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縫製工場のM&A動向(2025年)メリットデメリット/事例/成功のポイントを解説

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  • 公開日2025.04.22
  • 更新日2025.04.23

縫製工場のM&A動向(2025年)メリットデメリット/事例/成功のポイントを解説

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国内の縫製工場は、職人技術の継承や生産コストの問題など、多くの課題を抱えています。近年では人手不足や後継者不在を背景にM&Aを活用し、企業の存続や事業拡大を目指す動きが活発化しています。特に、海外生産の増加やアパレル市場の変化に対応するため、M&Aによる経営基盤の安定化が重要視される傾向です。

本記事では、縫製工場業界のM&A動向やメリット・デメリット、成功のポイントなどを解説します。

縫製工場の市場動向

製造業界における縫製工場の市場規模は、国内アパレル市場の動向に大きく左右されます。2023年の国内アパレル総小売市場規模は8兆3,564億円となり、前年から3.7%増加しました。特に、百貨店や専門店といった実店舗での売上回復が目立ち、コロナ禍で低迷していた需要が回復傾向にあります。

一方で、縫製工場自体の市場規模は長期的に見ると縮小傾向にあります。経済の変動とともに海外生産へのシフトが進み、国内の縫製工場の数は減少。コロナ禍では一時的に市場がさらに縮小しましたが、近年は国内回帰の動きも一部見られ、国内生産を重視するブランドや企業の増加が注目されています。

また、労働力不足や人件費の高騰が続く中、縫製工場では生産効率を高めるための自動化・省力化が求められています。縫製技術の継承や設備投資が課題となる中、M&Aを活用し、経営資源を統合する動きも活発化している傾向です。

【出典】株式会社矢野経済研究所「2024年 国内アパレル市場に関する調査を実施」

縫製工場業界が抱える課題

縫製工場業界は、国内市場の縮小や海外生産の拡大といった影響を受け、厳しい状況に直面しています。こうした課題に対応するためには、業界全体での改善策や戦略的な取り組みが求められます。

人手不足と技術継承の問題

縫製業界では熟練工の高齢化が進み、若い世代の職人が不足しています。特に、国内の縫製工場では技術を持つ労働者の確保が難しく、技能の継承が課題となっています。また、ミシンを使った縫製作業は習得に時間がかかるため、即戦力となる人材を育てるのが難しいのも現状です。この課題に対処するため、企業は技能研修の強化や、外国人技能実習生の受け入れなどの対応を進めています。

原材料費の高騰とコスト負担の増加

近年、円安や国際情勢の影響を受け、衣服の材料となる繊維や染料などの原材料費が上昇しています。特に海外からの輸入に依存している縫製工場では、コストの増加が利益を圧迫する要因です。また、光熱費や物流費の高騰も重なり、工場の経営を圧迫しています。このため、国内外の調達先を見直し、安定した仕入れ体制を確保することが求められています。

環境負荷への対応とサステナビリティの推進

アパレル業界全体で環境問題への意識が高まり、縫製工場においてもサステナブルな生産体制が求められています。具体的には、廃棄物の削減やエネルギー効率の向上、環境に優しい染色技術の導入などが課題です。また、消費者の間でもエシカルファッションへの関心が高まっており、環境負荷の低い製品を生産できる工場が競争力を持つようになっています。

縫製工場のM&A最新動向(2025年)

縫製工場業界では事業継承や業界再編の動きが見られ、M&Aが選択されるケースもあります。ここでは、2025年時点での縫製工場M&Aの主要な動向について解説します。

業界再編を目的としたM&Aの動き

縫製工場業界では、国内市場の縮小や後継者不足を背景に、企業同士の統合が行われることがあります。技術力の高い中小企業が大手企業に買収されるケースのように、生産体制の効率化やブランド力の向上を狙ったM&Aも見られるようです。

海外企業とのM&Aによるグローバル展開

日本の縫製工場業界では、安価な労働力を求めて海外生産を拡大する動きが見受けられます。大手アパレルメーカーや繊維企業が、東南アジアや南アジアの縫製工場を買収するケースがあり、生産拠点の最適化とコスト削減を目的としたM&Aが行われています。

