CINC CapitalはCINC(証券コード:4378)のグループ会社です。
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事業承継
- 公開日2025.04.24
- 更新日2025.04.24
事業承継における税理士の役割は?依頼費用や主な業務、税理士選びのポイントを解説
事業承継を税理士に相談すべきかお悩みではありませんか?「事業を引き継がせるのに税金がどれくらいかかるのかわからない」「事業承継に関してどの税理士に頼めば良いか判断できない」と不安を感じている方も多いでしょう。
本記事では、事業承継における税理士の具体的な役割や主な業務内容、費用相場、税理士選びのポイントまで解説します。
目次
事業承継における税理士の役割
事業承継を円滑に進めるためには、税理士の支援が欠かせません。特に中小企業では、税務面でのトラブルが後継者の経営に大きく影響するケースもあります。
ここでは、事業承継において税理士がどのような役割を果たすのかを解説します。
事業承継における税務リスクを分析する
事業承継では、想定外の税負担が大きなリスクになります。税理士は、贈与税や相続税、譲渡所得にかかる税金などの発生リスクを事前に把握し、対策を講じます。例えば、自社株の評価を誤ると、後継者が多額の贈与税を課されることがあるのです。
このような事態を防ぐため、税理士は企業の財務状況や申告履歴をもとに、税務リスクを洗い出します。経営者が安心して事業を引き継げるよう、リスク分析の段階から専門的な支援を行うのが税理士の重要な役割です。
事業承継税制の適用可否を判断する
事業承継税制は、後継者の税負担を大幅に軽減できる制度です。税理士は、制度の適用に必要な「経営継続」「雇用確保」「株式保有割合」などの条件を丁寧に確認します。
さらに、制度のメリットとデメリットを比較し、企業ごとに適切な判断を下す支援を行います。事業承継税制を適用できるかは事業承継の成否にも影響し得るため、税理士の知見が必要です。
後継者への株式移転や相続対策を支援する
後継者に株式を円滑に移転するには、適切な評価と相続対策が必要です。税理士は、非上場株式の評価額を算定し、贈与や相続のタイミングと方法を設計します。例えば、贈与税の特例や相続時精算課税制度の活用など、節税を目的としたスキームも提案します。
さらに、後継者に株式が集中するよう配分を調整し、将来的な争いを防ぐアドバイスも行います。税理士の支援によって、後継者が経営に専念できる環境が整えられるでしょう。
なお、親族内や従業員への承継ではなく、M&Aによる第三者承継を選択する場合は、株式譲渡や事業譲渡に伴う税務処理が焦点となります。税理士は、経営者に対して譲渡所得にかかる税金の計算や特例の適用可能性、法人における税務影響など、売却に伴う税務アドバイスを提供します。
経営権の移転に伴う税務と法務の課題を整理する
経営権の移転は、税務だけでなく法務にも複雑な問題を伴います。税理士は、株式譲渡や贈与の際に必要な契約書、登記手続き、定款変更などの課題を整理します。
また、司法書士や弁護士などの他の専門家と連携し、ワンストップで対応できる体制を構築することも可能です。税務と法務が連動しているからこそ、税理士の横断的な視点が求められます。
経営権移転を円滑に進めるためには、税理士による全体の課題把握と調整が不可欠です。
事業承継における税理士の主な業務
事業承継を成功させるには、専門的な知識と実務経験が必要です。税理士は単に税務申告を行うだけでなく、承継前から承継後まで、企業に寄り添って多角的に支援します。
ここでは、税理士が担う具体的な業務を解説します。
事業承継のための財務・税務デューデリジェンスを実施する
デューデリジェンス(詳細調査)とは、事業承継やM&Aにおいて、企業の実態を正確に把握するための専門的な調査プロセスです。
税理士は主に財務・税務面のデューデリジェンスを担当し、企業の財務状況や税務上のリスクを明らかにします。税理士は、承継に向けて企業の財務状況を正確に把握するための調査を行います。これは、過去の税務処理の正当性を確認し、リスクの有無を明確にする重要な工程です。
