CINC CapitalはCINC(証券コード:4378)のグループ会社です。
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- 公開日2025.07.01
- 更新日2025.07.01
リネンサプライ業界のM&A動向は?事例や成功のポイントを解説【2025年】
地方のリネンサプライ業者を営む中で、後継者不在や人手不足、設備の老朽化に不安を感じていませんか?近年、業界内ではM&Aが活発化していますが、「自社には関係ない」と感じる方も多いのが実情です。
本記事では、リネンサプライ業界のM&A動向と課題、成功のポイントをわかりやすく解説します。
目次
リネンサプライ業界の市場動向
2023年度の国内リネンサプライ市場規模は、前年度比108.5%の4,551億円と3年連続で回復を遂げました。特に、インバウンド需要の回復や国内旅行の再開により、ホテルリネン分野が好調に推移しています。
2024年度も引き続きプラス成長が予測されており、市場は堅調に推移しています。
リネンサプライ業界が抱えている課題
リネンサプライ業界は、近年の市場拡大にもかかわらず、深刻な課題に直面しています。本章では、主に3つの課題について詳しく解説します。
物流費高騰と2024年問題の影響
リネンサプライ業界では、物流費の高騰と「2024年問題」による影響が深刻化しています。「2024年問題」とは、働き方改革関連法の施行により、トラックドライバーの時間外労働時間に上限が設けられることで、輸送能力の不足や物流コストの増加が懸念される問題です。
これにより、リネンサプライ業界でも配送網の維持が難しくなり、業務の効率化やコスト削減が急務となっています。
脱炭素対応と環境規制の強化
環境への配慮が高まる中、リネンサプライ業界でもCO₂排出削減や洗浄用薬剤の規制強化に対応する必要があります。中小企業にとっては、設備更新や環境対応への投資が大きな負担となり、収益を圧迫する要因となっています。
例えば、あるリネンサプライ企業は脱炭素対応の一環として、湘南・横浜の工場を閉鎖し、高効率設備を備えた小田原工場の新設を計画しています。
人手不足と後継者不在が深刻化
リネンサプライ業界では、高齢化や重労働により若手が定着しづらく、人材確保が困難です。地方では経営者の高齢化と後継者不在が深刻で、M&Aや廃業を選ぶ事業者が増加しています。
事業者の高齢化が進んでおり、70歳以上の経営者も多く、後継者が見つからないケースが増加しているのが現状です。
リネンサプライ業界のM&A最新動向(2025年)
リネンサプライ業界では、業界再編が進行しており、M&Aの動きが活発化しています。特に、大手企業による地方事業者の買収、中堅企業同士の再編、小規模事業者間の事業承継M&Aが一般的な選択肢となっています。
本章では、これらの動向について詳しく解説いたします。
大手企業による地方事業者の買収が加速
リネンサプライ業界では、大手企業が地方の事業者を積極的に買収する動きが加速しています。この背景には、人口減少や高齢化により地方の需要が減少する中で、効率的なサービス提供と市場シェアの拡大を図る狙いがあります。大手企業は買収を通じて、地域密着型サービスを維持しながら経営の効率化を進めているのです。
また、買収により得られる既存の顧客基盤や人材を活用することで、サービスの品質向上とコスト削減を実現しています。
中堅同士の再編で地域連携が進む
中堅のリネンサプライ企業同士が、互いの強みを活かして再編を進める動きが広がっています。これにより、地域でのサービス網強化や経営資源の最適化が実現しています。
例えば、隣接地域の同業他社と統合することで、配送効率の向上や設備投資の共有が可能となり、収益性の改善につながるでしょう。さらに、地域連携により災害時のリスク分散や人材の相互活用も進み、安定したサービス提供が可能になっています。
小規模事業者間の事業承継M&Aが一般化
小規模なリネンサプライ事業者では、後継者不在や経営資源の不足といった課題から、事業承継を目的としたM&Aが一般化しています。特に、地域金融機関やM&A仲介サービスを活用した第三者への事業譲渡が増加しています。
これにより、事業の継続性が確保されるとともに、従業員の雇用維持や顧客サービスの継続が可能となるのです。買収側は顧客基盤や設備を活用することで、参入リスクを抑えつつ迅速に事業を展開できます。
リネンサプライ業界でM&Aを成功させるためのポイント
リネンサプライ業界におけるM&Aを成功に導くためには、業界の特徴や課題に合った、計画的な進め方が重要です。本章では、M&Aプロセスにおいて特に重要となる5つのポイントについて解説します。
財務・法務のデューデリジェンスを徹底する
M&Aにおいて、財務・法務のデューデリジェンス(DD)は、買収先企業の実態を正確に把握し、潜在的なリスクを洗い出すために不可欠です。特にリネンサプライ業界は設備や人件費の負担が大きく、見落とされた借金や契約の問題が将来のリスクになる可能性があります。
そのため、専門家の協力を得て、財務諸表の精査や契約書の確認を徹底的に行うことが重要です。
老朽設備・環境リスクを見逃さない
リネンサプライ業界では、大型の洗濯機やボイラーなどの設備が多く、これらの老朽化が進行している場合、買収後に多額の修繕費用が発生するリスクがあります。また、土壌汚染や排水処理などの環境リスクも考慮する必要があります。
