CINC CapitalはCINC(証券コード:4378)のグループ会社です。
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- 公開日2025.04.02
- 更新日2025.04.02
印刷業界のM&A動向(2025年)メリットデメリット/事例/成功のポイントを解説
社会のデジタル化や紙媒体需要の減少により、印刷業界は大きな転換期を迎えています。
事業承継や事業拡大を目的としたM&Aが活発化しており、業界全体で注目されています。大手企業によるM&Aだけでなく、中小規模の事業譲渡や株式譲渡も増加傾向です。
本記事では、印刷業界の現状や課題を解説するとともに、M&Aの最新動向やメリットをご紹介します。
目次
印刷業界の現状
印刷業界は市場規模の縮小という大きな課題に直面しています。一般印刷市場を対象とした「矢野経済研究所」の調査によると、印刷業界の市場規模は減少傾向で推移しています。2013年(3兆6,118億700万円)から2019年(3兆4,390億9,100万円)まで市場規模は年々減少し、今後も需要が縮小すると予測されています。
【出典】矢野経済研究所「一般印刷市場に関する調査を実施(2020年)」
その背景として、電子書籍の普及や企業・官公庁におけるペーパーレス化の推進などが挙げられます。紙媒体の需要が減少する中、消費者の情報収集のデジタル化が進行し、マーケティング活動のデジタル化が加速しました。従来の印刷物を活用した広告や販促活動の縮小がますます進んでいます。
また、印刷業界では後継者問題が深刻化しており、中小規模の事業者を中心に事業承継の課題が浮上しています。このような状況下で、事業承継を目的としたM&Aが重要な解決策として注目されています。
印刷業界が抱えている課題
印刷業界は、デジタル化の進行や働き方の変化、価格競争など多方面の影響を受けており、市場縮小や収益構造の悪化といった深刻な課題に直面しています。これらの課題について、それぞれ見ていきましょう。
デジタル化により市場縮小が避けられない
デジタル化の進展に伴い、紙媒体からデジタル媒体への移行が加速しています。スマートフォンやタブレットの普及により、出版物や雑誌の需要が減少し、電子書籍が主流となりつつあります。市場の変化に対応するため、業界全体でデジタル技術との融合を進めることが必要です。
オフィスで事務製品を使用する機会が減少している
新型コロナウイルスの流行によるテレワークの増加は、事務用印刷物の需要減少を招きました。オフィスでの紙資料の使用が減り、印刷関連の需要が縮小しています。
一方で、テイクアウト商品や通販商品の需要が増加しているため、パッケージ印刷など新たな分野に注力することが求められています。
価格破壊により収益構造の悪化が進んでいる
ネット通販印刷の台頭により、印刷業界全体で価格競争が激化しています。オンラインで簡単に注文できる低価格な印刷サービスが増加し、多くの印刷会社が値下げを強いられる状況に陥っています。今後は、高付加価値サービスの提供や差別化戦略が不可欠です。
印刷業界のM&A最新動向(2025年)
印刷業界では、中小企業の後継者不足やデジタル化への対応が課題となるなか、M&Aを活用した業界再編が進んでいます。ここでは、2025年現在の印刷業界におけるM&Aの最新動向を解説します。
大手印刷会社が地域印刷会社を買収している
近年、大手印刷会社が中小印刷会社を積極的に買収する動きが見られます。その背景として、地域ネットワークや特定分野の専門的なノウハウを取り込むことで、競争力を強化しようという狙いがあります。
例えば、出版印刷を中心とする大手企業が、パッケージ印刷に強みを持つ地域企業を買収することで、包装分野への参入を実現するといったケースが挙げられるでしょう。
同じ規模の企業同士が合併して事業を承継している
印刷業界では、中小企業の後継者不足が深刻な課題となっています。後継者不足を解決するために、同規模の企業同士が合併し、事業承継と規模拡大を同時に図るケースが増加しました。
