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居酒屋業界の事業承継・M&A動向(2025年)メリットデメリット/事例/成功のポイントを解説

業種

  • 公開日2025.04.23
  • 更新日2025.04.24

居酒屋業界の事業承継・M&A動向(2025年)メリットデメリット/事例/成功のポイントを解説

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近年、少子高齢化や人手不足の影響を受け、居酒屋業界でも事業承継の課題が深刻化しています。後継者不足や経営環境の変化に対応するため、M&Aを活用して事業の存続や拡大を図る店舗もあるようです。

この記事では、居酒屋業界におけるM&Aの最新動向やメリット・デメリット、成功事例、売却を成功させるポイントなどを解説します。

居酒屋業界の市場動向

居酒屋業界は、近年大きな変動を経験しています。特に、コロナ禍が市場に与えた影響は大きいといえるでしょう。2023年の国内における居酒屋やバーなどの料飲店市場規模は、2019年と比べて33%減少し、3兆5,734億円と推計されています。2021年には2019年比で70%の大幅な落ち込みを記録しましたが、その後、徐々に回復の兆しが見え始めています。

とはいえ、コロナ禍以前の水準には戻っていないのが現実です。大規模な宴会需要の減少が響いており、少人数でカジュアルに楽しむ飲み会が増加しています。この傾向により、ファミリーレストランやファストフード店などが人気を集め、短時間で気軽に利用できる店が好まれるようになりました。居酒屋などでの飲酒需要が流出し、業界全体の需要が減少しているのです。

今後、2030年には2019年比で35%減の3兆4,189億円に縮小すると予測されています。宴会需要の低迷が続く中で、業界は新たな需要の創出を模索しなければならない状況といえるでしょう。

一方、2024年に入ってからの外食市場は好調な動きを見せています。4月の外食売上高は前年同月比で6%増となり、29カ月連続でプラスを記録しました。宴会需要の回復や訪日外国人客の増加、人々の外出機会が増えたことが要因として挙げられます。パブや居酒屋の売上は、人の流れの回復に伴って増加し、売上は5.7%の伸びを記録しました。

2024年の桜の開花が遅れたため、宴会需要が4月に持ち越され、これが売上増の一因となったことも注目されています。このように、2024年は回復基調にあるものの、長期的には業界の縮小が予測される中で、居酒屋業界は変革を迫られています。

【出典】日経コンパス「2025年調査 居酒屋」

居酒屋業界が抱える課題

居酒屋業界は多くの課題に直面しており、これらは事業承継でも重要な要素となっています。ここでは、業界の課題をいくつかの主要なポイントに絞って解説します。

経営者の高齢化

居酒屋業界の経営者の平均年齢は年々上昇しており、特に個人経営の飲食店では、経営者が引退を考える年齢に達しているケースが多く見られます。2024年の調査によると、休廃業・解散件数は6万2,695件に達し、調査以来過去最高を更新しました。その多くが、経営者の高齢化に起因しているといいます。

高齢化が進む中、後継者が見つからずに事業承継が進まないという問題が深刻化の傾向です。特に、厨房で長年働いてきた経営者が後継者を選定する時間が取れないまま廃業に至るケースが多いとされています。

【出典】株式会社東京商工リサーチ「2024年『休廃業・解散企業』動向調査」

後継者不足

居酒屋業界における後継者不足は、近年ますます深刻化しています。親族内での事業承継が難しくなっていることも一因とされています。若者の間で飲食業に対する魅力が薄れているほか、高齢化の影響で子どもが事業を引き継がないケースが増加の傾向です。加えて、居酒屋業界では正社員・非正社員ともに人手不足が続いています。このような人手不足が、後継者問題をさらに悪化させているのです。

店主の人柄や独自のサービスの継承

居酒屋では、店主の人柄や人気のオリジナルメニュー、サービスが大きな要素となり、長年のファンを形成しています。しかし、これらの個性やサービスを後継者が継承することは簡単ではありません。

創業者が提供してきた独自のメニューやサービスなどは、後継者が引き継いでも顧客の期待に応えられるかどうかが不安要素となります。事業承継を進める際には、後継者がその店独自の価値を理解した上で継承することが求められます。

