CINC CapitalはCINC(証券コード:4378)のグループ会社です。
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- 公開日2025.04.11
- 更新日2025.04.14
クリニックや医院を事業承継する手順は?手法ごとの特徴や成功のためのポイントを解説
クリニックや医院の後継者がいないまま経営を続けると、地域の医療提供に影響が出るだけでなく、患者やスタッフの将来に不安が生じます。「親族内承継」や「第三者承継」といった複数の手法の特徴を押さえて、事業承継を成功へ導きましょう。
本記事では、クリニックの事業承継の手順や手法ごとの違い、円滑に進めるためのポイントを解説します。
目次
クリニックや医院の事業承継とは?
クリニックや医院の事業承継とは、現在の院長が後継者に経営を引き継ぐことを指します。クリニックは地域の医療を支える役割を果たしているため、円滑な事業承継は患者やスタッフにとっても非常に重要だといえるでしょう。
事業承継では経営や資産の引き継ぎ、税務対策、関係者との調整など多くの手続きが発生します。その際、「親族内承継」では後継者の育成や診療方針の引き継ぎが必要になり、「第三者承継」では適切な後継者を見つける必要があります。かつては親族内承継が一般的でしたが、後継者不足を背景に、第三者へ経営を譲るケースも増加傾向にあります。
近年は医療機関の開設者の高齢化が進み、多くのクリニックや医院が事業承継の問題に直面している状況です。事業承継の準備を早めに進めることで、クリニックの安定経営と地域医療の継続を実現できます。
クリニックや医院を事業承継するメリット・デメリット
クリニックや医院の事業承継には、「親族内で引き継ぐ方法(=親族内承継)」と「第三者へ譲渡する方法(=第三者承継)」の大きく2種類があります。それぞれにメリットとデメリットがあるため、事業の継続性や関係者への影響を考慮して慎重に選択しましょう。
親族内承継の特徴
親族内承継は、現経営者の子や親族がクリニックや医院を引き継ぐ方法です。親族内承継のメリットとして、周囲の理解を得やすく、事業承継の準備期間を確保しやすい点が上げられます。
また、後継者が事前に決まっているため、長期的な視点で育成を行い、計画的に事業を引き継ぐことが可能です。一方、親族内承継のデメリットとして、後継者との意見の対立が生じる可能性がある点が挙げられます。急な経営方針の変更はスタッフの離職や患者離れを招くリスクがあるでしょう。
第三者承継の特徴
第三者承継とは、M&Aを活用してクリニックや医院を親族以外の第三者に引き継ぐ方法です。親族内に後継者が不在の場合にも事業承継を実現できます。
第三者承継のメリットは、適任者を広範囲から探せること、譲渡対価を得られることなどです。候補者が多い分、クリニックの特色に合った経営者に引き継げる可能性が高まります。譲渡によって得た対価は、引退後の資金として活用することが可能です。
一方、希望する条件に合う承継先の選定や手続きに多くの時間がかかる点は、デメリットだといえるでしょう。また、医療機関の譲渡には行政の許認可が関わるため、専門家のサポートが不可欠です。
クリニックや医院を事業承継する流れ
ここでは、親族内承継と第三者承継の流れについて、それぞれ解説します。
親族内承継する手順
- 現院長と新院長の間で継承の契約をする
親族内で意向確認と合意形成を行い、承継計画を策定します。「事業承継契約書」を作成し、事業譲渡の範囲・引き継ぐ設備・スタッフの雇用条件などを明確にしておくことで、トラブル防止につながります。
- 行政機関(保健所など)と事前協議を行う
医療法人の場合、所管の保健所や厚生局などの行政機関と事前協議を行い、必要な手続きを確認します。早めに情報収集をしておくことが重要です。
- 廃業届および開業届の提出する
個人クリニックの開設者が変わる場合、現院長は「診療所廃止届」を提出し、新院長は「診療所開設届」を提出する必要があります。 - 保険医療機関指定の申請をする
所轄の地方厚生局に対して、現院長が「保険医療機関廃止届」を提出し、新院長が「保険医療機関指定申請書」を提出します。承認を受けることで、継続して健康保険の診療を行えるようになります。
- 従業員や取引先との調整・契約の引き継ぎを行う
従業員に事業承継の方針を丁寧に説明し、雇用契約の継続や労働条件の確認を行います。また、医薬品の仕入れ業者や検査機関などの取引先とも契約の更新や条件の調整を行い、診療が滞りなく続けられるように準備を整えます。
従業員に事業承継の方針を丁寧に説明し、雇用契約の継続や労働条件の確認を行います。また、医薬品の仕入れ業者や検査機関などの取引先とも契約の更新や条件の調整を行い、診療が滞りなく続けられるように準備を整えます。
第三者承継の手順
- 事業計画を立てる
