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自動車整備業界のM&A動向(2025年)メリットデメリット/事例/成功のポイントを解説

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  • 公開日2025.03.27
  • 更新日2025.04.02

自動車整備業界のM&A動向(2025年)メリットデメリット/事例/成功のポイントを解説

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近年の自動車整備業界では、EV(電気自動車)や自動運転技術の進化、カーシェア市場の拡大など、急速な変化が生じています。一方で、後継者不足や整備士の人材不足も深刻化し、多くの整備工場が事業継続の難しさに直面しているのが現状です。

こうした中、M&A(合併・買収)が企業の存続や成長戦略として注目されています。

今回は、自動車整備業界における2025年のM&A最新動向や成功のポイント、メリット・デメリットを徹底解説します。

自動車整備業界の市場動向

「日本自動車整備振興会連合会」の調査によると、2023年時点における日本の自動車整備業界の市場規模は約5.9兆円とのことです。回復の兆しこそあるものの、元々自動車整備業界の市場規模は2006年をピークに、緩やかな減少傾向が続いていました。この背景には、若年層の新車購入意欲の低下や、自動車部品の耐久性向上による交換サイクルの長期化があります。さらにEVの普及にともなう整備需要の変化も、整備業界の総売上に直接的な影響を与えているのでしょう。

一方で、電動化やコネクテッド化の進展により、新たな整備技術およびサービスの需要も生まれつつあります。こうした変化に適切に対応することが、今後の業界成長のカギを握ると考えられます。

【出典】一般社団法人 日本自動車整備振興会連合会「令和5年度 自動車特定整備業実態調査結果の概要について」

自動車整備業界が抱える課題

自動車整備業界は昨今、人材不足と技術革新という二つの課題に直面しています。細かく見ていきましょう。

後継者や人材の不足

まず挙げられる深刻な経営課題が、後継者不足です。「日刊自動車新聞社」の調査によると、自動車整備事業を営む47.7%の企業が後継者未定の状態にあり、業界全体で喫緊の対応が求められています。さらに、自動車整備士の総数も年々減少しており、人材不足から現場が回らなくなっているケースも少なくありません。

【出典】日刊自動車新聞社「自動車整備業界動向調査レポート」 

自動車ユーザーの減少

自動車の所有形態は、大きく様変わりしています。昨今では、カーシェアや「MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)」といった新しい移動サービスの登場により、個人で車を持つ人が減少傾向にあります。

その一方で、法人向けの整備やカーシェア事業者からの需要は新たに生まれています。ビジネスモデル自体が転換期を迎えているといえるでしょう。

制度の変化や技術革新への対応

2020年4月に道路運送車両法が改正され、現場での動き方が変わりました。従来の整備に加え、先進安全自動車に対応する電子制御整備が必須となったのです。具体的には、EVやハイブリッド車の増加により、高電圧システムや電子制御装置に関する専門知識が不可欠となり、それに対応できる整備士もまた、不足している状況にあります。

自動車整備業界のM&A最新動向(2025年)

2025年の自動車整備業界では、事業継続と技術革新対応を目的としたM&Aが活発化しています。ここでは、自動車整備業界におけるM&A最新動向をご紹介します。

規模の大きな整備事業者によるM&Aの増加

最新設備の導入や高度な技術習得が不可欠となり、中小の整備事業者にとっては経営環境が厳しさを増しています。このことから、資金力と技術力を持つ大手整備事業者が中小事業者の買収を積極的に進め、サービス網の拡大を図る動きが目立ちます。

EV整備対応企業の買収増加

EV時代の本格到来を見据え、EV整備のノウハウを持つ企業の価値が高まっています。従来のエンジン車とは異なる整備技術や専門設備が求められるので、すでに技術基盤を確立している中小企業は買収対象となりやすく、その評価額も上昇傾向にあります。

デジタル化推進のための連携・統合

整備業界全体で「デジタルトランスフォーメーション(DX)」の波が押し寄せ、予約システムのオンライン化や顧客管理のデジタル化が進んでいます。

この流れを受け、IT企業との資本提携や買収を検討する大手が少なくありません。すでに一部の企業は、顧客データの管理や整備履歴のデジタル化に強みを持つソフトウェア企業と統合し、サービスの効率化と顧客満足度の向上を実現しています。

