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設備工事業界のM&A動向(2025年)メリットデメリット/事例/成功のポイントを解説

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  • 公開日2025.04.23
  • 更新日2025.04.24

設備工事業界のM&A動向(2025年)メリットデメリット/事例/成功のポイントを解説

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設備工事業界は2025年現在、総受注額が前年比で大幅に増加し、目覚ましい成長を遂げています。しかし、技術者不足や利益率の低下、事業承継問題など、業界全体が直面する課題も数多く存在します。そこで注目されているのが、M&Aです。

本記事では、設備工事業界のM&A最新動向と業界課題、事業売却のメリット・デメリット、成功に導くためのポイントを徹底解説します。

設備工事業界の市場動向

「国土交通省」の調査によれば、2025年1月時点の設備工事業受注総額は2,991億円に上り、前年同月比で24.0%の大幅増加を記録しました。特に管工事分野では41.3%増の1,400億円と著しい伸びを示しています。堅調な市場拡大は、M&A市場での企業価値算定において有利に働くと考えられます。

設備工事は、電気設備工事・空調設備工事・給排水設備工事・ガス設備工事などの専門分野に分けられます。このうち空調と給排水の工事については同一企業が一括して手掛けるケースが多く見られ、M&Aによる事業統合で大きなシナジー効果が期待できる領域です。対照的に、ガス設備工事は各地域のガス供給会社やその関連企業が担当するパターンが主流となっています。

【出典】国土交通省「設備工事業に係る受注高調査結果(各工事主要20社)」

設備工事業界が抱える課題

設備工事業界では、技術者不足・利益率低下・事業承継問題など、複数の構造的な課題を抱えています。それぞれ詳しく見ていきましょう。

深刻化する後継者問題

少子高齢化の進行により熟練技術者の後継が不足し、工事品質維持に支障をきたすリスクが高まっています。特に40〜50代の中堅技術者層の薄さは、向こう5〜10年の間に深刻な技術継承問題を引き起こす可能性があります。

慢性的な人材不足

「3K(きつい・汚い・危険)」というイメージが根強く残る業界環境が若手採用を困難にしています。また、現場での長時間労働や休日出勤の常態化も問題で、新規人材の定着率低下を招く要因です。

工事コストの高騰

資材価格の継続的な上昇と熾烈な受注競争により、業界全体の利益率が圧迫されています。特に中小規模の設備工事会社では、価格交渉力の弱さから適正利益の確保が困難な状況です。

設備工事業界のM&A最新動向(2025年)

近年、設備工事業界ではM&Aを検討・実施する企業が見られます。業界内での経営統合・買収は単なる事業承継策を超え、市場競争力強化と生き残りを賭けた経営戦略になっているのです。ここでは、設備工事業界のM&A最新動向をご紹介します。

大手企業による中小設備工事会社の買収

大手設備工事企業が中小規模の企業を買収する動きが報告されています。この動きの本質は、即戦力となる技術者確保と地域密着型の営業基盤獲得という二重のメリットにあります。特に建設業許可維持に必要な資格保有者を一括して獲得できる点は、長期的な人材育成コストを大幅に削減できるのが大きいでしょう。

垂直統合型M&A

ワンストップサービス体制の構築を目指し、「垂直統合型M&A」を選択肢に入れる設備工事企業も見られます。M&Aによって電気設備や空調設備、給排水設備など、専門分野に特化した工種を統合することで、顧客が複数の業者と個別に契約する煩雑さを解消し、総合的な価値提供ができるようになります。

技術獲得型の異業種M&A

IoT技術やAIを活用したスマート設備への市場需要拡大を受け、技術獲得型の異業種M&Aも見られます。例えば、「ビルディングオートメーション」や電気設備のIoT化、空調設備の遠隔監視制御システムなど、従来の設備工事とデジタル技術を組み合わせた事業展開が模索されています。

設備工事業者がM&Aで売却するメリット

M&Aを実施することで、人材確保・技術力強化・市場拡大など、多くの経営課題を解決できる可能性があります。ここからは、設備工事業業者がM&Aをするメリットを売り手目線でご紹介します。

複数種保有する建設業許可の価値最大化

設備工事会社が取得している建設業許可は、M&A市場において価値ある無形資産です。建設業許可は、企業が持つ技術力や信頼性を証明します。廃業した場合、建設業許可は失効してしまいますが、M&Aを通じて買い手企業に引き継ぐことで、その価値を最大限に活用できるでしょう。

