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事業譲渡における「のれん」とは?評価基準や会計、税務上の取り扱い

M&A / スキーム

  • 公開日2025.01.29
  • 更新日2025.01.31

事業譲渡における「のれん」とは?評価基準や会計、税務上の取り扱い

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M&Aで譲渡側(=売り手)となる企業は、自社の価値について正しく理解しておくことが重要となります。そこで把握しておきたいのが、事業譲渡における「のれん」です。これまでに事業で培ってきた信頼度や知名度が譲受側(=買い手)の企業に高く評価される可能性があります。

この記事では、事業譲渡における「のれん」の意味や、評価基準について解説します。会計上・税務上の取り扱いの違いにも触れるため、ぜひ参考にしてみてください。

事業譲渡における「のれん」とは?

初めに、M&Aの事業譲渡における「のれん」の意味について解説します。事業譲渡を検討する際は、基礎知識として押さえておきましょう。

「のれん」の意味

事業譲渡における「のれん(超過収益力)」とは、会社の無形資産のことを意味します。例えば、会社の信頼度・知名度・ブランド力・技術力といったものが「のれん」に該当します。これらの「のれん」は目には見えないものの、事業譲渡において会社の無形資産として評価される対象の一つです。

なお、一般的に「のれん」と「営業権」がほとんど同様の意味合いで用いられることもあります。

事業譲渡で「のれん」が発生する背景

「のれん」は、事業譲渡において買収される事業の価値を正しく評価するために不可欠なものです。事業譲渡における「のれん」は、買収価額が時価純資産価額を上回った差額分として扱われます。

買い手側の企業が、買収される事業に対して付加価値を見出すことによって、価格が高まる可能性があります。その際、「のれん」の価値を適切に見極めるには、M&Aの専門知識が必要です。

事業の譲渡価額が時価純資産価額を下回る場合

事業譲渡で買収価額が時価純資産価額を下回る場合は、「負ののれん」と呼ばれる状態となります。例えば、買収される事業に訴訟リスクがあるケースや、事業の経営状況が悪化しているケースでは、「負ののれん」が発生する可能性があるのです。

なお、「負ののれん」に対して、前述したように譲渡価額が時価純資産価額を上回る場合は「正ののれん」と呼ばれます。

事業譲渡における「のれん」の評価基準

事業譲渡における「のれん」の評価基準を解説します。評価に影響を与える要素・与えない要素をそれぞれご紹介します。

「のれん」の評価に影響を与える要素

事業譲渡で「のれん」の評価にプラスの影響を与える可能性があるのは、主に以下のような要素です。買い手側の企業がこれらの要素に価値を見出せば、のれん代が高まる可能性があるでしょう。

ただし、「のれん」の評価は買い手企業の戦略や相乗効果への期待、将来の見通しなどによって大きく異なります。M&Aの事業譲渡で交渉をする際は、高く評価される可能性がある要素を理解し、自社の強みを的確にアピールすることが大切です。

  • 信頼度
  • 知名度
  • ブランド力
  • 技術力
  • ノウハウ
  • 将来性
  • 特許権
  • 知的財産権
  • 人材 など

「のれん」の評価には影響を与えない要素

その反対に、「のれん」の評価に影響を与えない要素をアピールしても、事業譲渡で価格を引き上げるのは難しくなります。一般的に「のれん」の評価に影響を与えない要素の一例として、経営歴の長さが挙げられます。単に長く経営している事実のみでは、「のれん」の評価につながりにくい点に留意しましょう。

また、会社に不祥事やトラブルが発生している場合や、未払いの残業代や社会保険料などの簿外債務がある場合は、「負ののれん」が発生する可能性があるため注意が必要です。

企業価値の主な評価方法

企業価値を評価する際は、主に以下の方法が用いられます。ここでは、それぞれの方法の特徴をご紹介します。

インカムアプローチ

「インカムアプローチ」では、企業の将来の収益力に基づいて評価が行われます。以下では「DCF法」と「配当還元法」の特徴をご紹介します。

DCF法

DCF法では、企業のキャッシュフローに基づいて企業価値を算出します。企業価値の評価の中でも代表的な手法の一つです。こちらの計算方法では、「フリーキャッシュフロー」と呼ばれる企業が自由に使えるキャッシュが用いられます。

