CINC CapitalはCINC(証券コード:4378)のグループ会社です。
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業種
- 公開日2025.04.11
- 更新日2025.04.14
リサイクルショップのM&A動向(2025年)メリットデメリット/事例/成功のポイントを解説
リユース業界は、環境意識の高まりやSDGsへの関心増加を背景に成長を続けており、市場規模は年々拡大しています。一方で、フリマアプリ・ネットオークションの台頭により、地域密着型の店舗などの客足は遠のき、徐々に廃業に追い込まれています。
このような状況下でM&Aは、事業継続や成長戦略のカギだといえるでしょう。
今回は、リサイクルショップが含まれるリユース業界のM&A動向について解説します。売り手企業側のメリット・デメリット、成功のポイント、事例などもあわせてご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
リサイクルショップ(リユース)業界の市場動向
「株式会社リユース経済新聞」の調査によると、リユース市場は2023年に3兆1,227億円の売上を達成し、過去最高の市場規模となりました。この背景には、消費者の環境意識の向上やSDGsへの関心増加があるほか、インフレによる物価上昇も成長を後押ししています。
リユース業界は元来、不況に強い特徴を持ちます。その理由は、経済が低迷する時期には「不要な品物を手放して現金化したい」「品物をできるだけ安く手に入れたい」という消費者ニーズが高まるためです。近年は若年層を中心に、サステナブルな消費行動を重視する人が増え、中古品への抵抗感も減少しています。
【出典】株式会社リユース経済新聞「リユース業界の市場規模推計2024(2023年版)」
リサイクルショップ(リユース)業界が抱える課題
リユース業界には、収益性・デジタル化・人材育成など、複数の重要な課題があります。ここでは、業界が直面する3つの課題について、現状と対策をご紹介します。
経営の安定化が難しい
リユース業界では、中古品の買取や在庫管理の難しさから、安定した収益確保に苦心する事業者が増えています。業界の性質上、商品の仕入れが不定期であり、キャッシュフローの予測が困難であるためです。また、商品の価値判断には専門的な知識が必要となるため、スタッフの育成にかかる時間とコストが経営を圧迫しています。
EC化の対応が求められる
フリマアプリやオークションサイトの台頭により、リユース業界では従来の店舗型ビジネスモデルの見直しが必要となっています。近年はネット販売が市場の半分以上を占めるともいわれ、変化に対応できない事業者は市場からの撤退を余儀なくされています。
人材不足と後継者問題
リユース業界では、商品の価値判断や接客スキルを持つ人材の確保が難しくなっています。中でも家業として経営されてきた中小規模の会社では、後継者不在による事業継続の危機に直面するケースが見られます。
リサイクルショップのM&A最新動向(2025年)
リサイクルショップのM&Aは近年活発化しており、業界再編が進んでいます。ここではリサイクルショップのM&A動向についてご紹介します。
大手による地域密着型リサイクルショップの買収
リユース業界では、大手リサイクル・リユース企業による、地域密着型の中小リサイクルショップの買収が増加しています。これは、大手による商圏拡大と取扱商品の多様化を目指す動きだと考えられています。
専門性の高い中小店舗の買収
総合型リサイクルショップを展開する企業では、専門性の高い中小店舗を買収し、取扱商品の幅を広げる戦略が採用されています。特に、買取専門店による小売業の買収が増加しており、販売チャネルの強化を図るケースが目立ちます。
リサイクルショップがM&Aをするメリット
業界内の競争激化により、小中規模のリサイクルショップの経営環境は厳しさを増しています。ここでは売り手側から見たM&Aの3つのメリットをご紹介します。
廃業リスクを回避できる
