CINC CapitalはCINC(証券コード:4378)のグループ会社です。
CINC CapitalはCINC(証券コード:4378)のグループ会社です。

業種
- 公開日2025.03.12
- 更新日2025.03.12
内装工事(業種や業界)のM&A動向(2025年)メリット/事例/成功のポイントを解説
内装工事業界では、職人不足・資材価格の高騰・受注の波による経営の不安定さといった課題を抱えている企業が少なくありません。
こうした背景から、近年M&Aを活用して事業の安定化や成長を目指す動きが活発化しています。
本記事では、内装工事業界の最新M&A動向やメリット、成功事例などをご紹介します。
目次
内装工事業界の市場動向
近年、内装工事業界では新築住宅の着工数が減少する一方で、リフォーム市場の需要が堅調に推移しています。まずは、内装工事業界の市場動向について解説します。
新築の着工数の減少
内装工事業界のうち、新築住宅に関連する工事は、住宅着工数の推移に大きく左右されます。しかし、日本における新築住宅の着工数は減少傾向にあります。
国土交通省が公表する統計データによると、新設住宅着工戸数は2006年度に128万5000戸に達して以降、年々減少傾向にあります。2022年度には86万1000戸にまで減少しました。
こうした流れは今後も続くと予想されており、特に都市部では土地価格の高騰や人口減少による影響も懸念されています。
【出典】国土交通省「令和5年度 住宅経済関連データ <2>住宅建設の動向 1.新設住宅着工戸数の推移 (1)新設住宅着工戸数の推移(総戸数、持家系・借家系別)」
堅調なリフォーム市場
新築住宅の着工数が減少する一方で、リフォーム市場は今後も需要の増加が見込まれています。少子高齢化が進む日本では、高齢者が住みやすい環境を整えるためのバリアフリー改修が増加傾向です。また、耐震補強や省エネリフォームの需要も拡大しており、住宅を長く使い続けるための改修ニーズが高まっています。
さらに、近年の自然災害の影響により、耐震補強や台風・豪雨対策としての外装工事や内装リフォームの需要が多くなっている状況です。国や自治体もリフォーム補助金制度を充実させており、こうした支援策が市場の活性化を後押ししています。
内装工事業界が抱える課題
ここでは、内装工事業界が抱える具体的な課題について解説します。
競争の激化
内装工事業界は参入障壁が比較的低く、新規参入がしやすい業界とされています。工事の規模によっては少人数で対応できるため、大きな設備投資が不要な点も、異業種からの参入を後押ししています。
その結果、同業者間の競争が激化し、価格競争に巻き込まれる企業も少なくありません。さらに、近年ではリフォーム市場の成長を見越して、新築工事を主軸としていた企業や他業種の企業がリフォーム事業へ参入するケースが増えています。
人手不足
内装工事業界に限らず、建設業界全体で深刻な人手不足が続いています。特に若年層の就業者が減少しており、熟練職人の高齢化が進んでいることが問題視されています。
工事業界は「3K(きつい、汚い、危険)」のイメージが強く、若者にとって魅力的な職業と認識されにくいのが現状です。そのため、人材確保のためには働き方改革や業務の効率化が必要とされています。
後継者問題
内装工事業界では経営者の高齢化が進み、多くの企業が後継者不足の問題を抱えています。経営者の親族が他業種に就職している場合や、事業承継にかかる税負担が大きい場合、後継者が見つからず廃業を余儀なくされるケースもあります。
こうした状況が続けば、業界全体の市場規模が縮小し、地域の内装工事業者が減少するおそれがあるでしょう。
内装工事業界のM&A最新動向(2025年)
内装工事業界では、近年M&Aの動きが活発化しています。ここでは、2025年の最新動向として、内装工事業界におけるM&Aの特徴を解説します。
後継者問題の解決を目的とするM&Aが多い
内装工事業界では、経営者の高齢化に伴う後継者不足が深刻化しており、解決手段としてM&Aが活用されています。
特に地方の中小規模の内装工事会社では、事業を継ぐ家族がいない、または都市部へ移住して戻らないケースが多く見られます。そのため、M&Aによって事業を継続させる方法が有力な選択肢となっている状況です。
大手グループ企業による内装工事会社のM&Aが増加している
