CINC CapitalはCINC(証券コード:4378)のグループ会社です。
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- 公開日2025.04.21
- 更新日2025.04.21
データセンター業界のM&A動向(2025年)メリットデメリット/事例/成功のポイントを解説
データセンター業界は2025年、AIやクラウドサービスの普及により急成長を遂げています。それにともない、市場拡大を見据えた買収やクロスオーバーM&A、投資ファンドの参入が活発化している状況です。
本記事では、拡大するデータセンター業界のM&A最新動向と、事業売却のメリット・デメリット、成功のポイントを徹底解説します。
目次
データセンター業界の市場動向
総務省の「情報通信白書」によると、国内のデータセンターサービスの市場規模は2022年時点で2兆938億円に達しました。市場規模は拡大傾向が続くと推測され、2027年には4兆1,862億円に到達する見込みです。
世界に目を向けると、海外のデータセンター市場も拡大傾向にあります。同じく「情報通信白書」によると、世界のデータセンターシステムの市場規模は2023年に34.1兆円に達しており、2024年には36.7兆円規模に達すると予想されています。
市場拡大を支えているのは、主に米国や中国で進展する技術革新と増え続けるデータ量です。特に米国にはデータセンターが集中しており、2024年3月時点の件数は5,381件とされ、世界の大部分を占めています。
データセンター業界が抱える課題
ここからは、国内のデータセンター業界が抱えるさまざまな課題についてご紹介します。
業界が持続的に発展するためにも、課題の解消が急務となっています。
環境負荷への配慮
気候変動対策が世界的に重視される中、データセンター業界においては持続可能なエネルギー利用への移行が求められています。その対策として、再生可能エネルギーの活用や冷却システムの効率化、サーバー仮想化技術の導入など、環境負荷軽減に向けた取り組みが行われています。
セキュリティリスクの増大
データセンターは常時、サイバー攻撃や自然災害、内部不正などの多様なリスクにさらされています。これらの脅威に対抗するため、複数層にわたるセキュリティ対策やAIを活用した異常検知システムの導入が進められています。
特に、ランサムウェアやフィッシング攻撃などの新たなサイバー脅威への対応が重要性を増しており、物理的セキュリティとデジタルセキュリティの統合的なアプローチが必要とされています。
施設の老朽化と急がれる設備更新
2000年代に建設された多くのデータセンターでは老朽化が進行しており、最新の技術要件や増大する需要に対応するための更新が急務です。しかし、施設更新・新設には多額の投資が必要であり、とりわけ都市部では土地価格の高騰や電力供給の制約が障害となっています。
データセンター業界のM&A最新動向(2025年)
近年のデータセンター業界ではM&Aが盛んになっており、国境を越えた取引や投資ファンドの市場参入、大手企業による自社運営化など多様な動きが見られます。ここでは、データセンター業界におけるM&A最新動向をご紹介します。
市場拡大を見据えたM&A案件の増加
データセンター業界では、AIやクラウドの需要拡大を背景としたM&Aが実施されるケースがあります。新しい技術の広がりにより、データ処理能力を高めるための施設拡充が必須となり、業界全体で事業再編が進行しているのです。
グローバル市場においては、市場拡大を目指した戦略的買収が行われています。例えば、M&A案件が急増しているアジア太平洋地域では、欧米企業による現地企業の買収が目立っています。また、既存施設の老朽化にともなう改修や新規建設計画も、M&Aの主な目的です。
クロスボーダーM&Aの活発化
昨今、データセンター業界では国を超えたクロスボーダーM&Aも注目を集めています。各国のデータに関する規制やプライバシー保護法が厳格化される中、企業が地域ごとの拠点確保を目指しているためです。また、AI技術の進展により、生成AIや大規模言語モデル(LLM)の処理能力強化のための施設が求められ、これが国境を越えたM&Aの契機となっています。
投資ファンドの市場参入