後継者不在に悩む売り手側の経営者にとって、M&Aは事業存続の有効な手段の一つです。買い手企業との交渉次第では、従業員の雇用を維持できる可能性があります。新たな経営者に事業を託し、これまでに築き上げてきたリサイクルショップ事業を継続できるかもしれません。
ブランド力のある企業に引き継げる
大手企業による買収は、売り手側の経営基盤の強化につながります。買収企業の持つ経営ノウハウや資金力を活用することで、より安定した事業運営が期待できるでしょう。また、デジタル化への対応や新規サービスの展開など、単独では難しい施策も実現しやすくなります。
在庫・設備の処理をスムーズに進められる
リサイクルショップの廃業時は、在庫処分や設備処理が課題となるケースがあります。M&Aで事業譲渡を選択した場合、店舗の在庫・設備を含めた経営資源は買い手に引き継がれるため、これらをノーコストで処分可能です。ただし、不良在庫は事前に処分する必要がある点に留意しましょう。
リサイクルショップがM&Aをするデメリット
リサイクルショップのM&Aには、企業価値算定の難しさや従業員への影響、契約上の制約など、さまざまな課題があります。ここでは売り手が直面する3つの主要なデメリットについてご紹介します。
古物営業法に基づく許認可の引継ぎ手続きが必要
リサイクルショップを経営する場合は、古物営業法に基づく許認可が必須となります。M&Aのプロセスでは、買い手側へ営業に必要な古物商許可を引き継ぐために、手続きが複雑となる点に留意しましょう。
企業価値の算定が難しい
一般的なM&Aでは「EBITDA倍率法」や「DCF法」などの手法で企業価値の算定が行われます。それに対して、リサイクルショップの場合は保有する中古品のカテゴリー別や年代別に市場価値を確認し、在庫評価が行われます。長期保管している商品、需要の低い商品については、ほとんど価値が認められないこともあり、企業価値の算定に大きく影響を与える可能性があります。
経営方針の変化による従業員の不安
M&A後の経営方針の変更により、従業員の雇用条件や職場環境が変化するケースがあります。なかでも特筆すべきは、ベテラン人材の離職です。評価制度や職場環境の変化に不満を感じ、店舗運営を中心的に担う従業員が離職するおそれがあります。
契約内容によっては制約が存在する
M&A契約において、一定期間は前オーナーが経営に関与することを求められるケースがあります。これは円滑な事業承継を目的としたものですが、完全に経営から手を引きたい売り手側経営者にとっては、負担となるかもしれません。また、契約条件によっては、一定期間は競合する事業を制限されるなど、将来的な事業展開が制約されることがあります。
リサイクルショップがM&Aを成功させるためのポイント
リサイクルショップ業界ではM&Aによる事業承継や経営統合が増加しています。ここでは、売り手がM&Aを成功させるためのポイントをご紹介します。
早めに売却準備を進める
リサイクルショップの場合、在庫管理や仕入れルートの整備など、時間をかけて取り組むべき課題が多く、M&Aへ向けて早期からの計画的な準備が必要となります。経営者の高齢化や後継者不在が深刻化する中、業績が好調なうちからM&Aの準備を始めましょう。
適切なスキームを選択する
M&Aには、「事業譲渡」「事業売却」「事業承継」「株式譲渡」などの複数の売却スキーム(手法)があります。リサイクルショップの税務上の影響や従業員の処遇、取引先との関係など、さまざまな要素を考慮してスキームを選択しましょう。
財務状況を整理し、企業価値を高める
リサイクルショップが企業価値を高めるためには、在庫品のデータを整備し、仕入日・仕入額・販売額などをいつでも提示できるように整理しておくことが大切です。併せて、不良在庫の整理や借入金の返済を進め、財務内容を改善することで、より有利な条件で交渉が期待できるでしょう。
適切なM&A仲介業者を選ぶ
リサイクルショップのM&Aでは、リユース業界に精通したM&A仲介会社のサポートが欠かせません。古物営業法に基づく許認可や在庫評価など、専門的な知識が必要な分野では、経験豊富な担当者のアドバイスが必要です。
リユース業界のM&A事例
