CINC CapitalはCINC(証券コード:4378)のグループ会社です。
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- 公開日2025.03.27
- 更新日2025.04.02
半導体のM&A動向(2025年)メリット/事例/成功のポイントを解説
近年、半導体業界ではM&A(企業の合併・買収)が加速しており、2025年も引き続き注目を集めることが予想されます。技術革新のスピードが増すなか、半導体メーカーや関連企業は、競争力強化や市場拡大を目的としてM&Aを積極的に活用中です。
しかし、M&Aには多くのメリットがある一方で、統合後の課題やリスクも伴います。
本記事では、最新の半導体業界におけるM&A動向を解説し、成功のポイントについても掘り下げていきます。
目次
半導体の市場動向
半導体は、スマートフォンや自動車、AI技術、データセンターなど、さまざまな産業の中核を担う重要な部品です。近年、世界的な需要の高まりを受けて市場は拡大を続けており、日本でも政府の支援を受けた新たな動きが活発化しています。まずは、半導体市場の最新動向について解説します。
半導体の出荷額は増加傾向
近年、世界の半導体市場は拡大を続けています。総務省によると、2023年の世界半導体市場(出荷額)は13兆3,537億円でした。前年と比較して6.4%増加しています。日本の半導体市場(出荷額)は2021年から増加傾向でしたが、2023年には再度減少し、9,979億円となっています。しかし、長期的には成長基調にあり、2025年にはさらなる拡大が見込まれています。
【出典】総務省「情報通信白書令和6年版」
政府による国内の半導体生産に対する支援の実施
日本政府は半導体産業の競争力強化を目的とした支援策を積極的に展開しています。経済安全保障の観点からも、国内での半導体生産を促進することが重要視されており、大手企業への補助金や新工場建設の支援が進められています。
半導体業界が抱える課題
半導体市場は成長を続けているものの、供給の不安定さや国際競争力の低下、人材不足などが大きな課題です。ここでは、半導体業界が直面する主な課題をご紹介します。
半導体の供給不足
半導体の供給不足は、依然として業界の大きな課題です。スマートフォンや自動車、家電製品など、幅広い分野において半導体の需要があります。しかし、半導体の生産には高度な設備投資が必要であり、新たな工場を建設するには数年単位の時間がかかります。
また、地政学的リスクや自然災害による生産停止が供給の不安定さを助長しているのも問題です。供給量の増加には長期的な視点での投資と対策が大切です。
日本の国際競争力
日本の半導体産業は、かつて世界市場をリードしていましたが、現在では競争力が大幅に低下しているといわれています。主な要因として、米国や台湾、韓国などの企業が技術革新を進める一方で、日本企業が後れを取ったことが挙げられます。特に、先端半導体の製造技術において、海外企業が優位に立っている状況です。
さらに、政治や外交の影響もあり、日本単独での競争力回復は難しくなっています。この状況を打開するために、政府は国内生産の強化を目的とした支援策を進めていますが、競争力を取り戻すにはさらなる施策が必要です。
人材不足
半導体業界では、エンジニアや技術者などの人材不足が深刻な問題となっています。半導体の製造には高度な専門知識が必要ですが、日本国内では半導体関連の人材育成が十分に進んでいるとはいえません。
また、半導体工場の多くが地方に立地しているため、都市部の技術者を確保するのが難しい状況です。人材不足を解決するためには、国内外からの技術者確保に向けた施策や、大学・研究機関と連携した人材育成プログラムの強化が求められます。
半導体業界のM&A最新動向(2025年)
半導体業界では、技術革新のスピードが速く、競争が激化している状況です。ここでは、2025年の最新のM&A動向について解説します。
活発なM&Aが継続している
半導体業界では、以前から企業間の統合や買収が行われてきましたが、近年はさらにその動きが加速している状況です。背景には、世界的な半導体需要の拡大や、各国政府の政策支援があります。日本政府も積極的な支援策を打ち出しており、M&Aの増加を後押しています。
また、ファンドや商社による半導体企業の買収も活発化しており、業界の枠を超えた資本の流入が進んでいます。さらに、規模の大きなM&Aも発生しており、今後も業界の再編が続くことが予想されます。
事業の強化のためにM&Aを行っている
