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ゼネコンのM&A動向(2025年)メリットデメリット/事例/成功のポイントを解説

業種

  • 公開日2025.04.24
  • 更新日2025.04.24

ゼネコンのM&A動向(2025年)メリットデメリット/事例/成功のポイントを解説

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2025年を迎えるにあたり、国内の建設業界では人材不足や資材価格の高騰など、さまざまな課題が顕在化しています。さらに公共事業への依存度が高いゼネコン企業にとって、国や自治体の予算変動に伴う需要の上下も見逃せないリスク要因です。

その解決策の一つとしてM&Aが注目されており、大手企業による中小企業の買収や異業種の参入など、多様な動きが見られています。

本記事では、ゼネコン業界の最新動向から、M&Aのメリット・デメリット、成功のポイントまでを網羅的に解説します。

ゼネコンの市場動向

国内外の経済状況や建設需要の変動により、ゼネコンの市場環境は大きく変化しています。

近年は都市再開発やインフラ老朽化対策など、公共事業を中心に需要が高まっていますが、その一方で海外事業の拡大や異業種企業との連携による多角化も見受けられます。

グローバル経済の動向次第では、資材コストや人材確保の面で厳しい局面に直面するケースも増加するでしょう。さらに民間投資の減少や地価の変動など、国内需要の先行きが不透明な状況も懸念されています。

こうした環境下で、市場シェアや技術の優位性を確立するためにM&Aを積極的に活用する例が増えているのが特徴です。

ゼネコンが抱える課題

ゼネコン業界では、人材や資材など経営基盤を揺るがすリスク要因が多数存在します。ここでは主要な課題を3つ取り上げます。

建設業界全体で進行する人材不足への対応

ゼネコンでは高度な施工管理技術や専門性が求められる一方、若手の志願者減少や熟練技術者の引退が相次ぎ、深刻な人材不足が進んでいます。労務環境の改善や給与水準の見直しに加えて、教育プログラムを整備して技術継承を継続的に行う必要があります。M&Aによって他社の人材やノウハウを獲得し、組織力を強化する動きも増えています。

資材価格の高騰

鉄筋コンクリートやアスファルトなど、建設に必要な資材の価格が国際相場によって大きく変動しています。世界的なインフラ需要拡大に伴い、ゼネコンの原価圧迫は今後も継続する可能性があります。予算管理が厳しくなる中で、規模拡大やサプライチェーンの見直しを目的としたM&Aが資材調達コストの分散策として注目されています。

働き方改革への対応

建設現場は工期の遵守が最優先されることが多く、長時間勤務が常態化しやすい構造的な課題を抱えています。近年は社会的な要請から労働時間短縮や多様な雇用形態の導入が進められ、現場管理のIT化やオフサイト施工技術など新たな手法への期待も高まっています。企業としては持続可能な労働環境の整備と同時に、デジタルソリューションを活用して効率を高める取り組みを検討することが求められます。

ゼネコンのM&A最新動向(2025年)

2025年時点では業界の成熟化が進む一方、多角化や人材確保を目的としたM&Aが活発化しています。ここでは、主な動向を3つ見てみましょう。

大手企業による中小企業の買収

大手ゼネコンは豊富な資金力とネットワークを活用し、地場で強みを持つ中小企業を積極的に買収しています。これにより、地域特化型のノウハウや既存顧客基盤を取り込むことで、受注拡大と市場支配力の強化が狙われています。買収された中小企業にとっても、大手のブランド力や経営支援を受けて事業規模の拡大を図れる利点があります。

人材確保を目的とするM&A

建設現場を維持するには熟練した技術者や管理者の存在が不可欠ですが、社会全体で労働人口が減少しているため人材確保が大きな課題です。そこで、自社に不足しているスキルを補うため、専門性の高い人材を多く抱える企業を買収する動きが増えています。特に大型案件を安定して受注するためにも、現場の人的リソースを確保するM&Aが有効な手段として注目を集めています。

異業種M&A

ゼネコン業界では、IoTやAIを駆使したスマート施工や環境配慮型の技術開発が重要なテーマとなっています。こうした領域はIT企業やエネルギー企業が先行しており、それら異業種の技術やサービスを取り込むためにM&Aが活発化しています。新たな事業セグメントを取り込むことで、従来の建設請負にとどまらない収益源を確保し、景気や公共事業に左右されにくい経営体制を目指す動きが加速しています。

【売り手】ゼネコンがM&Aをするメリット

株式譲渡や事業譲渡などにより、自社の持つ課題を解決できる可能性があります。ここでは、ゼネコンがM&Aをする売り手目線のメリットをご紹介します。

後継者問題の解決

少子高齢化が進むなか、オーナー経営者が引退時期を迎えても後継者が見つからないケースは少なくありません。M&Aを通じて、後継者候補を外部から迎え入れたり、大手企業の子会社となることで経営基盤を強化したりすることが可能です。