事業承継の目的・希望条件を明確にして、計画を策定します。現在の経営状況を整理し、承継後の方向性を検討することで、適切な買い手を見つけやすくなります。事業の強みや課題を明確にし、売却価格の目安を決めておくことも重要です。
- 仲介企業への相談・選定する
M&A仲介会社は、売却手続きのサポートや買い手候補の紹介、条件交渉のサポートなどを行います。複数の仲介会社を比較し、手数料やサポート内容を確認した上で、信頼できる業者を選びましょう。
- 仲介企業とNDAおよび仲介契約書の締結する
M&A仲介会社が決定したら、秘密保持契約(NDA)を締結し、クリニックの経営情報や財務状況を安全に開示できる状態にします。また、「仲介契約書」を締結し、仲介手数料や契約内容を明確にしておきます。 - 候補先を選定する
M&A仲介会社のネットワークを活用して、買い手候補をリストアップします。買い手の経営方針・診療方針・資金力などを総合的に考慮して、自院に適した承継先を選びます。
- 継承先との面談・内見をする
候補先と面談を行い、クリニックの運営方針や条件について話し合います。また、買い手によるクリニックの設備や診療環境の内見を実施し、具体的な承継のイメージを持ってもらいます。
- 継承先との条件調整と基本合意の締結する
買い手が決まったら、具体的な譲渡条件を調整し、「基本合意書」を締結します。基本合意書には、売却価格・引き継ぎのスケジュール・従業員の処遇などの重要事項を記載し、双方が納得した上で契約を進めます。
- デューデリジェンス(買収監査)を実施する
買い手がクリニックの経営状況を詳細に確認するために、「デューデリジェンス(買収監査)」を行います。その際は、財務状況・契約関係・診療報酬の適正性などがチェックされるため、事前に必要書類を整理しておきましょう。
- 最終契約書の締結する
デューデリジェンスの結果に問題がなければ、「最終契約書」を締結し、正式にクリニックの譲渡が決定します。契約書には、譲渡の対象となる資産や契約条件を明確に記載し、双方が署名・押印を行います。
- クリニックの引き継ぎを行う
契約締結後、クリニックの運営が新院長に引き継がれます。スタッフや患者に対して承継の説明を行い、診療がスムーズに移行できるように調整を行いましょう。
クリニックや医院の事業承継を成功させるためのポイント
ここでは、クリニックや医院の事業承継を成功させるために押さえておきたいポイントを解説します。
早めの準備と計画的な進行を行う
クリニックや医院の事業承継は、早期から計画的に進めることがポイントです。特に第三者から探す場合、承継の準備が遅れると適切な相手が見つからなかったり、承継手続きが間に合わなかったりする可能性があります。経営状態が悪化すると引き継ぎ先が見つかりにくくなるため、クリニックの将来を見据えて早めに事業承継の計画を立てましょう。
突然の院長交代はスタッフや患者に不安を与えやすく、離反のリスクを高めます。時間をかけてスムーズに引き継ぎができるよう、事前に後継者と十分な話し合いを行い、計画的に承継を進める必要があります。
医療法人と個人クリニックの事業承継の違いを把握する
医療法人と個人クリニックでは、事業承継の手続きや税務面で大きな違いがあります。いずれの場合も、医療機関特有の法規制や税務の複雑さを考慮して、専門家へ相談することをおすすめします。
医療法人の事業承継の場合、理事長や役員の交代という形で行われることが一般的です。出資持分あり医療法人の場合は、出資持分の評価額が高額になりやすいため、相続税対策が重要だといえるでしょう。近年は「持分なし医療法人」への移行を検討するケースも増えています。
また、医療法人の定款変更や役員変更には、都道府県知事の認可が必要です。税務面では、出資持分の評価額に応じた贈与税や相続税の問題が生じることがあります。
個人クリニックの事業承継の場合、開設者の変更を伴うため、一旦廃業して新規開業という手続きが必要になります。そのため、保健所への廃止届・開設届の提出、保険医療機関の指定申請など、一連の行政手続きが発生します。
また、医療機器や設備の評価額についても、適正な価格設定が重要です。税務面では、事業用資産の譲渡による譲渡所得や、のれん代による一時所得などが発生する可能性があります。
財務・法務の整理は専門家に相談する
クリニックや医院の事業承継には、財務・法務の整理が欠かせません。個人経営のクリニックと医療法人で承継の手続きが異なるため、事前に適切な手続きを理解しておくことが大切です。
また、M&Aでは適切な相手先の選定や契約交渉で専門的な知識が求められます。これらの手続きを適切に進めるためには、医療機関のM&Aに精通した仲介会社のサポートを受けると安心です。経験豊富な専門家に相談することで、スムーズかつ適正な条件での事業承継が実現しやすくなります。
患者・スタッフ・取引先への影響を最小限に抑える
事業承継を成功させるには、患者・スタッフ・取引先に与える影響をできるだけ抑えることも重要です。
