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民泊業界のM&A動向(2025年)メリットデメリット/事例/成功のポイントを解説

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  • 公開日2025.04.23
  • 更新日2025.04.24

民泊業界のM&A動向(2025年)メリットデメリット/事例/成功のポイントを解説

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民泊市場は今、かつてない成長期に突入しています。特に、主な利用者となる訪日外国人観光客数は、2023年時点で2,500万人を突破しました。今後も民泊需要は高まると予想されています。

しかし、法規制の複雑化や人材不足、運営の属人化など、業界全体でさまざまな経営課題を抱えているのも事実です。その対策として、近年は事業承継・事業売却などのM&Aが注目されています。本記事では、民泊市場におけるM&A最新動向と市場特有の経営課題、売却時のメリット・デメリット、そして成功に導くポイントを徹底解説します。

民泊事業の市場動向

民泊は一般住宅を活用した宿泊サービス提供という点で、従来型のホテル・旅館とは本質的に異なります。しかし、近年はその需要が高まり、宿泊産業において一角を形成するに至りました。

都市型民泊の利用者は、約6割が訪日外国人です。「日本政策投資銀行」の調査資料によると、訪日外国人観光客数は2023年に2,500万人台となり、2030年には政府目標の6,000万人到達が視野に入っています。コロナ禍前の2019年水準まで回復したのはもちろん、さらなる市場拡大が期待されています。

特筆すべきは、訪日外国人の約31%が民泊利用を検討していることです。現状の利用率はまだ約6.7%に留まっていますが、潜在需要の大きさは、市場の成長余地の広さを表しています。

【出典】日本政策投資銀行「都市型民泊の現在地と今後の可能性」

民泊市場が抱える課題

民泊市場は拡大傾向にある一方で、規制環境の複雑化や人的資源の確保難、体系化されていない業務フローなど、複数の経営課題が問題視されています。ここでは、民泊市場が抱える課題についてご紹介します。

法規制の変化

民泊運営における最大の経営課題は、複雑化する法的枠組みへの適応です。「住宅宿泊事業法」(いわゆる民泊新法)が2018年に本格施行され、運営基準は明確になりましたが、同時に事業者負担も増加しました。

具体的には、都道府県知事への届出手続きの義務化、年間営業日数の制限、厳格な衛生管理基準の遵守などが挙げられます。特に営業日数制限は投資回収計画に直接影響するため、経営戦略の根本的な見直しが必要となるケースもあります。

運営の属人化

オペレーションの過度な属人依存も問題です。例えば、オーナー個人のスキルにもとづく接客サービスに定評がある場合、事業譲渡後はその維持が困難になります。結果、オーナーのサービス目当てで利用する顧客が離れる可能性があるでしょう。こうした属人的要素が強い事業モデルは再現性・継続性に問題があり、市場評価額が下がる傾向にあります。

後継者問題と人材不足

民泊経営者の高齢化が進行する中、承継意向はあっても適切な後継候補者が見つからないケースが多発しています。「日本政策金融公庫」の業界調査によれば、ホテル・旅館業経営者の約16.7%が後継者未定の状態であり、M&Aによる第三者承継が有力な解決策として注目されています。

【出典】日本政策金融公庫「4割の企業が事業承継に前向きな一方、そのうち6割が準備未了」

民泊市場のM&A最新動向(2025年)

2025年現在、インバウンド需要の本格回復と市場の成熟化を背景に、事業規模拡大や新規市場参入を目指すM&Aを行うケースが見られます。ここからは、日本の民泊市場におけるM&A最新動向をご紹介します。

自走可能な民泊物件への関心

民泊のなかには、安定収益基盤が確立され、オーナー不在でも円滑に運営できる自走可能な物件も存在します。標準化された運営マニュアルが整備されており、収益の予測可能性が高いことから、買収側にとって魅力的な投資対象といえます。こうした物件の買収は、運営負担を抑えたい事業者にとって選択肢の一つとなり得るでしょう。

不動産所有型と運営権譲渡型の二極化

民泊M&A案件は、「不動産所有型」と「運営権譲渡型」という二つの異なるモデルに大きく分けられます。不動産所有型取引では、物件自体の所有権移転をともなうため、資産形成の側面を重視する投資家から選ばれるケースがあります。

一方の運営権譲渡型の場合、物件所有権は移転されません。運営ノウハウとブランド価値のみを取得する形態になるため、初期投資負担の軽減を図りたい企業が買収を行うことがあります。

