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美容室のM&A動向(2025年)メリットデメリット/事例/成功のポイントを解説

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  • 公開日2025.04.21
  • 更新日2025.04.21

美容室のM&A動向(2025年)メリットデメリット/事例/成功のポイントを解説

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近年の理美容サロン業界では、経営者の高齢化や後継者不足、美容師の高い離職率、市場競争の激化といったさまざまな課題が懸念されています。このような状況を背景に、M&Aによる事業承継が注目されている状況です。

本記事では美容室のM&A動向やメリット・デメリット、成功のポイントを解説します。

理美容サロンの市場動向

「株式会社矢野経済研究所」が公表するデータによると、2023年度における理美容サロンの市場規模は2兆920億円となっています。このうち美容サロン市場は1億4,976億円、理容サロン市場は5,944億円です。

理美容サロン市場の過去のデータを見ると、2019年度の市場規模が2兆1,253億円であるのに対して、2020年度は新型コロナウイルス感染拡大の影響で1兆9,700億円まで急減しました。その後は徐々に回復傾向にあり、2024年度には2兆930億円まで盛り返すと予想されています。

近年は多くの理美容サロンが物価上昇を背景にサービスの値上げを実施した一方で、来店客数は増加傾向にあります。ただし、市場規模はゆるやかに伸びているものの、2019年度の水準にはまだ達していません。

【出典】株式会社矢野経済研究所「理美容サロン市場に関する調査を実施(2024年)」

理美容サロン業界が抱える課題

ここでは、美容室を含めた理美容サロン業界が抱える課題についてご紹介します。

経営者の高齢化と後継者問題

美容室の多くは個人経営形態をとっており、経営者の高齢化が進行する中で後継者不足が顕著になっています。ただ、美容室経営には美容師免許が必須となるため、承継のハードルが高く、事業継続が難しい状況です。

特に、経営者の親族が美容師資格を持っていなかったり、美容業界への就業意欲がなかったりする場合、廃業せざるを得ないケースが見られます。また、経営者の高齢化により最新技術やトレンド対応力が低下し、市場競争力が弱まることも業界特有の課題となっています。

人材確保の困難さと美容師の離職問題

美容師の離職率の高さは、業界全体の人材不足に拍車をかけています。この背景には、給与水準の低さ、労働時間の長さ、身体的・精神的負担の大きさがあります。

また、新規に美容師資格を取得する若手人材の減少により、業界への人材流入も鈍化しています。特に地方や小規模店舗では美容師の確保が難しく、既存スタッフへの負担増加がさらなる離職につながる悪循環が生じています。

市場競争の激化

理美容サロン業界では競争が一段と激しくなっており、とりわけ低価格チェーン店の拡大が中価格帯の店舗に打撃を与えています。同時に、顧客ニーズの多様化が進み、画一的なサービスだけでは顧客満足を得ることが難しくなりました。市場競争により、事業の継続が難化しています。

理美容サロン業界のM&A最新動向(2025年)

2025年の最新動向としては、大型のM&Aの増加、居抜き物件の活用拡大、多様なマッチングプラットフォームの普及が顕著になっています。詳しく見ていきましょう。

ファンドによる大型M&A事例の増加

近年、投資ファンドが主導する大規模なM&A案件が増加しています。資金力を持つファンドが美容室のブランド価値や収益性に注目し、積極的な投資を展開して注目を集めています。

例えば、都心部の高級美容室がファンドを介して売却された事例のように、優れた立地条件と高単価サービスが高く評価されて成約に至るケースが少なくありません。業界再編と規模拡大を促進する動きとして注目されています。

多様化する事業承継の手法

美容室の事業承継では、従来型のM&Aにとどまらず、居抜き物件の活用や運営委託など手法の多様化が進んでいます。居抜き方式では店舗の内装・設備をそのまま引き継ぐため、買い手側は初期投資を大幅に抑制可能です。

また、運営委託方式では店舗のオーナーシップを維持しながら運営を第三者に任せる形態が増えており、柔軟な承継オプションとして関心を集めています。

小規模店舗向けマッチングサービスの普及

小規模美容室においては、オンラインマッチングプラットフォームが事業承継の新たな手段として活用されています。プラットフォーム上では全国の美容室売却案件が一覧化されており、AI技術による効率的なマッチングを実現しています。

便利なプラットフォームの普及で、後継者不足に悩む店舗が効率よく譲渡先を見つけられるようになっています。

美容室がM&A・事業承継をするメリット

M&Aは長年培った事業価値を次世代に引き継ぎ、さらなる発展を目指すための手段です。ここでは、美容室がM&A・事業承継をするメリットについて、売り手目線でご紹介します。

