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会計事務所業界のM&A動向(2025年)メリットデメリット/事例/成功のポイントを解説

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  • 公開日2025.04.07
  • 更新日2025.04.09

会計事務所業界のM&A動向(2025年)メリットデメリット/事例/成功のポイントを解説

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経営者の高齢化や後継者不足を背景に、会計事務所業界では事業継続に向けた戦略的なM&Aが増加しています。特に大手税理士法人による中小事務所の買収や、地方での事務所統合が目立っており、この動きはますます加速する見込みです。

本記事では、会計事務所業界におけるM&Aの最新動向から、メリット・デメリット、成功のポイントを解説します。

会計事務所業界の市場動向

総務省が2023に公表した「令和3年経済センサス」の資料によると、2021年における公認会計士事務所および税理士事務所の売上高は約1兆9,023億円、事業所数は30,479件でした。

会計事務所業界では、市場規模の拡大と専門サービスの多様化が進む一方で、さまざまな経営課題が顕在化しています。代表的なのが、経営者の高齢化問題です。業界には60代以上の経営者が運営する会計事務所が多く、自身の後継者となる若手人材が見つからないために、廃業を検討しているケースが少なくありません。

このような状況下で、M&Aは事業承継の有効な選択肢として注目されています。たとえば、大手会計事務所の傘下に入ることで、経営基盤の安定化や雇用維持、従業員のモチベーション向上などが期待できるでしょう。

【出典】総務省統計局「令和3年経済センサス‐活動調査 産業別集計(サービス関連産業に関する集計) 結果の概要」

会計事務所業界が抱える課題

多くの会計事務所では後継者の選定・育成が追いつかず、事業継続の危機に直面しています。ここでは、日本の会計事務所業界が抱える課題をご紹介します。

後継者不足と事業承継問題

会計事務所業界では、60歳以上の税理士が多く、平均年齢が年々高まっている状況です。また、多くの会計事務所で後継者の選定・育成が追いつかず、事業継続の危機に直面しています。後継者候補を確保できず、M&Aで事業承継を進める事務所が少なくありません。

専門人材の確保と育成の難しさ

中小規模の会計事務所では、人員に対して業務量が過多となり、常態的な人手不足に陥っています。社内の研修制度や教育体制が整備されていないことや、新人育成にかける時間的余裕がないことも問題です。このような状況を打開するため、M&Aを通じて専門人材を確保する動きが活発化しています。

業務のデジタル化に対応できない

近年、「AI(人工知能)」や「RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション」の普及により、従来の記帳代行や税務申告業務の自動化が急速に進んでいます。こうした変化に対応するため、会計事務所ではデジタル技術を活用した業務改革に迫られています。しかし、多くの事務所が技術導入のための投資や人材確保に難航している状況です。

会計事務所業界のM&A最新動向(2025年)

ここでは、日本の会計事務所業界のM&A最新動向を見ていきます。買い手と売り手の双方が、未来を見据えてM&Aを検討しましょう。

大手税理士法人による中小会計事務所の買収が進行

「Big4」と呼ばれる大手会計事務所グループは、上場企業の監査に加えて税務・会計分野の包括的なサービス提供を目指し、中小規模事務所の買収を積極的に進めています。このほかにも、M&Aによる大手税理士法人同士の経営統合のような、大型案件も増加傾向にあります。

地方の会計事務所の統合が活発化

地方の会計事務所を中心に、後継者問題の解決とサービス品質向上を目的とした経営統合が加速しています。各事務所の専門性や地域特性を生かしながら、より高度なサービス提供体制の確立に向けたM&Aの事例が多くなっている状況です。

IT企業との提携によるDX推進

クラウド会計ソフトやAIを導入するために、IT企業との戦略的提携・経営統合が増えています。記帳代行や税務申告業務の自動化を進めることで、業務効率化を図る狙いです。

これにともない、従来の記帳代行や税務申告といった定型的な税理士業務の価値が低下しつつあります。全国の会計事務所は、定型業務中心のビジネスモデルから、より付加価値の高いコンサルティングサービスへと転換を迫られているといえるでしょう。

会計事務所がM&Aをするメリット

ここでは、会計事務所がM&Aをするメリットをご紹介します。主に売り手目線のメリットをお伝えするため、売却を検討中の方はぜひ参考にしてください。

後継者問題の解決

M&Aは、中小事務所特有の後継者問題を解決する有効な手段の一つです。適切な買い手が見つかれば、長年蓄積してきたノウハウ・顧客基盤を、税理士資格を有する新たな経営者へと移行できます。

廃業リスクを回避しつつ、既存の顧問先へのサービス継続と、従来の事業運営体制の維持を両立できるのは大きなメリットです。

従業員の雇用を守れる

M&Aのプロセスでは、従来の雇用契約がそのまま引き継がれるよう、買い手側と雇用条件の継続について協議するのが一般的です。交渉次第では、従業員の突然の解雇や待遇の変更といった懸念を払拭できる可能性があります。

顧問先を引き継げる

M&Aスキームによっては、売り手側の会計事務所が保有する顧問先を、そのまま新体制へ引き継げる可能性があります。スムーズに移行できれば、顧問先との関係悪化リスクが減少し、業務引継ぎにともなう負担が大幅に軽減されます。

会計事務所がM&Aをするデメリット

会計事務所のM&Aには、以下のような実務的な課題が存在します。ここでは、M&Aのリスクやデメリット、注意点を売り手側の視点でご紹介します。

財務的な負担が大きい

M&Aに伴い発生する費用負担は決して小さくありません。例えば、デューデリジェンスや契約関連の費用、システム統合費用など、予想以上の支出が必要となることがあります。特に中小規模の会計事務所にとって、財務的な負担の大きさは無視できないでしょう。

