CINC CapitalはCINC(証券コード:4378)のグループ会社です。
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- 公開日2025.03.26
- 更新日2025.04.02
LPガス業界のM&A動向│売却相場や手法、売却のメリットについて
近年LPガス業界では、事業環境の変化や競争の激化に伴い、M&Aの重要性がますます高まっています。
人口減少やエネルギー政策の転換など、業界特有の課題を背景に、事業の効率化や規模の拡大を目指す企業が増えている状況です。
本記事では、LPガス業界におけるM&Aの動向や売却の相場、手法について解説するとともに、売り手側のメリットや注意点についてもご紹介します。
業界の将来を見据えたM&Aの戦略を考えるうえで、ぜひ参考にしてください。
目次
LPガス業界とは
LPガス業界は、家庭用エネルギーとして欠かせないライフラインを支える一方で、業務用や工業用の分野でも広く利用されています。
まずは、LPガス業界の基本的な概要と市場規模の現状、さらには特徴について解説します。
LPガス業界について
LPガスは、「Liquefied Petroleum Gas(液化石油ガス)」の略称です。主にプロパンやブタンを原料とするエネルギーで、ボンベやタンクを利用して供給されるのが特徴です。
日本では、都市ガスの供給エリア外で多く利用されるほか、災害時のバックアップエネルギーとしても重要視されています。また、環境負荷が比較的低いエネルギーとして注目されており、持続可能な社会への移行を目指すなかで再評価されています。
LPガス業界の市場規模と特徴
日本のLPガス業界は、国内で約2,000万世帯以上が利用する大規模な市場です。そのなかでも、地方における利用率が高いことが特徴であり、全国で約1万社以上の事業者が活動しています。
一方で、日本LPガス協会の資料によると、2022年のLPガスの総供給量は約1,290万トンでした。1990年代の約1,950万トンをピークに、LPガスの供給はこの30年で約700万トンも減少しています。
業界全体の課題として、人口減少に伴う需要の縮小や、事業者の高齢化、競争の激化が挙げられるでしょう。このため、事業の効率化や後継者問題の解消を目的に、近年ではM&Aを活用した事業再編の動きが活発化しています。
LPガス業界のM&Aの動向
LPガス業界では近年、人口減少や新エネルギーの登場といった社会的要因により、市場環境が大きく変化しています。ここでは、LPガス業界でM&Aが増加している背景や、その具体的な動向について解説します。
市場の縮小と競争の激化
オール電化の普及や新エネルギーの登場により、LPガス需要が縮小しています。今後もオール電化の住宅は増えるとの見解であり、電力会社や都市ガスとの競争は年々激化しています。
このように、エネルギー供給の多様化や都市ガスとの競争が激化した影響で、経営環境が厳しくなっている事業者も少なくありません。このような状況に対応するために、規模の拡大や効率化を目的としたM&Aの動きが加速しています。
後継者不足
多くのLPガス事業者では、経営者や従業員の高齢化が進み、後継者不足が深刻な課題となっています。
事業承継が難しいケースでは、M&Aを活用して大手企業やほかの地域事業者に事業を引き継ぐ動きが見られます。これにより、従業員や顧客のために事業を継続できるようになります。
M&Aが増加傾向
市場環境の変化や後継者問題を背景に、LPガス業界ではM&Aの件数が年々増加しています。大手LPガス企業はシェア拡大を目的に、中小規模の事業者を積極的に買収するケースが増えています。
また、エネルギー関連ファンドによるM&Aも活発化しており、資本参加や事業提携を含めた多様なスキームで取引が行われています。
LPガス業界のM&A売却相場と手法
LPガス業界のM&Aでは、売却価格の相場や取引の進め方が事業規模や地域特性によって大きく異なります。M&Aを検討する際には、自社の市場価値を正しく把握することが重要です。
ここでは、LPガス業界における売却相場の概要と、実際に利用される主な手法について解説します。
LPガス業界のM&Aの売却相場
