CINC CapitalはCINC(証券コード:4378)のグループ会社です。

お電話でのご相談はこちら(無料)

03-4500-7072

CINC CapitalはCINC(証券コード:4378)のグループ会社です。

酒屋業界のM&A動向(2025年)メリットデメリット/事例/成功のポイントを解説

業種

  • 公開日2025.03.27
  • 更新日2025.04.02

酒屋業界のM&A動向(2025年)メリットデメリット/事例/成功のポイントを解説

シェアする

昨今の酒屋業界は、少子高齢化・消費者ニーズの多様化・EC市場の拡大など、従来のビジネスモデルでは対応が難しい課題に直面しています。一方で、事業譲渡や株式譲渡などのM&Aスキームで市場の変化へ柔軟に対応し、競争力を強化する企業も多くなっています。

本記事では、酒屋業界におけるM&Aの最新動向、メリットやデメリット、成功に導くためのポイントなどを解説します。

酒屋業界の現状

近年は人口減少や消費者のライフスタイルの変化などを背景に、国内の酒類消費量が減少傾向にあります。国税庁の「令和4年度の酒類の消費状況」の資料によると、札幌国税局管内における酒類の消費数量は、令和4年度で360,981klとなっています。平成30年度の382,529klからゆるやかな減少傾向が見られます。

こうした酒類消費量の影響を特に受けやすいのが小規模な酒販店です。地方では地域の過疎化や若者の飲酒離れが進み、昔ながらの酒店が姿を消しつつあります。酒類販売の主流はコンビニエンスストアやECサイトへと移行しており、消費者の購買行動が大きく変化しました。酒屋業界は新たな経営戦略を模索しなければ生き残りが難しいといえるでしょう。

【出典】国税庁「令和4年度の酒類の消費状況」

酒屋業界が抱える課題

ここでは、酒屋業界が直面する「消費量の低下」「競争の激化」「規制や税制の影響」「事業の後継者不足」という4つの課題について解説します。

酒類の消費量の低下

酒類の消費量は長期的に減少傾向にあり、特に若者のアルコール離れが顕著です。日本酒やワインのような伝統的なお酒の需要も低迷しています。これまで地域の飲酒の文化を支えてきた老舗の酒蔵や特色のある酒販店は、存続が危ぶまれている状況です。

競争の激化

小規模な酒屋が多い酒屋業界では、価格競争の激化により経営の難易度が高まっています。2017年に施行された「酒税法」および「酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律」で酒類の安売りが規制される中でも、大手小売りチェーン店では大量仕入れ・大量販売のビジネスモデルによって価格を抑え、競争力を高めています。

規制や税制の影響

酒類販売には酒販免許の取得が必須であり、業界参入のハードルとなっています。また、酒税や規制の影響で小規模な事業者のコスト負担が大きくなり、結果として売上高が伸び悩むケースも少なくありません。

事業の後継者不足

国内の小規模な酒屋の多くは家族経営で成り立っていますが、近年は創業者の高齢化や後継者の不在が深刻化しています。適切な後継者が不足して事業承継が進まず、最終的に廃業に追い込まれるケースも見られます。

酒屋業界のM&A最新動向(2025年)

近年、酒屋業界では小規模な酒屋のM&Aが多くなっています。その背景として挙げられるのは、少子高齢化・酒量消費量の減少・競争の激化といった課題です。こうした現状を受けて、創業から長年にわたり経営してきた酒屋を継続させる手段の一つとして、M&Aを選択する事業者が少なくありません。

一方、M&Aで酒屋を譲受する買い手側の企業では、売上拡大や販路確保を目的にM&Aが活用されています。2025年以降も、こうした酒屋業界のM&Aの件数はさらに増加し、業界再編が進むと予想されます。