自動車整備会社がM&Aをするメリット

技術革新や人材確保の課題に対して、M&Aは効果的な解決策といえます。ここでは、自動車整備会社がM&Aをするメリットを売り手側の視点でご説明します。

新技術への対応力が強化

先進的な整備技術を持つ企業とのM&Aにより、最新技術へのキャッチアップが一気に進みます。中でもEV整備に特化した企業との統合は、将来的な競争優位性の確保に直結するとされます。

整備士不足問題の解決

M&Aは、高スキル人材を効率的に獲得できる手段でもあります。大手企業の傘下に入れば採用力が高まり、若手整備士にとって魅力的な職場となるでしょう。結果、整備士不足問題を解消できる可能性もあります。

競争力の向上

事業統合によって市場でのブランド力が向上し、サービスの幅が広がります。例えば、自動車販売店との統合なら、整備・販売の一貫サービスを提供でき、顧客満足度の向上が期待できるでしょう。また、部品調達の効率化やコスト削減により、価格競争力も強化されます。

後継者問題の解決

高齢化が進む自動車整備業界において、後継者不在は深刻な問題です。M&Aは、事業の存続を確保しながら、従業員の雇用も維持できる事業承継手段となります。車検データベースの活用や、優秀な整備士資格保持者の承継も期待できるでしょう。

整備業務の効率化

複数の整備工場を統合することで、設備投資の効率化や業務プロセスの標準化が進み、生産性が向上します。さらにデジタル技術を活用した予約管理システムや顧客管理システムの導入も促進され、効率的な事業運営が可能となるでしょう。

自動車整備会社がM&Aをするデメリット

企業文化の違いによる軋轢、取引先との関係性の変化、そして従業員の不安など、M&Aにはいくつかのデメリットがあります。売り手側の視点で確認してみましょう。

企業文化の違いによる摩擦

企業文化の違いは、M&A後の運営に大きな影響を与えます。売り手と買い手、双方独自の作業手順や品質管理の方法、顧客への対応方針などが異なることで、日々の業務に支障が出る可能性があります。同様に経営理念や価値観の違いも、従業員間のスムーズな意思疎通を妨げる要因となりかねません。

顧客離れが生じるリスク

経営体制の変化にともない、既存の取引先との関係性に変化が生じるケースが少なくありません。例えば地域に根差した整備工場の場合、なじみの担当者がいなくなったり、お店の雰囲気が変わったりすることで、お客様が競合他社に流れてしまうリスクがあります。このほかに、保険・保証の継続リスクやメーカー契約解除リスクにも注意が必要です。

従業員のモチベーション低下や離職の可能性

自動車整備業界においては、熟練技術者の存在が会社の強みとなります。M&Aを機に高スキル人材が離職してしまうと、事業の継続に重大な支障をきたす恐れがあるでしょう。また、業務重複による人員整理なども従業員の不安をかき立てる要因となるため、慎重に検討すべきです。

自動車整備会社がM&Aを成功させるためのポイント

M&Aを成功に導くためには、確かな技術力と健全な経営基盤が欠かせません。先進技術への対応力と安定した収益構造の構築が、企業価値を高める要素となります。ここでは、自動車整備会社がM&Aを成功させるためのポイントを売り手目線でご紹介します。

他社との差別化や技術力のアピール

自社の技術力を明確に示し、他社との差別化を図りましょう。特に、スキャンツールを活用した故障診断技術や、先進安全装置の整備能力など、特殊技術を持つ整備士が在籍する企業は、市場で高く評価されます。

健全な財務状況の維持

財務状況の健全性は、M&Aの重要な判断基準です。業界の標準の粗利率と営業利益率を上回る実績を示せば、交渉において優位な立場に立てるでしょう。このほかに、認証工場・指定工場の承継、メーカー指定工場契約などもアピールにつながります。

設備の整備と最適化

適切な設備投資と維持管理は、整備品質の向上とともに、企業価値を高めます。具体的には、認証工場や指定工場、そして各種設備を即座に稼働できる状態にしておきましょう。また、新しい自動車技術に対応するための設備投資も計画的に行う必要があります。

M&A専門家への相談

M&Aをスムーズに進めるには、業界に精通した専門家のサポートが欠かせません。自動車整備業界のデューデリジェンスでは、「認証工場・指定工場の承継」「整備士の資格保有状況」「設備・機械の状況」「メーカー指定工場の契約継続性」「損害保険会社との契約関係」などの詳細なチェックが必要です。