縫製工場の確保を目的としたM&A

アパレルメーカーや繊維業者が、自社の製造ラインを強化するために縫製工場を買収する動きも見られます。品質管理の徹底や生産リードタイムの短縮が可能になり、市場競争力を高める効果が期待されています。

縫製工場がM&Aをするメリット

M&Aは単なる資本提携にとどまらず、縫製工場の経営課題を解決し、事業成長を促進する手段となります。縫製業界特有のメリットを踏まえ、M&Aによって得られる主な利点を解説します。

資本力の強化と設備投資の促進

M&Aによって大手企業のグループに加わることで資金力が向上し、最新のミシンや自動裁断機などの設備投資が可能になります。生産性が向上し、より高品質な製品を効率的に製造できるようになります。

取引先・販路の拡大

買収企業の販路やブランド力を活用することで、新たな市場や大手アパレルメーカーとの取引が可能になります。OEM・ODM受注の拡大によって安定的な受注が見込めるようになり、経営の安定化につながるでしょう。

人材・技術の継承と強化

M&Aによる人材確保で熟練工の技術を次世代に引き継ぐことができ、縫製技術の継承が可能となります。また、買収企業からの技術指導や研修を受けることで、新たな加工技術やデザインノウハウを習得でき、競争力の向上につながります。

事業承継の円滑化

後継者不在の縫製工場では、M&Aを通じて事業を継続させることができます。従業員の雇用を守りながら企業のブランドや取引関係を維持できるため、経営者の引退計画をスムーズに進められます。

経営の効率化とコスト削減

規模の経済を活かし、原材料の共同調達や物流の統合を進めることで、コスト削減が可能になります。さらに、買収企業の経営ノウハウを活用することで、業務の効率化や生産管理の最適化を図れるでしょう。

縫製工場がM&Aをするデメリット

M&Aは多くのメリットをもたらす一方で、課題やリスクも存在します。デメリットも検討した上で実施を検討しましょう。

企業文化の違いによる混乱

M&A後に統合を進める際、売り手側と買い手側で企業文化が大きく異なると、従業員の戸惑いや摩擦が生じやすくなります。縫製工場独自のルールが根づいている場合など、組織統合を完了させるには時間と労力が必要です。

交渉期間の長期化

売り手と買い手で企業価値の認識にギャップが生じることがあり、価格交渉が難航するケースもあります。例えば、設備の老朽化や収益性の低下が見られる場合は、売り手が想定する金額を買い手が評価できず、交渉が長引いたり破談になったりするリスクも考えられるでしょう。

顧客・取引先との関係変化

M&Aにより会社の体制が変わることで、既存の顧客や取引先との信頼関係に影響が出る可能性もあります。長年の信頼関係に基づいた取引が多い縫製工場であれば、オーナー交代や社名変更を機に契約見直しや取引停止が発生するかもしれません。

従業員の離職リスク

経営者の交代や体制の変化によって従業員の不安感が高まり、離職につながるケースも見受けられます。特に縫製技術に長けた職人の離脱は品質や生産力の低下につながるため、慎重な対応が求められます。

縫製工場がM&Aを成功させるためのポイント

縫製工場のM&Aを成功させるためには、単なる事業の引き継ぎではなく、成長戦略の一環として活用することが重要です。ここでは、売り手側視点でM&Aを成功させるポイントを解説します。

ブランド価値や市場でのポジションを確認

買い手に選ばれるためには、売り手の縫製工場が持つブランドや製品の独自性をしっかりとアピールすることが重要です。「高級アパレル向けの縫製技術に強みがある」など、自社の魅力を洗い出しておきましょう。デザイン力や品質の高さを証明するために実績を示すこともポイントです。

技術力や製品製造体制をアピール

縫製工場の価値は技術力に直結します。特殊な縫製技術や自動化設備を持つ工場を整備し、品質の高い製品を安定的に生産できる体制を確立していることは、買い手にとって非常に魅力的です。また、技術者の育成が進んでいることを示すのも有効でしょう。