酒屋がM&Aをするメリット

酒屋業界でのM&Aは、売り手に多くのメリットをもたらします。ここでは、売り手側の酒屋がM&Aをするメリットをご紹介します。

事業承継問題を解決できる

後継者不足は多くの酒屋が直面する課題です。M&Aを活用すれば、親族や社内に適切な後継者がいない場合でも、第三者に酒屋の事業を引き継ぐことが可能になります。酒類販売免許を有効活用できるほか、古酒やヴィンテージワインなど高価な在庫を適正評価してもらえる相手先が見つかるかもしれません。

従業員の雇用を維持できる

万が一酒屋を廃業した場合、従業員が失業することになりますが、M&Aで事業を譲渡した場合は引き続き雇用を維持できる可能性があります。その際、買い手企業の条件次第では、現状と同様の雇用環境で働ける可能性も考えられるでしょう。

買い手側のリソースの活用により事業の発展が期待できる

M&Aが成立すると、買い手企業の資本力・人材・ノウハウによって、事業経営の安定化、売上高の拡大、新たな成長機会の獲得などが期待できます。酒屋業界では、売り手企業の伝統やブランドが高く評価されるケースも少なくありません。

長年の取引先ネットワークを引き継げる

M&Aスキームによっては、売り手企業が持つ取引先ネットワークを新たな事業者へ引き継げる場合があります。特に地域密着型の酒屋では、事業の安定と拡大に寄与する顧客基盤を引き継げることに魅力を感じる買い手も見られます。

具体的には、地域の配達ルートやお得意様リスト、季節商品の予約販売ルートなどの資産が評価される可能性があります。

自社ブランドを保護できる

歴史ある酒屋は、地域の顧客に愛されるブランドを確立しているケースが多いです。M&Aで事業を譲渡すれば、長年にわたり培ってきた自社ブランドの価値を守りながら、今後も第三者に事業を継続してもらえる可能性が高まります。また、場合によっては長年の酒蔵との取引関係を価値化できる可能性もあるでしょう。

酒屋がM&Aをするデメリット

続いて、売り手側の酒屋がM&Aをする際のデメリットについて解説します。

地元顧客が離れていくリスクがある

酒屋は地域に密着したビジネスであり、地元顧客との信頼関係が欠かせません。しかし、M&Aによって経営者が変わると、顧客が「これまでのようなサービスが受けられなくなるのではないか」と不安を感じ、離れてしまうリスクがあります。

地域密着型の顧客基盤が崩れることによる、贈答シーズンの顧客離れなどが懸念されます。顧客離れを防ぐためには、地域とのつながりや既存サービスの魅力を尊重してもらえる買い手を見つけることが重要です。

取引先との信頼関係が崩れる可能性がある

同様に、M&Aによって経営方針が変化すると、これまで築かれてきた取引先との信頼関係が崩れるリスクがあります。

例えば、新たな経営者が仕入れ方針や価格設定を見直した場合、取引先との間に軋轢が生じる可能性があり、酒蔵との独占販売契約の解除といった事態にも発展しかねません。必要に応じて、従来の取引をできる限り維持する形での交渉も検討しましょう。

ブランド価値や歴史が軽視されるおそれがある

地域密着型の酒屋の中には、長い歴史とともに培われたブランド価値を持つ店舗もあります。こうした店舗が大手企業に買収された場合は、全国チェーンの一部として組み込まれるケースもあり得るでしょう。酒屋独自のブランド価値や歴史が軽視したM&Aは、創業者だけでなく、顧客や従業員まで疎外感を抱くかもしれません。

酒屋がM&Aを成功させるためのポイント

M&Aを成功へ導くには事前準備や慎重な対応が不可欠です。ここでは、M&Aを成功させるためのポイントについて解説します。

在庫の管理や棚卸を徹底して行う

酒屋の経営において、酒類の在庫は重要な資産であり、M&Aの成功にも大きな影響を与えます。売り手側は在庫の量や状態を正確に把握し、徹底的に棚卸作業を行いましょう。賞味期限が近い商品や販売が停滞している在庫があれば、事前に対応を検討しておく必要があります。