地域特性を活かした特色ある物件への注目

地域文化や固有の魅力を体現した民泊施設は、観光客に独自の体験価値を提供できます。特に外国人旅行者にとって、日本の伝統住居や生活文化を直接体験できる施設は魅力ある選択肢となるでしょう。こうした施設がM&Aの対象となるケースも見られます。

民泊事業者がM&Aで売却するメリット

民泊事業は複数の要因から、M&A市場において高値で取引されている分野です。ここからは、民泊事業者が事業承継・会社売却を行うメリットを解説するとともに、市場価値が高い理由をお話します。

まだまだ続く「売り手優位」の市場状況

インバウンド需要が加速度的に増している今、民泊事業を手放すことを検討するオーナーは少なくありません。宿泊ニーズが拡大すれば、買い手の将来収益期待値が上昇する傾向にあります。

予約サイト評価・実績の承継による付加価値化

民泊事業を売却する際、これまで積み上げてきた予約サイトでの高評価や実績は、買い手にとって魅力的な資産となります。特に、「Airbnb」などのプラットフォームで得た「スーパーホスト」資格や高評価レビューは、物件の収益性を高めるでしょう。

これらの実績を引き継ぐことで、新たなオーナーは短期間で高い稼働率を実現できるため、売却価格の向上が期待されます。

季節変動リスクの移転

民泊事業は、観光シーズンやイベントの有無による収益変動の大きいビジネスです。このリスクを買い手に移転することで、売り手は安定した売却益を得ることができます。

また、民泊事業の運営では、ゲスト対応や設備トラブルへの迅速な対応が求められ、経営者にとって大きな負担となります。事業を売却することで、これらの運営上のストレスから解放されるとともに、退職金や新たな事業用の資金を得られるでしょう。

民泊事業者がM&Aで売却するデメリット

民泊事業のM&Aにおいては、看過できない複数の課題が存在します。具体的に見ていきましょう。

賃貸契約移管が複雑化しやすい

賃貸物件を活用した民泊事業の場合、物件オーナーとの賃貸契約移管が最大の障壁となり得ます。賃貸契約は個人間の信頼関係を基盤として成立するため、オーナーが新経営者への契約引継ぎを拒否するケースが珍しくありません。

実際のM&A事例では、契約移管拒否により事業価値が下落した例も報告されています。

地域コミュニティとの関係性維持が難しい

経営者交代により、長期間かけて醸成した地域との信頼関係が失われるかもしれません。新しい経営者に対して近隣住民が警戒感を抱くことは珍しくなく、騒音トラブルやごみ分別問題などの苦情が急増する可能性があります。

また、地域イベントへの参加や清掃活動など、従来行ってきた地域貢献活動が途絶えることで、コミュニティからの反発を招くケースも考えられます。

民泊事業者がM&Aで売却を成功させるためのポイント

M&Aを成功させるには、自社の魅力を最大化させるため戦略的な準備が欠かせません。そのポイントについて、複数の観点からご説明します。

地域規制への完全準拠を明示する

民泊は地域ごとに異なる規制環境下にあります。買い手は法的リスク回避を最優先事項と考えるため、コンプライアンス体制の明確化が必須です。「住宅宿泊事業法」にもとづく届出書類、保健所検査結果、「消防法」に準拠した設備点検記録など、法令遵守を証明する資料を整理し、提示できる状態にしておきましょう。

IoT活用による自走可能システムの構築

民泊市場における近年のトレンドは、経営者不在でも円滑に運営できる「自走型」システムにあります。事業承継・事業売却の前に、IoT技術を活用した自走型の運営基盤を構築できれば、市場での評価額向上が期待できるでしょう。

例えば、スマートロックを導入することで物理的な鍵の受渡しが不要となるため、チェックイン業務が完全自動化されます。加えて温湿度センサーや防犯カメラの設置で、遠隔からの室内環境管理が可能となり、緊急対応の迅速化も実現するでしょう。

こうした遠隔管理システムは運営の属人性を排除し、24時間体制の人的配置コストを大幅に削減できる点が評価されています。

予約サイト評価・レビュー維持の取り組み

「Airbnb」や「Booking.com」などの予約プラットフォームにおける高評価維持は、売却価値に影響します。買い手はこれらの評価データを収益性判断の材料としています。