データセンターは安定した収益を生み出すビジネスモデルであるため、投資ファンドからの関心が高まっている点も特徴です。また、プライベートエクイティファンドやインフラファンドが、既存施設の運営や新規開発に積極的に資金提供しており、業界全体の拡大を支えています。さらにデータセンター事業者も設備投資の資金確保のため、ファンドとの協力関係を強化しています。
データセンター運営企業がM&Aをするメリット
ここからは、データセンターの運営企業が事業を売却するメリットについて解説します。売り手企業目線のメリットをまとめたので、ぜひ参考にしてください。
M&Aによる資金化のメリット
デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進からデータセンター需要は高まっており、売却価格は上昇傾向にあります。株式譲渡の場合、オーナーや株主個人が売却益を獲得し、個人の資産形成や新規事業への投資に活用できます。事業譲渡の場合は企業(法人)が売却益を獲得でき、新たな事業への投資や既存事業の強化に利用可能です。
また、データセンターの評価額は単なる不動産価値だけでなく、電力供給能力や冷却効率などの技術的要素も加味されます。日本のデータセンターM&Aでは、主に以下のような評価方法が用いられます。
- 時価純資産+営業権法:有形資産の価値に加え、顧客基盤や運用ノウハウなどの無形価値(営業権)を評価
- マルチプル法:収益力を基準とした評価方法で、データセンター業界では市場環境や設備の最新性、立地条件、顧客基盤などの要素が評価に大きく影響
企業価値評価は複雑であり、最新の市場動向や個別の事業特性によって、結果が大きく変動します。最適な評価と取引条件を実現するためには、M&A専門のアドバイザーに相談し、データセンター業界に精通した専門家の支援を受けることがおすすめです。適切に運営されているデータセンターほど、高額での取引が期待できるでしょう。
コア事業への経営資源の集中
多くの企業にとって、データセンター運営は主要事業ではありません。売却益や人材をコア事業に集中させることで競争力を高め、市場での優位性を確保できます。適切なタイミングでの事業売却は、合理的な判断といえるでしょう。
施設維持・更新コストからの解放
データセンターの運営には、設備の維持・更新に多額の費用が必要です。事業売却によって各種コスト負担から解放され、自社における財務体質の改善を図れます。特に技術革新が急速に進む現代では、データセンターの設備更新を頻繁に行う必要があり、その費用は膨大です。適正価格で売却できれば、ほかの事業分野への投資に集中できるようになります。
データセンター運営企業がM&Aをするデメリット
事業売却には、データセンターの運用面や競争力に影響するデメリットが存在します。詳しく見ていきましょう。
自社データ運用の柔軟性低下
データセンターを売却すると、企業はITインフラに対する直接的な管理権限を失います。設備変更や新システムの導入が必要な際、外部事業者の確認が必要になり、対応が遅れがちになるでしょう。市場環境が急速に変化する昨今において、データ運用の柔軟性の低下は市場競争力を下げる要因です。
データ移行時のトラブルリスク
事業売却時のデータ移行は、技術的に複雑で失敗のリスクをともないます。大量のデータを扱う企業では移行作業が長期化し、その間のシステム停止が業務に影響する可能性が高いでしょう。
データセンター運営企業がM&Aを成功させるためのポイント
事業売却は、企業戦略や顧客関係、従業員の処遇、データ管理など多面的な要素が絡む複雑なプロセスです。ここからは、データセンターの売却を有利に進めるためのポイントをご紹介します。
経営戦略との一貫性を確保する
事業売却の目的を明確にし、全社的な経営戦略と整合させましょう。資金調達が目的なのか、コア事業への経営資源集中が目的なのかによって、最適な売却先や交渉方針が変わってきます。また、売却後も業務に支障が出ないよう、代替策をあらかじめ準備しておくことが大切です。
売却後のデータ移行計画を綿密に立てる
売却後も自社のデータを安全に運用するため、具体的な移行計画を立てます。クラウドへの移行戦略や新たなデータセンター利用についての明確なロードマップを作成し、業務の継続性を確保しましょう。
従業員とのコミュニケーションを重視する
