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化学業界のM&A動向は?事例や成功のポイントを解説【2025年】

業種

  • 公開日2025.09.29

化学業界のM&A動向は?事例や成功のポイントを解説【2025年】

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「化学業界のM&A、どう進めればいいのか分からない」とお悩みではありませんか。

脱炭素への対応や原材料価格の高騰、グローバル競争の激化など、近年の業界環境は大きく変化しています。

本記事では、日本の化学業界におけるM&Aの最新トレンドと成功のための具体的なポイントを紹介します。

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化学業界の市場動向

日本の化学製造業は、2020年頃に一時的な縮小傾向が見られましたが、2021年以降は一定の回復基調にあります。

近年は約40兆円規模で推移しており、大きな成長というよりは横ばいに近い状況です。

2022年も約46兆円と成長が続いています。

しかし、2023年になると生産指数は前年同月比で5.1%減少し、生産は横ばいの状態が続いている状況です。

業界の主力である石油化学製品は、半導体や自動車分野の需要回復によって支えられています。

一方で、電子材料や高機能樹脂などの高付加価値製品は需要が堅調に伸びており、今後はこうした成長分野への注力が進むと予測されています。

M&Aや事業承継は、まず自社の企業価値を正しく把握することから始まります。

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化学業界が抱えている課題

日本の化学業界は、市場の成熟化とともにさまざまな課題を抱えています。

特に「環境対応」「コスト構造」「グローバル競争」の3点は大きな要因です。

本章では、それぞれの課題が企業に与える影響を詳しく解説します。

脱炭素対応と環境規制への対応

化学メーカーは、2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、既存のプラントを大規模に改修する必要があります。

例えば、国内の大手企業では、ナフサ分解炉の熱源をアンモニアやバイオマスに切り替える計画を進めています。

こうした取り組みには、数十億円から100億円以上の初期投資がかかる見込みです。

そのため、環境負荷の測定や、土壌・排水・廃棄物の管理に詳しい企業が、M&Aの有力な候補として注目されています。

原材料価格の高騰による収益圧迫

原油や天然ガスの価格は、政治や経済の影響で大きく変動し、化学メーカーの原料コストに大きな影響を与えています。

2022年には原油価格が数倍に上昇し、ナフサ価格も急騰しました。

汎用品では価格転嫁が進んだ一方、機能性化学品では転嫁が難しく、利益率が大きく下がりました。

こうした中、原材料価格の変動に対応できる供給体制や、原料価格に連動して製品価格を調整する「フォーミュラ制」を導入している企業のM&A需要が高まっています。

汎用化学品の収益性低下と国際競争

中国を中心とする新興国がエチレンの生産を拡大したことで、アジア市場は供給過多となり、日本の化学工場では稼働率が低下し、収益性も悪化しています。

国内のエチレン生産量は長期的に減少傾向にあり、近年では生産調整の影響もあり低水準が続いています。

こうした状況から、低採算事業を整理し、高付加価値分野へ転換できる企業がM&Aの有力な対象となっています。

化学業界のM&A最新動向(2025年)

2025年現在、化学業界では企業の再編や成長戦略の一環として、M&Aの動きが活発化しています。

本章では、主に3つの主要な動向について解説します。

中小企業を巻き込んだ業界再編

大手化学メーカーが非中核事業の整理を進める中で、中小企業はM&Aを通じて技術や設備を取得し、新たな事業分野への転換を進めています。

例えば、三井化学は石油化学部門を分社化し、一部を中小企業に譲渡する形で再編を進めています。

こうした動きは、大手にとっては事業の選択と集中を実現しやすく、中小企業にとっては成長のチャンスです。

その結果、業界全体で効率化と活性化が進み、構造転換が加速しています。

大手企業によるポートフォリオ再構築M&A

石油化学などの汎用品分野では収益性が下がっており、それを受けて大手化学メーカーは非コア事業を売却し、収益性の高い分野への投資にシフトしています。

三井化学や住友化学、旭化成といった企業は、石化事業の統廃合を進めながら、電子材料やバイオ分野など将来性のある領域を中心にM&Aを強化しています。

そのため、近年は大型の買収は減っているものの、成長分野を対象とした中規模のM&Aが今後も増えていくと予想されています。

高度な技術・拠点を狙った戦略的M&A

化学業界では、高付加価値分野での競争力を高めるために、技術や特許、製造拠点の獲得を目的としたM&Aが増加傾向です。

例えばResonacは、Hitachi Chemicalとの統合後、半導体材料分野に注力しており、今後は必要な技術を持つ企業との提携や買収も視野に入れて製品ラインの強化を図る方針を示しています。