経営環境を整えておく

M&Aに備えて売却後も安定した経営を維持できる体制を整えましょう。具体的には、財務状況を健全化したり、従業員が働きやすい環境を整備したりすることが挙げられます。また、事業の強みや特徴を明確にして、買い手企業にアピールするポイントを整理することで、交渉を有利に進めやすくなります。

地元顧客や取引先の不安を取り除く

M&Aが進行する過程で、長年にわたり付き合いのある従業員や取引先、地元顧客に不安を与えないようにすることが重要です。買い手企業との交渉では、「既存のサービスや商品ラインナップを維持できるか」「地元顧客や取引先との信頼関係に配慮してもらえるか」などのポイントを確認する必要があります。

専門家にアドバイスをもらう

酒屋業界でM&Aを成功させるには、専門家の助言を受けることが大切です。M&Aのプロセスでは、デューデリジェンス(=売り手企業の詳細な調査)や契約条件の交渉のように、自社のみで対応するのが難しい手続きが多くあります。

デューデリジェンスでは、「古酒やヴィンテージの在庫」「温度管理設備」「取扱商品の仕入れルート」などを入念にチェックします。

また、酒屋業界のM&Aでは酒類販売免許の承継や、季節商品の予約や受注の引継ぎのような、複雑な手続きが少なくありません。経験豊富な専門家のサポートを受けることで交渉がスムーズに進みやすくなり、M&Aを成功へ導けます。

酒屋業界のM&A事例

株式会社ベルーナによる谷櫻酒造有限会社のM&A

2023年6月30日、株式会社ベルーナ(埼玉県上尾市)は、山梨県の老舗酒蔵である谷櫻酒造有限会社の全株式を取得し、子会社化したと発表しました。

谷櫻酒造は1848年創業、170年以上の歴史を誇る酒蔵で、八ヶ岳南麓の清らかな湧水を活かした伝統的な酒造りを行っています。特に、生酛造りによる豊かな風味の日本酒が高く評価されており、英国ロンドンの国際的なアルコール品評会「IWSC」でも数々の受賞歴を持つ銘柄を展開しています。

ベルーナは、アパレルや雑貨、グルメ事業などを幅広く展開しており、日本酒事業の成長を見据えた自社ブランドの開発や、グルメ事業とのシナジー強化を目的に本件の買収を決定しました。谷櫻酒造のブランド力と伝統的な製造技術を活かし、ベルーナの販売ネットワークを通じて市場拡大を目指すとみられます。

近年、酒造業界では老舗酒蔵の事業承継が課題となっています。今回のM&Aは、伝統ある酒蔵の存続とブランド価値の向上を両立させる事例として注目されます。

【出典】株式会社ベルーナ「「谷櫻酒造有限会社」の子会社化に関するお知らせ」

夢酒蔵株式会社による若宮酒造株式会社のM&A

2024年11月28日、京都府綾部市唯一の酒蔵である若宮酒造株式会社は、夢酒蔵株式会社(京都市)との間で株式譲渡契約を締結し、事業承継が成立しました。

若宮酒造は1920年に創業し、「綾小町」ブランドの清酒で地域に親しまれてきました。しかし、2024年3月に経営者兼杜氏の急逝により存続の危機に直面しました。特に、秋の仕込みに間に合わせるため、迅速な事業引継ぎが求められていました。

この状況を受け、京都府の金融・経営一体型支援体制強化事業(連携会議)が支援を要請。若宮酒造の譲渡案件には十数社の打診がありましたが、最終的に酒蔵支援を専門とする夢酒蔵が承継することになりました。夢酒蔵は、大手酒造メーカー出身者を中心に設立され、後継者問題を抱える酒蔵の支援を目的としています。

本件では、金融機関の借入金の調整、杜氏の確保、雇用やブランドの維持、株式集約の課題を解決し、7カ月という短期間で成約に至りました。地元金融機関や事業承継支援機関の協力に加え、地域住民の「地元の酒蔵を残したい」という強い思いが成功の要因となりました。

