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美容室・美容院のM&Aとは?主な手法や価格相場|成功させるコツ

業種

  • 公開日2025.01.29
  • 更新日2025.01.31

美容室・美容院のM&Aとは?主な手法や価格相場|成功させるコツ

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美容室・美容院業界は、競争の激化や人材不足、後継者問題など、さまざまな課題に直面しています。その解決策として、株式譲渡や事業譲渡などのM&Aが注目されています。

今回は、美容室・美容院、ネイルサロン、エステなどのM&Aの基本手法や価格相場、成功に必要なポイントをわかりやすく解説します。

美容業界とは

美容業界は、顧客の美をサポートし、美しさを引き出すサービスを提供する業界です。近年は幅広い世代に美容のニーズが拡大しており、多様な職種が存在します。代表的な職種としては、美容師、エステティシャン、ネイリスト、アイリストなどが挙げられます。

この業界は労働集約型産業であり、人的な労働力に大きく依存しています。国内の美容室・美容院は個人事業所や家族経営も少なくないといわれています。

多くの美容室・美容院が抱える課題

競合他社との競争が激化する中で、中小規模の美容院は人材不足や後継者問題などに悩まされています。その結果、事業を引き継ぐ手段としてM&Aを選択する経営者が増加傾向にあるのです。ここでは、美容室・美容院が抱える課題について解説します。

経営面の課題

株式会社リクルートの調査研究機関「ホットペッパービューティーアカデミー」の調査報告によると、美容室の市場規模は推計で1兆3,543億円となっています。近年の市場規模は横ばいの傾向です。

一方、大手チェーン店との競争激化による価格競争など、中小規模の美容院の多くが経営面の課題に直面しています。新規顧客やリピーターの確保、収支バランスの維持などに苦戦している店舗が少なくありません。

【出典】PRTIMES「美容センサス2024年上期≪美容室・理容室編≫」

人材関連の課題

美容院・美容室と同じく、美容師の総数は増加傾向にあります。しかしながら、業務の特性上避けられない長時間の立ち仕事による身体的負担や、見合わない給与水準などが要因となり、業界全体で離職率の高さが問題となっています。

また、経営者の高齢化問題もあります。現在、美容室・美容院の経営者の年齢構成は50〜60代が中心で、事業継承が喫緊の課題です。特に美容業界では、美容師免許や管理美容師免許の保有が必須であることから、他業種と比較して事業承継のハードルが高くなっているといえます。

外部環境の課題

美容業界は外部環境の変化に対して弱い傾向にあるといわれています。たとえば、2020年の新型コロナウイルス感染症の流行時には市場規模が大きく縮小し、業界全体に大きな影響を及ぼしました。

また、少子高齢化の進行や出生率の低下による人口減少の影響も避けられない課題となっています。市場調査機関の予測によると、これらの要因により今後も市場規模の縮小が見込まれており、各施設の経営環境は一層厳しさを増すと予想されています。

美容業界の市場規模やM&Aの動向

これまでにご紹介したように、美容業界の規模は停滞しているといわれています。具体的な市場規模やM&Aの動向を確かめてみましょう。

美容業界の市場規模

厚生労働省の「令和2年 衛生行政報告例」によると、日本国内で営業する美容院・美容室は、2020年時点で25万7,890施設を超えています。これはコンビニエンスストアの約4倍に相当する数です。

美容業界の市場規模は新型コロナウイルス感染拡大にともない一時期は低迷したものの、徐々に回復傾向にあります。矢野経済研究所が2024年に公表したデータによると、2020年度の理美容サロン市場は1兆9,700億円に縮小しましたが、2023年度の市場規模は2兆920億円と推計されており、回復が見られました。

【出典】厚生労働省「令和2年度 衛生行政報告例」

【出典】株式会社矢野経済研究所「理美容サロン市場に関する調査を実施(2024年)」

美容業界におけるM&Aの動向

美容業界のM&Aは、事業規模によって特徴的な傾向が見られます。まず、中〜大規模の美容室チェーンでは、投資ファンドによる買収や資本業務提携が活発化しています。代表的な事例として、2018年に香港系投資ファンド「CLSAキャピタルパートナーズ(のちのサンライズキャピタル)」が日本の「Aguグループ」に取引総額100億円超の資本提携を行いました。

一方、小規模な美容室では事業承継問題の解決策として、M&Aが注目されています。経営者の高齢化や後継者不足を理由に、従業員の雇用を維持しながら事業譲渡するのが目的です。また、美容業界特有の居抜きによる事業譲渡も一般的となっており、内装や設備をそのまま引き継ぐ形での売却も見られます。

