基盤強化が大きな課題です。

「技術や信頼を次世代に引き継ぎたいが後継者がいない」「従業員の雇用を守りながら将来性を確保したい」といった悩みを抱える経営者も少なくありません。その解決策として、土木業界のM&Aが注目されています。成功には専門家や実績豊富なコンサルタントのサポートが必要です。

この記事では、M&A動向やメリットデメリット、具体的な事例、成功のポイントを解説します。正しい判断材料を提供し、意思決定を支援します。

土木業界の市場動向

土木業界の市場規模は、2025年に向けて着実な成長が見込まれています。インフラ整備や防災・減災工事の需要増加、国土強靭化計画の推進により、公共工事を中心とした発注が堅調に推移すると予想されます。

一方で、業界全体では高齢化による技術者不足や、事業承継問題を抱える中小企業の増加が顕著です。このような状況を受けて、異業種からの新規参入や業界再編の動きが活発化しており、特に建設DXの推進を目的とした企業間連携が注目を集めています。

土木業界の市場規模の推移

土木業界の市場規模は、過去10年間で着実な成長を遂げており、令和2年度には約24兆円規模まで拡大しています。

この成長の主な要因は、国土強靭化計画の継続的な推進と、老朽化したインフラの更新需要の高まりにあります。具体的には、橋梁やトンネルの補修・更新工事が全国で本格化しており、今後も安定した市場規模を維持する見通しとなります。

また、東日本大震災からの復興需要や東京オリンピック・パラリンピックに向けた大規模開発による押し上げもあり、長期的な拡大傾向が見られました。

【出典】株式会社CCイノベーション「調査レポート 土木工事業界」

土木業界の現状

土木業界は現在、インフラ整備需要の高まりと深刻な構造的課題が混在する状況にあります。

まず、市場環境としては公共工事を中心に堅調な受注が続いています。特に国土強靭化計画や防災・減災対策関連の工事が増加傾向にあり、業界全体の収益基盤は安定しています。

しかし一方で、業界特有の課題が顕在化してきました。技術者の高齢化が進み、若手人材の確保が困難な状況が続いています。また、中小企業を中心に後継者不足が深刻化しており、事業継続の危機に直面する企業が増加しているのが実態です。

土木業界が抱える課題

土木業界では、人手不足や技術継承などの深刻な課題が存在しています。ここでは、主な課題を3つご紹介します。

人手不足による現場運営の停滞

土木業界における人手不足問題は、現場の運営に重大な支障をきたしています。特に深刻なのが、若手技術者の確保が困難な状況が続いている点です。

この状況が続く背景には、少子高齢化による労働人口の減少に加え、建設現場特有の3K(きつい・汚い・危険)イメージが若年層の就職希望を妨げている実態があります。国土交通省の調査によれば、建設業就業者の約3分の1が55歳以上である一方、29歳以下は約1割にとどまっているのが現状です。

人手不足の解消には、若手人材の確保と育成に加えて、ICT施工技術の導入や業務プロセスの効率化など、複合的なアプローチが必要になります。

【出典】国土交通省「建設業を巡る現状と課題」

技術継承が進まない

土木業界では、熟練技術者の高齢化が進む一方で、若手への技術継承が円滑に進んでいません。これは、将来的な事業継続における大きなリスク要因となります。

この問題の背景には、長年の経験で培われた暗黙知を形式化することの難しさがあります。特に、現場での判断力や工法の選定、品質管理のノウハウなど、マニュアル化が困難な技能が数多く存在しているのです。

これらの問題を解決に向けた個社での取り組みには限界があり、特に中小企業では人材育成のための十分なリソースを確保できないケースも多くみられます。その結果、技術力の格差が企業間で広がりつつあるという新たな課題も浮上しています。

将来的なリスクを最小限に抑えるためには、早期に技術継承の仕組みを確立することが不可欠です。

DX(デジタルトランスフォーメーション)の遅れによる競争力の低下

土木業界のDX対応の遅れは、業界全体の競争力低下を招く深刻な課題となっています。特に、ICT技術やデジタルツールの導入が他産業と比べて大幅に遅れており、業務効率化や生産性向上の機会を逃している状況です。