内装工事業界では、大手建設会社や不動産関連企業によるM&Aの動きが加速しています。大手企業がリフォームや建築関連の業務を強化する目的でM&Aを行い、技術力や人材を確保するケースが多く見られます。
また、総合新築事業やトータルリフォーム事業を展開している大手グループでは、M&Aを活用することで施工能力の向上やコスト削減を図っています。
元請けによる下請けのM&Aが行われている
近年、内装工事業界では元請け企業が下請け企業をM&Aによって買収するケースが増えています。下請け企業に発注していた業務を内製化することで、業務効率化や利益率の向上を目指すことができるからです。
下請け企業を取り込むことで、工事の進捗管理や品質管理を一貫して行えるようになり、業務のスムーズな遂行が可能になります。
内装工事業がM&Aをするメリット
内装工事業におけるM&Aは、売り手企業にとって多くのメリットをもたらします。ここでは、売り手企業がM&Aを実施するメリットについてご紹介します。
売却益の獲得
M&Aを行うことで、売り手企業のオーナーは事業の売却益を得られます。業績が安定している企業や市場価値の高い企業は、高い評価額での売却が期待できます。獲得した資金は、次のビジネスへの投資や引退後の生活資金として活用できるため、経営者にとって大きなメリットとなるでしょう。
後継者問題の解決
内装工事業界では、後継者不足が深刻な問題となっています。従来は後継者が見つからない場合に廃業を選択する企業が少なくなかったものの、近年ではM&Aによって第三者に事業を承継するケースが増加しています。
従業員の雇用継続
M&Aによって事業が継続されることで、従業員の雇用を守れる可能性があります。廃業を選択した場合、従業員は新たな職を探さなければなりません。買い手企業が事業拡大を目的としている場合、従業員のスキルや経験が評価され、交渉次第ではキャリアアップの機会が得られる可能性もあるでしょう。
個人保証や担保などの解消
中小企業の経営者は、金融機関からの借入に際して個人保証や担保を提供しているケースが多くあります。M&Aによって企業を売却すると、経営者の個人保証や担保を解除できる可能性が高まり、個人資産をリスクから守れます。
事業基盤の強化
M&Aによって大手企業や同業他社のグループに参入することで、売り手企業は事業基盤の強化が期待できます。資本力のある企業の傘下に入ることで、新規顧客の獲得や経営資源の共有が可能になり、安定した経営が実現しやすくなります。
内装工事業がM&Aを成功させるためのポイント
内装工事業におけるM&Aを成功させるには、いくつかの重要なポイントを押さえる必要があります。ここでは、成功のための具体的なポイントを紹介します。
他社と違う強みのアピール
M&Aを成功へ導くには、自社の魅力を買い手に伝えることが重要です。内装工事業界では、独自の技術やサービス、施工の品質、得意とする工事の分野などが強みとなります。
例えば、「特殊な塗装技術を持っている」「ホテルや商業施設の施工実績が豊富」などの具体的な強みを明確に打ち出すことで、より良い条件での売却が可能になります。また、持続的に安定した受注があることや、優秀な職人が揃っていることも大きなアピールポイントです。
売却のタイミングの見極め
M&Aの成否は、売却のタイミングによって大きく左右されます。業績が安定している時期に売却を進めることが重要です。
業績が低迷していると買い手がつきにくくなり、売却価格も下がる可能性があります。一方、市場環境が良く、買い手側の需要が高まっている時期に売却を進めることで、より良い条件でのM&Aが期待できます。
また、経営者の年齢や後継者不在の状況を踏まえ、引退を見据えた計画的なM&Aを進めることも重要です。事前にM&Aの専門家と相談し、自社の状況に適したタイミングを見極めることが成功の鍵となります。
専門家に相談
M&Aを成功させるためには、専門的な知識や経験が不可欠です。M&Aのプロセスには、多くの専門的な業務が含まれるため、M&A仲介会社やアドバイザーに相談することをおすすめします。専門家に相談することで、適正な売却価格の算定や適切な買い手のマッチングが可能となり、スムーズなM&Aを進められます。
また、M&Aには法的・税務的な側面も関わるため、弁護士や会計士と連携しながら進めることで、リスクを最小限に抑えた売却が実現できるでしょう。
内装工事業界のM&A事例
