CINC CapitalはCINC(証券コード:4378)のグループ会社です。
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業種
- 公開日2025.04.10
- 更新日2025.04.14
フランチャイズ加盟店がM&Aを行うメリットとデメリットは?
フランチャイズ加盟店のM&Aは、後継者問題の解決や事業拡大の手段として注目を集めています。一般的なM&Aと異なる点は、本部との契約関係が取引に影響することです。
今回は、フランチャイズ加盟店M&Aの基礎知識から買い手側・売り手側双方のメリット・デメリット、成功のポイントまで解説します。
目次
フランチャイズ加盟店のM&Aとは?
フランチャイズ加盟店のM&Aとは、フランチャイズ契約を締結している加盟店が、第三者に事業・会社を譲渡する取引のことを指します。一般的なM&Aとは異なり、本部との契約内容が影響する点に注意が必要です。
そもそもフランチャイズ加盟店(FC)とは、本部(運営会社)である「フランチャイザー」と契約を締結し、ブランド・商品・サービスなどを借り受けて営業する店舗のことです。加盟店は独自のブランド構築が不要で、本部から提供されるマニュアルやノウハウを活用して、効率的に事業展開できるメリットがあります。一方、その見返りとして加盟金から支払われるロイヤリティが、本部の主要な収入源となっています。
【売り手】フランチャイズ加盟店がM&Aを行うメリット
M&Aを実施することで、後継者不足や収益問題などの経営課題を解決できる可能性があります。ここでは、売り手側のフランチャイズ加盟店がM&Aをするメリットをご紹介します。
本部の承認を得ることでスムーズに売却しやすい
一般的に、フランチャイズ契約には「経営委託禁止」や「権利譲渡禁止」などのノウハウ保護条項が含まれていることが多く、これらが売り手側の事業売却の障壁になり得ます。しかし、本部との協力関係を維持し、正しい手順で承認を得れば、問題なくM&Aの手続きを進めることが可能です。
フランチャイズのブランド価値により買い手を見つけやすい
売り手企業は、既に市場認知度の高いフランチャイズのブランドを活用して買い手企業にアピールできるというメリットがあります。看板やロゴの使用のほか、広告戦略まで含めた本部のサポートを受けられる点は、買い手にとって大きな魅力となるでしょう。さらにM&Aでは既存の顧客基盤を引き継げるため、一から集客を行う新規開業と比べて収益予測を立てやすい点もアピールにつながります。
設備・契約・従業員を引き継ぐことで売却価格を最大化できる
売り手企業は、既存の設備や機器に加えて、高スキル人材やベテラン従業員を新たな事業者へそのまま引き継げます。これらの引き継ぎを交渉材料として、売却価格を最大化できる可能性があります。設備・契約・従業員が整った状態での事業の引継ぎは、買収後すぐに運営を開始できるため、買い手側にとって魅力的に映るでしょう。
本部の支援を活用して条件交渉を有利に進められる
場合によっては、フランチャイズ本部が加盟希望者との契約条件について交渉をサポートするケースがあります。本部の支援を活用して、買い手企業が納得する条件での契約締結を目指すことで、事業譲渡を有利に進められる可能性があるでしょう。
【売り手】フランチャイズ加盟店がM&Aを行うデメリット
フランチャイズ加盟店のM&Aには、本部の承認取得の長期化、契約条件による制約などが存在します。売り手側はこれらのデメリットを事前に理解し、適切な対策を講じることが大切です。ここでは、フランチャイズ加盟店がM&Aを行うデメリットを解説します。
本部の承認プロセスが長引くことで売却のタイミングを逃すことがある
フランチャイズ加盟店のM&Aでは、本部の承認を得ることが必須となります。承認プロセスには詳細な審査が含まれ、買い手側の経営能力や財務状況、ブランドへの適合性などが厳しくチェックされます。場合によっては、数カ月以上の時間を要することも珍しくありません。承認プロセスが長引く間に市場環境が変化したり、買い手側の意向が変わったりすることで、売却機会を逃す可能性があります。
加盟契約の内容によっては、希望条件での売却が難しい
フランチャイズ加盟の契約書には、売却に関するさまざまな制限条項が含まれています。例えば、売却価格の上限設定や、本部による優先買取権(先買権)の規定があると、市場価値よりも低い価格での売却を余儀なくされる場合があります。
ロイヤリティ契約や設備リースの精算が必要になる
フランチャイズ加盟店がM&Aで売却を完了する前に、本部に対する未払いロイヤリティの精算が必須となります。ロイヤリティは売上の一定割合で計算されることが多いです。過去の未払い分に加えて、契約解除までの期間に発生する分も含めて清算する必要があります。
