CINC CapitalはCINC(証券コード:4378)のグループ会社です。
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- 公開日2025.04.02
- 更新日2025.04.02
健康食品業界のM&A動向(2025年)メリットデメリット/事例/成功のポイントを解説
健康志向の高まりや機能性表示食品の普及により、健康食品市場は成長を続けています。その一方で、業界全体でサプリメントなどの品質管理、法規制対応の強化、競争激化が進んでおり、各社に適切な対応が求められています。
こうした状況の中で、課題解決や事業成長の手段として注目されているのがM&A(合併・買収)です。
今回は、健康食品業界における、2025年のM&A最新動向や成功のポイント、メリット・デメリットを解説します。市場の変化を捉え、持続的な成長を実現するためのM&A戦略を検討しましょう。
目次
健康食品業界の市場動向
「株式会社矢野経済研究所」の調査によると、健康食品業界の市場規模は2022年度で8,860億6,000万円となっています。2020年度にはコロナ禍を背景に健康食品が注目され需要が増加したものの、その後2022年度は主に通信販売での需要に関して、反動で落ち込む傾向が見られました。一方、社会に人流が回復するのにともない、ドラッグストアやコンビニエンスストアでの需要は伸長しています。
健康食品業界では、2015年4月に導入された機能性表示食品制度の影響で、シニア層を中心に健康維持・増進への意識が向き、関連商品の需要が増加しました。また、日本の健康食品は高い品質と安全性が評価されており、アジア圏でのニーズが拡大しています。輸出市場は年々成長を続けていて、国内の健康食品業界の新たな収益源となっています。
【出典】矢野経済研究所「健康食品市場に関する調査を実施(2024年)」
健康食品業界が抱える課題
近年、健康被害の報告や品質管理の不備が指摘される事例が見られ、業界全体での信頼性向上が求められています。ここでは、健康食品業界が抱える課題を解説します。
品質管理と安全性の確保
健康食品業界を含む事業者は、厚生労働省の「GMP(適正製造規範)ガイドライン」に基づき、製造管理や品質管理を厳格に実施しなければなりません。ガイドラインでは、原材料の安全性確認から製造・出荷に至るまで厳しい基準が設けられています。健康食品に関する個別の規格基準はないものの、製造段階における危害発生防止の措置が必須となっています。
法規制への対応
健康食品業界では、法規制への適切な対応も重要な課題となっています。例えば、2020年に施行された改正食品衛生法では、全ての食品事業者へ「HACCP(危害要因分析・重要管理点)」に基づいた衛生管理が義務づけられました。さらに、「指定成分等含有食品」に関する新制度が導入されると、健康被害情報の報告が義務化され、製造管理基準が厳格化されました。こうした法規制に対応するため、業界では品質管理システムの整備や人材育成への投資が進んでいます。
信頼性の回復
健康食品業界では、過去に発生した健康被害や品質管理の不備といった事例により、消費者の信頼が損なわれた経緯があります。そのため、業界全体で信頼回復に向けた取り組みが求められているのです。その一環として、第三者認証制度の導入、品質管理の可視化、トレーサビリティシステムの構築などが挙げられます。企業によっては、原材料の調達から製造、販売に至るまでの全工程を明示し、透明性を確保する取り組みが行われています。
健康食品業界のM&A最新動向(2025年)
近年の健康食品業界では、市場の成熟化と競争激化などを背景に、M&Aが活発化しています。ここでは、健康食品業界のM&A最新動向をお伝えします。
大手企業による中小企業の積極的な買収
健康食品業界では、市場での競争力強化と事業規模の拡大を目的に、大手企業が特色ある中小企業を買収する事例が見られます。なかでも特定の健康機能性に特化した製品ラインナップや、独自の販売チャネルを持つ中小企業は、M&Aにおいて注目度が高い傾向にあります。
国際的なM&Aの増加
グローバル市場への参入を目指して、クロスボーダーM&A(海外M&A)が増加傾向にあります。海外M&Aによって、現地の販売ネットワークの獲得や、先進的な研究開発能力の取得が可能です。なかでも、個人に合わせて最適な栄養バランスを提供する「パーソナライズド・ニュートリション」の分野のような、最新の健康食品技術を持つ企業との連携が注目を集めています。
テクノロジー企業との連携によるイノベーション促進
AIやビッグデータを活用することで、個人のニーズに最適化された健康ソリューションの提供を目指して、M&Aによるテクノロジー企業との連携が増えています。特に注目されているのは、ウェアラブルデバイスやスマートフォンアプリと連携した健康管理サービスです。最先端のテクノロジーを活用することで、消費者一人ひとりの健康状態に合わせた最適な製品提案が可能となります。