M&A戦略を明確に立てて実行

M&Aで成功するためには、事前に明確な戦略を立てておくことが不可欠です。自社の強みや将来のビジョンを明確にし、買い手に対してどのように事業を発展させるのかを明示しましょう。M&A後の統合計画や事業運営の方針を提示できれば、買い手側にも安心感を与えられます。

また、M&Aを成功させるためには自社の適正な企業価値評価を把握しておくことも大切です。基本的に中小企業のM&Aでは、時価純資産に営業権(のれん)を加味する「時価純資産+営業権法」や、一定期間の利益額をもとに業界水準などを参考にして企業価値を算出する「マルチプル法」などが採用されます。M&A専門家の力も借りながら、自社の価値を正しく判断した上で戦略を練りましょう。

縫製工場のM&A事例

最後に、縫製工場のM&A事例をご紹介します。自社のM&A検討時の参考にしてみましょう。

株式会社ランドビジネスによる株式会社フランドルのM&A

株式会社ランドビジネスは、2023年12月、婦人服アパレル事業を展開する株式会社フランドルの全株式を取得し、子会社化しました。

フランドルは「INED」や「I.T.’S.international」などのブランドを持ち、主に百貨店を販路として90店舗を展開しており、高品質なモノづくりに定評があります。

ランドビジネスは、縫製事業への参入に続き、今回のM&Aにより製造から販売までの一貫体制を確立し、婦人プレタポルテ市場への本格進出を図ります。アパレル業界における上流から下流までのバリューチェーン強化を目指す戦略的なグループ化事例です。

【出典】株式会社ランドビジネス「株式会社フランドルの株式取得(子会社化)に関するお知らせ」

アパレルReSTARTファンド株式会社によるFactory Express Japan株式会社のM&A

アパレルReSTARTファンド株式会社は、2021年3月、山喜株式会社からFactory Express Japan株式会社の全株式を取得し、事業を継承しました。

Factory Express Japanは、日本のものづくりを支えるファクトリーブランド専門のECサイトとウェブメディアを運営しており、全国の工場と消費者を繋ぐ役割を果たしています。

今回の事業継承により、アパレルReSTARTファンドはファクトリー支援や商品開発サポートの向上を図り、国内アパレル産業の持続的成長を支援する体制を整えました。アパレルブランド再生を目指す戦略の一環として、注目される取り組みとなっています。

【出典】アパレルReSTARTファンド株式会社「『Factory Express Japan株式会社』事業継承のお知らせ」

日本毛織株式会社による株式会社東洋紡カンキョーテクノのM&A

日本毛織株式会社(ニッケ)は、2024年4月、株式会社東洋紡カンキョーテクノの全株式を東洋紡エムシー株式会社より取得し、グループ会社化することを決定しました。

東洋紡カンキョーテクノは、集塵機器やエアフィルターの加工・販売を手掛け、「食料」「エネルギー」「環境」分野に向けた機能性フィルターを提供しています。

今回のM&Aにより、ニッケは自動車・環境関連事業の強化を図り、両社の製造技術を共有することで製品力とサービス向上を目指します。産業機材分野における成長戦略の一環として注目される事例です。

【出典】日本毛織株式会社「株式会社東洋紡カンキョーテクノの株式取得に関するお知らせ」

まとめ|縫製工場のM&A動向を押さえてM&Aを成功させましょう

縫製工場のM&Aを成功させるためには、製造業界の動向を把握し、適切な案件を見極めることが重要です。売却の目的や譲渡の条件を明確にし、売上高や営業利益などの財務状況を正しく評価することが成功の秘訣です。

また、M&Aの情報は常に変化するため、公開日や更新情報をこまめにチェックし、適切なタイミングで交渉を行うことが大切です。専門家と相談しながら着実に準備を進めていきましょう。

CINC Capitalは、M&A仲介協会会員および中小企業庁のM&A登録支援機関として、M&Aのご相談を受け付けております。業界歴10年以上のプロアドバイザーが、お客様の真の利益を追求します。M&Aの相談をご希望の方はお気軽にお問い合わせください。

この記事の監修者

阿部 泰士

CINC Capital取締役執行役員社長

阿部 泰士

リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。

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