固定客と技術ノウハウの継承

美容室経営における固定客は、安定した収益を得る上で不可欠な存在です。適切な事業承継により、顧客との信頼関係を引き継ぐことで、店舗の価値を維持できます。

また、美容師が長年蓄積した技術やノウハウは、店舗の競争力を支える重要な要素です。独自のカット技法やカラーリング手法などを引き継げば、他店との差別化が期待でき、事業承継後も市場優位性を維持できます。

従業員の雇用維持

従業員の雇用維持の可能性を高められるのも、事業承継の大きなメリットです。買い手との交渉次第では、スタッフの雇用を維持し、M&Aを通じて新たな経営者へ引き継げます。従業員の生活基盤を守る観点でもM&Aが有効だといえるでしょう。

美容のプロフェッショナルとしての新たなキャリア展開

事業承継後、元オーナーは美容師としての専門性を活かし、新たなキャリアパスを追求できます。

例えば、フリーランススタイリストとして特定顧客に特化したサービスを提供したり、美容学校の講師に転身し、次世代美容師の育成に携わったりできます。また、事業売却で得た資金を活用して新規ビジネスを立ち上げる選択肢もあるでしょう。

美容室がM&A・事業承継をするデメリット

個人経営の美容室では、経営者の交代が顧客の流出や事業価値低下につながるリスクがあるため、細心の注意が必要です。ここでは、事業承継のデメリットをいくつかご紹介します。

譲渡先とのマッチングが難しい

M&Aでは適切な買い手を見つけるまでに一定の時間がかかります。特に個人経営の美容室では、経営者自身がスタイリストとして顧客に直接サービスを提供しているケースも少なくありません。既存の店舗の魅力を理解し、オーナーの意思を引き継げる買い手候補とのマッチングに難航する可能性もあるでしょう。

固定客の離脱リスク

美容室の収益構造は、美容師個人の技術力と顧客との関係性に左右されます。事業承継後に主要スタッフが競合他店へ移ることになれば、その美容師のファンである固定客が流出するおそれがあります。事業譲渡契約に美容師の継続雇用条項を盛り込むなど、慎重な対策が求められるでしょう。

美容室がM&Aを成功させるためのポイント

M&Aの成功には、綿密な準備や引き継ぎが欠かせません。ここでは、美容室がM&A・事業承継を成功させるためのポイントを解説します。

顧客台帳などの資産の整理

美容室における顧客台帳やスタイル写真は、市場価値に影響する無形資産です。これらを適切に整理し、引き継ぎ可能な形に体系化することが、事業承継成功のポイントだといえます。

顧客台帳には来店履歴や好みのスタイル、使用製品などの詳細情報が含まれており、これらを適切に管理することで顧客満足度を維持できます。また、スタイル写真をデジタル化して保存・共有すれば、引き継ぎ先の経営者にとっても有益な財産となります。

技術継承のための指導と研修プログラムの充実

後継者が必要なスキルを確実に習得できるよう、計画的な指導期間と研修プログラムを用意します。例えば、段階的な指導計画を立てることで、基本技術からサロン独自の高度な技術まで効率的に学べます。適切な引き継ぎ計画を立てられれば、買い手にとっては魅力的な案件に感じられるでしょう。

店舗内装・設備の明示化

美容室の内装デザインや劣化状況、設備の購入時期やメンテナンス履歴を詳細に記録し、買い手側へ明示できる状態にしましょう。評価結果をもとに必要な修繕を適宜実施すると、事業価値をさらに高めることが可能です。

美容師免許と管理美容師の要件対応

美容室のM&Aでは、美容師法に基づく法的要件への対応が不可欠です。買い手側に美容師免許保持者がいない場合、以下の方法をとることがあります。

  • 既存の管理美容師を継続雇用する
  • 美容師免許を持つ経営幹部を招聘する
  • 免許保有者とのパートナーシップを構築する など

いずれも契約書に明記し、経営権移転後も安定した店舗運営ができる体制を整えることが重要です。

適正な企業価値評価の把握

一般的に、美容室の企業価値評価で採用されるのは「EBITDA×マルチプル」方式や「時価純資産+営業権」方式などです。

特に個人経営の美容室では、固定客やブランド力、立地条件、内装設備などの要素が総合的に評価されます。相場は年間EBITDA(営業利益に減価償却費を加えた額)の2~4倍程度です。