具体的な課題として、建設現場でのペーパーワークが依然として多く、データの利活用が進んでいません。また、BIM/CIMなどの3次元設計ツールの導入率も低く、従来型の2次元図面による施工管理が主流となります。

特に中小企業では、DX投資の原資不足や専門人材の採用難により、デジタル化への対応が著しく遅れているのが実態です。その結果、業務効率の低下や人材確保の困難さといった悪循環に陥っているケースも少なくありません。

土木業界のM&A最新動向(2025年)

インフラ整備需要の高まりや建設DXの推進を背景に、大手企業による業界再編が活発化しています。特に、技術力や施工実績を持つ中堅・中小企業とのM&Aが活発です。ここでは、主な動向を3つご紹介します。

インフラ整備需要を背景にした大型案件の動き

2025年に向けた土木業界では、インフラ整備需要の拡大を背景に大規模なM&A案件が増加傾向にあります。特に、国土強靭化計画や老朽化対策事業の本格化により、大手建設会社による地域の有力企業とのM&Aが活発化しています。

この動きの背景には、公共工事の発注量増加に対応するための施工能力拡大があります。国内の社会インフラの多くが更新時期を迎える中、道路や橋梁、トンネルなどの大規模改修工事が各地で計画されているためです。

今後は、国の施策である「インフラ長寿命化計画」の本格展開に伴い、より大規模な再編案件が増加すると予測されます。特に、高速道路や新幹線などの基幹インフラの更新需要が、M&A市場を牽引する要因となっていくことが見込まれています。

M&A市場の拡大に伴い、企業価値評価の基準も変化しています。従来の財務指標だけでなく、保有する技術力や施工実績、地域での信用力なども重要な評価要素となっているのです。

【出典】国土交通省「インフラ長寿命化基本計画」

建設DX推進を目的とした企業間の統合

土木業界では、建設DXの推進が重要な経営課題となり、この分野での競争力強化を目的としたM&Aが活発化しています。

近年の土木業界におけるDX推進の動きは、主に3つの要因によって加速しています。

  1. 国土交通省が推進するi-Constructionの本格展開

  2. 深刻化する人手不足への対応として、ICT技術による業務効率化の必要性が高まり

  3. 建設現場のデジタル化による生産性向上

このような背景から、ICT施工技術やBIM/CIMシステムを有する企業のM&Aが増加傾向にあります。特に、デジタル技術に強みを持つベンチャー企業と従来の建設会社との統合や、システム開発企業による建設会社の買収などが目立つようになってきました。

また、建設DXの実現には、現場作業の効率化だけでなく、管理部門のデジタル化も重要な課題となっています。このため、基幹システムの統合やデータ連携基盤の構築を視野に入れた企業間統合も増加しています。

今後は、5G通信やAI技術の発展に伴い、建設現場のデジタル化がさらに加速することが予想されます。そのため、DX推進を目的としたM&Aは、土木業界における重要な経営戦略として定着していくものと考えられます。

事業承継問題を解決するためのM&A活用

経営者の高齢化が進む中、後継者不在企業の割合は年々増加傾向にあります。国土交通省の調査によると、建設業許可を持つ企業の約30%が後継者不足に直面しており、今後5年間でこの問題は更に深刻化すると予測されます。

このような状況を背景に、事業承継型M&Aの需要が高まっている要因として、以下のような背景が挙げられます。

  • 経営者の平均年齢上昇による事業承継ニーズの増加
  • 後継者育成にかかる時間的制約
  • 従業員の雇用維持と技術・ノウハウの継承ニーズ

特に注目すべき点は、M&Aを通じた事業承継が単なる経営権の譲渡にとどまらないという点です。買収企業の経営資源や ノウハウを活用することで、企業価値の向上や競争力強化につながるケースも増えています。

【売り手】土木業界がM&Aをするメリット

土木業界においてM&Aを選択する売り手企業には、複数の明確なメリットが存在します。ここでは3つのメリットについて、解説します。

後継者問題を解決し事業を存続させられる

土木業界のM&Aは、後継者不足に悩む企業にとって事業継続への有効な解決策となっています。親族内や従業員による承継が難しい場合でも、M&Aを活用することで、築き上げてきた技術やノウハウを次世代に引き継ぐことが可能になります。