健康食品企業がM&Aをするメリット
ここでは、健康食品企業がM&Aをするメリットを、売り手側の視点からご紹介します。
経営基盤の強化
健康食品企業がM&Aで大手企業の傘下に入ることで、技術力の向上や新規健康食品ブランドの構築が可能となり、強固な経営基盤を築けます。最新の製造設備・研究開発設備といった経営資源の活用、原料調達力の向上、品質管理体制の強化、メンテナンスの充実化なども期待できるでしょう。
従業員の雇用維持
中小企業が直面する事業継続の課題に対して、M&Aは有効な解決策の一つとされています。M&Aで売却することで、自社の従業員の雇用を維持できる可能性が高まります。交渉次第では、現状と同様の条件での雇用も期待できるでしょう。
規制の変化に対する適応力の向上
健康食品業界では、各種規制の変化に対する適応力に課題を感じている中小企業が少なくありません。M&Aで研究開発体制や品質管理システムに強みを持つ企業と連携することで、環境変化に対応しやすくなります。
研究や商品開発の加速
M&Aで技術力の高い企業と経営統合すれば、研究力や商品開発力を向上できる可能性があります。自社の研究開発力と、買い手企業の技術力を統合させることで、両社の強みを活かして市場での優位性を確保できるでしょう。
健康食品企業がM&Aをするデメリット
続いて、健康食品業界がM&Aをするデメリットや注意点を売り手側の視点から解説します。
企業文化の違いによる衝突のリスク
企業統合に失敗すると、社員間の軋轢や業務プロセスの混乱が生じるおそれがあります。よく見られるのが、ベンチャー企業特有の迅速な意思決定と、大手企業の慎重な審査体制が衝突するケースです。研究開発のスピードが低下したり、イノベーションが停滞したりして、シナジー効果を発揮できなくなるリスクがあります。
人材流出のリスク
健康食品業界において、優れた専門知識とノウハウを持つ人材の流出は、競争力の低下につながりかねません。M&Aによって、既存の組織や業務プロセスが大きく変わることに不満を抱き、高いスキルを持つ人材が離職するリスクが存在します。また、既存の原料メーカーとの取引条件変更などにも注意が必要です。
ブランドイメージ変化の可能性
健康食品業界では、消費者の信頼を獲得する上でブランドイメージが重要な役割を担っています。M&Aによって事業のオーナーが変わることで、既存顧客のブランドに対する認識が変化し、信頼関係が損なわれる可能性があります。
健康食品企業がM&Aを成功させるためのポイント
M&Aでは戦略的な準備と適切なパートナー選定が成功の鍵を握ります。ここでは、健康食品企業がM&Aを成功させるために重要なポイントを解説します。
強みを活かしたタイミングでの売却
M&Aは自社の価値がもっとも高いタイミングで売却を検討することで、より良い条件での交渉が期待できます。最適な時期に売却するためにも、M&Aを検討し始めた段階で、可能な限り早く専門家に相談するようおすすめします。
企業価値の最適化
健康食品業界では、「機能性表示食品の届出データ」や「臨床試験結果」などが事業の価値を大きく左右します。また、在庫管理の効率化やサプライチェーンの見直しを通じた収益性改善も、買収側の関心を高める要素となります。このほかに、財務状況の透明性の確立や、知的財産の整理に取り組み、企業価値を最適化させましょう。
相乗効果を生む買い手を選定
M&Aで適切な買い手企業を選定するには、候補企業の経営戦略を精査し、統合後に自社のリソースがどのように活用されるかを具体的にイメージすることが重要です。両社の技術・販路・ブランド力が相互に補完された結果、成長を後押しするシナジー効果が生まれるかどうか、慎重に検討しましょう。
早期の準備と焦らない交渉姿勢
状況にもよりますが、一般的にM&Aプロセスの完了までには半年から1年程度の期間がかかります。さらに健康食品業界では、規制対応などに時間を要するケースが少なくありません。早期に準備に取り組み、納得できる条件で交渉を進めましょう。
専門家への相談
M&Aは自社の将来を決める重要な意思決定であり、適切な判断を行うには専門知識と経験が求められます。特に健康食品業界のデューデリジェンスでは、「品質管理体制の評価」「原料調達ルートの承継」「機能性表示食品の届出状況」「特許・製法の権利関係」「広告・表示の適法性」といった専門的な観点でのチェックが必要です。
自社のみで対応するのが難しい場合は、M&A仲介会社をはじめとする専門家のサポートを受けましょう。健康食品業界特有の課題やニーズに精通する仲介会社に依頼することで、M&Aを成功へ導けます。
健康食品業界のM&A事例
キリンホールディングス株式会社による株式会社ファンケルのM&A