競業避止義務により、同業での再起が制限されるおそれがある
フランチャイズ契約には通常、契約終了後も一定期間にわたり同業種での事業展開を禁止する「競業避止義務」が含まれています。競業避止義務はフランチャイズ本部の営業秘密やノウハウの保護を目的としていますが、加盟店オーナーにとってはキャリア選択の大きな制約となるでしょう。長年同じ業界で培ってきた経験やスキルを活かせず、再就職や新規事業の選択肢が狭まる可能性があります。
【買い手】フランチャイズのM&Aを行うメリットとデメリット
フランチャイズ事業のM&Aは、買い手にとって効率的な事業拡大手段となります。ここでは買い手側のメリットとデメリットを詳しく解説します。
【メリット】すでに確立されたビジネスモデルをすぐに活用できる
フランチャイズ加盟店の買収では、本部が構築した成功実績のあるビジネスモデルをそのまま活用できます。運営マニュアルや研修制度、業務システムなどが整備されているため、経営ノウハウの少ない買い手でも比較的スムーズに事業を開始できます。
【メリット】既存の顧客基盤と収益実績を引き継げる
新規出店の場合とは異なり、すでに稼働している店舗を取得できるため、顧客基盤や収益実績をそのまま引き継ぐことができます。これにより、開業直後からある程度安定した収益を見込めるだけでなく、事業計画や資金計画も立てやすくなります。
【メリット】出店コストや立ち上げ期間を短縮できる
新規にフランチャイズ契約を結ぶ場合と比較して、物件探しから内装工事、開業準備までの時間とコストを大幅に削減できます。特に好立地にある既存店舗は新規で確保することが難しいケースも多く、M&Aによる取得が有効な戦略となります。
【メリット】本部の厳しい審査や高額な加盟金をクリアできる可能性がある
人気フランチャイズチェーンでは、新規加盟の審査が厳しく、また高額な加盟金が必要となる場合があります。M&Aでは既存契約を引き継ぐ形になるため、新規加盟よりも参入障壁が低くなる可能性があります。
【デメリット】店舗の課題や問題点も同時に引き継ぐリスクがある
売却理由となった「収益性の低さ」「設備の老朽化」「スタッフの人間関係」などの問題点も同時に引き継ぐリスクがあります。デューデリジェンス(詳細調査)で表面化しない問題が後から発覚することもあるため、慎重な調査が必要です。
【デメリット】本部の承認取得に時間がかかる
買い手側も本部の審査を通過する必要があり、経営能力や財務状況、ブランドイメージとの適合性などが厳しく評価されます。承認プロセスが長期化すると、M&Aのタイミングを逃したり、機会損失が生じたりする可能性があります。
業界別に見るフランチャイズ加盟店M&Aの特徴
フランチャイズ加盟店のM&Aは業界によって特徴が異なります。ここでは主な業界別の特徴を解説します。
飲食業界のフランチャイズM&A
飲食業界では立地の重要性が高く、好立地の店舗は高値での売買が行われる傾向があります。コロナ禍以降は業態転換を伴うM&Aも増加し、テイクアウト・デリバリー対応型の店舗が特に注目されています。本部の承認基準は比較的厳格で、運営経験や資金力が重視される傾向にあります。
小売業界のフランチャイズM&A
コンビニエンスストアをはじめとする小売業では、売上高や客単価などの定量的な指標に基づいた価値評価が一般的です。大手チェーンの場合、本部による先買権が設定されていることも多く、第三者への売却に制限がかかるケースがあります。
サービス業界のフランチャイズM&A
学習塾やフィットネスクラブなど、サービス業のフランチャイズでは、顧客との継続的な関係性が重要です。そのため、スタッフの引継ぎや顧客への丁寧な説明が売却成功の鍵となります。業界によっては資格保有者の存在が必須となるケースもあり、人材面での審査が厳しい傾向があります。
フランチャイズ加盟店をM&Aで売却する際のポイント
フランチャイズ加盟店の売却は、一般企業のM&Aとは異なる課題があります。ここでは、売却時に知っておくべきポイントをご紹介します。
本部の承認プロセスと契約条件を事前に確認する
売却を検討する際は、最初にフランチャイズ加盟の契約書を精査し、売却・譲渡に関する条項を確認しましょう。契約書に「事業承継は禁止する」と明記されている場合もあります。本部に無断でM&Aを実施すると契約違反で訴訟に発展したり、高額な違約金を請求されたりするリスクがあります。まずは本部へ報告・相談し、許可を得ることが必要です。
売却価格に影響する財務・運営状況を整理する
M&Aによる売却の準備として、自店舗の特徴や強みを洗い出し、データや資料をまとめて交渉に臨みましょう。具体的には、「過去数年間の財務諸表」「顧客データ」「従業員情報」「設備リスト」「在庫状況」などの資料を整理しておくことで、買い手側に対して店舗の価値を明確に示せます。