同業他社との対等合併によって、営業エリアの拡大や人材の相互補完、設備の有効活用といった効果が期待されています。
異業種企業が印刷会社を買収している
近年、異業種企業による印刷会社の買収も増えています。IT企業や広告代理店などが業界に参入し、印刷会社の持つ製造機能を活用しながら、ワンストップサービスを提供する事例が多く見られます。
異業種企業による買収は、単なる業務範囲の拡大にとどまらず、デジタル時代に適応した新たなビジネスモデルを生み出す可能性があるでしょう。
【売り手側】印刷会社がM&Aをするメリット
ここでは、売り手側の印刷会社がM&Aを実施するメリットについてご紹介します。
従業員の雇用が維持できる
印刷業界では後継者問題が深刻化しています。M&Aを通じて大手企業や資本力のある企業に事業を引き継ぐことで、従業員の雇用を守れる可能性があります。
特に、廃業を視野に入れて検討している場合は、M&Aが従業員の生活を支える重要な手段となるでしょう。
後継者問題を解決できる
印刷業界では、後継者を見つけられずやむを得ず廃業に追い込まれる中小印刷会社が少なくありません。M&Aを活用すれば、外部の第三者に事業を譲渡することが可能です。これまで築き上げた印刷事業を次世代に引き継ぎ、事業の継続性を確保できます。
既存の取引先との取引が継続できる
印刷会社がM&Aを実施すると、長年にわたり取引が続く出版社や事業会社との信頼関係を継続できます。
加えて、買い手側が持つ販路やネットワークを活用することで、新たな取引先を獲得できるチャンスが広がるでしょう。事業の発展や収益の拡大を図れる可能性があります。
【売り手側】印刷会社がM&Aをするデメリット
M&A成立まで時間がかかる場合がある
印刷業界では、事業承継を目的にM&Aを検討する中小規模の事業者が少なくありません。ただし、業界全体でデジタル化や紙媒体需要の減少など課題が多いことから、買い手がなかなか見つからず、成立までに時間がかかるおそれがあります。
従業員が離職してしまう可能性がある
長年にわたり勤務してきた従業員がM&Aに不安をおぼえ、離職するリスクが存在します。特に、印刷業務の専門的なノウハウを有する印刷職人の離職には注意が必要です。従業員の理解を得るために丁寧な説明を行い、不安を払拭する必要があります。
印刷会社がM&Aを成功させるためのポイント
印刷業界でM&Aを成功させるためには、戦略的なアプローチが求められます。M&A後の事業成長と競争力の強化を実現する、成功のポイントをご紹介します。
譲渡企業と譲受企業で協力関係を築く
M&Aは、単なる取引にとどまらず、両企業の協力関係を築くことが成否を左右します。売り手側と買い手側が互いに信頼関係を築き、ビジョンを共有することが、事業拡大や継続的な成長の基盤となります。
売り手側では、機械設備リストや仕入先・外注先リストのほか、環境関連の許認可、ISO認証関連書類などを準備しておくと良いでしょう。
デジタル技術や既存の人材を活用する
印刷業界のM&Aにおいて、デジタル技術の導入や既存の人材の活用が重要です。M&Aを通じてデジタル化の進んだ企業と統合することで、生産効率を高め、環境負荷を軽減できる可能性があります。
専門家にサポートしてもらう
M&Aを成功させるためには、専門家のサポートが不可欠です。なかでも印刷業界に多い事業承継では、適切なタイミングでの実行や事前の戦略策定が重要となります。
また、デューデリジェンスでは「印刷機器の評価方法と残存価値」「保守契約の承継方法」「作業標準書や品質管理マニュアルの整備状況」「印刷原版や顧客データの管理状況」といったポイントから入念なチェックが求められます。
専門家のアドバイスを受けることで、M&Aのメリットを最大化するとともに、想定されるリスクを抑えられるのが魅力です。
印刷業界のM&A事例
株式会社オストリッチダイヤによる北越パッケージ株式会社のM&A
株式会社オストリッチダイヤは、北越パッケージ株式会社の所沢製造部の事業を譲受し、事務用品印刷の生産管理を強化します。これに伴い、商工中金をはじめ東京シティ信用金庫、日本政策金融公庫が協調融資を実施し、資金面から同社をサポートしました。
