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M&Aでストックオプションはどうなる?取り扱いや投資家や買収企業との交渉のポイントを解説

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  • 公開日2025.04.22
  • 更新日2025.04.23

M&Aでストックオプションはどうなる?取り扱いや投資家や買収企業との交渉のポイントを解説

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企業の売却や買収が行われる際、ストックオプションがどのように処理されるのかわからず、不安を感じる方も多いでしょう。適切に対応しなければ、経営陣や従業員のモチベーション低下を招き、M&A後の組織運営に悪影響を及ぼす可能性があります。

本記事では、M&Aにおけるストックオプションの役割や評価方法、交渉のポイントを詳しく解説します。

ストックオプション(新株予約権/SO)とは?

ストックオプション(新株予約権/SO)とは、企業が役員や従業員に対して、あらかじめ定めた価格で自社株式を購入できる権利を与える制度です。主にベンチャー企業や成長企業が、優秀な人材の確保や従業員のモチベーション向上のために活用します。

ストックオプションを受け取った従業員は、企業の成長による株価上昇を通じて利益を得ることができるため、企業価値向上に貢献しやすくなります。

日本においては、税制上の違いから税制適格ストックオプションと税制非適格ストックオプションの2種類に分かれます。

税制適格のストックオプションは、一定の条件(①付与対象者が役員・従業員であること、②権利行使価格が付与時の株価以上であること、③付与から権利行使までの期間が2年以上あること、④一人当たりの権利行使価額の合計が年間1,200万円以内であることなど)を満たすことで行使時の課税を回避し、株式売却時にのみ税負担が生じる仕組みです。

一方で税制非適格のストックオプションは、権利行使時に給与所得として課税されるため、税負担が重くなる点に注意が必要です。M&A後に適格要件を満たさなくなる場合もあるため、税務アドバイザーと事前に確認しておくことが大切です。

このように、ストックオプションの仕組みは税務面でも注意が必要です。

M&Aにおけるストックオプションの役割

M&Aにおいて、ストックオプションは企業の成長戦略や人材マネジメントに関わる重要な要素です。ストックオプションは、役員や従業員へのインセンティブ、キャピタルゲインの機会提供、モチベーションの維持、人材の確保と定着といった4つの役割を果たします。ここでは、それぞれの役割について説明します。

役員や従業員へのインセンティブになる

ストックオプションは、企業価値の向上が直接的な報酬となるため、役員や従業員にとって強力なインセンティブとなります。

会社の成長とともに株価が上昇すれば、オプションを行使することで大きな利益を得ることが可能です。これにより、経営陣や従業員は企業の発展に積極的に貢献しようとする動機が高まります。

このような仕組みがあることで、短期的な給与報酬だけではなく、長期的な視点で企業の成長に貢献する動機付けが可能になります。

将来的にキャピタルゲインになる可能性がある

ストックオプションを行使すれば、株価が上昇した際に売却益(キャピタルゲイン)を得ることができます。これは、従業員や役員にとって単なる給与報酬とは異なり、将来的な資産形成の手段として機能します。

特に、上場を目指すベンチャー企業では、IPO(新規株式公開)によって急激な株価上昇が見込まれるため、ストックオプションの価値が飛躍的に高まる可能性があります。

役員や従業員のモチベーション維持につながる

ストックオプションは、企業への貢献が将来の報酬につながる仕組みであるため、役員や従業員のモチベーションを維持する効果があります。

特に、ストックオプションには一定期間が経過しなければ権利行使できない「ベスティング(権利確定)」という制度があるため、長期間にわたって企業に貢献する動機付けとなります。

M&Aが行われる場合でも、ストックオプションが維持されることで、経営統合後の従業員の士気低下を防ぐ効果があるのです。

人材の確保と定着につながる

ストックオプションは、優秀な人材を確保するための魅力的な報酬制度として機能します。

特に、スタートアップ企業やベンチャー企業にとって、ストックオプションは資金に余裕がない中で高い報酬を提供する手段となります。また、一定期間の在籍を条件とすることで、従業員の離職防止にもつながります。

M&Aが行われる際にも、ストックオプションの適切な処理がなされることで、企業文化の維持や事業の円滑な引き継ぎが可能になります。

M&Aでストックオプションはどうなる?

