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歯科業界のM&A・事業承継動向(2025年)メリットデメリット/事例/成功のポイントを解説

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  • 公開日2025.04.21
  • 更新日2025.04.21

歯科業界のM&A・事業承継動向(2025年)メリットデメリット/事例/成功のポイントを解説

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高齢者問題解決や地域医療の空白化を防ぐため、昨今の歯科業界では事業承継を目的とするM&Aが活発化しています。事業承継は、中小の歯科診療所の廃業を防ぐために欠かせない経営戦略だといえます。

この記事では、歯科業界のM&A・事業承継の最新動向、メリット・デメリット、成功のポイントを解説します。

歯科業界の市場動向

厚生労働省が公表する「令和4(2022)年度 国民医療費の概況」によると、2022年度における国内の歯科診療医療費は3兆2,275億円に達しました。国民医療費の46兆6,967億円のうち、6.9%を歯科診療医療費が占めていることになります。

また、令和3年に実施された「第23回医療経済実態調査」によれば、開業医が運営する歯科診療所の医業収益は、1施設あたり平均4,574万8,000円です。一方で法人形態の歯科医院における年間医業収益は、1施設あたり平均1億433万円と、個人経営の医院と比較すると高い数値となっています。

【出典】厚生労働省「令和4(2022)年度 国民医療費の概況」

【出典】中央社会保険医療協議会「第23回医療経済実態調査 (医療機関等調査) 報告」

歯科業界が抱える課題

ここからは、歯科業界が抱える経営課題についてご紹介します。事業承継を筆頭に、M&Aの各手法で解決できる可能性があります。

院長の高齢化と後継者不足

「株式会社帝国データバンク」の調査によると、歯科医院の経営者のうち25.6%が70歳以上であることがわかりました。ここで懸念されるのが後継者問題です。日本歯科医師会が公表する資料によると、将来の継承の予定について約9割が「事業承継の状況は不明」または「事業承継の予定がない」と回答しています。歯科医院における高齢者問題は、極めて深刻な状態です。

【出典】株式会社帝国データバンク「医療機関の倒産・休廃業解散動向調査(2024年)」

【出典】日本歯科医師会「歯科医師需給について」

地域による歯科医院の偏在

厚生労働省が実施した「無歯科医地区等調査」によれば、2023年の時点で国内には歯科医療を受けられない地区が784地区あり、18万8,647人が適切な歯科医療にアクセスできない状況です。この背景には、若年世代の歯科医師の都市部志向があります。都市部では歯科医院が非常に多く競争環境が激化する一方で、地方では歯科医師不足が深刻化しています。

【出典】厚生労働省「令和4年度無医地区等及び無歯科医地区等調査の結果を公表します」

経営環境の変化と競争激化

一般的に「歯科医院はコンビニよりも多い」といわれる通り、歯科医院の経営環境は競合が多く、厳しい状況にあります。先述の通り、都市部では歯科医院間の競争が激化しています。歯科医院が飽和する地域では患者の取り合いが発生し、歯科医院経営を圧迫しているのです。

こうした競争激化の背景には、昨今における患者のニーズの変化もあります。近年は虫歯になる患者が減少傾向にあり、従来の保険診療中心の経営モデルでは収益確保が難しくなっています。

歯科業界におけるM&A・事業承継の最新動向(2025年)

歯科医院の事業承継やM&Aの動向は、近年大きく変化しています。高齢化する歯科医師、後継者不足、デジタル化の進展など、さまざまな要因が歯科業界に影響を与えています。具体的に見ていきましょう。

第三者承継による事業承継の増加

歯科業界における事業承継の形態は、従来の親族内承継から第三者承継へと変化しています。これには「歯科医師の高齢化」と「後継者不足」という2つの課題が存在します。特に歯科診療所の後継者不足は深刻で、後継者が決まらないまま引退を考える年齢に差し掛かっている歯科医師が少なくありません。