本事例は、地域の伝統産業の存続を支えるM&Aの好例として、今後の酒造業界の事業承継のモデルケースとなるでしょう。

【出典】京都府事業承継・引継ぎ支援センター「京都府綾部市内唯一の酒蔵を、大手酒造会社OBが設立した酒蔵支援会社が事業引継ぎ」

株式会社Clearによる有限会社川勇商店のM&A

2018年7月5日、日本酒ベンチャーの株式会社Clear(東京都渋谷区)は、1965年創業の老舗酒販店・有限会社川勇商店(東京都世田谷区)の全株式を取得し、完全子会社化したと発表しました。本買収により、Clearは川勇商店が保有する酒類小売業免許を活用し、高価格帯の日本酒に特化したEコマース事業「SAKE100」を展開します。

Clearは、日本酒専門メディア「SAKETIMES」を運営し、全国の酒蔵とのネットワークや市場の知見を持つ企業です。新事業「SAKE100」では、「100年誇れる1本を。」をコンセプトに、酒蔵と共同でプレミアム日本酒を開発・販売します。第一弾商品『百光 -byakko-』は、クラウドファンディングで390万円超の支援を集め、成功を収めました。

近年、日本酒市場では低価格帯の縮小が進む一方で、高価格帯の「特定名称酒」や海外輸出が成長を続けています。Clearは、本買収を通じて、高付加価値な日本酒市場を確立し、国内外での展開を加速させる方針です。日本酒業界の新たな可能性を切り開くM&Aとして、今後の展開が注目されます。

【出典】PRTIMES「日本酒ベンチャーの株式会社Clearが、創業50年超の老舗酒販店を買収。「高価格日本酒」に特化したEコマースで小売業に参入へ」

まとめ|酒屋業界のM&A動向を押さえてM&Aを成功させましょう

酒屋業界のM&A動向を押さえてM&Aを成功させましょう

酒屋業界は少子高齢化や消費者嗜好の変化などの影響を受け、ますます事業環境が厳しくなっています。このような状況下において、M&Aは事業の継続や成長を目指すための有効な手段の一つだといえるでしょう。酒屋のブランドや地元顧客との信頼関係を維持しながら、事業を継続できる可能性があります。

酒屋業界でM&Aを成功させる鍵は、専門家のアドバイスを受けながら適切な買い手企業を見つけて、双方が納得できる条件で交渉を進めることです。戦略的なM&Aを実現するために、経験豊富な専門家へご相談ください。

CINC Capitalは、M&A仲介協会会員および中小企業庁のM&A登録支援機関として、M&Aのご相談を受け付けております。業界歴10年以上のプロアドバイザーが、お客様の真の利益を追求します。M&Aの相談をご希望の方はお気軽にお問い合わせください。

この記事の監修者

阿部 泰士

CINC Capital取締役執行役員社長

阿部 泰士

リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。

OTHERS 関連コラム すべてのコラムを見る

SEMINARセミナー すべてのセミナーを見る

最大800万円!?手残りを最大化するための「M&A補助金」~申請前に押さえるべきポイントを徹底解説~
  • Tips

最大800万円!?手残りを最大化するための「M&A補助金」~申請前に押さえるべきポイントを徹底解説~

2025/04/22(火)17:00〜18:00

オンライン

申し込む
会社を4度売却した経営者だけが知るM&Aの裏側 ~企業価値の高め方とは?~
  • Tips
  • M&A体験談

会社を4度売却した経営者だけが知るM&Aの裏側 ~企業価値の高め方とは?~

2025/04/15(火)17:00〜18:30

オンライン

申し込む
BPO・BPaaS企業の課題を解決する!kubellのM&A戦略 ~DX化×Chatworkの顧客基盤活用~
  • Tips

BPO・BPaaS企業の課題を解決する!kubellのM&A戦略 ~DX化×Chatworkの顧客基盤活用~

2025/04/08(火)17:00〜18:00

オンライン

申し込む

CONTACTお問い合わせ

秘密厳守いたします。お気軽にご相談ください。最新の業界動向・M&A相場などわかり易くご説明させていただきます。