半導体業界のM&Aは、単なる規模拡大だけでなく、事業の強化を目的とした動きが目立ちます。例えば、製造技術の獲得や、新たな市場への参入を狙うケースが増加傾向です。先端技術を持つ企業を買収することで、競争力を高める戦略が多くの企業で採用されています。
さらに、半導体業界では生産拠点の確保も重要な課題となっており、海外企業との提携やM&Aを通じてグローバルな生産体制を強化する動きも進行中です。こうした流れを踏まえると、今後もM&Aを活用した事業強化の動きが加速すると考えられます。
半導体企業がM&Aをするメリット
半導体業界では、資金調達の難しさや競争の激化、人材不足などの課題を抱える企業が増加中です。ここでは、半導体業界の企業がM&Aをするメリットについて解説します。
事業の継続
半導体業界では、新技術の開発や設備投資に多額の資金が必要となるため、特に中小企業にとっては資金繰りが大きな課題です。また、需要の変動や国際競争の激化により、自社単独で事業を維持することが困難になるケースもあります。
こうした状況のなか、M&Aを活用することで、買収企業の資本や技術力を活用し、事業の継続が可能になります。大手企業や成長力のある企業の傘下に入ることで、資金調達の安定化や販路の拡大が期待でき、事業の発展につなげることもできるでしょう。
後継者問題の解決
半導体業界では経営者の高齢化が進んでおり、後継者不在の問題を抱える企業が増えています。専門知識や高度な技術を要する業界であるため、適切な後継者を見つけることが難しく、事業承継の問題に直面している企業も少なくありません。
M&Aを活用すれば、経営の引き継ぎ先を確保し、企業の存続を図ることが可能になります。買収企業が持つ経営ノウハウや人的リソースを活用することで、より円滑な事業承継が実現し、長年培ってきた技術やブランドを次世代に引き継げます。
従業員の雇用の維持
企業の経営が厳しくなると、事業縮小や倒産のリスクが高まり、従業員の雇用が不安定になります。しかし、M&Aを実施することで企業が存続し、従業員の雇用を守ることが可能です。
大手企業や成長企業のグループに加わることで経営基盤が安定し、従業員の待遇やキャリアパスが改善されるケースもあります。M&Aを通じて企業の将来性が確保されることで、従業員のモチベーション向上にもつながるでしょう。
半導体企業がM&Aを成功させるためのポイント
半導体業界の企業がM&Aを成功させるためには、事前の準備や売却の目的の明確化、専門家の活用が重要です。ここでは、M&Aをする際に意識したい成功のポイントをご紹介します。
計画的な準備
M&Aをスムーズに進めるためには、計画的な準備が欠かせません。半導体業界は市場の変化が激しく技術革新のスピードも速いので、売却や買収を検討する際には現在の市場状況や業界のトレンドを把握しておくことが重要です。
また、財務状況の整理や事業の強み・弱みの分析なども行い、企業価値を正しく評価できるようにしておく必要があります。計画的な準備によって相手企業との交渉をスムーズに進められ、適切な条件でのM&Aが実現しやすくなるでしょう。
売却の理由の明確化
売却を成功させるためには、理由を明確にすることが大切です。
M&Aの目的が不明確なまま進めると、適切な買い手を見つけることが難しくなり、交渉が難航する可能性があります。事業の成長のために別の企業と統合したいのか、資金調達のために売却を検討しているのか、後継者問題を解決したいのかといった点を明確にしましょう。
そして、それに合った相手を選定することが重要です。売却の目的がはっきりしていれば、交渉時の条件設定もしやすくなり、M&A後のスムーズな統合にもつながります。
専門家への相談
M&Aのプロセスを成功させるためには、専門家への相談が不可欠です。M&Aは法務、財務、税務など多岐にわたる知識が求められるため、専門家のサポートを受けることで、リスクを最小限に抑えながら進められます。
M&A仲介会社や弁護士、会計士などの専門家の意見を取り入れることで、適切な企業価値の算定や契約内容の精査ができ、トラブルを回避しやすくなります。
また、交渉の過程では感情的な判断を避け、冷静に進めることが重要です。専門家が間に入ることで、客観的な視点を持ちながら交渉を進めることが可能になるでしょう。
半導体業界のM&A事例
ルネサス エレクトロニクス株式会社によるDialog Semiconductor PlcのM&A
ルネサス エレクトロニクス株式会社(以下、ルネサス)は、英国のアナログ半導体企業Dialog Semiconductor Plc(以下、Dialog社)の買収を完了しました。買収額は約48億ユーロ(約6,240億円)で、ルネサスは借入れやエクイティファイナンスを活用して資金を調達しました。
