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自動車教習所のM&A動向(2025年)メリットデメリット/事例/成功のポイントを解説

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  • 公開日2025.04.21
  • 更新日2025.04.21

自動車教習所のM&A動向(2025年)メリットデメリット/事例/成功のポイントを解説

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自動車教習所を取り巻く環境は、少子高齢化や若年層のクルマ離れなどの影響を受け、従来のビジネスモデルを維持するだけでは難しい時代を迎えています。過去には免許取得年齢の人口増加による安定的な需要が見込まれていましたが、市場規模の縮小が顕在化し、教習所にとっては新たな戦略の策定が急務となっています。

本記事では、自動車教習所業界の現状と課題を踏まえ、M&Aによるメリット・デメリットや成功事例、さらにM&Aを成功させるための具体的なポイントまでを総合的に解説します。今後の自動車社会を見据え、教習所がどのような戦略を描くべきか、一緒に考えていきましょう。

自動車教習所業界の市場動向

現在の自動車教習所業界では、多様化するライフスタイルと少子高齢化による免許取得者数の変化が大きな影響を与えています。

業界全体としては、以前まで安定的に推移していた免許取得者数が変動しやすくなりつつあります。特に若者のクルマ離れが顕著な都市部では、教習生を確保するために新たなサービスやキャンペーンを実施する教習所も増えてきました。一方で、地方では通学が必要不可欠な地域が残されており、一定の需要を維持している教習所も存在します。

近年はオンライン講義を導入するなど、受講スタイルの多様化に取り組む教習所も増加中です。学科教習をインターネット配信によって行うことで、受講者が時間や場所の制約を受けにくくなり、煩雑なスケジュール調整の負担が軽減される利点があります。ただし、実技教習が主体となるため、設備投資や指導員の確保といった課題も依然として残ります。

これらの変化の中で、業界の基盤を強固にする手段としてM&Aが注目を集めています。規模の経済を活かした運営効率化や、買収先の経営ノウハウを取り入れることで、従来の教習業務をより魅力的かつ収益性の高い形に作り変えることが可能となるのです。

自動車教習所が抱える課題

自動車教習所業界が直面している市場環境や社会背景を踏まえ、主要な課題を洗い出します。

業界では人口減少を背景とした競合の激化や、若者の嗜好の多様化など、従来と異なる方向への対応が求められています。特に都市部と地方で需要に差があるため、地域ごとに最適化した戦略を構築する必要があります。

また、教習所の事業継承問題も大きな課題です。経営者が高齢化する一方、後継者を見つけられないケースも増えており、早期に体制を整えないと運営が継続できなくなる懸念があります。

こうした課題を前に、今後は指導カリキュラムの刷新や設備のデジタル化を通じて、教習をより利便性の高いものへ変えていくことが欠かせません。これらを効率よく実現するために、M&Aによる経営統合や投資を模索する教習所が増えています。

少子高齢化と市場規模への影響

少子高齢化により新規免許取得者の総数が減少傾向にあるなか、教習所の運営は厳しさを増しています。特に18歳の人口が減るという構造的課題は、経営者にとって長期的なリスクとなり得ます。

地方では、高齢者の運転免許更新講習や企業向け安全講習など、従来とは異なる形の需要を取り込む動きも見られます。しかしライフスタイルが急速に変化する中、今後も安定した収益を確保するには多角的な事業展開が求められます。

このような環境の変化に対処する手段として、M&Aによる経営統合が有効と考えられています。複数施設をまとめることで設備投資を分散し、人員やノウハウを共有して共同で課題に対応する体制を整えやすくなるからです。

近年の免許取得動向と教習需要の変化

若年層のクルマ離れが叫ばれて久しいものの、地方や社会人になってから免許を取ろうとする層など、一部のニーズは依然として存在しています。また、中高年層のリターンドライバー向け講習や法人向け研修なども徐々に注目されています。

一方で、オンライン化した学科教習や夜間・短期集中コースなど、高齢化社会に合わせた柔軟なプランを打ち出す教習所も増加しています。こうした新サービスは利用者にとって大きなメリットであり、他の教習所との差別化要因にもなり得ます。