酒税法の改正による影響

2017年に施行された酒税法の改正により、酒類の安売りが規制され、居酒屋経営には新たな影響が出ています。価格設定の見直しを余儀なくされた居酒屋では利益率が低下し、経営が厳しくなっているところもあるといわれています。後継者は法改正に適応した運営を行う必要があり、以前の経営方法をそのまま引き継ぐことが難しくなっているのも問題です。

現経営者の先行き不安

業界の縮小や消費者の嗜好の変化に対する不安から、事業承継を躊躇する経営者も見られます。現経営者は、後継者に対して業務を円滑に引き継ぐ自信が持てないことが多く、結果として事業承継が進まないケースがあるようです。後継者への教育や支援が不足していることも、この問題を助長しています。

居酒屋業界のM&A最新動向(2025年)

居酒屋業界は厳しい競争と人手不足が続いており、M&Aが業界の再編成と効率化を進める手段として注目されています。ここでは、居酒屋業界におけるM&Aの最新動向を3つの主要なポイントに分けて解説します。

同業種M&Aによる効率的な事業拡大

居酒屋業界では同業種同士のM&Aによって複数の店舗を集約し、店舗の規模拡大や新メニュー開発などを図る事例が見られます。例えば、大手居酒屋チェーンが地域密着型の中小規模居酒屋を買収し、経営の効率化やネームバリューを活用した集客アップなどを目指すケースがあります。

他業界企業の参入による新たな展開

居酒屋業界は「食」に関する安定した需要がある点が特徴の一つです。こうした背景から、物流や小売業などの企業が居酒屋チェーンを買収し、既存の飲食店を基盤に新たなビジネス展開を進める動きも見受けられます。

このようなM&Aにより、他業界企業は飲食業界の知識と資源を短期間で獲得できるのがメリットです。業界特有の問題である人手不足の解消や、経営の効率化が図られることになります。

資本力強化による労働環境の改善

居酒屋業界の経営者の高齢化と、従業員の労働環境改善の必要性が依然として課題となっています。M&Aを活用して資本力を強化する取り組みにより、企業は従業員への待遇改善を図り、過酷な労働環境から脱却する可能性が広がるでしょう。

企業規模が拡大することで労働者の給与を引き上げ、より良い労働条件を提供することが可能となり、スタッフの確保や業界の持続可能な成長にもつながります。

居酒屋がM&Aで売却するメリット

居酒屋業界では、人手不足やコスト増、経営環境の変化などにより、M&Aを選択肢として考える経営者が増えています。ここでは、居酒屋がM&Aによって得られる具体的な利点について解説します。

従業員の雇用維持と労働環境の改善

M&Aによって資本力のある企業に事業を引き継ぐことで、従業員の雇用が守られ、安定した労働環境を提供できる可能性があります。特に大手企業の傘下に入ることで、給与水準の向上や福利厚生の充実が期待でき、従業員の定着率向上につながります。

撤退費用の削減とスムーズな事業継承

通常、居酒屋を廃業する際には、原状回復費用や解約予告家賃などの撤退コストが発生します。しかし、M&Aを活用すれば、店舗や設備をそのまま引き継げるため、これらの費用負担を大幅に削減できます。売却により利益を得ながら円滑に事業を引き継げる点も大きなメリットです。

仕入れコスト削減と経営効率の向上

大手チェーンの傘下に入ることで、食材や酒類の仕入れをグループ単位でまとめられ、原材料コストを削減できます。また、ITシステムの導入により、キャッシュレス決済やPOS管理が強化され、店舗運営の効率化が可能になります。

個人保証の解除と経営リスクの軽減

中小規模の居酒屋では、経営者が金融機関からの融資に個人保証を求められるケースが多く見られます。しかし、M&Aにより包括的に事業を譲渡すれば、個人保証の解除が可能になり、経営者個人のリスクを大幅に軽減できます。

事業承継問題の解決

居酒屋をM&Aで売却する一つの大きなメリットは、事業承継問題の解決です。とりわけ家族経営や個人経営の居酒屋では、後継者不足が深刻な問題になることがあります。M&Aによって外部の企業や投資家に事業を引き継ぐことで、事業の存続が確保されます。