オストリッチダイヤは、企業向け印刷物の製造を手掛けるディーソルグループの一員で、機密性の高いデータ処理をワンストップで提供できる体制を持ちます。今回の事業譲受により、首都圏に点在する拠点を集約し、請求書や各種検査結果などの重要情報を扱う事務用品印刷の生産能力を向上させる狙いがあります。
印刷業界では、デジタル化の進展により市場環境が変化する中、高付加価値の印刷サービスや生産効率の向上が競争力強化の鍵となっています。本件は、設備投資と拠点統合を通じた事業強化の好例といえます。
【出典】株式会社ディーソルグループ「一部事業譲受に関するお知らせ」
【出典】商工中金「事業譲受により事務用品印刷の生産管理高度化を図る株式会社オストリッチダイヤ様を金融面からサポート」
スキットがアヤトを子会社化
富山県の印刷会社「株式会社アヤト」は、福井県のスキット株式会社に株式譲渡を行い、事業承継を実施しました。本件は、事業承継M&Aプラットフォーム「ビズリーチ・サクシード」を通じて成約に至りました。
アヤトは地元広報誌の制作や商業印刷を手掛け、親子3代にわたり事業を継承してきました。しかし、元社長の綾藤隆氏の高齢化に伴い、後継者不在の課題を抱えていました。金融機関を通じてM&A仲介会社の支援を受け、ビズリーチ・サクシードを活用した結果、スキットとのマッチングが成立しました。
スキットは6つのWeb通販事業と商業印刷を展開し、事業拡大を目指していました。今回のM&Aにより、新たな顧客基盤の獲得や印刷業務の強化が期待されます。印刷業界では、デジタル化の進展に伴い、従来型の印刷会社の統合やDX推進が重要視されており、本件は成功事例の一つといえます。
【出典】PR TIMES「親子3代で継承してきた富山県の印刷会社を福井県の印刷会社に譲渡」
大日本印刷株式会社がハコスコを子会社化
大日本印刷株式会社(DNP)は、XR・ブレインテック事業を展開する株式会社ハコスコの株式51%を取得し、グループ会社化しました。本件により、DNPはメタバースや脳科学技術を活用した新規事業の創出を加速させる狙いがあります。
ハコスコは、メタバースの構築・運用や360度映像配信を手掛けるXR事業のほか、脳科学とテクノロジーを融合させたブレインテック事業を展開します。DNPは、2023年に「XRコミュニケーション事業」を成長領域と位置づけ、本件M&Aによりメタバース事業の強化や、XR技術とブレインテックを活用した新分野の開拓を目指します。
具体的なシナジーとして、ハコスコのメタバース構築ツール「メタストア」の活用や、DNPの3Dデータ構築技術と掛け合わせた空間コンピューティング技術の向上が挙げられます。また、BMI(Brain Machine Interface)技術を活用した新サービスの開発も進める予定です。
本件は、伝統的な印刷業からデジタル領域へと事業転換を進めるDNPの戦略的M&Aであり、XR・ブレインテック市場の成長を見据えた業界再編の一例といえます。
【出典】大日本印刷株式会社「XR・ブレインテック事業を展開するハコスコをグループ会社化」
まとめ|印刷業界のM&A動向を押さえてM&Aを成功させましょう
ここまで、印刷業界のM&A動向をお伝えしました。印刷業界のM&Aでは、先端技術を活用し、事業領域を拡大することで、持続可能な事業の成長が期待できます。
M&Aを成功へ導くには、シナジー効果を高めるために、売り手と買い手が協力関係を築くことが大切です。経営統合をスムーズに進めるための体制作りや、社員の雇用継続、企業文化への配慮などを意識して取り組みましょう。
CINC Capitalは、M&A仲介協会会員および中小企業庁のM&A登録支援機関として、M&Aのご相談を受け付けております。業界歴10年以上のプロアドバイザーが、お客様の真の利益を追求します。M&Aの相談をご希望の方はお気軽にお問い合わせください。
この記事の監修者

CINC Capital取締役執行役員社長
阿部 泰士
リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。