特に中小規模の土木企業では、経営者の平均年齢が67歳を超え、約40%の企業が後継者不在の状態にあります。このような状況下で、M&Aは企業価値を損なうことなく事業を存続させる手段として注目を集めています。

なお、円滑な事業承継を実現するためには、M&A成立後の統合段階において、従業員とのコミュニケーションを丁寧に行うことが重要です。社員の不安を取り除き、新体制への移行をスムーズに進めることで、技術やノウハウの確実な継承が可能になるでしょう。

従業員の雇用を維持し安定を図れる

土木業界のM&Aにおいて、従業員の雇用維持は売り手企業にとって重要なメリットとなっています。経営者の多くが長年共に働いてきた従業員の生活を守ることを重視しており、M&Aを通じて安定的な雇用環境を確保できる点に大きな価値を見出しています。

特に中小規模の土木建設会社では、従業員との信頼関係が会社の重要な資産となっています。熟練技術者や若手社員が築き上げてきた技術力や現場力は、企業の競争力の源泉です。M&Aによって経営基盤が強化されることで、従業員の待遇改善や福利厚生の充実にもつながります。

具体的なメリットとして、買収企業の資本力を活用した給与水準の向上や、教育研修制度の充実が期待できます。また、大手企業グループの一員となることで、従業員のキャリアパスが広がり、モチベーション向上にもつながるでしょう。

大手企業の傘下に入ることで経営基盤を強化できる

大手企業の資本力や信用力を活用することで、事業運営の安定性が大きく向上します。具体的には、資金調達力の強化により、最新の建設機械の導入やICT施工への投資が容易になり、競争力の向上につながります。

また、大手企業が持つ経営ノウハウや業務効率化のシステムを活用できることも大きな利点です。例えば、人事制度の整備や従業員教育プログラムの充実化、さらには建設DXの推進なども、親会社のリソースを活用することで実現が可能になります。

さらに、グループ企業間でのシナジー効果により、経営効率の向上も期待できます。資材調達や重機のリース、バックオフィス業務の共有化など、様々な面でコストの最適化を図ることができます。

【売り手】土木業界がM&Aをするデメリット

続いて、土木業界がM&Aをするデメリットを解説します。メリットを発揮するためにも、デメリットを理解しておきましょう。

従業員の不安や反発が発生するリスク

土木業界のM&Aにおいて、売り手企業の従業員が抱く不安や反発は、取引の成否を左右する重要な要素です。特に長年勤務してきたベテラン社員にとって、会社の売却は大きな環境変化を意味するため、慎重な対応が求められます。

従業員が感じる不安は主に待遇面や職場環境の変化に関するものです。具体的には、給与体系の見直しや福利厚生の変更、さらには配置転換や役職の変更などが懸念材料となっています。また、新しい経営陣との関係構築や、異なる企業文化への適応に対する心理的な負担も大きな不安要因となります。

このような状況に対して、クロージング後の統合プロセスにおいて従業員の不安を軽減し、円滑な統合を実現するためには、丁寧な説明と情報共有や、 雇用条件の維持・保証に関する明確な方針提示が重要です。

売却価格が期待よりも低くなる場合がある

土木業界のM&Aにおいて、売却価格が期待を下回るケースが少なくありません。具体的には、以下のような事象や課題が生じる場合があります。

  1. 土木業界の収益性や将来性に関する買い手と売り手の認識の違い
  2. 受注案件の確実性や工事進行基準による収益認識の評価の難しさ
  3. 保有する技術や顧客基盤、地域での信用力など無形資産の価値評価の難しさ
  4. 人的資本への依存度が高い業界特性と、それに伴うリスク評価の違い

自社の価値について気になる場合は、ぜひ以下の企業価値算定シミュレーションをお試しください。

【参考】企業価値算定シミュレーション

取引先や顧客からの信頼を損なう恐れがある

M&Aを実施する際、取引先や顧客との信頼関係が損なわれるリスクは避けて通れない重要な課題です。特に土木業界では、長年にわたって築き上げてきた地域との関係性が事業の基盤となっているため、その影響は深刻になる可能性があります。

この問題が発生する主な要因は、M&A後の経営方針の変更や、これまでの取引関係が継続されるかという不安にあります。特に地方自治体や地域の有力企業との取引では、経営権の移転によって信用力が低下するリスクが懸念されます。