多くの場合、オーナー経営者は一定期間は顧問や相談役として残り、円滑な事業承継を実現します。これによって事業の継続性が高まり、従業員や取引先にも安定した経営環境を提供できます。

従業員の雇用の維持

中小ゼネコンが偽装倒産したり、様々な理由で事業を縮小したりすると、地元における雇用機会が大幅に失われる恐れがあります。M&Aで大手企業のグループに入ると、事業のスケールアップや安定した資金調達が見込めるため、従業員の雇用を維持しやすくなります。さらに新たな研修制度や福利厚生が整備されるケースもあり、職場環境の改善にもつながる可能性があります。

経営資源を活用した競争力の強化

大手ゼネコンや異業種企業との連携により、技術開発や営業力、ネットワークを効率的に活用できるメリットは大きいです。例えば、研究開発部門や海外拠点を活用して、市場拡大や新技術の応用をスピード感を持って進められます。こうしたシナジー効果が高まれば、地域でのブランド力強化や大型案件の安定受注につながり、長期的なビジネス競争力を高めることができます。

【売り手】ゼネコンがM&Aをするデメリット

M&Aには、いくつかのデメリットが存在します。今後M&Aを検討する中で、売り手側が知っておくべき注意点は以下の通りです。

従業員の離職リスクがある

M&Aによって企業方針や人事制度が変わると、従業員のモチベーションが低下する場合があります。とりわけ、自分たちが大切にしてきた社風や働き方が大幅に変わることに抵抗を感じる人が多いです。最悪の場合、キーパーソンが退職し、企業価値そのものが下がってしまうリスクがあるため、統合後の人材マネジメントには細心の注意を払う必要があります。

価格交渉などで交渉プロセスが長期化する場合がある

企業価値の算定はゼネコン特有の案件進行状況や保有技術によって大きく変動し、双方で合意するのが難しい場合があります。相続税や建設業許可の更新費用など、事業承継に関わる要素を考慮する必要もあり、交渉は複雑化しやすいです。複数のステークホルダーと調整を重ねるために時間がかかり、チャンスを逃してしまう可能性も否定できません。

地域で築いたブランドや取引先との関係性が損なわれる可能性がある

長年にわたり地元の顧客や協力業者との信頼関係を築いてきた場合、新経営陣との相性が合わないとブランド価値が維持しにくくなります。統合後の経営戦略によっては、事業範囲や取引条件が大幅に変わり、既存顧客や地域社会が戸惑うこともあるでしょう。M&Aの過程でステークホルダーとのコミュニケーションを綿密に行い、不信感を最小限に抑える対策が重要です。

【買い手】ゼネコンをM&Aするメリットデメリット

買い手企業として、ゼネコンを取得することで事業拡大や技術強化が期待される一方、固有のリスクも存在します。

買い手側がゼネコンを取得する大きなメリットは、一度に大規模な建設案件の実績やノウハウを取り込める点にあります。公共工事をはじめとする大型プロジェクトを受注するための資格や実績を獲得しやすくなるため、新規参入のハードルを一気に下げられます。既存の人材リソースや取引先をそのまま活用でき、競争力を短期間で高める効果も期待できます。

一方で、大掛かりな組織体制の統合には、相応の経営資源と時間を要します。ゼネコンの特性上、長期契約のプロジェクトが多く、責任が大きい分、トラブル発生時のリスク管理も重要です。さらに社内文化の統合が進まなかったり、買収コストが膨らんだりすると、想定していたシナジーが得られにくくなる可能性があるため、慎重な検討が必要です。

ゼネコンM&Aを成功させるポイント

ゼネコンのM&Aを成功に導くためには、綿密な事前準備と適切な実行プロセスの管理が重要となります。以下に、特に重要なポイントを4つ解説します。

財務状況やプロジェクト実績を慎重に評価する

ゼネコンの企業価値は、財務指標だけでなく、保有技術や継続受注が期待できる顧客との関係性にも左右されます。過去の決算書やキャッシュフローに加え、今後のプロジェクトパイプラインを見極めることで、将来的な収益力を正確に把握できます。杜撰なデューデリジェンスは買収後の想定外の負債やプロジェクトリスクにつながるため、専門家の力を借りながら入念に進めることが肝心です。

日本の中小企業のM&Aでは、企業価値算定方法として「時価純資産+営業権法」と「マルチプル法」が採用される場合が多いです。自社の価値について気になる場合は、ぜひ以下の企業価値算定シミュレーションをお試しください。

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プロジェクトやクライアントをスムーズに引き継ぐための計画を立てる

施工中の現場や長期契約中のプロジェクトがある場合、移行期に担当者が変わることでトラブルが発生しやすくなります。クライアントとの信頼関係を維持するためにも、引き継ぎスケジュールや責任者の明確化など、具体的な計画を早い段階で策定することが重要です。こうした細やかな準備は顧客満足度だけでなく、会社全体のレピュテーション向上にもつながります。