デジタル化対応を見据えたM&A

近年は大手を中心に、デジタルレントゲン・3Dスキャナー・電子カルテ・オンライン予約システムなどの導入が進んでいます。一方、中小の歯科診療所ではコストの関係から導入が進みにくく、医院間のデジタル格差が進んでいる状況です。大手歯科グループの傘下に入るなど、戦略的なM&Aで現場のデジタル化を推し進める動きが見られます。

歯科医院チェーンによる買収の拡大

歯科医院のM&A市場では、大手歯科チェーンによる買収が活発化しています。デジタル技術に投資可能な大手歯科チェーンが、小規模クリニックを買収し、統合後に院内のデジタル化を推進するケースが増えています。なかでもデジタル化やデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する歯科医院は、買収対象としての注目度が高いとされています。歯科医院経営においても、デジタル戦略が重要な差別化要因となりつつあるのです。

歯科診療所がM&A・事業承継をするメリット

歯科診療所が減少傾向にある中、M&Aは病院存続に欠かせない手段となっています。ここでは、事業承継などのM&Aを検討するメリットを解説します。

地域医療の空白を防ぐことができる

事業承継を実施すれば、後継者不足で存続の危機に瀕していた歯科医院を存続させられます。なかでも地方や過疎地域の歯科医院の場合は、統合によって診療体制を維持すると、地域医療の空白を防ぐことが可能です。

スタッフの雇用を維持できる

事業承継により、医療スタッフの雇用を維持できる可能性が高まります。医療スタッフは引き続き慣れ親しんだ環境で働くことができ、失業リスクを回避できます。買い手側にとっても、経験豊富なスタッフをそのまま雇用できる点は、円滑な医院運営を実現する大きなメリットだといえます。患者の信頼を得ているスタッフの雇用を維持することで、承継後の患者の離脱を防ぎやすいのもポイントです。

譲渡利益が得られる

M&Aでの売却に成功すれば、事業オーナーは引退後の生活資金や新たな事業資金を確保できます。また、医院を閉鎖する場合、廃業にともなうさまざまな費用が発生しますが、事業承継を実現できれば廃業費用が発生しません。

歯科診療所がM&A・事業承継をするデメリット

事業承継には多くのメリットがある一方で、見過ごせないデメリットも存在します。ここでは、歯科診療所がM&A・事業承継をするデメリットをご紹介します。

患者の離脱リスク

個人経営の歯科診療所では、院長の人柄や治療方針に惹かれて通院している患者がいます。「この先生だから通っている」という患者にとって、院長の交代は大きな不安要素となり、新しい院長への信頼構築までに時間がかかるでしょう。特に長年通院している高齢患者は変化に敏感で、院長交代をきっかけに他院へ移ってしまうケースが少なくありません。

診療方針や経営理念の相違による摩擦

病院運営の方針は院長によって大きく異なります。前院長と新院長の考え方に相違がある場合、スタッフからの評判が低下するリスクがあります。長期にわたり同じ方針で運営されてきた歯科医院ほど、急激な変化が現場の混乱を招き、チーム医療の質に影響を与える可能性があるでしょう。

歯科診療所がM&Aを成功させるためのポイント

ここでは、歯科診療所がM&Aを成功させるための3つのポイントをご紹介します。

できるだけ早く事業承継計画を建てる

事業承継を成功させるためには、早い段階から計画を立て、適切な譲渡時期を見極めることが重要です。目安として、譲渡を考え始めてから実際の承継までに1〜2年程度の準備期間を設けるといいでしょう。期間中に、医院の財務状況の整理や患者データの整備、スタッフとの関係構築など、さまざまな準備を進めていきます。

診療実績の「見える化」

買い手側に市場価値を伝えるため、診療実績の「見える化」を行いましょう。具体的には、患者数・リコール率・診療内容別の割合・患者の年齢層分布などのデータを整理し、これまでの診療実績を数値で示すことが大切です。

スタッフへの適切な説明と雇用条件の整理

スタッフへの説明は、タイミングと内容に配慮する必要があります。早すぎる段階での説明は不安を招くおそれがある一方で、できるだけ早く正確な情報を伝えることも大切です。買い手との最終契約締結後、またはクロージング後には、速やかにスタッフへ対する説明を行うことがおすすめです。特に雇用条件・給与体系・勤務形態などについては明確に伝え、スタッフの不安を取り除きましょう。

