CINC CapitalはCINC(証券コード:4378)のグループ会社です。

お電話でのご相談はこちら(無料)

03-4500-7072

CINC CapitalはCINC(証券コード:4378)のグループ会社です。

卸売業のM&A動向(2025年)メリットデメリット/事例/成功のポイントを解説

業種

  • 公開日2025.04.30
  • 更新日2025.04.30

卸売業のM&A動向(2025年)メリットデメリット/事例/成功のポイントを解説

シェアする

ECの普及などに伴い、「中間業者」としての卸売業の役割が見直されています。この環境変化に適応するため、多くの卸売企業はビジネスモデルの刷新に取り組み、M&Aを活用して事業規模の拡大や業務効率の向上を図っています。

この記事では、卸売業界の業種別市場動向や卸売業のM&Aメリット・デメリット、成功のポイントを徹底解説します。

卸売業の市場動向

まずは、卸売業界の市場動向をご紹介します。各市場でどのような動きがあり、トレンドになっているのかを見ていましょう。

機械器具の卸売業

産業機械器具や電気機械器具などの卸売業分野では、幅広い商品が取り扱われます。機械メーカーから器具を仕入れて製造業者へ販売しますが、現在は海外メーカーとの取引を行うケースも珍しくありません。日本国内の工場はもちろん、海外工場へ納品することもあります。

繊維の卸売業

繊維卸売業界は、グローバルなファストファッションの台頭により価格面での競争が強まっています。厳しい状況下で生き残りを図るため、環境配慮型の持続可能な素材や高機能・高付加価値繊維製品の取扱いを強化する企業もあるようです。結果、独自の市場ポジションを確立する差別化戦略が重要視されるようになりました。

飲食料品の卸売業

消費者の健康意識の高まりと高齢化社会の進行に伴い、健康志向食品や介護食の市場に注目が集まっています。また、調理時間の短縮を求める現代のライフスタイルに対応した冷凍食品・レトルト食品への需要もあり、物流システムの効率化と品揃えの多様化が見られます。

建築材料の卸売業

建築材料の卸売業界では、地震対策強化や環境負荷低減に貢献する建材への関心が寄せられています。リフォーム市場の拡大と木材活用の推進政策が新たなビジネスチャンスを生み出しており、これらの市場変化に対応するために、M&Aによる事業統合やデジタル技術の積極導入も検討されています。

医療機器の卸売業

AI・IoTを活用した先進医療機器の普及や医療現場のデジタル化の波に乗るため、業界再編の動きが見られます。それに伴い、専門性の高いコンサルティングなど、付加価値サービスを提供する企業も出てきました。

卸売業界が抱える課題

卸売業界の市場を取り巻く変化や業界特有の構造問題が重なった結果、M&Aを検討する企業も見られるようになりました。ここでは、卸売業界が抱える課題をご紹介します。

後継者不足と高齢化問題

日本の卸売業界では、経営トップの高齢化と次世代リーダーの不在が問題視されています。帝国データバンクの2024年の調査によると、全国の卸売業の後継者不在率は48.8%に達していました。2018年の64.7%と比較すると徐々に改善傾向にありますが、それでも半数近くが後継者問題に悩まされていることがわかります。

また、2024年の調査において、卸売業の社長の平均年齢は61.4歳という結果が出ました。社長の平均年齢に関しては上昇傾向にあります。

後継者不足と高齢化問題は、特に中小規模の卸売企業が顕著です。事業継承の道筋が描けないために、M&Aを出口戦略として検討するケースがあります。

【出典】株式会社帝国データバンク「全国『後継者不在率』動向調査(2024年)」
【出典】株式会社帝国データバンク「全国『社長年齢』分析調査(2024年)」

市場環境の変化による収益性の低下

卸売業界では、販売価格の低迷や仕入コストの上昇など、さまざまな要因によって利益の確保が難しくなってきました。さらに、取引先となる小売店舗数の減少や大手卸企業による市場集中化の波に直面し、従来のビジネスを維持するだけでは厳しい状況となっています。

流通構造の変化と卸売業者の役割低下

インターネットとデジタル技術の急速な普及により、従来の流通の仕組みは根本から変わりつつあります。生産者が小売業者と直接取引するケースが増え、従来型の卸売業が果たしていた仲介機能が変わりつつあります。

また、ECの台頭や製造小売業(SPA)モデルの浸透もあり、付加価値サービスの提供や独自商品の開発など、卸売業には新たな役割が求められています。しかし、多くの中小卸売企業ではこうした変革に十分対応できていないのが実情です。

卸売業界のM&A最新動向(2025年)