このような事態を防ぐためには、M&Aクロージング後、速やかに主要取引先への丁寧な説明と適切な情報開示を行うことが重要です。特に、経営方針の継続性や地域貢献への姿勢について、明確なメッセージを発信することが重要になります。

さらに、M&A後の組織体制や責任者の配置についても、取引先の不安を解消できるような配慮が必要です。例えば、地域との関係構築に長けた幹部社員を要職に残すことで、これまでの信頼関係を維持しやすくなります。

【買い手】土木業界をM&Aするメリットデメリット

続いて、買い手側にとってのメリット・デメリットを見ていきましょう。

メリット

人材不足の解消や即戦力の確保が可能になる

土木業界でM&Aを実施する買い手企業にとって、最大のメリットは人材確保の即効性にあります。業界全体で深刻化する人手不足の中、必要な技術者をスピーディーに採用できる点は、企業の競争力向上に直結するためです。

特に熟練技術者の確保は、通常の採用活動では難しい課題となっています。M&Aを通じて、長年の経験と専門知識を持つベテラン社員を一括で迎え入れることができれば、技術力の向上にも大きく貢献します。

売り手側企業が持つ、資格保有者の存在も重要なポイントです。土木業界では施工管理技士や建設機械の運転資格など、さまざまな専門資格が必要とされます。これらの有資格者を確保することで、新規案件の受注機会を広げることが可能になります。

新たな市場や地域へ進出する足掛かりを得られる

土木業界のM&Aでは、新たな市場や地域への進出が重要な戦略的メリットとなっています。地理的な事業エリアの拡大や、新規工事分野への参入により、企業の成長機会を大きく広げることができます。

特に地方の中堅・中小企業をM&Aすることで、その地域での施工実績や地元発注者との信頼関係を即座に獲得できる点は大きな魅力となっているでしょう。例えば、都市部を中心に事業展開していた企業が、地方の優良企業を買収することで、地域に密着した営業基盤を構築できます。

新規市場への参入という観点では、専門工事や特殊技術を持つ企業のM&Aも有効な手段です。橋梁補修や地盤改良、トンネル工事といった特定分野に強みを持つ企業を買収することで、技術的な参入障壁の高い市場にもスムーズに進出することが可能になります。

デメリット

M&Aに伴う初期投資が財務負担となる場合がある

土木業界におけるM&Aでは、初期投資による財務負担が大きな課題となることがあります。特に買い手企業にとって、多額の買収資金の調達と返済が経営を圧迫するリスクが存在します。

企業価値評価額に加えて、統合後のシステム投資やインフラ整備費用、人材教育費用なども必要となります。特に建設DXへの対応が遅れている企業を買収する場合、追加的な設備投資負担が発生する可能性が高くなります。

財務負担を軽減するためには、段階的な投資計画の策定や、補助金・助成金の活用など、慎重な資金計画が求められます。また、シナジー効果の早期実現を図ることで、投資回収期間を短縮することも重要な課題となります。

買収先との企業文化や価値観の違いが問題になる

M&Aを実施する際の企業文化や価値観の違いは、統合後の事業運営に大きな影響を及ぼす可能性があります。特に土木業界では、地域に根ざした企業文化や独自の価値観が強く、これらの違いが統合プロセスの障害となることがあります。

具体的な問題として、意思決定の方法や現場管理のスタイル、従業員の評価基準などの違いが挙げられます。例えば、大手企業の標準化された管理手法と、中小企業の柔軟な現場対応との間でコンフリクトが生じやすい傾向にあります。

このような問題を防ぐためには、統合前の段階から両社の企業文化や価値観を詳細に分析し、違いを明確に認識しておくことが重要です。その上で、段階的な統合プロセスを設計し、相互理解を深めながら新しい企業文化を構築していく必要があります。

土木業界のM&A相場について

M&Aに際してもっとも気になる部分といえるのが価格相場ではないでしょうか。以下では、○○業界のM&A相場に関する情報を解説します。

価格は一概には決められない

M&Aの価格は多様な要因によって変動するため、一概に相場を提示するのは難しいものの、類似の取引事例などを参考に算定される場合があります。価格に影響を与える要因として、「会社の規模」「収益性」「将来性」「負債」「ブランド力」などが挙げられます。