居酒屋がM&Aで売却するデメリット

M&Aによる売却は多くのメリットがある一方で、売却側にとってデメリットも存在します。居酒屋業界特有の課題もあるため、売却を検討する際には慎重な判断が必要です。

希望の条件で売却できないリスク

M&Aは売却側と譲受側の交渉によって条件が決定されるため、必ずしも希望通りの条件で売れるとは限りません。売却価格や譲渡後の経営方針、従業員の雇用条件など、売却側が重視するポイントについて譲受側と折り合いをつけることが重要です。

居酒屋業界では売上や収益が季節や立地に左右されやすく、企業価値の評価が難しい場合があります。そのため、想定よりも低い価格での売却を余儀なくされる可能性があることが注意点として挙げられます。

ブランドや店舗運営方針の変更

M&Aによって経営母体が変わることで、居酒屋のブランドや店舗運営の方針が大きく変更されることがあります。譲受側の企業がチェーン展開をしている場合、個人経営の特色を活かした営業スタイルが失われ、既存の常連客の離反につながることもあります。

また、メニューの変更や価格設定の見直しが行われることで、これまでの顧客層に適さなくなる可能性も考えられるでしょう。売却後に自店のブランドがどのように扱われるのか、詳細を事前に確認し、必要に応じて条件交渉を行うことが重要です。

従業員の離職の可能性

M&Aによって経営者が交代すると、職場環境や業務方針に変化が生じることが多く、従業員の不安要素となります。経営理念や店舗の雰囲気を重視する従業員が多い場合、新しい経営体制に馴染めず退職を選択するケースもあるでしょう。

従業員の離職が増えると店舗運営に支障をきたし、買収後の事業継続が難しくなる可能性があります。売却を進める際には、従業員への説明を丁寧に行い、不安を解消するための取り組みを行うことが重要です。

居酒屋がM&Aで売却を成功させるためのポイント

居酒屋のM&Aを成功させるためには、業界特有のポイントを押さえながら交渉を進めることが重要です。飲食業界は景気やトレンドの影響を受けやすく、個人経営の色が強い店舗も多いため、M&Aの進め方によっては売却後の店舗運営に大きな影響を及ぼします。ここでは、居酒屋の売却を成功させるために押さえておきたいポイントを解説します。

売却のタイミングを見極める

居酒屋業界はトレンドの変化が激しいため、業績が好調な時期に売却することで、より高い評価を得られる可能性があります。経営が低迷してから売却を検討すると、買い手が見つかりにくくなったり、想定よりも低い価格での売却を余儀なくされたりすることがあります。また、売却を決めたら迅速に専門家へ相談し、最適な売却時期を見極めることが重要です。

店舗のブランドや強みを明確にする

居酒屋のM&Aでは、単に店舗を売却するだけでなく、ブランドや経営ノウハウも譲渡の対象になります。常連客が多い店舗や独自のメニューを提供している店舗などは、その価値をどのように引き継ぐかが重要なポイントです。買い手側に対して、どのような強みがあるのかを明確に伝えることで、より良い条件での交渉が可能になります。

従業員の引き継ぎに配慮する

M&Aによって経営者が変わると、従業員が不安を抱えやすくなります。居酒屋はスタッフの接客力や調理技術が店舗の売上に直結するため、従業員の離職リスクを最小限に抑えることが重要です。M&Aの交渉段階で雇用条件や待遇の維持について明確にし、従業員が安心して働ける環境を整えることがポイントとなります。

財務状況の透明性を確保する

M&Aを成功させるためには、財務状況を明確にし、買い手に安心感を与えることが不可欠です。現金取引が多い居酒屋では、正確な財務情報が把握しづらいケースもあります。買い手が安心して交渉できるよう、財務諸表を整理し、過去の売上データや経費の内訳を明確にしておくことが重要です。

企業価値の適切な算出方法を理解する

居酒屋のM&Aを実施する際には、どのような基準で自店舗の価値が評価されるかを理解しておくことが望ましいでしょう。一般的に中小規模の居酒屋では、「時価純資産+営業権法(基礎価額法)」や「マルチプル法(類似業種比準法)」といった手法が用いられます。

「時価純資産+営業権法」の場合、店舗設備や内装などの資産価値に加えて、営業権(のれん)も含めて企業価値を判断します。特に立地条件の良い居酒屋やリピーターの多い店舗では、営業権の価値がより高く評価される傾向にあります。