LPガス業界のM&Aでは、後継者問題を抱える事業者や競争が激しい地域では価格が低くなる傾向にあります。一方、安定した顧客基盤や地域における競争優位性を持つ事業者の場合、高値での売却が期待できるでしょう。
株式譲渡の場合、価格算定では「企業価値を算出する方法」や「事業価値に純有利子負債を考慮して株式価値を算出する方法」などが採用されます。一方、事業譲渡の場合は「譲渡対象資産の時価評価額」「のれん価値」「将来キャッシュフローの現在価値」などに基づいて算定されることが多いです。
具体的な自社の企業価値を知りたい方は、ぜひ企業価値算定シミュレーションをお試しください。
LPガス業界のM&A手法
株式譲渡
株式譲渡は、売り手の所有する株式を買い手に譲渡することで経営権を移転する手法です。この方法では、法人全体を包括的に引き継ぐことが可能であり、顧客契約や従業員雇用をそのまま維持できる点がメリットといえます。
その一方で、会社全体の負債や法的責任も承継されるため、買い手による慎重な調査が必要です。
事業譲渡
事業譲渡は、事業の一部または全体を売却する手法で、会社全体ではなく、特定の資産・負債・契約を個別に選択して取引を行います。買い手は不要な負債やリスクを回避しつつ、必要な資産のみを取得できます。
ただし、各契約の個別承継手続きが必要となるため、手続きが煩雑になる可能性があります。
商権譲渡
商権譲渡は、LPガス業界特有の取引形態で、顧客契約(供給権)や販売権(商権)を譲渡する手法です。
ただし、法的には事業譲渡の一形態として扱われ、独立した法的概念ではありません。買い手は既存顧客を効率的に取り込めますが、個別の顧客契約の承継手続きが必要となります。
その他のM&A
株式交換や合併といったほかのM&A手法も選択肢として挙げられます。
株式交換は、売り手企業の株主が保有する株式を買い手企業の株式と交換する手法です。現金支払いを伴わないため、買い手の資金負担を軽減できる利点があります。ただし、非上場企業の場合、株式の評価が難しく、実務では使用頻度が低くなります。
合併は、売り手と買い手が法的に一つの法人として統合される手法です。地域戦略や事業規模の拡大を目指す際に適しています。ただし、資産・負債が包括的に承継される点や、法的手続きが比較的複雑である点に留意しましょう。
LPガスM&Aの売り手側のメリット
LPガス業界のM&Aは、売り手側にとって多くのメリットをもたらします。事業承継の問題を解決するだけでなく、従業員の雇用を守り、経営者自身の財務的負担を軽減することも可能です。
ここでは、M&Aが売り手側にもたらす具体的なメリットについて解説します。
従業員の雇用継続
M&Aによる売却は、会社の事業や顧客基盤を維持しながら新たな経営体制へ移行するため、従業員の雇用が守られる可能性が高まります。
特に、買い手企業が同業種である場合、既存の事業やノウハウを活用することを重視するため、従業員の役割が維持されるケースも多いです。これにより、経営者は従業員の将来に対する責任を果たせます。
後継者問題の解消
LPガス業界では、高齢化や人口減少に伴い後継者不足が深刻な問題となっています。M&Aを通じて事業を譲渡すれば、後継者がいない場合でも事業を継続させることが可能です。
また、買い手企業が新たな経営リソースを提供することで、事業の発展や地域貢献が期待できます。
売却利益の獲得
M&Aによって得られる売却益は、経営者にとって大きなメリットの一つです。この資金は、経営者のリタイア後の生活資金として活用できるだけでなく、新たな投資や事業活動に充てることも可能です。
また、早期にM&Aを実施すれば、事業価値が高いうちに売却する機会を得られます。
個人保証・担保の解消
中小企業では、経営者が個人保証や担保を負うケースが少なくありません。M&Aにより会社を譲渡することで、経営者はこれらの負担から解放される可能性があります。
買い手企業が負債やリスクを引き継ぐ場合、経営者は個人としての財務リスクを軽減できます。
LPガス業界のM&Aの事例
LPガス業界では、需要減少や競争激化、後継者不足などの課題に対応するため、M&A(企業の合併・買収)が活発です。以下に、業界内で注目されたM&A事例を紹介します。
伊藤忠エネクスによるWP Energy Public Company Limitedへの資本参加