こうしたM&Aは、規模の拡大よりも技術力や知財、市場での優位性を重視する傾向が強まっています。

化学業界でM&Aを成功させるためのポイント

化学業界でM&Aを成功させるためには、業界特有の構造や課題を理解したうえで、複数の視点から戦略を立てることが欠かせません。

本章では、特に押さえておきたい5つのポイントを詳しく解説します。

環境・安全リスクを含む専門的デューデリジェンス

買収対象のプラントには、土壌汚染や排水処理、有害物質管理の問題が潜んでいることがあります。

環境デューデリジェンスを怠ると、買収後に予期せぬ対策費用や法的リスクが発生し、企業価値を損なう恐れがあります。

一方で、専門家による調査でリスクを事前に把握すれば、契約内容に反映して回避できます。

環境・安全リスクを正確に評価し、統合計画に反映することが、化学業界におけるM&A成功のポイントです。

技術・特許・設備の戦略的統合計画

化学業界では、独自の製法や品質管理、耐久技術などのコア技術が企業価値を支えています。

買収計画が不十分だと、設備の重複や人材の流出が起きる可能性があります。

これを防ぐには、技術や設備の機能を事前に分析し、自社とのシナジーや活用方法を明確にすることが重要です。

統合計画を事前に描くことで、買収後のPMIを円滑に進め、早期の成果につなげることができます。

海外拠点・グローバル展開を見据えた統合戦略

国内市場の成長が限られる中、東南アジアや欧州での拠点獲得を目的としたM&Aが増えています。

ただし、現地では規制や品質基準、物流体制などの課題があります。

買収前にこれらを十分に把握し、統合計画を買収条件に組み込むことが重要です。

あらかじめ移行期間を明確にすることで、買収後の混乱を防ぎ、統合効果を最大限に高めることができます。

カスタマーリレーション・販売ネットワークの融合戦略

化学製品は産業や規制対応が求められる用途が多く、販売チャネルや技術サポート体制が非常に重要です。

M&A後に顧客対応が不十分になると、信頼を失うリスクがあります。

これを防ぐには、買収前から担当者の継続雇用や顧客対応の引き継ぎ計画を立てる必要があります。

さらに、両社の販売網やサポート体制を段階的に統合し、安定したサービス提供を維持することが大切です。

事業承継・技術継承ニーズの的確把握

多くの中小化学メーカーでは、後継者がいないことや、熟練技術者の高齢化が大きな課題になっています。

こうした企業を買収する場合は、技術の継承や人材の定着をスムーズに進めるために、事前に処遇制度や研修体制、キャリアの仕組みを整えておくことが重要です。

技術者が安心して働き続けられる環境をつくることで、技術の流出を防ぎ、買収の効果を長く維持することができます。

化学業界のM&A事例

最後に化学業界の最近の事例を紹介いたします。

AURELIUS 社によるFET 社のM&A

レゾナック・ホールディングスは、連結子会社レゾナックを通じて、完全子会社であるFiamm Energy Technology(FET社)の全株式を、欧州の投資ファンドAURELIUSグループ傘下の特別目的会社に譲渡する契約を締結しました。

FET社は欧州を中心に自動車用・産業用鉛蓄電池で高いシェアを持ち、旧日立化成が2017年に買収後、事業拡大を図ってきました。

しかし、同社は機能性化学メーカーとしての中長期ビジョンに基づき事業ポートフォリオを見直しており、非中核事業の切り離しとして今回の譲渡に至りました。

専門性を持つAURELIUSの下で、FET社のさらなる成長が期待されます。本取引により、レゾナックは約250億円の損失を計上する予定です。

【出典】株式会社レゾナック・ホールディングス『連結子会社における株式譲渡(孫会社の異動)による欧州自動車用および産業用鉛蓄電池事業の譲渡に関するお知らせ』

住友ベークライト株式会社によるAGC株式会社の事業譲渡

住友ベークライト株式会社は2025年7月、AGC株式会社およびその子会社AGCポリカーボネートが手掛けるポリカーボネート事業を譲り受けることで合意しました。

対象事業には建材、産業用途、電子分野向けの製品が含まれ、特にブランド力を持つ「ツインカーボ®」をはじめとする製品群の販売体制を強化し、データセンター市場などでのシェア拡大を狙います。

住友ベークライトは中期経営計画において「ニッチ&トップシェア」を掲げており、本件はその戦略の一環として、モビリティ領域での競争力強化に直結するものです。

特に自動車の運転支援分野では、両社が持つ光学シート技術を融合させることでシナジー創出が期待されています。

今回の事業譲受により、住友ベークライトは既存の製品ポートフォリオを拡充しつつ、建材から先端分野まで幅広い市場での競争優位性を高める動きを加速させると考えられます。

【出典】住友ベークライト株式会社『AGCグループのポリカーボネート事業の事業譲受について』

神戸天然物化学株式会社によるNapaJen Pharma, Inc.のM&A

2024年3月、産業革新投資機構(INCJ)は、保有していたNapaJen Pharma, Inc.(米国ワシントン州)の全株式を神戸天然物化学株式会社へ譲渡しました。

NapaJen Pharmaは2004年設立のバイオベンチャーで、免疫細胞を標的とする独自のドラッグデリバリーシステム(DDS)技術を活用し、核酸医薬の開発に取り組んできました。

これまでINCJは累計3,300万ドルを出資し、急性移植片対宿主病(aGvHD)予防薬の臨床試験やRSウイルスワクチン開発などを支援してきました。

今回、創薬技術の実用化と事業継続を見据え、既存株主で有機化合物の受託開発を手掛ける神戸天然物化学への譲渡が最適と判断されました。

本件は、バイオベンチャーが研究成果を臨床段階まで進展させた後、製造・開発に強みを持つ企業に承継される好例といえ、核酸医薬の商業化に向けた重要なステップと位置付けられます。

【出典】株式会社INCJ『NapaJen Pharma, Inc.の株式譲渡について』

化学業界のM&A動向を押さえてM&Aを成功させましょう

日本の化学業界は、脱炭素化や国際競争、事業構造の転換といった複雑な課題に直面しています。

その中でM&Aは、非中核事業の整理や高付加価値分野への集中、海外拠点の統合を進める有効な手段となっています。

企業は環境・技術・顧客・人材など多角的な観点から、最適なM&Aの相手と条件を見極めることが求められます。

CINC Capitalでは業界に精通した支援体制で、最適なM&A戦略をサポートしています。

化学業界のM&Aを考えている方はお気軽にご相談ください。

この記事の監修者

阿部 泰士

CINC Capital取締役執行役員社長

阿部 泰士

リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。

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