配当還元法

配当還元法は、将来の配当の期待額を適切な割引率で割り引いて現在価値に換算することで企業価値を算出します。割引率は、企業の状況やリスクに応じて決定されます。また、過去の配当実績だけでなく、将来の配当予想も考慮する必要があります。主に、少数の株主が株式を取得しているケースにおいて、非上場株式の評価で用いられます。

マーケットアプローチ

「マーケットアプローチ」では、類似する市場取引に基づいて企業価値の評価が行われます。以下では「類似業種比較法」と「類似企業比較法」の特徴をご紹介します。

類似業種比較法

類似業種比較法は、非上場の企業価値を評価するにあたり、類似する業種の上場企業の株価のほか、配当金額・利益金額・簿価純資産価額などを用いて評価する手法です。主に非上場企業の株式評価、特に相続税や贈与税の算定に用いられます。

類似企業比較法

類似企業比較法は、非上場の企業価値を評価するにあたり、類似する業種かつ類似する事業規模・収益性などを持つ上場企業を比較対象として選定し、評価する手法です。対象企業の事業内容や成長性などを踏まえて、適切な企業を選定する必要があります。

コストアプローチ

「コストアプローチ」では、企業を再取得または再構築するために必要なコストに基づいて企業価値を評価する手法です。このアプローチには、時価純資産法、簿価純資産法、再調達原価法など、いくつかの評価方法があります。

簿価純資産法

簿価純資産法は、資産と負債の帳簿価格から企業価値を評価する方法です。会計上の帳簿価額に基づいて計算が行われます。ただし、会計上の資産・負債と時価に差がある場合は実態と評価がかけ離れてしまう可能性があります。

時価純資産法

時価純資産法は、資産と負債の時価総額に基づいて企業価値を評価する方法です。企業価値を適正評価しやすいことから、M&Aでよく用いられる手法の一つとなっています。一方で、現在の資産価値に基づいて評価を行うため、将来の収益力や成長性を反映しにくいというコストアプローチ全般の限界があります。そのため、成長性の高い企業の評価には不適切な場合があります。

事業譲渡における「のれん」の会計処理と税務処理

事業譲渡における「のれん」は、会計上・税務上はどのように処理されるのでしょうか。それぞれ扱いが異なるため、会計処理と税務処理についてそれぞれ確認しておきましょう。

「のれん」の会計上の取り扱い

会計上の「のれん」は、貸借対照表において「無形固定資産」として取り扱われます。日本の会計基準においては、「のれん」を減価償却することが可能です。その際、償却期間は20年以内となっており、効果の及ぶ期間にわたって規則的に償却されます。

償却方法は企業が合理的に選択でき、定額法が一般的に用いられます。なお、「負ののれん」は収益として計上されるため償却されません。

一方、国内においても上場企業では前述した日本基準とは異なる「国際財務報告基準(IFRS)」の考え方が採用される場合があります。IFRSの会計基準では、「のれん」の償却を行いません。また、毎年の減損をチェックする「減損テスト」を行い、減損損失の戻入れができないという特徴があります。今後は、海外投資家への説明力強化やクロスボーダーM&Aの増加などを背景に、IFRSを採用する企業が増加すると見込まれています。

「のれん」の税務上の取り扱い

税務上の「のれん」は、税務申告書において「資産調整勘定」として取り扱われます。

会計処理に関わらず、60カ月で月割均等償却する必要があります。なお、「負ののれん」は税務上で「差額負債調整勘定」として取り扱われ、60カ月(5年間)で均等償却されます。

まとめ|「のれん」を理解して事業譲渡を効果的に進めよう

ここまで、事業譲渡における「のれん」の基礎知識をお伝えしました。事業譲渡で売り手側の企業の信頼度・知名度・ブランド力などの無形資産が高く評価されれば、より高い金額での取引が期待できます。

事業売却を検討する際は、自社の「のれん」の価値を見極め、買い手側の企業へアピールすることが重要です。特に中小企業の中には、独自の技術力やノウハウを有する会社も少なくありません。「のれん」を理解して、事業譲渡を効果的に進めましょう。

この記事の監修者

阿部 泰士

CINC Capital取締役執行役員社長

阿部 泰士

CINC Capital取締役執行役員社長。リクルート関連会社や外資系製薬会社、大手・ベンチャー独立系M&A仲介会社で営業組織を牽引。 特にM&A実績の多い業界は調剤・IT・運送業。

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