近年、日本のM&A市場は拡大を続けており、中小企業庁の『2024年版 中小企業白書 小規模企業白書』によれば、M&A案件数は、2011年の1,600件から2023年には約4,000件へと増加しています。この増加傾向は今後も続くと考えられます。

これに伴い、ストックオプションを発行している企業のM&Aも増えてきており、適切な処理がM&A成功の重要な要素となっています。特にベンチャー企業や成長企業では、優秀な人材確保のためにストックオプションを活用するケースが多く、M&A時のストックオプション処理は経営統合の成否に大きな影響を与えます。

以下では、M&Aにおけるストックオプションの取り扱いについて、売り手企業と買い手企業のそれぞれの視点から詳しく解説します。

売り手企業におけるストックオプションの取り扱い

売り手企業にとって、ストックオプションの処理は、M&Aの実行に伴い必ず検討すべき課題になります。M&Aの形態によっては、ストックオプションの権利が消滅してしまうケースもあるため、適切な対応が必要です。

ストックオプションは、譲渡企業が消滅するようなM&Aでは、行使できない状況になることがあります。例えば、完全子会社化や合併により売り手企業の法人格がなくなる場合、発行されていたストックオプションの権利も消滅する可能性があります。

このような場合、従業員に対する説明が不足すると、退職を考える社員が増え、企業価値の低下につながります。

このリスクを回避するために、売り手企業は事前にストックオプションの処理方針を決めることが重要です。具体的には、買い手企業に対してオプションの権利を引き継ぐよう交渉したり、現金による買取を提案したりする方法があります。

また、M&Aの契約条件にストックオプションの扱いを明記し、従業員に不利益が生じないよう調整することも必要です。

買い手企業におけるストックオプションの取り扱い

買い手企業にとって、M&Aの際に売り手企業のストックオプションをどう扱うかは、買収後の人材流出を防ぐ上で重要な課題になります。既存のストックオプションが消滅すると、インセンティブを失った従業員が離職する可能性が高まるため、適切な代替策を用意することが求められます。買い手企業の対応方法としては、大きく分けて3つの選択肢があります。

1つ目は、売り手企業のストックオプションをそのまま引き継ぐ方法です。これにより、従業員のモチベーションを維持しやすくなります。ただし、非上場企業の場合は引き継いだ後の流動性確保が課題となります。

2つ目は、既存のストックオプションを買い手企業の新株予約権と交換する方法です。買収企業が上場している場合、流動性の高い自社株式と交換することで、従業員のインセンティブを維持しつつ、負担を軽減できます。ただし、法的・税務的に複雑な手続きが必要となるため、専門家の支援が不可欠です。

3つ目は、ストックオプションの権利者に対し、現金で補償する方法です。これは日本の中小企業M&Aでは一般的な方法であり、実務上はストックオプションの経済的価値を評価し、それに相当する金額を支払うケースが多いです。

税務上の影響を考慮しながら、従業員にとって適切な補償方法を選択することが求められます。

ストックオプションの取り扱いが不明確なままM&Aを進めると、従業員の不安を招き、M&A後の経営統合に支障をきたす可能性があります。そのため、買い手企業はM&A契約の段階で、ストックオプションの処理方針を明確にし、従業員が納得できる形で調整することが重要です。

非上場企業のストックオプション評価方法

ストックオプションの評価方法としては、非上場企業の場合、時価純資産+営業権法やマルチプル法(EBITDA倍率法など)による企業価値評価を基に株価を算定するのが一般的です。理論上はブラック=ショールズモデルやバイノミアルモデルを用いてオプション価値を決定することも可能ですが、実務上は単純化した方法が用いられることも多いです。

非上場株式の流動性の低さを考慮したディスカウント評価も重要なポイントになります。

投資家や買収企業とのストックオプションをめぐる交渉のポイント

M&Aや資本提携の交渉において、ストックオプションは重要な要素になります。

ストックオプションの評価や権利行使条件が適切に調整されないと、従業員や経営陣にとって不利な条件となり、M&A後の組織の安定性やインセンティブの持続性に影響を与える可能性があります。交渉では、ストックオプションの評価方法や市場価値の基準、行使価格やベスティング条件の調整、M&A後の換金性や税務リスクの確認が重要になります。