評価・レビュー品質を担保するには、ゲスト対応の標準化プロセスが欠かせません。例えば、多様な問い合わせに対する応答テンプレート整備、チェックイン・アウト時の対応マニュアル作成が有効です。

民泊事業のM&A事例

最後に、民泊業界のM&A事例をご紹介します。自社のM&A検討時の参考にしてみましょう。

霞が関キャピタル株式会社によるメゾンドツーリズム京都株式会社のM&A

2021年4月、不動産開発を手がける霞ヶ関キャピタル株式会社は、京都市に所在するホテル「ホテル京都木屋町」を保有するメゾンドツーリズム京都株式会社の全株式を取得し、子会社化しました。

本件M&Aは、同ホテルの取得および運営事業の強化を目的としたもので、同年夏にはソラーレ ホテルズ アンド リゾーツが運営を引き継ぎ、新ブランド「SH by the square hotel」へのリブランドが決定しています。

京都木屋町のホテルは、東山を望む眺望と京都らしい立地を活かし、観光・ビジネス両面での需要取り込みが期待されています。

本件は、アフターコロナを見据えた宿泊需要の回復や、ブランド再編によるホテル価値の最大化を狙った戦略的M&Aといえます。地域資産を活かした再開発型の投資案件が、今後のホテル業界の成長モデルとして注目されています。

【出典】霞が関キャピタル株式会社「(開示事項の経過)メゾンドツーリズム京都株式会社の株式取得(子会社化)及び『ホテル京都木屋町』リブランドのお知らせ」

FRACTALE株式会社による株式会社アレグロクスホテルマネジメントのM&A

2020年7月、FRACTALE株式会社はホテルオペレーション会社である株式会社アレグロクスホテルマネジメントの株式を取得し、連結子会社化しました。

アレグロクスは30件以上のホテル新規開業やブランド再編に関わった実績を持ち、すでにFRACTALEグループが保有する「ホテル金沢」の運営も担当していました。

この買収を通じて、FRACTALEはグループ内のホテル事業の効率化と高付加価値化を推進。加えて、連結子会社であるFRACTALEホテルマネジメントとの吸収合併を行い、新会社「フラクタルホスピタリティ株式会社」として再編しました。

合併後は、ホテル運営にとどまらず、グループが手がける再生医療技術と連携したメディカルホスピタリティ事業にも注力。宿泊と医療を融合させた新たな価値創造を目指す、先進的なM&A事例となっています。

【出典】FRACTALE株式会社「株式取得(連結子会社化)、連結子会社間の合併及び商号変更に関するお知らせ」

ハウステンボス株式会社・ハウステンボス観光株式会社・株式会社ウォーターマークホテル長崎の合併

2023年7月、長崎県佐世保市のテーマパーク運営会社であるハウステンボス株式会社は、同じくグループ会社であるハウステンボス観光株式会社および株式会社ウォーターマークホテル長崎を吸収合併しました。ハウステンボス社が存続会社となり、観光事業とホテル事業を一体化する再編となります。

本合併により、テーマパーク事業と周辺観光サービス、宿泊事業を含めたオペレーションの効率化とグループシナジーの最大化を目指します。観光需要の回復基調が続く中で、ブランド力の強化とサービスの一体提供により顧客満足度の向上が期待されます。

同業他社も統合による運営効率の改善を進める中、本件は観光施設を中心とした統合モデルの好例といえるでしょう。

【出典】ハウステンボス株式会社「合併公告及び合併につき株券等提出公告」

まとめ|民泊市場のM&A動向を押さえてM&Aを成功させましょう

民泊事業の価値を最大化するためには、市場動向を正しく理解し、適切な準備を進めることが重要です。インバウンド向けサービスの需要が回復傾向にある今、民泊M&Aには大きな可能性が秘められているといえるでしょう。

今後M&Aを検討している民泊オーナー様は、民泊業界の仕組みや運営実態に精通したM&A仲介会社へのご相談をおすすめします。

CINC Capitalは、M&A仲介協会会員および中小企業庁のM&A登録支援機関として、M&Aのご相談を受け付けております。業界歴10年以上のプロアドバイザーが、お客様の真の利益を追求します。M&Aの相談をご希望の方はお気軽にお問い合わせください。

この記事の監修者

阿部 泰士

CINC Capital取締役執行役員社長

阿部 泰士

リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。

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