最後に、リユース業界のM&A事例をご紹介します。自社のM&A検討時の参考にしてみましょう。
株式会社 BuySell Technologiesによる株式会社むすびのM&A
2024年1月、総合リユースサービスを展開する株式会社BuySell Technologiesは、ブランド品などの買取店舗「買取むすび」を運営する株式会社むすびの全株式を取得し、子会社化する方針で基本合意書を締結しました。
むすびは2017年設立で、全国45店舗を展開し、商業施設への出店戦略や人材育成によるリピーター獲得に強みがあります。BuySellは既に複数のM&Aを通じて買取チャネルを拡大しており、本件でも地域展開の拡大やマーケティング支援による相乗効果が見込まれます。
急成長するむすび社を傘下に収めることで、同社の更なる成長とグループ全体の企業価値向上が期待されます。リユース業界では、店舗網拡大と多様なチャネル戦略を目的としたM&Aが活発化しています。
【出典】株式会社 BuySell Technologies「株式会社むすびの株式取得(子会社化)に向けた基本合意書締結のお知らせ」
株式会社 BuySell Technologiesによるレクストホールディングス株式会社のM&A
2024年8月、総合リユースサービスを展開する株式会社BuySell Technologiesは、レクストホールディングス株式会社を簡易株式交換により完全子会社化することを発表しました。
レクストHDは、出張買取ブランド「買取 福ちゃん」を展開する株式会社REGATEをはじめ、骨董品買取の株式会社日晃堂など、リユース関連の中核子会社7社を傘下に持つ純粋持株会社です。
今回のM&Aでは、不動産等の非中核事業を分離したうえで、リユース事業に特化した再編が行われました。取得価額は約82.4億円とされ、バイセルグループの出張買取チャネル拡充と、グループ内の経営資源連携によるシナジーが期待されます。競争が激化する中、ブランド力とリーチを強化する動きが加速しています。
【出典】株式会社 BuySell Technologies「レクストホールディングス株式会社の株式取得及び簡易株式交換による完全子会社化に関するお知らせ」
株式会社トレジャー・ファクトリーによる株式会社ピックアップジャパンのM&A
2020年10月、株式会社トレジャー・ファクトリーは、静岡県を拠点にリユースショップを展開する株式会社ピックアップジャパンの全株式を取得し、子会社化しました。
ピックアップジャパンは、総合リユース、ブランド・貴金属専門店、工具専門店、さらに質業も手掛けるなど多様な業態を展開し、地域での高い知名度と大型店舗を活かした事業運営に強みを持ちます。
トレファクは、同社の地域密着型モデルと自社のIT・ECノウハウや出張買取チャネルを融合させ、静岡県での事業拡大とグループ全体のシナジー強化を図る狙いです。地域特化型企業との連携による成長戦略は、地方市場の深耕と新たな収益源の確保に繋がる事例といえます。
【出典】株式会社トレジャー・ファクトリー「株式会社ピックアップジャパンの株式取得(子会社化)に関するお知らせ」
まとめ|リサイクルショップ(リユース)業界のM&A動向を押さえてM&Aを成功させましょう
リサイクルショップのM&Aには、入念な準備と業界特有の知識や経験が求められます。後継者問題などで廃業を検討する前に、まずは信頼できるM&A仲介会社に相談しましょう。
リユース業界の課題を踏まえて、最適なM&Aスキームを選択するには、専門家から助言を受けるのが望ましいといえます。適切なタイミングで売却を進めるためにも、早めに専門家との相談をご検討ください。
CINC Capitalは、M&A仲介協会会員および中小企業庁のM&A登録支援機関として、M&Aのご相談を受け付けております。業界歴10年以上のプロアドバイザーが、お客様の真の利益を追求します。M&Aの相談をご希望の方はお気軽にお問い合わせください。
この記事の監修者

CINC Capital取締役執行役員社長
阿部 泰士
リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。