競業避止義務やロイヤリティ契約の扱いを明確にする
フランチャイズ契約における重要な条項の一つである「競業避止義務」の扱いに関して、M&Aの売却前に確認しておきましょう。本部から競業避止義務違反と見なされると、損害賠償請求につながるリスクがあります。また、ロイヤリティ契約や保証金の扱いについても確認が必要です。これらの条件は売却価格にも影響するため、事前に本部と協議しておきましょう。
フランチャイズのM&A事例
最後に、フランチャイズのM&A事例をご紹介します。自社のM&A検討時の参考にしてみましょう。
株式会社明光ネットワークジャパンによる株式会社ケイラインのM&A
2018年4月、個別指導塾「明光義塾」を展開する株式会社明光ネットワークジャパンは、フランチャイズ加盟校を運営する株式会社ケイラインの全株式を取得し、完全子会社化しました。
ケイラインは東京都や神奈川県などに42教室を展開しており、明光義塾チェーンの中でも有力なフランチャイジーでした。
今回のM&Aにより、直営とフランチャイズの一体運営を強化し、チェーン全体の競争力向上と持続的な成長を図る狙いがあります。取得額は約6億600万円。教育業界では、フランチャイズチェーンの再編や直営化によるブランド統一の動きが進んでおり、本件もその一環と位置づけられます。
【出典】株式会社明光ネットワークジャパン「株式会社ケイラインの株式取得(子会社化)に関するお知らせ」
株式会社トリドールホールディングスによる株式会社アクティブソースのM&A
うどんチェーン「丸亀製麺」などを展開する株式会社トリドールホールディングスは、2020年4月、連結子会社である株式会社アクティブソースを株式交換により完全子会社化しました。
アクティブソースは立ち飲み業態「晩杯屋」を首都圏で展開しており、2017年に80.3%の株式を取得されて以降、グループの支援により経営改善が進んでいました。完全子会社化により、経営資源の効率的な活用や情報共有を一層推進し、グループ全体での相乗効果の最大化を狙った動きです。
外食業界では、業態の多角化やコスト構造の見直しを目的としたM&Aが進んでおり、本件もグループ経営の柔軟性向上を図る一例といえます。
【出典】株式会社トリドールホールディングス「簡易株式交換による連結子会社(株式会社アクティブソース)の完全子会社化に関するお知らせ」
株式会社オートバックスセブンによる株式会社タクボのM&A
2017年3月、カー用品大手オートバックスセブンの連結子会社である株式会社オートバックス福岡は、フランチャイズ加盟法人の株式会社タクボが運営していた「オートバックス唐津店」と「オートバックス・佐賀南バイパス店」の2店舗を譲受しました。
本件は佐賀エリアにおける経営体制の最適化と競争力の強化を目的としたもので、エリア戦略の一環として直営化を進める形となります。譲受価額は非開示ながら連結純資産の30%未満とされています。
カー用品業界では、フランチャイズ店舗の直営化を通じてサービスの標準化や経営効率の向上を図る動きがみられ、本件もその流れに沿った戦略的な事例です。
【出典】株式会社オートバックスセブン「連結子会社の店舗譲受に関するお知らせ」
まとめ|フランチャイズのM&Aに関するご相談はCINC Capitalへ
フランチャイズ加盟店のM&Aでは、本部との契約関係が取引の成否に関わるケースがあります。本部のブランド力を生かして買い手企業を獲得しやすい一方で、本部による承認が長期化する可能性や、契約条件に制約を受ける可能性が考えられます。こうしたフランチャイズのM&Aならではの複雑な背景を考慮して売却を成功させるには、専門的な知識と経験が欠かせません。
CINC Capitalでは、M&A仲介協会会員および中小企業庁のM&A登録支援機関として、フランチャイズM&Aに関する豊富な経験と専門知識を持つアドバイザーがサポートいたします。フランチャイズ案件の特性を考慮した適正な手数料設定で、売り手・買い手双方の負担を軽減します。
また、業界歴10年以上または特定業界に精通したアドバイザーのみが担当し、フランチャイズ本部との交渉や承認プロセスをスムーズに進めます。
さらには、独自のマッチングシステムにより、最適な買い手候補を効率的に見つけ出し、成約率を高めます。フランチャイズ加盟店のM&Aをご検討中の方は、ぜひCINC Capitalにご相談ください。
この記事の監修者

CINC Capital取締役執行役員社長
阿部 泰士
リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。