後継者が決まったら、現院長と十分に話し合い、経営方針や診療スタイルの認識をすり合わせておきましょう。スタッフや取引先に承継の計画を共有し、不安を払拭できるよう丁寧に説明を行うことで、混乱を最小限に抑えられます。患者に対しても、承継のタイミングや診療体制の変更点などを適切に案内し、安心して通院できる環境を整えることが大切です。
医療機関M&Aの価格査定の特徴を理解する
クリニックや医院のM&Aにおける価格査定は、一般企業のM&Aとは異なる特徴があります。例えば、価格に影響する要素として「診療圏内の患者数と継続率」「診療科目と専門性」「立地条件と物件の状況(賃貸または自己所有)」「医療設備の新しさと充実度」「スタッフの質と定着率」「直近3〜5年の収益性と安定性」などが挙げられます。
なかでも個人クリニックの場合は、院長の個人的な信頼や技術に依存している部分が大きいため、承継後の患者継続率をどう評価するかが価格査定の難しいポイントとなります。一般的な目安として、年間利益の3〜5倍程度が譲渡価格の相場とされますが、上記の要素によって大きく変動することを理解しておきましょう。
クリニックのM&A事例
最後に、クリニックのM&A事例をご紹介します。自社のM&A検討時の参考にしてみましょう。
医療法人平和会と平和病院がCHCPホスピタルパートナーズに譲渡
医療法人平和会と平和病院は、株式会社CHCPホスピタルパートナーズと経営統合を行いました(2020年7月)。
CHCPホスピタルパートナーズは地域ヘルスケア連携基盤のグループ会社として、地域に根ざした医療提携体制の構築を目指しています。
医療法人平和会と平和病院も地域密着型の医療提供を重視しており、この理念の共通性が統合の基盤となりました。また、平和会が求めていた経営支援体制の強化とCHCPホスピタルパートナーズの支援方針が合致し、統合が実現しました。
【出典】CHCP地域ヘルスケア地域基盤「医療法人平和会への経営支援に関するお知らせ」
医療法人博洋会が運営する藤井病院が医療法人社団竜山会に事業譲渡
医療法人博洋会は、同法人が運営する石川県金沢市の藤井病院について、医療法人社団竜山会への事業譲渡を実施しました(2021年6月)。
藤井病院は診療報酬の不正請求により保険医療機関指定取り消し処分を受けていましたが、医療法人博洋会は地域医療の継続性と職員の雇用維持を重視し、事業譲渡先を検討しました。その結果、医療法人社団竜山会への事業譲渡が実現しました。
この譲渡により、地域における医療サービスの提供体制が維持され、また従業員の雇用継続も図られることとなりました。
【出典】石川県「金沢古府記念病院の開設 (藤井病院の承継)について」
ヘルスケアアクセラレーターグループが医療法人川崎病院を承継
全国各地に拠点を置くヘルスケアアクセラレーターグループが、医療法人川崎病院を事業承継しました。(2022年6月)
川崎病院は千葉県夷隅郡大多喜町にある総合病院です。川崎病院は後継者不在により一時は閉院も考えられましたが、地域医療を守る責務から第三者への承継を検討しました。
一方、ヘルスケアアクセラレーターグループは次世代型の病院・介護施設運営を目指しており、全国各地に拠点を置く医療法人グループです。
川崎病院は承継先としてヘルスケアアクセラレーターグループを選び、M&Aが実現しました。後継者の問題は解消され、川崎病院は経営安定とサービス向上につなぐことができました。
【出典】株式会社ストライク「開業115年の小さな町の総合病院 後継者不在のなか、地域医療を担う使命感から選んだ、M&Aという選択」
まとめ|クリニックや医院の事業承継のご相談はCINC Capitalへ
クリニックや医院の事業承継は、患者やスタッフへの影響を考慮する必要があり、慎重に進めなければなりません。円滑な承継を実現するためには、早めの準備と計画的な進行が不可欠です。M&Aによる第三者承継を検討する場合は、専門的な知識と豊富な経験を持つアドバイザーのサポートを受けるようおすすめします。
CINC Capitalでは、M&A仲介協会会員および中小企業庁のM&A登録支援機関として、クリニックや医院の事業承継を専門的にサポートいたします。
医療機関の事業承継の特性を理解した適正な手数料設定で、オーナー院長様の負担を軽減。業界歴10年以上または医療業界に特化したアドバイザーのみが担当し、診療科目や地域特性に配慮した最適なマッチングを実現します。
マーケティングテクノロジーを活用した独自のマッチングシステムにより、医師ネットワークから最適な後継者候補を効率的に見つけ出し、成約率を高めています。クリニックや医院の後継者問題にお悩みの際は、ぜひCINC Capitalにご相談ください。
この記事の監修者

CINC Capital取締役執行役員社長
阿部 泰士
リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。