長年培った元請・発注者との関係を引き継げる

自社が築いてきた元請企業や発注者との関係は、事業の安定性を支える大切な要素です。M&Aでそれらの関係性を買い手企業に引き継げば、経営統合後も事業の継続性を確保しやすくなります。また、買い手企業は既存の取引関係を活かして新規顧客開拓のコストを削減できるため、双方にとってメリットがあります。

施工管理技術者など有資格者の雇用継続

施工管理技術者や電気工事士などの有資格者は、設備工事業界における主戦力です。しかし、業界全体で人手不足が深刻化しており、これらの専門人材を維持することは困難になっています。

M&Aを通じて会社を譲渡することで、有資格者の雇用を継続し、技術やノウハウを次世代へ引き継ぐことができます。買い手企業にとっても、即戦力となる人材を確保できる点は大きな魅力です。

設備工事業者がM&Aで売却するデメリット

続いて、設備工事事業者がM&Aで自社を売却するデメリットを見ていきます。

独自ノウハウの継承が難しい

設備工事には地域特有の建築様式や気候条件、法規制に対応した専門技術が不可欠です。M&A後に標準化や効率化を急ぐあまり、こうした地域固有のノウハウが軽視される傾向にあります。特に「暗黙知」として熟練技術者の経験に依存している部分は、文書化や標準化が難しく、継承が非常に困難です。

クライアントとの関係性が変化するリスク

地域密着型企業の場合、地元のゼネコンや元請業者との関係性は、自社だけが持つ無形資産といえます。M&A後に方針転換や担当者変更が行われると関係性が希薄化し、安定受注の基盤が揺らぐ恐れがあります。特に「顔の見える関係」を重視する地方案件では、この影響が顕著に表れるケースが少なくありません。

設備工事業者がM&Aで売却を成功させるためのポイント

設備工事業界でM&Aを成功させるため、設備工事特有の課題に焦点を当てた戦略を立てましょう。複数のポイントに分けてご説明します。

受注残工事の円滑な引継ぎ体制の構築

設備工事は長期にわたるプロジェクトが多いため、M&A実行時に複数の進行中案件が存在するケースもあるでしょう。これらの受注残工事を適切に管理・引き継げる体制を整えれば、買い手企業に強くアピールできます。

具体的には、すべての進行中案件について詳細な「工事カルテ」を作成します。契約内容、進捗状況、原価情報、発注者要望、懸案事項などを体系的に整理することで、買収側が即座に状況を把握できる環境を整えます。特に収益性に影響する原価管理情報は透明に共有し、買収後の予期せぬ損失発生を防止することが大切です。

協力会社との継続取引関係の維持・強化

設備工事業界では外注比率が高く、専門技術を持つ協力会社の存在が施工品質と納期遵守を支えています。M&A実施時には主要協力会社との取引継続について明確な方針を示し、買い手の不安解消と信頼関係構築に努めましょう。

資格者の継続勤務条件の調整

「1級電気工事施工管理技士」や「1級管工事施工管理技士」など、「建設業法」上の許可要件となる資格保有者の処遇を決めておきましょう。買収企業との雇用条件すり合わせでは、給与体系や役職だけでなく、技術者の将来的なキャリアパスも含めた提案が欠かせません。専門技術を活かした新規事業開発への参画など、技術者のモチベーション維持につながる提案をすると良いでしょう。

企業価値の正確な評価手法を把握

設備工事業におけるM&Aを成功させるには、企業価値の評価方法について正しく理解する必要があります。中小規模の設備工事会社では、主に「時価純資産+営業権(基礎価額法)」や「マルチプル法(類似業種比準法)」といった手法が用いられます。

「時価純資産+営業権(基礎価額法)」では、工事車両や重機、オフィス設備などの有形資産に加えて、継続的な取引先や過去の施工実績といった「営業権(のれん)」も含めて評価が行われます。特に、元請企業との安定した関係性があるか、優良な実績を積み重ねているかといった部分が、企業価値を大きく左右することがあります。

「マルチプル法(類似業種比準法)」では、「EBITDA(利払前・税引前・償却前利益)」を基に業界水準の倍率をかけて企業価値を算出するのが特徴です。設備工事業では3〜5倍前後の倍率が目安とされています。