業界全体としては、市場の成熟化や競争激化を受けて、経営基盤の強化や事業拡大を目的としたM&Aが今後も増加すると予測されています。

【出典】Aguグループ「サンライズ・キャピタルとの資本提携について」

美容室・美容院におけるM&Aの主な手法

美容室・美容院におけるM&Aでは株式譲渡や事業譲渡といった手法が使われます。それぞれの特徴とメリット・デメリットは以下の通りです。

株式譲渡

株式譲渡とは

株式譲渡は、美容室を運営する会社の株式所有権を移転することで、経営権を譲渡する手法です。企業体そのものの所有権が移転するので、会社に関連するすべての権利と義務が包括的に引き継がれます。

売り手側のメリット・デメリット

売り手側にとって株式譲渡のメリットは、株式売却による譲渡益を得られる可能性が高くなる点です。

また、株式の売買契約と株主名簿の変更のみで手続きが済むため、比較的負担が少ないといえます。従業員の雇用や取引先との契約が継続されるため、関係者への影響が少ないのもメリットといえるでしょう。

一方、株主が分散している場合は、全株主の合意を得る必要があり調整が難しくなる点はデメリットです。このほかにも、売却後に簿外債務が発覚した場合、補償を求められる可能性があります。

買い手側のメリット・デメリット

買い手側は、株式譲渡により従業員や取引先との契約が自動的に継続されるため、事業の安定性が確保しやすい点がメリットです。

許認可等の再取得が不要で、スムーズな事業継続が期待できます。のれんや営業権もそのまま引き継げるでしょう。

一方、簿外債務など潜在的なリスクも含めて全て引き継ぐことになるのはデメリットです。また、会社全体を買収するため、不要な資産・負債も含めて取得することになる点に注意しましょう。

事業譲渡

事業譲渡とは

事業譲渡は、美容室の営業に関わる資産、負債、営業権などを個別に移転する手法です。譲渡する範囲を柔軟に設定でき、特定の美容室店舗や事業部門に限定した譲渡も可能となります。

売り手側のメリット・デメリット

売り手側は、譲渡する資産・負債を選択できるため、不要な部分を切り離して売却できる点がメリットです。一部の店舗や事業部門のみを切り出して譲渡することも可能となります。事業の一部を切り離すため、他の事業は継続できます。

一方で、株式譲渡と比べて手続きが複雑で時間がかかりやすい点がデメリットです。従業員の転籍に関する同意取得や説明が必要な点に注意しましょう。また、取引先との契約を解除・再締結する手続きも必要となります。

買い手側のメリット・デメリット

買い手側にとって、事業譲渡で必要な資産・負債のみを選別して取得できる点はメリットだといえるでしょう。不要な資産や承継したくない負債を除外できます。例えば、設備・商品在庫・ノウハウなど、必要な要素を選んで譲り受けられます。

一方で、事業譲渡の場合は従業員との雇用契約を新たに締結する必要がある点がデメリットです。同様に、取引先との契約関係を一から構築し直さなければなりません。登記や許認可などの手続きを改めて行う必要があります。

美容室・美容院M&Aの価格相場

美容室・美容院業界におけるM&Aでは、「EBITDA倍率法(マルチプル法)」や「年倍法」によって企業価値の評価が行われます。EBITDA倍率法では、EBITDAに業界標準の倍率を掛けて企業価値を算出します。

一方、年倍法では年間営業利益×倍率で企業価値を算出します。業界関わらず一般的な倍率は1~3倍程度ですが、この倍率は市場環境や企業の収益性・成長性など様々な要因によって変動します。

美容室・美容院のM&Aでは、商圏や競合状況などの「立地条件」、固定客数や顧客単価などの「顧客基盤」などが価格に影響を与えます。個別の状況によって価格が大きく変わるため、M&Aの専門家へご相談ください。

美容室・美容院のM&Aで事業継承を成功させるコツ

M&Aは高度かつ専門性の求められる経営戦略であり、通常はM&A仲介会社などのサポートを受けて行います。ここでは、美容院・美容室のM&Aを成功させるコツをご紹介します。

デューデリジェンスの実施

美容室のデューデリジェンスでは、法務面・財務面・事業面で詳細な調査を行います。

法務面では、美容所登録の有無と更新状況、管理美容師の在籍状況などを確認します。また、財務面(収益性、負債状況、資金繰りなど)、事業面(顧客基盤、従業員の状況、競争環境、将来性など)が詳細に調査されます。