「マルチプル法」は「EBITDA(利払前・税引前・償却前利益)」に業界標準の倍率をかけて企業価値を算定します。居酒屋業界の場合、通常3〜5倍程度の倍率が相場となります。ただし、コロナ禍の影響などで業績が変動している場合は、複数年の平均値や回復基調を考慮した調整が必要です。自社がどの評価軸で見られるかを事前に把握し、適切な準備を整えておくことが、スムーズな売却へとつながるでしょう。

M&Aの専門家に相談する

居酒屋のM&Aは、店舗ごとに状況が異なるため、専門的な知識が必要になります。業界に精通したM&Aアドバイザーや仲介会社に相談することで、適切な売却価格の設定や買い手探しをスムーズに進められます。また、契約内容の調整や法的な手続きを専門家に任せることで、トラブルを未然に防ぐことが可能です。

居酒屋業界のM&A事例

最後に、居酒屋業界のM&A事例をご紹介します。自社のM&A検討時の参考にしてみましょう。

ワタミ株式会社による日本サブウェイ合同会社のM&A

ワタミ株式会社は、2024年10月、日本サブウェイ合同会社(SUBWAY JAPAN, G.K.)の全持分を取得し、同社を子会社化しました。同時に、Subway International B.V.との間で、日本国内における「Subway」事業のマスターフランチャイズ契約も締結しています。

ワタミは、農畜産物の生産から加工・販売までを手掛ける循環型モデルを展開しており、今回のM&Aにより、有機野菜を活用した新商品の開発や、フランチャイズ展開力の強化、さらには海外進出への足掛かりを図る狙いです。

外食市場における新たな収益源の確保と、サステナブル経営の推進が期待されています。

【出典】ワタミ株式会社「マスターフランチャイズ契約の締結並びに日本サブウェイ合同会社の持分取得(子会社化)に関するお知らせ」

株式会社すかいらーくホールディングスによる株式会社資さんのM&A

すかいらーくホールディングスは、2024年9月、北九州発のうどん・和食チェーン「資さん」の全株式を取得し、子会社化することを決定しました。

資さんは、九州を中心に展開し、近年は関西・関東への出店も進めており、今後の拡大に向けた支援を求めていました。

すかいらーくは、地方ロードサイドの新ブランド開発を模索していたことから、資さんの高い集客力に注目し、今回のM&Aに至ったものです。両社のリソースを活用し、全国展開を加速させるシナジー効果が期待されています。

【出典】株式会社すかいらーくホールディングス「株式会社資さんの株式の取得(子会社化)に関するお知らせ」

株式会社海帆による株式会社SSSのM&A

株式会社海帆は、2022年7月、居酒屋事業を展開する株式会社SSSの全株式を取得し、子会社化しました。海帆は近年の外食業界を取り巻く厳しい経営環境を受け、M&Aによる成長戦略を推進しており、今回の取得もその一環となります。

SSSは都内を中心に19店舗を運営し、店舗運営や原材料面で海帆と共通点が多く、相互補完によるシナジーが期待されています。収益基盤を強化し、企業価値向上を目指す動きとして注目されます。

【出典】株式会社海帆「株式会社SSSの株式の取得(子会社化)に関するお知らせ」

まとめ|居酒屋業界のM&A動向を押さえてM&Aを成功させましょう

居酒屋業界では、少子高齢化や人手不足、経営環境の変化を背景にM&Aが活発化しています。後継者不足の解消や経営基盤の強化を目的としたM&Aのニーズは今後も高まると予想され、大手企業による買収や異業種からの参入も進行中です。

一方で、売却条件の調整や従業員の離職リスクなど、慎重な対応が求められる課題もあります。成功のためには、業界特有のポイントを押さえた準備や戦略的な交渉が不可欠です。業界に精通した専門家の力を借りながら、自社にとって最適なM&Aを実現しましょう。

CINC Capitalでは、居酒屋業界の事情に詳しい専門チームが、オーナー様の想いを大切にしながらM&Aの支援を行っています。店舗の立地や常連客の維持、従業員の雇用継続など、居酒屋経営者様の重視されるポイントを考慮し、最適な買い手とのマッチングをサポートします。

この記事の監修者

阿部 泰士

CINC Capital取締役執行役員社長

阿部 泰士

リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。

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