M&Aにおける土木業界の企業価値の算出方法

M&Aの譲渡価格は、「DCF法」「類似会社比較法」「時価純資産法」など複数の算定方法を状況に応じて使い分け、あるいは組み合わせて算出します。自社の価値について気になる場合は、ぜひ以下の企業価値算定シミュレーションをお試しください。

【参考】企業価値算定シミュレーション

土木業界がM&Aを成功させるためのポイント

土木業界のM&Aを成功に導くためには、綿密な事前準備と適切な実行プロセスの管理が重要となります。以下に、特に重要なポイントを4つ解説します。

買収先企業の財務状況や経営実態を徹底的に調査する

土木業界のM&Aでは、買収先企業の徹底的な調査が成功の鍵を握ります。財務諸表の確認だけでなく、施工実績や技術力、人材の質など、多角的な視点での実態把握が重要になります。

買収前の調査(デューデリジェンス)では、法務・財務・税務の3つの観点から専門家による精査が必須となります。特に土木業界では、工事の進行基準による収益認識や、未収金の回収可能性、偶発債務の有無などを重点的にチェックする必要があります。

具体的な調査項目として、以下の要素を確実に確認していきます。

  • 過去5年間の財務諸表と経営指標の推移
  • 工事受注状況と完工高の内訳分析
  • 保有設備や建設機械の稼働状況
  • 技術者の資格保有状況と年齢構成
  • 施工実績と品質管理体制
  • 許認可の取得状況と更新時期

また、土木業界特有の視点として、施工中の工事案件における瑕疵担保責任や、環境関連の法令遵守状況なども慎重に確認が必要です。これらの調査結果は、買収価格の算定や統合後の経営計画策定にも大きく影響してきます。

現場視察やヒアリングを通じて、書面だけでは見えてこない実態を把握することも欠かせません。特に技術者の定着率や現場の安全管理体制、地域との関係性などは、実地調査によって初めて見えてくる部分が多いのです。

企業文化や従業員の雇用条件を事前に把握する

M&Aの成功には、企業文化や従業員の雇用条件の把握が重要な鍵を握ります。

買収先企業の企業文化については、経営理念や行動規範、意思決定プロセス、社内コミュニケーションの特徴などを詳細に把握する必要があります。特に土木業界では、長年培われてきた職人気質や現場重視の価値観が根付いていることが多く、これらへの配慮が統合後の成功を左右します。

雇用条件に関しては、給与体系や福利厚生制度、労働時間、休暇制度など、細部にわたる確認が重要です。土木業界特有の手当や、現場作業に関連する各種手当についても、慎重な検討が必要となります。

クロージング後のPMI(統合)段階において、キーパーソンとの面談を通じて企業文化の実態を把握するよう努めましょう。

また、統合後のビジョンを明確に示し、従業員の不安を払拭することも重要なポイントとなります。特に、技術者不足が深刻な土木業界では、優秀な人材の流出を防ぐための施策を具体的に検討しておく必要があります。

取引先への丁寧な説明と信頼構築を行う

取引先との信頼関係維持が不可欠です。特に土木業界では、長年築き上げてきた人的ネットワークや技術力が重要な資産となるため、丁寧なコミュニケーションが求められます。

M&A完了後に、事業継続の安定性や今後の方針について、個別に説明の機会を設けることが効果的です。特に、主要取引先や協力会社には、M&A後も取引関係が継続されることを丁寧に伝え、信頼関係を維持することが大切です。

また、M&A後の統合作業では、両社の強みを活かしながら、段階的に組織体制を構築していくことが求められます。急激な変更は避け、取引先が新体制に順応できるよう、十分な準備期間を設けることが望ましいでしょう。

適切なアドバイザーや専門家を活用する

土木業界のM&Aを成功させるためには、専門家の適切なサポートが不可欠です。特に業界特有の課題や規制への対応、企業価値評価など、専門的な知識とノウハウが必要となります。

M&A専門のアドバイザーを活用することで、以下のような具体的なメリットが得られます。まず、財務や法務の専門家による適切な企業価値評価と、取引条件の交渉サポートを受けることができます。また、土木業界に精通した専門家からは、許認可や技術的要件に関する適切なアドバイスを得ることが可能になります。