このトレンドの中で、資本力のある企業がM&Aを通じて複数の教習所を束ね、各施設の特色を活かしながら運営方法を最適化する動きが加速しています。多様化するニーズに対して一体感のあるサービスを展開することで、市場の縮小を乗り越える可能性が広がっているのです。

自動車教習所のM&A最新動向

需要変動が見込まれるなかで、自動車教習所を取り巻くM&Aの最新事例や傾向について解説します。

近年の事例としては、大手企業が地域で実績のある教習所を複数買収し、運営ノウハウを集約するケースが増えています。特に地方で強いブランド力をもつ教習所は、多店舗展開を目指す企業にとって魅力的な買収対象となります。

また、物流事業と結びつける動きも活発です。トラックドライバー育成や企業向け安全講習など、新しい収益源として教習サービスを組み込み、相乗効果を狙う企業が増えています。こうした取り組みは、人材不足が叫ばれる物流業界とも相性が良いとされています。

さらに、外国人ドライバーを支援する教習プログラムの導入を視野に入れる企業も増加中です。M&Aによって拠点を増やし、多国籍の教官を配置することなどで、外国籍労働者の受け入れ先としての強みを高める動きも見え始めています。

【売り手】自動車教習所がM&Aをするメリット

株式譲渡や事業譲渡などにより、自社の持つ課題を解決できる可能性があります。ここでは、自動車教習所がM&Aをする売り手目線のメリットをご紹介します。

経営資源の集約と事業承継

複数の教習所を統合することで、人材や設備の重複が解消され、運営コストの削減が期待できます。特に小規模教習所では、最新のシミュレーターやオンライン学習システムの導入が難しい場合が多いため、大手のネットワークに入ることで高水準の環境が整備されやすくなります。

事業承継の観点からも、M&Aは効果的です。後継者不足で悩む教習所が多い中、大手企業へ引き継ぐ選択肢は従業員や地域への責任を果たすうえでも合理的な解決策となります。経営者の想いを理解してくれる相手を見つけることが、円滑な承継に欠かせません。

結果として、売り手側の教習所は安定した運営基盤を得るだけでなく、従業員のキャリアアップや研修制度の充実など、新たなメリットを享受できる可能性が高まります。

従業員の雇用維持と待遇改善

M&Aによって教習所が大手グループ傘下に入ると、福利厚生や給与体系の見直しが行われることがあります。より充実した待遇を提供できるようになれば、従業員のモチベーションや技術力の向上につながります。

また、グループが持つ研修プログラムやキャリアパスが活用できるのも強みです。指導員の育成制度を充実させれば、教習所全体の接客クオリティや技術指導のレベルを底上げしやすくなるでしょう。

大手企業のブランド力を活かし、求人の募集や新規プロジェクトへの参画など、従業員にとって新たな挑戦をしやすい環境を整備できるのもメリットです。こうした要素が相乗効果を生み、教習所の価値をさらに高めます。

【売り手】自動車教習所がM&Aをするデメリット

M&Aには、いくつかのデメリットが存在します。今後M&Aを検討する中で、売り手側が知っておくべき注意点は以下の通りです。

まず、経営の独立性が失われる点は注意が必要です。買収後は新たな社内ルールや指示に従わなければならず、旧来の方針や地域密着型のサービスが変わってしまう可能性があります。

従業員や顧客との関係にも影響が及ぶことがあります。新オーナーの方針次第で人事制度や教習プログラムの大幅な見直しが行われると、これまで築いてきた企業文化との衝突が避けられないケースも出てきます。

さらに、売却価格が想定より低くなるリスクも存在します。事前に適切な企業価値評価を行わずに交渉を進めると、譲渡側に不利な条件で契約することになりかねません。M&Aを検討する際には、信頼できる専門家のサポートが不可欠です。

【買い手】自動車教習所がM&Aをするメリット・デメリット

新規参入や事業拡大を狙う買い手側の視点から、教習所買収のメリットおよび考慮すべきリスクを見ていきます。

買い手にとっての最大のメリットは、市場シェアの迅速な拡大です。既存の教習所を買収することで、顧客基盤や設備、指導員など、すぐに活用できる経営資源を手に入れることができます。

