CINC CapitalはCINC(証券コード:4378)のグループ会社です。
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- 公開日2025.04.09
- 更新日2025.04.10
クリニックを売却する際の価格相場は?売却方法や注意点を解説
クリニックの後継者不在や経営状況の悪化などに悩んでいる場合は、売却することで問題を解決できる可能性があります。
選択したM&Aの方法によっては事業の継続も可能なため、従業員の雇用を守り、地域医療サービスの提供もそのまま行えるのがメリットです。
この記事では、クリニック売却の際に知っておきたい価格相場や基本的な売却方法、注意しておきたいポイントなどをご紹介します。
目次
クリニック売却の価格相場
M&Aにおける売却価格は、案件によって大きく異なります。そのため、具体的にいくらといった明確な金額を示すことは困難です。
価格を左右する要素として、事業の規模や不動産の価値、将来的な収益性、地域の診療需要などが挙げられます。売り手・買い手ともに、売却価格の妥当性を慎重に見極めた上で交渉を進める必要があります。
クリニックの評価方法
クリニックの評価方法は、主に「時価純資産法」「類似会社比較法」「DCF法」の3つがあります。なかでもどの方法が適切であるかは、クリニックの状況やM&Aの目的により異なります。
- 時価純資産法…資産と負債の時価をベースに評価する方法
- 類似会社比較法…類似するクリニックの取引事例を参考に評価する方法
- DCF法…将来のキャッシュフローを現在価値に割り引いて評価する方法
クリニック売却にかかる税金
クリニックの売却において売り手側にかかる税金は、個人経営であるか医療法人であるかによって異なります。法人化していない個人経営のクリニックの場合、事業譲渡や居抜きによってM&Aを行うのが一般的です。資産や権利義務を譲渡することになりますが、その際に生じた譲渡益に対して所得税や住民税などが課税されます。
医療法人の場合、選択したM&Aスキームに応じて発生する税金が変わってきます。例えば、持分譲渡の場合、譲渡価格から経費や設立時出資金を引いたものに所得税や住民税が課税されます。
吸収合併の場合は法人税や地方税などが生じます。加えて、売り手側の役員が対価の一部を配当として受け取るとみなされる場合(=みなし配当)は、適格合併と非適格合併で違いがあり、適格合併の場合は課税繰延べが適用される可能性があります。
吸収分割の場合、適格要件を満たしていれば非課税です。要件を満たさない場合は法人税や地方税などが課されることがあります。
事業譲渡の場合、譲渡損益に対する法人税や地方税などが必要です。いずれの場合も税額の計算は複雑であるため、税理士などの専門家へ相談することが重要です。
クリニックを売却する方法
クリニックを売却する方法には複数の種類があります。適切な手法を選択してM&Aを実施しましょう。以下では、個人経営のクリニックと医療法人に分けて、クリニック売却の主なスキームを解説します。
個人経営のクリニック
事業譲渡
個人経営のクリニックを売却したい場合、基本的には事業譲渡を選択することになります。事業譲渡とは事業の一部もしくは全部を譲渡するM&A手法です。買い手側は現金で対価を支払います。
事業譲渡は個別承継の形が取られることが特徴です。売り手側は、引き継ぎたい権利義務を一つひとつ決定することができます。譲渡対象となるのは、医療機器や設備、建物や土地、医薬品業者などとの取引契約、クリニックの名称や商標、従業員との雇用契約、患者のカルテなどです。
ただし、スタッフや取引先などの第三者が関連する契約に関しては、それぞれの同意を得なければいけません。許認可を取得し直す必要もあります。
居抜き
クリニックの廃業や移転に際して、居抜きの形で資産が譲渡されるケースがあります。居抜きとは、店舗などの内装や設備などをそのままにした状態で次の利用者へ引き渡すことです。居抜きで譲渡可能なのは一部の有形資産のみであり、権利義務などは引き継がれません。そのため、廃業時に設備をまとめて売却して資金にしたいといったケースで実施されます。
医療法人のクリニック
出資持分譲渡
持分とは、簡単にいうと医療法人における財産権のことを意味します。出資持分ありの医療法人は、設立の際に出資した人に対し、解散時には残余財産分配や持分の払戻などを行う仕組みです。