従業員のモチベーションを維持するための施策を考える

統合後の組織改革は、従業員の役職や処遇に大きな影響を及ぼします。正当な評価制度の導入やキャリアパスの明示など、透明性の高い人事施策を打ち出すことで、不安を軽減することができます。経営層が現場の声を聞き取りながら柔軟に対応する姿勢を示すことが、離職リスクを抑え、優秀な人材の定着につながるでしょう。

適切なアドバイザーや専門家を活用する

建設業界特有の許可申請や契約の取扱いなど、M&Aを実行するうえで注意すべき法的・財務的なポイントは数多く存在します。

特に重要な課題として、公共工事の履行保証や住宅瑕疵担保責任保険などの「各種保証の継承問題」があります。これらゼネコン特有の保証制度は、M&A後の事業継続性に直接影響するため、建設業法に精通した専門家による詳細な確認が必須です。

経験豊富なM&Aアドバイザーや会計士、弁護士に加えて、建設業界の保証制度に詳しい専門家を活用することで、交渉の円滑化やリスクの最小化が期待できます。

特に建設業許可の書き換えや追加取得が必要になる場合、さらには各種保証契約の承継手続きが発生するため、早めに専門家へ相談し、保証会社や保険会社との調整も含めたスムーズな事業引き継ぎを実現することが大切です。

ゼネコンのM&A事例

最後に、ゼネコンのM&A事例をご紹介します。自社のM&A検討時の参考にしてみましょう。

株式会社守谷商会による未来ネットワーク株式会社のM&A

総合建設業を展開する株式会社守谷商会は、2024年11月に未来ネットワーク株式会社(長野県佐久市)の全株式を取得し、同社を完全子会社化しました。

未来ネットワークは、ユニットハウスの製造・設計・技術コンサルを手がける企業で、安定した財務基盤と専門的なノウハウを有しています。

守谷商会は本件を通じて、多様化する顧客ニーズや変化する事業環境への対応力を高める狙いです。建設業における商品ラインアップの拡充と、グループシナジーの最大化が期待される事例といえます。

【出典】株式会社守谷商会「未来ネットワーク株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ」

清水建設株式会社による日本道路株式会社のM&A

2022年、日本道路株式会社は、清水建設株式会社による株式公開買付けに賛同を表明し、同年に清水建設の連結子会社となりました。清水建設は、日本道路の株式を24.84%保有する筆頭株主でしたが、持株比率を50.10%まで引き上げることで、経営支配を強化しました。

両社は長年の協力関係があり、今回のM&Aにより、技術力の相互補完や人材育成、研究開発の連携を進める狙いです。特に、スマートシティや海外インフラ事業への展開、道路舗装の高度化、ESG経営の推進といった成長分野でのシナジー創出が期待されています。

公開買付後も日本道路の上場は維持され、独立性と企業文化を尊重する形が取られました。建設業界の再編と効率化の一環として注目される事例です。

【出典】日本道路株式会社「清水建設株式会社による当社株式に対する公開買付けに関する意見表明のお知らせ」

OCHIホールディングス株式会社による芳賀屋建設株式会社のM&A

建材・住宅設備機器の卸売を主力とするOCHIホールディングス株式会社は、2022年10月、栃木県宇都宮市に本社を構える芳賀屋建設株式会社の全株式を取得し、同社を連結子会社化しました。

芳賀屋建設は1931年創業の老舗で、建築・土木工事を手がけ、地元に根ざした事業展開で地域に貢献してきました。OCHIホールディングスは、本件M&Aを通じて、関東圏におけるエンジニアリング事業の強化を図るとともに、非住宅分野の事業ポートフォリオ拡大を目指しています。

建設業界では、地域密着型の建設会社を取り込む動きが活発化しており、同社の戦略もそうした流れに沿ったものと言えます。

【出典】OCHIホールディングス株式会社「芳賀屋建設株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ」

まとめ|ゼネコンの特徴を理解し、M&Aを成功に

ゼネコン特有の課題と強みを把握し、M&Aのメリットとリスクを総合的に検討することで、今後の事業展開に大きく活かすことができます。

建設業界は公共事業の増減や人材確保の難しさなど課題が山積しており、その解決策としてM&Aが効果的な手段となっています。ゼネコン同士の統合や異業種との連携は多角的なシナジーを生み出し、持続的な成長を可能にするでしょう。

一方で、企業文化の違いや価格交渉の難航などを乗り越えるためには、十分な情報収集と入念な計画立案が欠かせません。長期的な視野を持ってM&Aを活用することで、安定した事業運営と高い付加価値の創出を同時に実現できる可能性が広がるはずです。

CINC Capitalは、M&A仲介協会会員および中小企業庁のM&A登録支援機関として、M&Aのご相談を受け付けております。業界歴10年以上のプロアドバイザーが、お客様の真の利益を追求します。M&Aの相談をご希望の方はお気軽にお問い合わせください。

この記事の監修者

阿部 泰士

CINC Capital取締役執行役員社長

阿部 泰士

リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。

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