異業種からの参入の場合、教習所のノウハウを得ることで新たなサービス展開が期待できます。例えば、物流や観光業との連携でドライバー教育を強化し、グループ全体の事業効率を底上げするような動きが見られます。

一方で、買収には財務リスクや運営面でのトラブルが伴うことも忘れてはなりません。相手の財務状況や地域特性を十分に把握せず買収を進めると、想定外の費用や人員不足などで赤字が膨らむ可能性があります。

自動車教習所がM&Aを成功させるためのポイント

自動車教習所がのM&Aを成功に導くためには、綿密な事前準備と適切な実行プロセスの管理が重要となります。以下に、特に重要なポイントを3つ解説します。

シナジー効果が見込めるかを検討する

M&Aの成否を左右するのは、統合後に具体的なシナジーが生まれるかどうかです。教習所間で指導員の派遣やオンラインシステムの共同活用を行うことで、コスト削減とサービス向上の両面にメリットが期待できます。

また、既存の顧客との関係を活かした新規事業の展開も検討材料となります。例えば、教習所での免許取得後のカーシェアサービスやドライバー向け保険商品の提案など、付加価値を生み出すチャンスは多く眠っています。

これらの活動を成功させるためには、統合プロセスの初期段階から明確な目標を設定し、役割分担を決めておくことが重要です。綿密な計画と迅速な実行力が、シナジーを最大化する鍵となります。

自社の強みを客観的にとらえる

M&A交渉を進める前に、自社の強みや弱みを客観的に分析しておくことが不可欠です。財務状況はもちろん、教習プログラムの質やブランド力、従業員のスキルなど、さまざまな観点で自社の価値を見極める必要があります。

そのうえで、売り手として魅力的なポイントを明確にアピールできれば、適正な企業価値の評価につながりやすいでしょう。買い手と対等に交渉を行うためにも情報開示や資料準備を徹底することが重要です。

また、買い手側としても、相手企業の特徴や設備を最大限に活かせるシナリオを描けるかが成功の分かれ道となります。単なる勢いだけでなく、具体的にどう収益を生むかを示すことで、より納得感のあるM&Aが実現します。

M&Aの専門家に相談する

M&Aを成功させるには、プロの力を借りることも大切です。専門知識がない状態で交渉を続けると、不当な条件で売却してしまう可能性も考えられます。プロのサポートを受け、希望の条件での成約を目指しましょう。

自動車教習所M&Aの成功事例

最後に、自動車教習所のM&A事例をご紹介します。自社のM&A検討時の参考にしてみましょう。

アサヒロジスティクス株式会社による有限会社川越自動車学校のM&A

2022年10月、物流業界の人材育成を強化する取り組みの一環として、ある企業が有限会社川越自動車学校(埼玉県川越市)の全株式を取得し、グループに迎えました。同年9月23日に株式譲渡契約を締結し、10月13日に正式に買収が完了しました。

物流業界では近年、ドライバーの高齢化や人材不足が深刻な課題となっており、とくに2024年問題(労働時間の上限規制強化による輸送力不足)が業界全体の大きな懸念となっています。こうした状況を踏まえ、買収企業はすでにドライバー専用研修施設「滑川福田センター」を開設し、未経験者や若年層、女性ドライバーの採用を積極的に推進してきました。

今回のM&Aにより、免許取得から人材育成までを一貫して行える体制が整備され、より効率的なドライバー確保が可能となります。物流業界では、企業が自前で教育機関を持つケースが増えており、本事例もその流れに沿ったものといえます。今後、ドライバー育成の強化を通じて、安定した物流サービスの維持・向上が期待されます。

【出典】アサヒロジスティクス株式会社「有限会社川越自動車学校をグループに迎えました」

株式会社毎日コムネットによる株式会社CLOのM&A

2012年12月、株式会社毎日コムネットは株式会社CLOから合宿免許向け自動車教習所への生徒斡旋事業を吸収分割の形で承継しました。本件は、CLOが本事業から撤退し、本業に経営資源を集中させる方針をとったことと、毎日コムネットが学生向けサービスを拡充したいという意向が合致し、実現したものです。