例えば、過去に税務上の処理ミスがあれば、承継後に追徴課税のリスクが発生する可能性があります。税理士は財務諸表や税務申告書を精査し、必要に応じて改善策を提案します。事前にリスクを洗い出すことで、後継者や買い手が安心して引き継ぐ環境を整えられるでしょう。
特にM&Aによる第三者承継では、買い手企業がデューデリジェンスを通じて税務リスクを発見した場合、買収価格の引き下げ交渉や契約不成立につながることもあります。そのため、M&Aを検討する場合は早期から税理士による自主的なデューデリジェンスを実施し、問題点を事前に把握・改善しておくことが重要です。
事業承継税制の適用に必要な手続きを支援する
事業承継税制を活用するためには、多くの書類作成と行政手続きが必要です。この手続きを誤ると、税制の恩恵を受けられず、後継者に多額の税負担が生じます。
税理士は、事業承継計画の作成から都道府県への提出、税務署への申告まで一連のプロセスを丁寧にサポートします。税制を有効活用し、円滑に承継を進めるには、税理士の実務的な支援が必要です。
後継者への株式移転や贈与・相続の手続きを進める
税理士は、株式の贈与や相続に関する実務も一貫して対応します。この手続きは、申告だけでなく法務や税務が複雑に絡むため、専門知識が必要です。
例えば、自社株を贈与する場合、贈与税申告書の作成や評価額の算出、契約書の整備が必要になります。相続の場合も、遺産分割協議や相続税申告の支援を通じて、後継者に円滑に株式を集中させる工夫が求められます。
税理士が介入することで、承継の実行力と安全性を確保することが可能です。
M&Aや株式譲渡による事業承継のスキームを設計する
第三者への承継を検討する場合、M&Aの活用が有効な選択肢となります。このとき、税理士は譲渡の種類ごとに適切なスキームを設計し、税負担を最小限に抑える提案を行います。例えば、株式譲渡では株主(経営者個人)に譲渡所得にかかる税金が課税され、事業譲渡では会社に対して法人税や消費税が課税されるなど、課税方式が大きく異なります。
特に重要なのは、株式譲渡の場合は売却代金が株主個人に入り、事業譲渡の場合は会社に入るという資金の流れの違いです。この違いは、経営者の個人的な資金計画や退職後の生活設計にも大きく影響します。
税理士は、譲渡方式による税負担の違いを明確に示し、経営者の意向に沿ったスキームを提案することが求められます。M&Aの成功には、税務と財務の設計力を持つ税理士の関与が不可欠です。
事業承継後の税務申告や財務管理をサポートする
事業承継は、経営権の引き継ぎが完了すれば終わり、ではありません。承継後の企業運営には、新体制に適した税務処理や財務管理が必要です。税理士は、新経営者の初年度決算や申告書の作成、税務署との対応を引き継いで支援します。
また、納税猶予を活用している場合は、定期的な報告義務の対応も含まれます。経営の安定を支える継続的なサポートも、税理士の重要な役割です。
税理士に事業承継の手続きを依頼する際の費用相場
税理士に事業承継を依頼する際の費用は、主に相談料・着手金・報酬金の3つに分かれます。
相談料は、1時間あたり数千円から数万円が相場で、初回のみ無料とする事務所もありますが、専門的な助言には費用がかかる場合があります。
着手金は、事業承継計画や株式評価、相続対策などを進める段階で発生し、一般的に50万~100万円が目安です。大型案件になると数百万円になることもあります。
報酬金は手続き完了後に発生し、M&Aの場合は多くはレーマン方式に基づき取引金額の規模区分ごとに料率を定める形が一般的です。
これらの費用は案件の内容によって変動するため、契約前に詳細な見積もりを確認することが重要です。費用体系を理解することで、適切なパートナー選びと納得感のある依頼につながります。
事業承継に強い税理士を選ぶときのポイント
事業承継を円滑に進めるには、適切な専門家のサポートが欠かせません。税理士といっても得意分野はさまざまで、誰に依頼するかによって結果が大きく変わる可能性があります。