歯科業界のM&A事例

最後に、歯科業界のM&A事例をご紹介します。自社のM&A検討時の参考にしてみましょう。

株式会社歯愛メディカルによる有限会社ナイキ歯研のM&A

歯科医療用品の通信販売を手がける歯愛メディカルは、2022年10月に歯科技工所の有限会社ナイキ歯研を子会社化しました。

ナイキ歯研は入れ歯・義歯(デンチャー)分野に強みを持ち、歯科技工のデジタル化にも対応しており、技術力の高い事業展開を行っている企業です。歯愛メディカルは近年、歯科技工所との連携を強化しており、本件もその一環と位置付けられます。

デジタル技工や非金属素材の活用が進む中、同社はナイキ歯研とのシナジーにより、入れ歯・義歯の分野での製造効率向上や技術検証、新たなサービス開発を目指しています。歯科業界全体の高度化とサービス多様化に対応する動きとして注目されるM&Aです。

【出典】株式会社歯愛メディカル「有限会社ナイキ歯研株式の取得(子会社化)に関するお知らせ」

ユニゾン・キャピタル株式会社による有限会社ケイ・アイ・ティーのM&A

ユニゾン・キャピタルは、2017年9月にヘルスケア事業支援を目的とする新会社「地域ヘルスケア連携基盤(CHCP)」を設立し、その子会社CHCPファーマシーを通じて、群馬県の調剤薬局運営会社である有限会社ケイ・アイ・ティーを買収しました。

高齢化による医療・介護費の増加や、業界における人材・後継者不足を背景に、同社は中小薬局のグループ化を推進し、地域包括ケアシステムの一翼を担う体制の構築を目指しています。

みずほ銀行や三井不動産などのパートナー企業と連携し、医療サービスの質の向上と経営基盤の安定化を図る取り組みであり、今後のヘルスケア業界における地域連携型M&Aの先駆けとなる動きといえます。

【出典】ユニゾン・キャピタル株式会社「地域ヘルスケア連携基盤の設立及びケイ・アイ・ティーの株式取得に関するお知らせ」

株式会社歯愛メディカルによる株式会社サクラ歯研のM&A

歯科医療用品の通販大手である歯愛メディカルは、2022年9月に歯科技工所の株式会社サクラ歯研を子会社化しました。

サクラ歯研は1992年創業で、大阪府堺市に拠点を構え、スキャナーやCAD/CAM、3Dプリンターなどデジタル技工に積極的に取り組む先進的な歯科技工所です。

歯愛メディカルはこれまでもCAD/CAM技工やオーラルセラミックジルコニア製品の展開など歯科技工分野での事業を拡大しており、本件M&Aによりサクラ歯研と共同で新たな商材・ソリューションの開発を進め、さらなるサービス強化を図る方針です。歯科技工のデジタル化が進む中で、製造力と販売力を統合する戦略的な動きといえます。

【出典】株式会社歯愛メディカル「株式会社サクラ歯研株式の取得(子会社化)に関するお知らせ」

まとめ|歯科業界のM&A動向を押さえてM&Aを成功させましょう

歯科業界でM&Aを成功させるには、早期の計画立案や診療実績の「見える化」、スタッフへの適切な説明が重要となります。歯科業界のM&A動向を押さえて、適切な事業承継戦略を立てることで、スムーズな事業承継を実現できるでしょう。歯科診療所の院長をはじめ、事業承継を検討中の経営者の方は、ぜひ一度M&A仲介会社にご相談ください。

CINC Capitalは、M&A仲介協会会員および中小企業庁のM&A登録支援機関として、M&Aのご相談を受け付けております。業界歴10年以上のプロアドバイザーが、お客様の真の利益を追求します。M&Aの相談をご希望の方はお気軽にお問い合わせください。

この記事の監修者

阿部 泰士

CINC Capital取締役執行役員社長

阿部 泰士

リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。

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