設備の状態を事前に確認し、更新や環境対策を準備すれば、予期せぬコストを防ぎ、安定した運営が続けられるでしょう。
主要顧客との契約引継ぎを円滑に進める
リネンサプライ業界では、ホテルや病院などの大口顧客契約が収益の中心であり、その引継ぎがM&A成功の重要なポイントです。契約内容の確認や名義変更手続きの他、サービス品質の維持や顧客との信頼関係の継続が求められます。
丁寧な対応とスピード感のあるやり取りが、顧客の離脱を防ぎ、安定した収益の確保につながります。
従業員の定着を重視した統合方針を打ち出す
M&A後の統合プロセスにおいて、従業員の定着は業務の継続性とサービス品質の維持に直結します。特にリネンサプライ業界では、現場スタッフの技能や経験が重要な資産であり、彼らの離職は大きな損失となります。
処遇の維持や将来の見通しを示し、対話の機会を設けることで、従業員の不安を減らし意欲を高めることが大切です。
統合後のPMI計画を緻密に設計する
M&Aの成功は、買収後の統合プロセス(PMI:Post Merger Integration)に大きく依存します。例えば、配送網の最適化や工場の統廃合、業務フローの標準化など、具体的な統合計画を事前に策定することが重要です。
また、デジタル技術の導入による業務効率化や、組織文化の融合を図ることで、シナジー効果を最大化し、競争力の強化につながります。
リネンサプライ業界のM&A事例
最後にリネンサプライ業界のM&A事例をご紹介します。自社のM&A検討時の参考にしてみましょう。
株式会社トーカイによる株式会社介護センター花岡のM&A
2024年12月、介護用品レンタル事業を展開する株式会社トーカイは、長野県でトップシェアを持つ株式会社介護センター花岡の全株式を取得し、完全子会社化しました。
トーカイは1996年より同事業を開始し、全国展開を進める中、地域密着型で高品質なサービスを提供する花岡の買収により、長野県内の拠点を従来の1カ所から5カ所に拡大。さらに、山梨県にも初の営業拠点を開設することとなりました。
これにより、全国の営業拠点は94カ所に増加し、サービス体制の強化と地域シェアの拡大が期待されています。今後もM&Aを通じた成長戦略を推進する姿勢がうかがえ、介護業界におけるトーカイの存在感が一層高まると見られます。
【出典】株式会社トーカイ『長野県においてトップシェアを誇る介護用品レンタル事業会社をグループ化』
西日本旅客鉄道株式会社による株式会社ジェイアール西日本リネンのM&A
西日本旅客鉄道株式会社(JR西日本)は、完全子会社である株式会社ジェイアール西日本リネンの全株式を、鉄道リネンサービス株式会社へ譲渡する契約を2024年5月に締結しました。譲渡実行日は2025年3月31日を予定しています。
ジェイアール西日本リネンは、JR西日本グループのリネンサプライを担ってきた企業であり、今回の譲渡により、鉄道リネン社と連携しながら、リネンサプライ事業の品質向上と効率化を目指すとしています。
鉄道リネン社は、約60年の実績を持つ業界の老舗で、JRグループへの委託実績も豊富です。今回のM&Aは、両社のノウハウを結集することで、サービス品質の向上と地域社会への貢献強化を図る狙いがあると見られます。
鉄道・交通関連のリネンサプライ業界における再編の一環と捉えられる事例です。
【出典】西日本旅客鉄道株式会社『株式会社ジェイアール西日本リネンの株式譲渡に関するお知らせ』
総合メディカル株式会社による東京リネンサービス株式会社のM&A
総合メディカル株式会社は、医療・介護福祉施設向けにリネンサービスを展開する東京リネンサービス株式会社を完全子会社化しました。
東京リネンサービスは1990年創業以来、関東圏を中心に衣類や日用品のセットリース事業を強みとし、高い顧客満足度を維持しています。
今回のM&Aにより、総合メディカルは医療機関の経営支援に加え、リネンサービス機能を取り入れることで、業務効率化とサービス品質向上を図る狙いです。
また、両社の営業基盤を融合させることで、シナジー効果を生み出し、医療機関への新たな価値提供と企業価値の向上を目指しています。この買収は、地域包括ケア実現に向けた機能強化としても注目されます。
【出典】総合メディカルグループ株式会社『東京リネンサービス株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ』
まとめ│リネンサプライ業界のM&A動向を押さえてM&Aを成功させましょう
リネンサプライ業界では、市場回復に伴う成長の一方で、人材不足や設備投資負担、事業承継の難しさといった構造的課題が浮き彫りになっています。こうした状況の中、M&Aは単なる規模拡大の手段ではなく、経営課題の解決やサービス品質の維持・向上に直結する重要な戦略となっています。
CINC Capitalは、M&A仲介協会会員および中小企業庁のM&A登録支援機関として、M&Aのご相談を受け付けております。業界歴10年以上のプロアドバイザーが、お客様の真の利益を追求します。M&Aの相談をご希望の方はお気軽にお問い合わせください。
この記事の監修者

CINC Capital取締役執行役員社長
阿部 泰士
リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。