OCHIホールディングス株式会社による株式会社アイエムテックのM&A
OCHIホールディングス株式会社は、2020年7月1日の取締役会において、株式会社アイエムテックの発行済株式(自己株式を除く)を取得し、連結子会社化することを決議しました。株式譲渡の実行は同年7月9日を予定しています。
OCHIホールディングスは、建材・住宅設備機器の卸売を中心に事業を展開し、西日本地区において業界トップの売上規模を誇ります。今後の成長戦略として、住宅需要の変動に左右されにくい事業ポートフォリオの拡大を掲げています。今回子会社化するアイエムテックは、広島県に本社を構え、マンションやオフィスビルの内装工事を手掛ける企業です。本M&Aにより、OCHIホールディングスは中国地区での事業拡大を図るとともに、自社の建材・加工事業とのシナジー創出を目指します。
建材業界では、エリア拡大や事業領域の多角化を目的としたM&Aが進んでおり、本件もその一環といえるでしょう。
【出典】OCHIホールディングス株式会社「株式会社アイエムテックの株式取得(子会社化)に関するお知らせ」
株式会社アール・エス・シーによる友和商工株式会社のM&A
株式会社アール・エス・シーは、2023年1月30日の取締役会において、友和商工株式会社の全株式を取得し、子会社化することを決議しました。株式譲渡の実行は2023年2月28日を予定しています。
アール・エス・シーは、ビルメンテナンス事業を中心に、安全・安心・快適な環境を提供する企業です。一方、友和商工は、オフィスのレイアウト変更や大規模ビルのフロア工事を手掛ける内装仕上工事業者で、高品質な施工と顧客からの信頼を築いてきました。今回のM&Aにより、アール・エス・シーは、ビル維持管理における工事部門を強化し、事業領域の拡大を図ります。また、技術者の交流を通じて、技術力・品質向上による競争力強化を目指します。
ビルメンテナンス業界では、建物の長寿命化やテナントニーズの多様化に対応するため、設備管理・内装工事を含めたトータルサービス提供の動きが加速しています。本件もその一環といえるでしょう。
【出典】株式会社アール・エス・シー「友和商工株式会社の株式の取得(子会社化)に関するお知らせ」
株式会社山元による株式会社ウエタニのM&A
AJキャピタル株式会社は、2022年2月14日、運営する事業承継ファンド「サクセッション1号投資事業有限責任組合」を通じて保有していた株式会社ウエタニの全株式を、株式会社山元へ譲渡・承継しました。
ウエタニは1922年創業の老舗企業で、商業施設やブランドショップ向けの内装設計・施工、什器の製造・販売を手掛けています。AJキャピタルは2019年にウエタニの全株式を取得し、労務管理・財務基盤の強化を支援してきました。今回のM&Aにより、百貨店や商業施設向けの什器レンタル・販売を展開する山元が、ウエタニの高い技術力を取り込み、関東・関西エリアの事業シナジーを創出する狙いがあります。
近年、内装工事業界では、商業施設のリニューアル需要増加や企業の事業承継ニーズが高まっており、本件もその一環といえるでしょう。AJキャピタルは今後も、地域金融機関と連携し、中小企業の円滑な事業承継を支援していく方針です。
【出典】AJキャピタル株式会社「株式会社ウエタニ 株式会社山元への承継」
まとめ|内装工事業界のM&A動向を押さえて成功へ導きましょう
内装工事業界では、人手不足や後継者問題を背景にM&Aの動きが活発化しています。企業規模の拡大や新規分野への進出を目的としたM&Aが増えており、売り手・買い手双方にとって大きなメリットが期待されています。
その際は、内装工事業界に詳しい専門家に相談しながら進めることで、スムーズな交渉や最適な条件でのM&Aが実現しやすくなります。適切なサポートを受けながら、M&Aを経営戦略の一環として活用しましょう。
CINC Capitalは、M&A仲介協会会員および中小企業庁のM&A登録支援機関として、M&Aのご相談を受け付けております。業界歴10年以上のプロアドバイザーが、お客様の真の利益を追求します。M&Aの相談をご希望の方はお気軽にお問い合わせください。
この記事の監修者

CINC Capital取締役執行役員社長
阿部 泰士
CINC Capital取締役執行役員社長。リクルート関連会社や外資系製薬会社、国内最大手M&A仲介会社で営業組織を牽引。 特にM&A実績の多い業界は調剤・IT・運送業。