これらのポイントを適切に交渉することで、売り手・買い手双方にとって有益な契約を実現できます。ここでは、それぞれのポイントについて詳しく説明します。

ストックオプションの評価方法と市場価値の算出基準を理解する

ストックオプションの適正な評価は、投資家や買収企業との交渉において不可欠です。

オプションの価値は、企業の株式価値と密接に関係しており、正確な評価を行わなければ、売り手企業の経営陣や従業員に不利益が生じる可能性があります。

ストックオプションの適正価値を明確にすることで、投資家や買収企業との交渉を有利に進めることが可能になります。

投資家・買収企業と行使価格やベスティング条件を交渉する

ストックオプションの行使価格やベスティング条件は、投資家や買収企業との交渉において慎重に決定する必要があります。これらの条件が適切でなければ、従業員にとってオプションの魅力が損なわれ、人材流出を招く可能性があります。

行使価格は、企業の成長を考慮した適正な価格で設定することが重要です。行使価格が高すぎると、オプションが事実上無価値になり、インセンティブとして機能しなくなります。

一方で、行使価格が低すぎると、不公平感が生じるリスクがあるため、市場価値を適切に反映させることが求められます。

また、ベスティング(権利確定)の条件は、長期的な企業成長に貢献する動機付けとなるよう設計することが重要です。例えば、「M&Aが実施された場合に即時に権利が確定する加速ベスティング」などの条項を交渉に含めることで、M&A後の従業員の不安を軽減できます。

適切な行使価格とベスティング条件を交渉することで、ストックオプションの価値を最大限に引き出すことが可能になります。

買収後のストックオプションの換金性や税務リスクを確認する

M&A後のストックオプションの換金性や税務リスクを把握しておくことは、従業員にとって重要です。ストックオプションがあるにもかかわらず、適切な換金手段がない場合、インセンティブの意味が薄れ、M&A後の経営統合に悪影響を及ぼす可能性があります。

換金性については、買収企業が上場している場合、株式市場で売却できるかどうかを確認する必要があります。未上場企業の場合、従業員が市場で株式を売却できる機会が制限されるため、買収企業が株式買取を保証する制度を設けることが望ましいです。

また、M&Aの対価として現金ではなく株式が提供されるケースでは、売却のタイミングが限定される点にも注意が必要です。

税務リスクについては、税制適格ストックオプションか非適格ストックオプションかを確認し、M&A後の税務負担を把握することが重要になります。

税制適格ストックオプションであれば、株式売却時のみ課税されますが、税制非適格の場合は権利行使時に給与所得として課税され、高額な税負担が発生する可能性があります。

まとめ|M&Aにおけるストックオプションは丁寧に取り扱いを

ストックオプションは、M&Aにおいて従業員のインセンティブ維持や企業価値の向上を図る重要な要素です。適切に管理されなければ、M&A後の人材流出や税務リスクの増大につながる可能性があります。

売り手企業は、M&Aに伴うストックオプションの取り扱いを事前に整理し、従業員の不利益を防ぐ対策を講じることが求められます。一方、買い手企業は、オプションの換金性や税務リスクを考慮しながら、新たなインセンティブ設計を行うことが重要です。

また、投資家や買収企業との交渉では、ストックオプションの評価方法や市場価値の算出基準を理解し、行使価格やベスティング条件を適切に設定することが必要になります。

ストックオプションの取り扱いは、M&Aの成否を左右する要素です。従業員の安心と企業の成長を両立するためにも、早期に専門家と連携し、的確な対応を検討しましょう。

CINC Capitalは、M&A仲介協会会員および中小企業庁のM&A登録支援機関として、M&Aのご相談を受け付けております。業界歴10年以上のプロアドバイザーが、お客様の真の利益を追求します。M&Aの相談をご希望の方はお気軽にお問い合わせください。

この記事の監修者

阿部 泰士

CINC Capital取締役執行役員社長

阿部 泰士

リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。

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