事業に関する課題の解決策として、また先端技術の迅速な獲得や市場シェア拡大を目指す戦略として、M&Aに取り組む企業が見られます。以下、卸売業界におけるM&A最新動向を解説します。

技術革新とデジタル化への対応

DX(デジタルトランスフォーメーション)推進の一環として、革新的技術を持つ企業を買収するケースがあります。例えば、AIや機械学習、ロボティクス関連の技術を持つ企業が買収ターゲットとなることがあります。こうした技術獲得型のM&Aにより、自社単独では対応が難しい分野に踏み込むことも可能です。

M&Aを通じたサプライチェーン強化

サプライヤーを対象としたM&Aにより、部品や資材などの安定した調達体制構築を目指す動きが見られます。戦略的なポートフォリオ見直しやサプライチェーンの再構築、グローバル展開の最適化に注力し、競争力維持のためのM&Aを推進する企業もあります。

卸売業がM&Aで売却するメリット

M&Aにより、後継者不足をはじめとする課題を解決できる可能性があります。ここでは、M&Aで事業を売却するメリットを解説します。

後継者・人材不足問題の解決

M&Aの最大のメリットは、深刻化する後継者・人材不足問題を解消できる点にあります。特に中小規模の卸売業者の場合、後継者不在に悩まされることも珍しくありません。社内や家族に適任の後継者がいない場合でも、M&Aを通じて事業の存続が可能になります。

廃業コストの回避

後継者不足や業績悪化を理由に廃業する場合、倉庫や事務所、物流設備などの撤去・廃棄に多額の費用が必要になります。在庫量が多い場合、処分や買取などの手配にもコストがかかるでしょう。M&Aによって会社や設備をそのまま譲渡すれば、廃業に伴う高額な費用の負担を避けられます。また、従業員の雇用が譲渡先に引き継がれる場合、退職金支払いなどを回避できることもあるため、金銭的負担を軽減できるでしょう。

不採算事業の切り離しと経営改善

事業譲渡を利用すれば、採算が取れない事業のみを売却できます。不採算事業を分離することで、会社全体の収益性を改善できる可能性があります。また、これまで不採算事業に投入していた経営資源を主力事業に集中させられるのもメリットです。

卸売業がM&Aで売却するデメリット

企業売却には複数の課題やリスクが伴うため、事前の準備・対策が必須です。ここでは、卸売業がM&Aで事業承継・事業売却をする際に知っておきたいデメリットを解説します。

希望どおりの売却が難しい場合がある

M&Aでは、経営者の希望条件での売却が難しいケースが少なくありません。例えば、希望する売却価格や従業員の雇用継続、取引条件などが、買い手側の条件と合致しないことがあります。特に中小規模の卸売業では、収益性が高くても適切な買い手を見つけるのに時間がかかる場合があります。

従業員や取引先との関係悪化リスク

M&Aによる組織体制の変更は、従業員や取引先にとって懸念要素となります。特に長年勤務してきた従業員は、事業の方針変更などに不安を感じ、退職を検討する可能性があるでしょう。

また、買収企業が既存取引先の競合である場合、重要な取引先から契約の見直しを迫られるリスクも考えられます。卸売業はBtoB取引が中心であり、長年の信頼関係が売上の基盤となりやすいため、取引関係への影響は十分に考慮したほうが良いでしょう。

卸売業がM&Aで売却を成功させるためのポイント

卸売業のM&Aでは、業界特有の課題を理解し、適切な戦略を立てることが重要です。成功のポイントを具体的に見ていきましょう。

自社の強みを明確にする

M&Aでは、他社と差別化できる独自の強みを明確に示すことがポイントです。卸売業の場合、安定した仕入れ先・取引先との関係や、在庫管理のノウハウなどが評価対象となることがあります。これらの強みを具体的な数値・事例とともに示すことで、買い手に対して自社の市場価値を伝えましょう。

従業員の理解を得る

卸売業では、営業担当や商品管理スタッフなど、属人的なスキルに依存する業務も見られます。事業の安定的な継続には、従業員の協力が不可欠です。会社に必要な人材の離職を防ぐためには、M&Aの目的や将来展望を丁寧に説明し、雇用条件や処遇についても明確な見通しを示す必要があります。

M&A専門家のサポートを活用する

M&Aでは技術評価や設備査定、知的財産権などの専門知識を求められます。例えば、企業価値評価を定める際はM&Aの専門的な知見が必要です。卸売業界特有の評価要素である在庫や取引先との契約、物流インフラなどの価値も加味しながら適正な評価を見極めます。また、デューデリジェンスの際も、卸売業界で重要とされる在庫・物流システム・顧客との契約条件といった項目を適切に調査しなければいけません。