ただし、アドバイザーの選定には慎重な検討が必要です。土木業界での実績や、提供できるサービスの範囲、報酬体系などを十分に確認したうえで、自社のニーズに合った専門家を選ぶことが重要になります。

土木業界のM&A事例

最後に、土木業界のM&A事例をご紹介します。自社のM&A検討時の参考にしてみましょう。

コンセックによる丸金建設のM&A

2023年8月31日、コンセックは岡山県の建設会社である丸金建設の全株式を取得し、子会社化することを決定しました。なお、取得株式のうち10%は、コンセックの子会社である山陰建設サービスが取得する予定です。

コンセックは、土木・建設関連事業の拡大を目的としてM&Aを積極的に推進しています。丸金建設が長年培ってきた地域に根ざした公共工事の実績や信用力を生かし、グループ内の技術交流や相互支援体制を強化してまいります。これにより、より安定した事業基盤の確立と、地域密着型の工事展開が可能となることを見込んでいます。

【出典】株式会社コンセック「株式会社丸金建設の株式の取得(子会社化)に関するお知らせ」

サイタホールディングスによる朝倉生コンクリートのM&A

サイタホールディングスは、2024年6月24日、持分法適用関連会社である朝倉生コンクリートの株式を追加取得し、連結子会社化することを決定しました。

朝倉生コンクリートは、福岡県朝倉市を拠点に、生コンクリートや窯業建材石材の製造・販売を手がけています。今回の連結子会社化により、経営の安定性を高め、事業のさらなる強化を図るとともに、グループ全体の業績向上に貢献することを目指します。

本件による2024年6月期の業績への影響は軽微であると見込まれています。

【出典】サイタホールディングス株式会社「持分法適用関連会社の株式追加取得(連結子会社化)に関するお知らせ」

日本乾溜工業の大邦興産によるM&A

日本乾溜工業は、2019年4月1日付で有限会社大邦興産(同日より株式会社大邦興産に社名変更予定)の株式を取得し、子会社化することを決定しました。

大邦興産は、熊本県を拠点に建設事業を展開し、官民双方に一定の販路を持つ企業です。今回の子会社化により、日本乾溜工業グループとしての受注機会を拡大し、建設事業における技術力の強化を図る狙いがあります。

本件による2019年9月期の業績への影響は軽微である見込みです。

【出典】日本乾溜工業株式会社「有限会社大邦興産の株式取得(子会社化)に関するお知らせ」

まとめ|土木業界のM&A動向を抑えてM&Aを成功させましょう

土木業界のM&Aを成功させるためには、市場動向の把握と適切な対応が欠かせません。

また、M&Aは単なる企業の売買ではなく、両社の価値を高める成長戦略として捉えることが重要です。土木業界の発展と、そこで働く人々の未来のために、戦略的なM&Aを推進していきましょう。

CINC Capitalは、M&A仲介協会会員および中小企業庁のM&A登録支援機関として、M&Aのご相談を受け付けております。業界歴10年以上のプロアドバイザーが、お客様の真の利益を追求します。M&Aの相談をご希望の方はお気軽にお問い合わせください。

この記事の監修者

阿部 泰士

CINC Capital取締役執行役員社長

阿部 泰士

リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。

OTHERS 関連コラム すべてのコラムを見る

SEMINARセミナー すべてのセミナーを見る

“経営者”のためのM&A研究会 ~単独成長・IPO・M&A 選ぶべき道~
  • M&A体験談

“経営者”のためのM&A研究会 ~単独成長・IPO・M&A 選ぶべき道~

2025/06/18(水)14:00〜18:30

オンライン

申し込む
【60代の経営者様向け】会社売却準備を徹底解説
  • Tips

【60代の経営者様向け】会社売却準備を徹底解説

2025/05/13(火)17:00〜18:00

オンライン

申し込む
最大800万円!?手残りを最大化するための「M&A補助金」~申請前に押さえるべきポイントを徹底解説~
  • Tips

最大800万円!?手残りを最大化するための「M&A補助金」~申請前に押さえるべきポイントを徹底解説~

2025/04/22(火)17:00〜18:00

オンライン

申し込む

CONTACTお問い合わせ

秘密厳守いたします。お気軽にご相談ください。最新の業界動向・M&A相場などわかり易くご説明させていただきます。