伊藤忠エネクス株式会社は、タイのLPガス販売大手WP Energy Public Company Limited(WP社)と資本・業務提携契約を締結し、WP社の発行済株式の一部を取得しました。本提携は、タイおよび近隣諸国におけるLPガス事業の強化と新規事業の展開を目的としています。
WP社は、タイ国内でブランド別シェア2位のLPガス販売事業者であり、外食事業や太陽光発電事業にも進出しています。一方、伊藤忠エネクスは2020年にタイ・バンコクに駐在員事務所を開設し、市場調査を進めていました。今回の提携により、LPガスの卸売から小売までの一貫した供給網を構築し、再生可能エネルギー分野への進出も視野に入れています。
また、伊藤忠エネクスはすでにインドネシアやフィリピンでLPガス事業を展開しており、今回のWP社との提携は東南アジア市場でのさらなる成長戦略の一環といえます。今後、WP社のネットワークを活用し、周辺国への事業拡大も期待されます。
【出典】伊藤忠エネクス株式会社「WP Energy 社との業務提携の合意に関するお知らせ」
日本瓦斯株式会社による有限会社秋山商店のM&A
日本瓦斯株式会社(ニチガス)は、2014年10月10日付で有限会社秋山商店の簡易ガス事業を吸収分割により承継しました。本件の目的は、簡易ガス事業の統合による運営の効率化と市場競争力の向上です。
ニチガスは、LPガスや都市ガスの供給を手がける業界大手であり、秋山商店の埼玉県春日部市の簡易ガス事業を統合することで、地域における供給網の強化を図る狙いがありました。今回の吸収分割により、ニチガスは秋山商店の簡易ガス事業の資産や契約上の権利義務を承継し、対価として60百万円を秋山商店に支払いました。なお、株式の割当は行われていません。
本件の影響はニチガス全体の売上や資産規模に対して限定的であり、業績への影響も軽微と見込まれています。しかし、業界全体で再編が進む中、地方の小規模事業者を統合することで、経営の効率化と安定供給の確保が期待される事例といえます。
【出典】日本瓦斯株式会社「有限会社秋山商店との会社分割(簡易吸収分割)契約による事業承継に関するお知らせ」
株式会社TOKAIホールディングスによる株式会社フジプロのM&A
株式会社TOKAIホールディングスの連結子会社である株式会社TOKAIは、神奈川県のLPガス販売事業者である株式会社フジプロの全株式を取得し、完全子会社化することを決定しました。株式譲渡の実行日は2024年4月1日を予定しています。
TOKAIは、静岡県を中心に全国でLPガスや宅配水事業を展開し、特にLPガス事業の拡大を推進しています。一方、フジプロは創業約70年の歴史を持ち、神奈川県湘南・県央エリアで強固な顧客基盤を築いてきました。今回の買収により、TOKAIは神奈川エリアでの営業力を強化し、仕入・営業・配送・保安の効率化を進めることで、LPガスの安定供給と事業拡大を図ります。
このM&Aは、TOKAIグループが掲げる「中期経営計画2025」の重点施策である「収益基盤の拡大」に沿ったものであり、今後も同様の買収・提携を通じた成長が期待されます。
【出典】株式会社TOKAIホールディングス「株式会社フジプロの株式取得に係る契約締結のお知らせ」
まとめ|LPガス業界の動向に注意してM&Aを上手く活用する
LPガス業界では、需要の減少や競争の激化、後継者不足といった課題に直面しており、M&Aが活発化しています。M&Aは、売り手企業にとっては後継者問題の解消や売却利益の獲得などのメリットをもたらし、買い手企業にとっては事業規模拡大や市場シェアの向上のための有効な手法です。
一方で、適切な準備とデューデリジェンスを怠ると期待していた成果が得られない可能性もあるため、専門家のサポートを活用しながら慎重に進めることが重要です。LPガス業界の動向をしっかりと把握し、戦略的にM&Aを活用することで、経営の安定化と事業の成長を実現しましょう。
CINC Capitalは、M&A仲介協会会員および中小企業庁のM&A登録支援機関として、M&Aのご相談を受け付けております。業界歴10年以上のプロアドバイザーが、お客様の真の利益を追求します。M&Aの相談をご希望の方はお気軽にお問い合わせください。
この記事の監修者

CINC Capital取締役執行役員社長
阿部 泰士
リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。