そのため、M&Aを実施する際はM&A仲介会社や専門アドバイザーの支援が事実上必須とされます。専門家に依頼することで、企業価値評価の算定や最適な買い手候補の選定、交渉戦略の立案、デューデリジェンス対応など、各種プロセスの包括的なサポートが受けられます。卸売業界の事情に通じた専門家を探して相談しましょう。

卸売業のM&A事例

最後に、卸売業界のM&A事例をご紹介します。自社のM&A検討時の参考にしてみましょう。

株式会社神明による浜松米穀株式会社のM&A

2021年12月、株式会社神明は、SBI地域事業承継投資1号ファンドを通じて浜松米穀株式会社の株式を取得し、同社を子会社化しました。浜松米穀は静岡県浜松市に本社を構え、米穀や麦類、飼料の卸売業および餅の製造販売を手掛ける老舗企業です。

神明グループは、米穀や加工米飯の製造販売、外食事業などを展開しており、今回のM&Aにより調達力の強化と、ニーズの多様化に対応する体制の強化を図りました。人手不足や価格競争など、米飯業界が直面する課題に対応するための戦略的な連携であり、今後の業界活性化にも資する事例といえます。

【出典】株式会社神明「浜松米穀株式会社の株式取得に関するお知らせ」

オーウイル株式会社による株式会社海鮮のM&A

2024年4月、食品商社のオーウイル株式会社は、鮮凍魚介類や魚卵の輸入・加工販売を手がける株式会社海鮮の全株式を取得し、同社を子会社化しました。オーウイルはこれまで食品原材料の卸売やアイスクリームの製造販売を展開してきましたが、新たな成長分野として水産業界への参入を決断しました。

今回のM&Aにより、両社の商材・販路を融合させ、営業機会の拡大と顧客への付加価値提供の強化を図る方針です。業績も堅調な海鮮を取り込むことで、中長期的な企業価値向上を目指した戦略的な買収といえます。

【出典】オーウイル株式会社「株式会社海鮮の株式取得(子会社化)に関するお知らせ」

株式会社ヤマタネによる株式会社ショクカイのM&A

2023年10月、物流と食品流通を手がける株式会社ヤマタネは、冷凍食品など業務用食品の卸売で業界トップシェアを誇る株式会社ショクカイの全株式を取得し、子会社化しました。

ショクカイは全国に販売網を有し、商品開発力や効率的な物流体制を背景に安定供給を実現しています。ヤマタネは、同社の力を取り込み、自社の食品セグメントにおける「食の安定供給ソリューション」の拡充を図ります。両社の連携により、量販店向け事業やミールキット分野での展開強化も見込まれ、サプライチェーン全体の競争力向上が期待されるM&Aです。

【出典】株式会社ヤマタネ「株式会社ショクカイの株式取得(子会社化)に関するお知らせ」

まとめ|卸売業界のM&A動向を押さえてM&Aを成功させましょう

M&Aには、後継者問題の解決や廃業コストの回避などのメリットがある一方、思い通りの条件での売却が難しい場合もあります。成功させるには、独自技術や安定した取引関係など、自社の強みを明確に示すことがポイントです。また、M&A仲介会社の手厚いサポートも欠かせません。M&Aの実施を検討し始めたら、まずは専門家にご相談ください。

CINC Capitalは、M&A仲介協会会員および中小企業庁のM&A登録支援機関として、M&Aのご相談を受け付けております。業界歴10年以上のプロアドバイザーが、お客様の真の利益を追求します。M&Aの相談をご希望の方はお気軽にお問い合わせください。

この記事の監修者

阿部 泰士

CINC Capital取締役執行役員社長

阿部 泰士

リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。

OTHERS 関連コラム すべてのコラムを見る

SEMINARセミナー すべてのセミナーを見る

“経営者”のためのM&A研究会 ~単独成長・IPO・M&A 選ぶべき道~
  • M&A体験談

“経営者”のためのM&A研究会 ~単独成長・IPO・M&A 選ぶべき道~

2025/06/18(水)14:00〜18:30

オンライン

申し込む
【60代の経営者様向け】会社売却準備を徹底解説
  • Tips

【60代の経営者様向け】会社売却準備を徹底解説

2025/05/13(火)17:00〜18:00

オンライン

申し込む
最大800万円!?手残りを最大化するための「M&A補助金」~申請前に押さえるべきポイントを徹底解説~
  • Tips

最大800万円!?手残りを最大化するための「M&A補助金」~申請前に押さえるべきポイントを徹底解説~

2025/04/22(火)17:00〜18:00

オンライン

申し込む

CONTACTお問い合わせ

秘密厳守いたします。お気軽にご相談ください。最新の業界動向・M&A相場などわかり易くご説明させていただきます。