この買収により、ルネサスはDialog社の低消費電力ミックスドシグナル技術やBluetooth® Low Energy、Wi-Fi、バッテリーマネジメント技術を獲得し、組み込みソリューションの強化を図ります。特に、IoT、産業、自動車分野における成長機会を捉え、製品ポートフォリオを拡充することを目指しています。
過去のインターシルやIDTの買収に続き、今回の統合によりルネサスはさらなる競争力向上を目指します。また、Dialog社の技術を活用した「ウィニング・コンビネーション」と呼ばれる統合ソリューションの提供を開始し、シナジー効果による年間約2億米ドルの売上増加や1億2,500万米ドルのコスト削減を見込んでいます。
本件により、ルネサスは組み込み市場でのプレゼンスを一層強化し、グローバルリーダーとしての地位を確立することが期待されます。
【出典】ルネサス エレクトロニクス株式会社「ルネサスがDialog社の買収を完了」
兼松PWS株式会社によるルモニクスのM&A
兼松PWS株式会社(以下、兼松PWS)は、2020年11月2日付でルモニクス株式会社(以下、ルモニクス)の全株式を取得し、完全子会社化しました。本件M&Aの目的は、両社の事業シナジーを生かし、半導体製造装置の販売およびメンテナンス事業を強化することにあります。
兼松PWSは、ドイツのSuss MicroTec社や香港のASM Pacific Technology社の半導体製造装置を主に国内市場向けに販売・サービス提供しています。一方、ルモニクスはドイツのInnoLas Semiconductor社の国内販売代理店として、ウェハマーキング装置の販売・保守を手掛けています。両社は競合関係にないため、今回の統合により、兼松PWSのデバイスメーカー市場とルモニクスのウェハメーカー市場における販路拡大が期待されます。
現在、半導体市場ではシリコンウェハやパワーデバイス向け化合物半導体ウェハの需要が拡大しており、それに伴いウェハのトレーサビリティや品質管理の重要性が高まっています。本件M&Aを通じて、兼松PWSはルモニクスの技術や販売チャネルを活用し、高精細・高機能なウェハマーキング装置の提供を強化することで、成長市場における競争力の向上を目指します。
【出典】兼松PWS株式会社「兼松 PWS 株式会社、ルモニクス株式会社の全株式を取得」
株式会社フェローテックホールディングスによる株式会社コスモ・サイエンスのM&A
株式会社フェローテックホールディングス(以下、フェローテック)は、2023年4月3日、連結子会社である株式会社フェローテックマテリアルテクノロジーズ(FTMT)を通じて、真空装置の受託製造を行う株式会社コスモ・サイエンスの全株式を取得し、完全子会社化しました。
フェローテックは、半導体製造装置向けの真空シールや真空チャンバー、ロボットパーツなどの金属加工事業をグローバルに展開しています。近年の地政学リスクを考慮し、日本国内での生産能力向上を目指しており、本件の買収はその戦略の一環となります。
コスモ・サイエンスは、半導体およびフラットパネルディスプレイ(FPD)製造装置メーカー向けに、真空装置の設計・加工・組立を行う企業であり、高い技術力を有しています。今回の買収により、フェローテックは日本国内での金属加工事業を強化し、半導体製造装置の需要拡大に対応していきます。さらに、同社のグローバル販売ネットワークや生産拠点との連携を進めることで、企業価値の向上を目指します。
本件の買収を通じて、フェローテックは日本市場での事業基盤を拡充し、半導体装置関連事業のさらなる成長を加速させる見込みです。
【出典】株式会社フェローテックホールディングス「真空装置の受託製造企業コスモ・サイエンス社買収に関するお知らせ」
まとめ|半導体業界のM&A動向を押さえてM&Aを成功させましょう
半導体業界のM&Aは、技術革新の加速や市場環境の変化を背景に、今後も活発に行われることが予想されます。M&Aを成功させるためには、市場の動向を正しく理解し、適切な手法を選択した上で、成約までのプロセスを慎重に進めることが求められます。譲渡金額や条件の見極めなども重要です。業界の最新動向を抑えながら、自社にとって最適なM&Aの形を見極め、将来の発展に活かしていきましょう。
CINC Capitalは、M&A仲介協会会員および中小企業庁のM&A登録支援機関として、M&Aのご相談を受け付けております。業界歴10年以上のプロアドバイザーが、お客様の真の利益を追求します。M&Aの相談をご希望の方はお気軽にお問い合わせください。
この記事の監修者

CINC Capital取締役執行役員社長
阿部 泰士
リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。