データセンターの運営ノウハウを持つ従業員は貴重です。従業員に対して透明性の高い情報提供を行い、事業売却への不安を軽減しましょう。また、買い手企業での雇用継続保証やインセンティブ提供など、人材流出を防ぐ施策も検討してください。
デューデリジェンスに備える
データセンターのM&Aでは、買い手側によるデューデリジェンス(DD)が重要とされます。特に、技術DD・環境DD・法務DDなどが買収判断に大きな影響を与えます。売り手側は、デューデリジェンスに備えて事前に関連資料を整理し、スムーズな情報開示ができる体制を整えることがポイントです。外部の専門家のサポートを受けながら、買い手からの質問に迅速かつ正確に対応できるように準備しましょう。
データセンター業界のM&A事例
最後に、データセンター業界のM&A事例をご紹介します。自社のM&A検討時の参考にしてみましょう。
エクイニクス・ジャパンによる株式会社ビットアイルのM&A
米エクイニクスは2015年12月、株式会社ビットアイルの未取得株式を取得し、完全子会社化を完了しました。これにより、エクイニクスはビットアイルが保有する東京都内の6拠点を加え、国内11拠点、アジア太平洋地域で27拠点のデータセンターを展開する体制となりました。
両社の拠点は近接しており、統合によりネットワーク密度を高め、顧客間のシームレスな接続が可能になるとしています。国内市場におけるインターコネクション需要の高まりに応え、アジアでの成長加速を狙う戦略的な動きであり、今後さらなる市場拡大が期待されます。
【出典】エクイニクス・ジャパン「エクイニクス、ビットアイル の買収を完了」
KDDIによるAllied Properties REITのM&A
KDDI株式会社は2023年6月、カナダでデータセンター事業を展開するAllied Properties REITと事業譲渡契約を締結し、約1,446億円で同事業を取得しました。
これに伴い、新たに現地法人「KDDI Canada, Inc.」を設立し、北米におけるデータセンター事業を強化します。
取得対象となる拠点は、コンテンツ事業者や通信事業者同士が相互接続できるコネクティビティデータセンターであり、世界的に拡大するデータ流通ニーズに応える戦略的な投資と位置づけられます。KDDIは欧州・東南アジアに続き、北米市場でも事業基盤を広げ、グローバルなDX支援を加速していく方針です。
【出典】KDDI株式会社「カナダでのデータセンター事業拡大に向けAllied Properties REITと事業譲渡契約を締結」
株式会社アイシンによるアイシン・インフォテックス株式会社のM&A
株式会社アイシンは、2023年1月、連結子会社であるアイシン・インフォテックス株式会社との吸収合併契約を締結しました。2023年4月1日付で効力発生となり、アイシンを存続会社、インフォテックスを消滅会社とする簡易合併が実施されます。
本合併は、グループビジョン「アイシングループビジョン2030」達成に向けたデジタル技術活用とDX推進の一環であり、開発リソースの集中とデジタル人材育成を加速させる狙いがあります。自動車産業の変革期において、ソフトウェア開発力とデジタル基盤の強化が競争力向上に直結する動きといえます。
【出典】株式会社アイシン「アイシン・インフォテックス株式会社との合併契約締結(簡易合併)のお知らせ」
まとめ|データセンター業界のM&A動向を押さえてM&Aを成功させましょう
データセンター業界のM&Aは今後も拡大傾向が続く見込みです。これから事業売却を検討するなら、専門知識と豊富な経験を持つM&A仲介会社に相談すると良いでしょう。専任アドバイザーが最適な事業売却戦略を提案するとともに、買い手との交渉や複雑なプロセスまで手厚いサポートが期待できます。
CINC Capitalは、M&A仲介協会会員および中小企業庁のM&A登録支援機関として、M&Aのご相談を受け付けております。業界歴10年以上のプロアドバイザーが、お客様の真の利益を追求します。M&Aの相談をご希望の方はお気軽にお問い合わせください。
この記事の監修者

CINC Capital取締役執行役員社長
阿部 泰士
リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。