毎日コムネットは、学生向けの不動産ソリューションや生活支援事業を展開しており、課外活動支援の一環として免許取得を希望する学生を教習所へ斡旋するサービスを提供していました。CLOからの事業承継により、合宿免許の斡旋事業を自社で運営できる体制が整い、さらなるサービス強化が可能となります。

本事業の売上規模は年141百万円(2012年3月期)とされ、承継対象の資産および負債はそれぞれ40百万円でした。なお、CLOの従業員の雇用契約は引き継がれず、事業のみの承継となりました。

近年、自動車免許の取得者減少が進む中、特に合宿免許の利便性が見直されており、教育関連企業による斡旋事業の拡充は有効な戦略といえます。本件は、学生向けサービスの多角化を進める毎日コムネットにとって、事業シナジーを生むM&Aの一例といえるでしょう。

【出典】株式会社毎日コムネット「株式会社CLOの会社分割(簡易吸収分割)による一部事業継承に関するお知らせ」

株式会社東日カーライフグループによる東京日産ドライビングカレッジ株式会社のM&A

2011年3月、株式会社東日カーライフグループは、連結子会社である東京日産ドライビングカレッジの全株式および関連固定資産を株式会社コヤマドライビングスクールへ譲渡することを決定しました。譲渡契約は2011年3月30日に締結され、同日付で株式および資産の引き渡しが完了しました。

本件の背景には、東日カーライフグループのコア事業への経営資源の集中があります。同社は中期計画の一環として主要事業を強化する方針を掲げており、今後の免許取得者の減少に伴う市場競争の激化を見据え、教習事業からの撤退を決断しました。一方で、買収側のコヤマドライビングスクールは、業界内でのシェア拡大と事業基盤の強化を狙い、本件譲渡を受け入れました。

譲渡の内容としては、東京日産ドライビングカレッジの全株式(8,000株)を100百万円で譲渡したほか、東京都世田谷区岡本にある教習所の土地(約14,648㎡)および建物(約1,034㎡)を3,700百万円で売却しました。この固定資産譲渡により、東日カーライフグループは1,820百万円の特別利益を計上する見込みと発表しています。

近年、少子化の影響により教習業界では統合・再編が進んでおり、経営規模の拡大による競争力向上が重要な戦略となっています。本件もその一環といえ、コヤマドライビングスクールは今回の買収を通じてさらなる市場優位性を獲得することが期待されます。

【出典】株式会社東日カーライフグループ「子会社株式譲渡及び固定資産の譲渡に関するお知らせ」

まとめ|自動車教習所の将来を見据えたM&A戦略

インバウンド需要や地域特性を考慮したM&A戦略が自動車教習所の新たな活路となる可能性をまとめます。

少子高齢化と若年層の車離れによって厳しい環境が続く自動車教習所業界ですが、新たなサービス需要や国際化の流れを取り込むことで飛躍を遂げる余地はまだ残されています。M&Aはその鍵となる戦略の一つであり、環境変化をチャンスに変える可能性を秘めています。

売り手側にとっては事業承継の問題を解決でき、買い手側にとっては迅速な事業拡大とノウハウ獲得が見込めるメリットがあります。しかし、十分な準備と専門家のサポートがなければ、期待する効果を得られないリスクも大きい点に注意が必要です。

最後に、2025年以降の市場動向を踏まえると、オンライン学習の拡張や外国人ドライバー向けサポートなど、幅広いニーズに対応できる教習所が生き残っていくと考えられます。M&Aを通じて複数の強みを掛け合わせ、柔軟で持続可能な経営基盤を築くことが、教習所業界の未来を切り開く重要なアプローチとなるでしょう。

CINC Capitalは、M&A仲介協会会員および中小企業庁のM&A登録支援機関として、M&Aのご相談を受け付けております。業界歴10年以上のプロアドバイザーが、お客様の真の利益を追求します。M&Aの相談をご希望の方はお気軽にお問い合わせください。

 

この記事の監修者

阿部 泰士

CINC Capital取締役執行役員社長

阿部 泰士

リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。

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