なかでも、美容師法に基づく各種許認可や管理美容師の配置状況、保健所の指導事項への対応状況などは重視されるポイントです。

適切なタイミングと手法の選択

M&Aは、適切な実施タイミングの見極めが重要です。経営が安定し、将来の成長が見込める段階での実施が望ましく、景気動向や業界トレンドも考慮に入れる必要があります。また、株式譲渡や事業譲渡など、各手法の特徴を理解した上で、最適な方法を選ばなければなりません。

従業員や既存顧客への配慮

美容院・美容室では、スタイリストと顧客との信頼関係が収益の基盤といえます。そのため、従業員の離職防止と既存顧客の維持が重要です。従業員に対する丁寧な説明と、雇用条件の明確な提示を心がけましょう。

専門家の活用

美容院・美容室のM&Aでは、美容業界に精通した専門家のサポートが必須です。経験豊富なアドバイザーからは、企業価値の適切な評価や、交渉過程での重要なポイントの指摘など、多面的なサポートを受けられます。

美容室・美容院のM&A事例

シェアリング・ビューティーによるFERIAの買収

株式会社シェアリング・ビューティー(東京都目黒区)は2023年7月27日、株式会社FERIA(大阪府大阪市)の全株式を取得し、関西エリアで展開する美容室・ネイルサロン10店舗をグループに加えました。これにより、シェアリング・ビューティーは全国で25店舗体制となり、関東と関西の主要エリアでの存在感を強化します。

FERIAは設立15年の歴史を持ち、大阪を中心に美容室7店舗、アイラッシュサロン3店舗を展開してきました。

一方、シェアリング・ビューティーは「HAIR」や自社ブランド「ONCE」などのDXサービスを活用し、地方都市への展開を加速させてきた企業です。今回の買収により、両社のブランドやノウハウを融合させ、DXを活用した新たな価値提供を目指します。

シェアリング・ビューティーは今後もM&Aを積極的に活用し、美容業界でのリーディングカンパニーとして地位を確立する方針を掲げています。

この動きは、競争が激化する美容業界におけるシナジー創出と市場シェア拡大を狙った戦略的な一手といえるでしょう。

【出典】PRTIMES「株式会社FERIAの全株を取得し、関西エリア10店舗がグループ入り」

CLSAキャピタルパートナーズによるAguグループの株式取得

CLSAキャピタルパートナーズが運営するサンライズ・キャピタルは、Aguグループ(株式会社ロイネス及びB-first株式会社)と資本提携を締結しました。

この提携により、サンライズ・キャピタルは特別目的会社を通じてAguグループの株式の過半数を取得しましたが、創業者の市瀬一浩氏は引き続き株式を一部保有し、代表取締役として経営を続けます。

Aguグループは「Agu Hair Salon」ブランドで全国271店舗(2018年2月時点)を展開しており、フランチャイズ形式で高い集客力とスタイリスト確保を実現しています。この資本提携を通じて、Aguグループは店舗拡大と管理機能の強化を図り、近い将来1,000店舗を目指す計画です。

サンライズ・キャピタルは、Aguグループに取締役を派遣し、店舗開発やマーケティングの支援を行います。これにより、Aguグループはフランチャイズ支援体制を強化し、全国的な店舗網をさらに拡大していく見込みです。

今回の提携は、美容業界でのシェア拡大と組織力強化を目指す動きであり、Aguグループの持つ強力なブランド力と、サンライズ・キャピタルの経営資源とネットワークの融合によって、新たな成長ステージへと進む重要なステップとなるでしょう。

【出典】CLSAキャピタルパートナーズ「株式会社ロイネス、B-first 株式会社との資本提携について」

まとめ|慎重にM&Aを進めて美容室・美容院の円滑な事業承継を実現しよう

美容院・美容室のM&Aを成功させるためには、デューデリジェンスの実施や適切な手法の選択、従業員や顧客への配慮が欠かせません。

また、美容業界に詳しい専門家のサポートを活用することで、適切な売り手企業の選定や交渉の円滑化が期待できます。自社のM&Aを検討する際は、M&A仲介会社に依頼してアドバイスを受けると良いでしょう。

この記事の監修者

阿部 泰士

CINC Capital取締役執行役員社長

阿部 泰士

CINC Capital取締役執行役員社長。リクルート関連会社や外資系製薬会社、大手・ベンチャー独立系M&A仲介会社で営業組織を牽引。 特にM&A実績の多い業界は調剤・IT・運送業。

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