医療法人には「社団医療法人」と「財団医療法人」の2種類があり、社団医療法人のなかには出資持分のある法人が存在します。ただし、2007年に行われた法改正により、出資持分ありの医療法人を新規設立することはできなくなりました。
持分のある社団医療法人は、出資持分譲渡によるクリニックの譲渡が可能です。出資者には1人1票の議決権があるため、買い手が持分を取得して過半数の議決権を得れば経営権を獲得できます。
吸収合併
吸収合併は、買い手が売り手を買収して一つの法人とするM&A手法です。売り手側の法人格は消滅して統合されます。このとき、全従業員からの理解を得ることに加え、登記手続きや都道府県知事による承認などが必須です。
合併には、吸収合併のほかに新設合併という手法も存在します。新たな法人を設立して、売り手側が吸収される方法です。新設合併のほうが煩雑な手続きが多いため、一般的には吸収合併を選ぶケースが多くなります。
吸収分割
売り手側の事業の一部が買い手側に吸収されるM&A手法です。事業譲渡と混同されることがありますが、吸収分割は包括承継であり、権利義務を一括で承継することが可能です。ただし、持分ありの社団医療法人など、特定の法人については吸収分割を選ぶことができないため気をつけましょう。また、都道府県知事による承認が必要となります。
事業譲渡
医療法人の場合も事業譲渡によるM&Aが可能です。ただし、個別承継であるため、譲渡の際の手続きが増えやすい点に留意しましょう。
例えば、診療所の開設許可や保険医療機関の指定などの行政手続きが新たに必要となります。また、従業員は自動的に承継されないため、個別に雇用契約を締結しなければなりません。
そのため、規模の大きい法人よりは小規模の法人に向いています。事業の一部だけを譲渡したい場合にも適しているでしょう。
クリニックを売却する際の注意点
クリニックの売却を成功させるには、以下のようなポイントを押さえておくことがおすすめです。具体的な注意点を確かめていきましょう。
診療圏調査と市場価値を正確に把握する
クリニックの売却価格は、施設のある立地や通院患者数、患者からの評判、診療科目などによっても変わります。各項目の評価が高く、地域の中での需要を見込めるクリニックであると判断されると、売却価格に反映されるでしょう。クリニックの市場価値を正確に把握するためにも、詳細な診療圏調査を行うことが推奨されます。
患者・従業員への影響を考慮する
クリニックが売却されることにより、患者や従業員に大きな影響を与える可能性があります。医師や体制が変わることへの不安を抱き、別の医院へ変えてしまう患者も出てくるでしょう。売却後の方針について丁寧に説明し、理解を得ることが大切です。
また、売却後に早めに従業員への説明を行いましょう。事業を継続できる場合はその旨を伝え、雇用条件や待遇に関する点をすり合わせます。
法規制や契約条件を慎重に確認する
クリニックを売却するにあたっては、関連する法律をしっかりと確かめておくことが求められます。一般的な企業とは異なり、医療法人特有の非営利性や関連法規制の制約があるため注意が必要です。また、出資持分なし医療法人(社会医療法人や特定医療法人など)の場合は、M&Aの選択肢が制限される点に留意しましょう。
M&Aでは、提示された契約条件に不利な箇所がないかも慎重に見極めることが大切です。売り手・買い手ともに有益な取引になるよう、交渉を進めていきましょう。
まとめ|クリニック売却のご相談はCINC Capitalへ
クリニックの売却相場や税金、主な売却方法などについてお伝えしました。クリニック売却には複数の選択肢がありますが、いずれの方法でも複雑な手続きや交渉が必要です。M&Aに関する専門知識がなければ、スムーズかつ適切な価格での売却は行えないでしょう。
クリニックの売却をご検討の際は、M&A仲介会社に相談することがおすすめです。「CINC Capital」では、個人クリニックや医療法人など、さまざまなクリニックのM&Aを支援しています。まずはお気軽に無料相談をご利用ください。
CINC Capitalは、M&A仲介協会会員および中小企業庁のM&A登録支援機関として、M&Aのご相談を受け付けております。業界歴10年以上のプロアドバイザーが、お客様の真の利益を追求します。M&Aの相談をご希望の方はお気軽にお問い合わせください。
この記事の監修者

CINC Capital取締役執行役員社長
阿部 泰士
リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。