キリンホールディングス株式会社は、株式会社ファンケルの完全子会社化を目的とした公開買付け(TOB)を実施し、2024年9月11日をもって成立しました。これにより、キリンはファンケル株式の75.24%を取得し、ファンケルはキリンの連結子会社となりました。今後、株式併合などの手続きを経て、完全子会社化が完了する予定です。
キリンは2019年にファンケルと資本業務提携を締結し、両社のシナジーを模索してきました。今回のM&Aにより、ヘルスサイエンス事業のさらなる強化を図り、2023年に買収したオーストラリアのサプリメント企業Blackmoresとともに、アジア・パシフィック最大級のヘルスサイエンス・カンパニーを目指します。
本件は、飲料・医薬事業を展開するキリンが、健康食品・化粧品分野の強みを持つファンケルを取り込むことで、BtoCビジネスを拡大し、健康領域での競争力を高める戦略の一環といえます。今後、キリングループの研究開発力と、ファンケル・Blackmoresのブランド力を活かしたシナジー創出が期待されます。
【出展】キリンホールディングス株式会社「株式会社ファンケルの完全子会社化に向けた公開買付けが成立」
大塚メディカル株式会社によるReCor Medical IncのM&A
大塚ホールディングス株式会社は、米国の医療機器ベンチャー企業ReCor Medical Inc.を買収する契約を締結しました。大塚ホールディングスは2014年からReCor社に資本参加し、アジアにおける独占開発販売権を取得していました。今回の買収により、同社の超音波腎デナベーション治療デバイス「Paradise® Renal Denervation System」のグローバル展開を加速させる狙いがあります。
ReCor社のParadise Systemは、高血圧患者向けの治療機器であり、欧米で実施された臨床試験「RADIANCE-HTN SOLO試験」において血圧を有意に低下させる効果が確認されています。さらに、米国FDAの承認を得て次の臨床試験「RADIANCE II」を進める準備が整いました。これを受け、大塚ホールディングスは買収を決定し、今後はグループ会社である大塚メディカルデバイスがReCor社を統括する予定です。
本件は、大塚ホールディングスの医療機器事業強化の一環であり、同社の医薬品開発力とReCor社の革新的な技術を組み合わせることで、新たな治療法の確立が期待されます。特に、高血圧治療の分野でParadise Systemが標準治療の一つとなる可能性があり、今後の事業展開が注目されます。
【出典】大塚メディカル株式会社「米国 ReCor Medical Inc.との買収合意による契約締結のお知らせ」
オリックス株式会社による株式会社ディーエイチシーのM&A
オリックス株式会社は、2023年1月31日付で株式会社ディーエイチシー(DHC)の議決権91.1%を取得し、子会社化しました。DHCは化粧品・健康食品分野で確固たる地位を築いており、豊富な商品ラインナップや多様な販売チャネルを持つ国内有数の企業です。本件は、オリックスが注力するヘルスケア事業のさらなる拡大を目的としています。
今回の買収は、DHCの創業オーナーである𠮷田嘉明氏の退任に伴う事業承継の一環として実施されました。オリックスは、新たな経営体制のもとでDHCの企業価値向上を図り、コンプライアンス体制やガバナンスの強化を進める方針です。また、DHCの強みである会員基盤やブランド力を活かし、データ活用や販路拡大、海外市場展開などを通じてさらなる成長を目指します。
なお、オリックスはDHCの残る株式を取得し、完全子会社化を進める計画です。本件により、オリックスのヘルスケア事業とのシナジー創出が期待され、DHCのさらなる成長と市場競争力の向上が見込まれます。
【出典】オリックス株式会社「株式会社ディーエイチシーの株式取得(子会社化)に関するお知らせ」
健康食品業界のM&A動向を押さえてM&Aを成功させましょう
健康食品業界のM&Aでは、経営基盤の強化や研究開発の促進といったさまざまなメリットがあります。その一方で、スキルの高い人材の流出や、長年にわたり培ってきた健康食品ブランドのイメージ低下には注意しなければなりません。M&Aを検討している事業者様は、健康食品業界に詳しい専門家へご相談ください。適切なM&Aスキームの検討、買い手企業との交渉まで、手厚くサポートいたします。
CINC Capitalは、M&A仲介協会会員および中小企業庁のM&A登録支援機関として、M&Aのご相談を受け付けております。業界歴10年以上のプロアドバイザーが、お客様の真の利益を追求します。M&Aの相談をご希望の方はお気軽にお問い合わせください。
この記事の監修者

CINC Capital取締役執行役員社長
阿部 泰士
リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。