ここでは、事業承継に強い税理士を見極めるための判断基準として、5つの視点から詳しく解説します。
事業承継の実績が豊富な税理士を選ぶ
税理士を選ぶうえで、事業承継の実績がどれほどあるかは重視すべきポイントです。実績が豊富な税理士は、企業の規模や業種ごとの事情に対応できる柔軟性があり、想定外のトラブルにも適切な対応ができます。
例えば、複雑な株式の分散や親族間トラブルを経験している税理士であれば、冷静に解決策を提示できるでしょう。実績のある税理士に依頼すれば、安心感とともに具体的な進め方の提案を受けられるため、承継準備が着実に進みます。
事業承継税制やM&Aに精通しているかを確認する
事業承継には、相続税や贈与税の特例制度、M&Aによるスキーム設計など高度な専門知識が求められます。税理士がこれらに精通していなければ、制度を適切に活用できず、結果的に税負担が増える場合があります。
例えば、事業承継税制はたびたび改正が行われており、最新情報に追いついていない税理士は、制度の誤用や申請漏れにつながる可能性があるでしょう。M&Aを活用する場合も、株式譲渡や事業譲渡ごとの税務処理の違いを理解したうえで提案できるかが重要です。
知識と経験の両面から信頼できる税理士を選ぶことが、将来の安心につながります。
後継者や関係者とのコミュニケーション力があるか見極める
税理士にとって、関係者との信頼関係を築く力は技術と同じくらい大切です。事業承継では、経営者、後継者、家族、従業員、取引先など多くの人が関与するため、調整力と対話力が求められます。
例えば、後継者が不安を抱いている場合に、税理士が丁寧に説明し安心感を与えることで、承継が円滑に進むことがあります。また、意見が食い違ったときでも、中立的な立場でバランスよく提案できる税理士であれば安心です。専門性に加えて、人との関わり方にも優れた税理士は、信頼できるパートナーになるでしょう。
財務・法務の専門家と連携できる体制があるかチェックする
事業承継には、税務だけでなく、法務や労務、登記などの専門知識が不可欠です。税理士が他の専門家と連携しているかどうかは、スムーズな承継を実現するうえでの重要なポイントになります。
例えば、相続に伴う遺言書作成には弁護士、役員変更登記には司法書士との連携が必要です。税理士が窓口となって他士業と連携できる体制を持っていれば、経営者自身が個別に専門家を探す手間を省けます。多方面に対応できるネットワークがある税理士は、複雑な承継にも柔軟に対応できます。
長期的なサポートが可能かを確認しておく
事業承継は数年単位で進める長期的なプロジェクトです。そのため、途中でサポートが途切れないよう、長期的に伴走できる税理士を選ぶことが大切です。
例えば、現経営者の引退から後継者が安定して経営を軌道に乗せるまでには、相続発生後の申告や、納税猶予制度の年次報告など継続的な支援が求められます。税理士が継続的にサポートできる体制を整えていれば、承継後も安心して相談できます。将来まで見据えて関係を築ける税理士を選ぶことが、経営の持続性にも直結します。
まとめ|早めに相談し、適切なパートナーを選びましょう
事業承継を円滑に進めるには、税理士の専門的な支援が不可欠です。税務リスクの分析から承継スキームの設計、承継後の継続支援まで、税理士は幅広い役割を担います。
費用相場や選び方のポイントを理解したうえで、自社に最適な税理士を選ぶことが大切です。早めの相談と適切なパートナー選びを行い、万全の体制で後継者へ引き継ぎましょう。
CINC Capitalは、M&A仲介協会会員および中小企業庁のM&A登録支援機関として、M&Aのご相談を受け付けております。業界歴10年以上のプロアドバイザーが、お客様の真の利益を追求します。M&Aの相談をご希望の方はお気軽にお問い合わせください。
この記事の監修者

CINC Capital取締役執行役員社長
阿部 泰士
リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。