ただし、保有している建設業許可の内容や在籍する技術者の数、工事実績の安定性などによって評価が変わる可能性があります。自社がどのような基準で評価されるかを事前に把握し、それに応じた資料の整理や実績の見直しを行っておくことが、スムーズなM&Aの実現につながるでしょう。

設備工事業界のM&A事例

最後に、設備工事業界のM&A事例をご紹介します。自社のM&A検討時の参考にしてみましょう。

北陸電気工事株式会社による株式会社日建のM&A

2023年12月、北陸電気工事株式会社は、神奈川県を拠点とする設備工事業者、株式会社日建の全株式を取得し、子会社化しました。

北陸電気工事は、電気・管工事を中心としたインフラ関連事業を展開しており、北陸地域を基盤とする企業です。一方の日建は、空調や給排水設備などの管工事に強みを持ち、首都圏において長年実績を重ねてきました。

本件M&Aにより、北陸電気工事は関東エリアへの本格的な進出を果たし、商圏の拡大を図るとともに、中期経営計画の目標達成に向けた成長基盤を強化しています。

設備工事業界では、地場密着型企業のネットワークを活用した地域展開が重要な成長戦略とされており、本件もその一環として位置付けられます。特に、建設需要の多い都市部でのプレゼンス向上が期待される事例です。

【出典】北陸電気工事株式会社「株式取得(子会社化)に向けた株式譲渡契約締結のお知らせ」

日本エコシステム株式会社による葵電気工業株式会社のM&A

2023年1月、日本エコシステム株式会社は、空調・給排水設備などの施工管理を行う葵電気工業株式会社(愛知県名古屋市)の全株式を取得し、子会社化しました。

日本エコシステムは、公営競技場向けシステムや空調衛生設備事業などを手がける企業であり、今回のM&Aは、同社の公共サービス事業におけるファシリティ領域の拡充を目的としています。

葵電気工業は、大型商業施設やマンションなどの大規模プロジェクトに強みを持ち、安定した収益基盤を有しており、本件により新規顧客開拓や業容拡大が期待されます。

設立から70年以上の歴史を持つ老舗企業のノウハウと、日本エコシステムのソリューションが融合することで、同社のさらなる成長と競争力強化が見込まれる事例です。設備工事業界における地域密着企業の戦略的取り込みが今後も加速する可能性があります。

【出典】日本エコシステム株式会社「株式取得(子会社化)に関する株式譲渡契約締結のお知らせ」

北陸電気工事株式会社による株式会社蒲原設備工業のM&A

2022年12月、北陸電気工事株式会社は、新潟県を拠点とする株式会社蒲原設備工業の全株式を取得し、子会社化しました。

北陸電気工事は、北陸地域を基盤に電気・管工事などインフラ系の設備工事を展開する企業で、今回のM&Aは新潟方面への事業展開の足掛かりとする戦略的な動きです。

一方の蒲原設備工業は、1969年設立の老舗で、管工事を中心に土木・消防施設工事なども手がけており、新潟県内では有力な事業者として知られています。

本件により、北陸電気工事は北陸から関東にかけての商圏拡大を目指すとともに、グループ全体の施工体制強化と中期経営計画「アクションプラン2023」の達成に向けた基盤整備を進めています。

地域密着型企業との提携を通じた事業拡張は、建設・設備業界における成長戦略の一環として注目されています。

【出典】北陸電気工事株式会社「株式取得(子会社化)に向けた株式譲渡契約締結のお知らせ」

まとめ|設備工事業界のM&A動向を押さえてM&Aを成功させましょう

設備工事業界は市場拡大の一方で、深刻な人材不足や後継者問題を抱えています。市場動向と業界特有の課題を理解し、適切な準備を進めることで、市場価値を最大化させたM&Aにつながるでしょう。設備工事業の事業承継や会社売却をお考えの経営者様は、業界構造を深く理解しているM&A仲介会社へのご相談をおすすめします。

CINC Capitalでは、設備工事分野に豊富な知見を持つ専門チームが、経営者様の想いに寄り添いながらM&Aの実現をサポートしています。建設業許可の引き継や技術者の継続確保といった業界固有の課題に丁寧に対応し、信頼できるパートナーとの橋渡しを行います。

この記事の監修者

阿部 泰士

CINC Capital取締役執行役員社長

阿部 泰士

リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。

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