M&A仲介会社などに相談することで、各種認証や資格の承継、従業員の雇用継続といった業界特有の課題に関して、的確なアドバイスを得られます。

自動車整備業界のM&A事例

株式会社レダックス(旧カーチスホールディングス)による新興自動車株式会社のM&A

2024年10月9日、株式会社レダックス(旧・カーチスホールディングス)は、新興自動車株式会社(千葉県)の全株式を取得し、連結子会社化することを発表しました。

レダックスは、親会社であるレダグループホールディングスのもと、投資・金融・不動産・M&Aコンサルティング事業の多角化を進めています。その一環として、中古車買取・販売事業を展開する子会社カーチスとのシナジーを見込み、千葉県で61年の歴史を持つ新興自動車の買収を決定しました。新興自動車は自動車整備指定工場として地域に根差した事業を展開しており、カーチスの既存顧客基盤との連携が期待されています。

本件の買収価格は約4,312万円です。新興自動車は直近の決算で純資産がマイナスでしたが、保有不動産の時価評価および代表取締役の現物出資により財務状況を改善しました。その上で、レダックスによる財務・法務デューデリジェンスを経て買収が決定されています。

本件により、レダックスは中古車販売と整備事業の一体運営を強化し、千葉エリアでの競争力向上を目指します。今後の成長戦略の鍵となる案件といえるでしょう。

【出典】株式会社レダックス「子会社等の異動を伴う株式取得に関するお知らせ」

株式会社オートバックスセブンによる近畿自動車工業株式会社のM&A

2024年4月9日、株式会社オートバックスセブンは、京都府で車検・整備、板金事業を展開する近藤自動車工業株式会社の全株式を取得し、完全子会社化することを発表しました。株式譲渡は同年5月1日に実施される予定です。

オートバックスセブンは、「5ヵ年ローリングプラン」に基づき、次世代技術に対応した整備ネットワークの構築を進めています。本件は、その一環として新たな整備事業者との連携を強化し、顧客接点の拡大と収益力向上を図る目的で実施されました。

近藤自動車工業は、1976年の設立以来、自動車の修理・整備、販売、リース、用品販売を手がけており、地域に根ざした事業を展開しています。オートバックスセブンは、同社のノウハウや既存顧客基盤を活用し、整備事業のさらなる拡充を目指すとみられます。

本件により、オートバックスセブンは、既存のカー用品販売事業とのシナジーを高め、車検・整備分野での競争力を強化していく方針です。今後も同社のM&A戦略に注目が集まりそうです。

【出典】株式会社オートバックスセブン「近藤自動車工業株式会社の株式取得(完全子会社化)に関するお知らせ」

SPK株式会社による株式会社デルオートのM&A

2021年12月16日、SPK株式会社は、自動車トランスミッションの修理やリビルト事業を手がける株式会社デルオート(神奈川県)の全株式を取得し、子会社化することを決定しました。株式譲渡は同年12月22日に実施される予定です。

デルオートは1970年創業の老舗企業で、自動車整備・補修のアフターマーケットを主要領域とするSPKグループにとって、シナジー効果が期待できると判断されました。SPKは国内外の自動車部品卸を展開しており、本件の買収により、補修・リビルト市場における競争力を一層強化する狙いがあります。

デルオートは近年、営業利益が改善傾向にあり、2021年2月期には黒字転換を達成しました。SPKによる経営支援とグループシナジーの活用により、さらなる成長が見込まれます。

本件は、自動車アフターマーケット事業の拡充を目指すSPKの戦略の一環であり、今後のM&A動向にも注目が集まりそうです。

【出典】SPK株式会社「株式の取得(子会社化)に関するお知らせ」

まとめ|自動車整備業界のM&A動向を押さえてM&Aを成功させましょう

自動車整備業界のM&Aは、事業承継の解決策としてだけでなく、新たな技術への対応や経営の効率化も期待できる手段です。ただし、企業文化の違いや人材流出リスクもあり、慎重に検討・実行しなければなりません。事業譲渡や株式譲渡など、M&Aに興味のある経営者は、M&A仲介会社などの専門家に相談してください。

CINC Capitalは、M&A仲介協会会員および中小企業庁のM&A登録支援機関として、M&Aのご相談を受け付けております。業界歴10年以上のプロアドバイザーが、お客様の真の利益を追求します。M&Aの相談をご希望の方はお気軽にお問い合わせください。

この記事の監修者

阿部 泰士

CINC Capital取締役執行役員社長

阿部 泰士

リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。

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