また、M&Aは買い手の選定や交渉などを経て、全てのプロセスが完了するまでに数カ月から1年以上を要することも珍しくありません。多くの時間を要することから、通常の業務に支障をきたす可能性があります。

クライアントの離脱リスク

M&A後の事業継続において懸念されるのが、既存クライアントの離脱です。会計事務所では顧客との信頼関係が非常に重視され、関係性が崩れてしまうと事業価値が損なわれる可能性があります。M&A後も長年の付き合いがある顧問先企業との関係維持へ向けた取り組みが重要です。

従業員の離職リスク

M&A後の経営方針の違いから、従業員が一斉に離職する可能性があります。特に、ベテラン税理士や公認会計士の離職は、クライアントの流出にも直結する深刻な問題であるため注意が必要です。

会計事務所がM&Aを成功させるためのポイント

ここでは、会計事務所がM&Aを成功させるための3つのポイントをご紹介します。

適切な買い手とマッチングできるか

会計事務所のM&Aでは、双方の経営理念や将来ビジョンの一致が何より重要です。単なる規模拡大や事業承継だけでなく、既存クライアントとの信頼関係を維持するとともに、長期的な成長戦略の共有が求められます。

従業員の処遇を考慮できるか

従業員の雇用継続と待遇維持は、M&Aの成功を左右します。多くの買い手は優秀な人材の確保を重視しているので、交渉では既存従業員の雇用・処遇を考慮するよう努めましょう。処遇の悪化は離職やモチベーション低下につながるため、買い手との交渉が重要となります。

引き継ぎ計画はスムーズに実行する

税務申告や決算業務などの継続性を確保しつつ、新体制への移行を段階的に進めることが重要です。特に譲渡側の代表税理士には一定期間の関与を求めるケースが多く、これにより顧客が離脱するリスクを最小限に抑えられます。

会計事務所のM&A事例

株式会社マネーフォワードによる株式会社シャトクのM&A

2024年11月27日、株式会社マネーフォワード(東証プライム上場)は、株式会社シャトクの全株式を取得し、完全子会社化することを発表しました。本M&Aにより、マネーフォワードはSaaSプロダクトのラインアップを拡充し、中小企業向けの福利厚生支援事業を強化します。

シャトク社は、中小企業・中堅企業向けの**SaaS型社宅管理システム「シャトク福利厚生賃貸」**を提供。企業の社宅制度導入から運用支援まで一貫したサービスを展開しています。一方、マネーフォワードは、会計・経理・人事労務などのSaaSサービス「マネーフォワード クラウド」を提供し、同様のターゲット層を持つ顧客基盤を有しています。

本M&Aにより、シャトク社のサービスをマネーフォワードのネットワークを活用して拡販し、企業の福利厚生支援領域を強化。また、同社のSaaS事業との統合により、経理・人事・労務のデータ連携が可能となり、企業の業務効率化をさらに推進すると見られます。

SaaS市場では、特定業務に特化したツールの統合が進んでおり、本M&Aはその流れに沿った戦略的な動きといえます。マネーフォワードは、企業向けSaaSプラットフォームのさらなる強化を図ることで、競争力の向上を目指すと考えられます。

【出典】株式会社マネーフォワード「株式会社シャトクの株式の取得(完全子会社化)に関するお知らせ」

税理士法人TOTALと井上総合会計事務所のM&A

2013年4月1日、税理士法人TOTALは、東京都新宿区に拠点を置く井上総合会計事務所(代表:井上貴司税理士)と合併しました。本合併により、TOTALは約70名規模の総合士業事務所へと拡大し、より幅広いサービス提供が可能となりました。

井上総合会計事務所は創業24年の実績を持ち、特に医療機関向けの経営コンサルティングや相続対策に強みを持つ事務所です。一方、税理士法人TOTALは、起業支援・中堅企業向けサポート、資産税対策、医療機関支援を主要業務として展開しており、今回の合併によって医療分野のサポート体制がさらに強化される見込みです。

また、合併に伴い、税理士法人TOTALの新宿本部は新宿三丁目エリアへ移転し、業務拡大への対応を進めました。井上税理士は合併後も引退せず、社員税理士(パートナー)として引き続き営業活動を継続し、顧客との関係構築に尽力するとしています。

会計業界では、専門性の強化や業務効率向上を目的とした事務所の統合が進んでおり、本合併もその一環といえます。税理士法人TOTALは、井上総合会計事務所の専門性を取り入れることで、より総合的な士業サービスを提供し、さらなる成長を目指すと考えられます。

【出典】税理士法人TOTAL「税理士法人TOTALは井上総合会計事務所と合併します。」

まとめ|会計事務所のM&A動向を押さえてM&Aを成功させましょう

会計事務所を取り巻く環境が急速に変化する中、M&Aは重要な経営判断の一つといえます。その成功には専門知識が不可欠で、合わせて会計事務所特有の課題や業界動向を熟知した専門家のサポートも欠かせません。まずはM&A仲介会社に相談し、事業譲渡や株式譲渡、経営統合に向けた準備を始めましょう。

CINC Capitalは、M&A仲介協会会員および中小企業庁のM&A登録支援機関として、M&Aのご相談を受け付けております。業界歴10年以上のプロアドバイザーが、お客様の真の利益を追求します。M&Aの相談をご希望の方はお気軽にお問い合わせください。

この記事の監修者

阿部 泰士

CINC Capital取締役執行役員社長

阿部 泰士

リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。

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