高級店や繁華街の好立地店舗では、より高いマルチプルが適用されることもあります。適切な方法で評価を受け、自社の適正な価値を把握することが重要です。

M&A仲介会社の活用

美容室のM&Aでは、業界特有の事情に精通した専門の仲介会社を活用することが求められます。業界に詳しいアドバイザーに相談することで、適正な企業価値評価の取得や秘密保持を徹底した買い手探し、固定客維持のための事業承継プラン構築、美容師免許関連の法的要件対応など、多角的な支援が受けられます。

特に小規模サロンではオーナー自身がM&A実務に時間を割くことが困難なため、専門家のサポートが必須といえるでしょう。

美容室のM&A事例

最後に、美容室業界のM&A事例をご紹介します。自社のM&A検討時の参考にしてみましょう。

AZ-Star 株式会社による株式会社ヘッドライトのM&A

2021年2月、投資ファンドのAZ-Star株式会社が管理・運営する「AZ-Star3号投資事業有限責任組合」は、ジャフコ グループ株式会社の関連ファンドと共同で、美容室チェーンを展開する株式会社ヘッドライトの全株式を取得しました。

ヘッドライトは、全国に140店舗以上の美容室を運営し、業務委託型モデルを採用することで、個々の美容師の働き方に寄り添った運営スタイルを確立しています。

本件は、ヘッドライトの安定的な成長基盤を背景に、内部管理体制の強化やアジア圏への出店展開を視野に入れた成長支援を目的としたM&Aです。

ファンドが美容業界の中でも柔軟な雇用形態に注目し、経営支援とグローバル展開を図る動きは、今後の業界再編にも影響を与える可能性があります。

【出典】AZ-Star 株式会社「株式会社ヘッドライトの株式取得について」

株式会社ヤマノホールディングスによる株式会社L.B.GのM&A

2019年10月、ヤマノホールディングス株式会社は、美容室「La Bonheur(ラ・ボヌール)」を首都圏中心に展開する株式会社L.B.Gの株式を取得し、連結子会社化しました。

L.B.Gは20代〜30代の女性を主なターゲットとし、創業からわずか5年で15店舗を出店するなど急成長を遂げた企業です。正社員雇用と全店直営という運営方針で、美容師の定着率や集客力にも強みを持っています。

ヤマノHDは、同社を中高年層向けの低中価格帯ブランドと棲み分ける形でグループに取り込み、経営管理支援や人材教育、全国展開支援などを通じて、グループの美容事業全体の成長加速を図る方針です。

ターゲット層の異なるブランドを保有することで、美容市場におけるシェア拡大を目指す戦略的M&Aとなりました。

【出典】株式会社ヤマノホールディングス「株式会社L.B.Gの株式取得(連結子会社化)に関するお知らせ」

株式会社 AB&Company による株式会社 Agir との資本提携

2018年10月、CLSAキャピタルパートナーズが運営する投資ファンド「サンライズ・キャピタル」傘下の株式会社AB&Companyは、愛知県を拠点に美容室を展開する株式会社Agirとの資本提携を発表し、Agirを子会社化しました。

Agirは日本最大級の美容室チェーン「Agu」のフランチャイジーとして東海エリアを中心に40店舗を展開しており、今回の提携によりAB&Companyグループの一員となりました。

Aguグループは、リーズナブルかつ高品質なサービスと、スタイリストに自由な働き方を提供する方針で急成長しており、310店舗(当時)を全国展開中。

今回のM&Aは、FCネットワークの強化と1,000店舗体制の実現に向けた戦略的一手です。グループ創業者や現経営陣の体制も維持され、今後も既存ブランドの拡大と経営基盤の強化が進められる見込みです。

【出典】CLSA キャピタルパートナーズ「株式会社 AB&Company による株式会社 Agir との資本提携について」

理美容サロン業界のM&A動向を押さえてM&Aを成功させましょう

美容室のM&Aは、顧客基盤・技術・ブランド価値といった資産を次世代へ引き継ぐ、有効な事業承継手段の一つです。経営者の高齢化と業界再編が加速する中、戦略的なM&Aがますます重要になるでしょう。

成功のために、顧客データの整理と数値化、技術継承のための研修プログラム構築、従業員の継続雇用条件の明確化、適正な企業価値評価の取得などを進めることがポイントです。業界に精通した専門家のサポートを受けながら綿密な準備を行うことで、オーナーはもちろん従業員や顧客にとっても満足度の高い事業承継が実現できるでしょう。

M&A仲介協会会員および中小企業庁のM&A登録支援機関であるCINC Capitalでは、美容室業界特有の課題に精通したアドバイザーが、お客様の理想的な事業承継をサポートいたします。M&Aでお悩みの美容室経営者様は、ぜひお気軽にご相談ください。

この記事の監修者

阿部 泰士

CINC Capital取締役執行役員社長

阿部 泰士

リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。

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