CINC CapitalはCINC(証券コード:4378)のグループ会社です。
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事業承継
- 公開日2025.04.28
- 更新日2025.04.28
事業承継における弁護士の役割とは?費用やメリットデメリット、法律事務所選びのポイントを解説
事業承継に弁護士を関与させるべきか、お悩みではありませんか?株式の譲渡や相続、契約書の整備など、法律に関わる手続きが多く「自分だけでは不安…」と感じる経営者は少なくありません。
本記事では、事業承継における弁護士の役割や依頼のメリット・費用相場・弁護士の選び方について解説します。
目次
事業承継における弁護士の役割は?
事業承継は、経営者の交代に伴い企業の将来を左右する重要なタイミングです。このプロセスには、相続、株式譲渡、契約書の整備、M&Aといった複雑な法的手続きが関わります。そのため、弁護士のサポートは不可欠です。
弁護士は、企業ごとの状況に応じて法務面からリスクを洗い出し、円滑な事業承継を実現するため契約書の作成や交渉時の法的助言を行います。
本章では、弁護士が具体的にどのような役割を果たすのかを4つの観点から解説します。
事業承継時の契約書・合意書の作成とチェックを行う
事業承継では、契約書の整備が重要です。なぜなら、譲渡内容や責任範囲を明確にしないまま承継が進むと、後でトラブルになる可能性が高まるからです。
弁護士は、株式譲渡契約書や合意書などの作成および法的チェックを通じて、将来的なトラブルの原因を取り除きます。たとえば、曖昧な条項が原因で譲渡後に責任の所在が不明確になることを未然に防ぎます。こうした契約文書の精度は、事業承継の成否を左右するため、弁護士の関与が不可欠です。
相続や株式譲渡に関する法的リスクを分析する
親族内承継では、相続や株式の分散による経営支配の不安定化が問題になります。遺言書や生前贈与の準備が不十分だと、相続人間で紛争が起こるリスクもあるのです。
弁護士は、遺留分への配慮や種類株式の活用などを提案し、法的リスクの回避策を提案します。これにより、株式を後継者に集中させるスキームを構築し、経営の安定を保てます。承継後に揉める事態を防ぐには、事前の法的リスク分析と対策が欠かせません。
M&Aや事業譲渡における法務デューデリジェンスを実施する
第三者への事業譲渡では、法務デューデリジェンスが必要です。これは、企業の法的状況を洗い出す作業で、見落としがあると譲渡後に重大なトラブルを招く可能性があります。
弁護士は、契約内容、許認可、訴訟履歴、債務、労務関係、不動産関係、知的財産などを総合的にチェックし、リスクを特定した上で契約条件の調整に関与します。例えば、重要な取引先との契約に解除条項がある場合や、訴訟リスクが隠れている場合には、表明保証条項や補償条項を設けるなどの対策を講じます。これにより、買収後に予期せぬリスクが顕在化するのを防ぎ、安全なM&Aが実現できます。
特に第三者承継の場合は、買い手側のデューデリジェンスに対応する体制づくりも重要な役割です。結果として、買収・譲渡双方にとって安全なM&Aが実現できます。
後継者間の紛争やトラブルを未然に防ぐサポートをする
事業承継では、後継者同士や相続人との間でのトラブルが発生しやすい傾向にあります。特に、財産配分に対する不満や経営方針の違いが原因となりやすいです。
弁護士は、遺言書や合意書の作成支援、関係者との調整、トラブル予防の仕組み構築を通じて、円満な承継をサポートします。あらかじめ紛争の種を取り除くことで、承継後の経営に集中できる体制を整えられます。
将来のトラブルを防ぐには、早期段階で弁護士を交えた対策が有効です。
事業承継を弁護士に依頼するメリットとデメリット
事業承継を進める際に、弁護士に依頼すべきか悩む経営者は少なくありません。弁護士に依頼することで得られるメリットは多いですが、一方で、依頼に伴うコストや注意点もあります。
本章では、弁護士に依頼することで得られる主なメリットとデメリットについて解説します。
事業承継を弁護士に依頼するメリット
事業承継を弁護士に依頼する最大のメリットは、法的なリスクを事前に回避できる点です。法律が絡む承継手続きには多くの落とし穴があり、専門知識がなければ判断を誤る可能性があります。弁護士に相談することで、相続や契約、株式譲渡といった複雑な手続きをスムーズに進めることができます。
さらに、親族間や関係者間の調整が必要な場面でも、法律の専門家が間に入ることで、感情的な対立を避けつつ、冷静な合意形成を促せます。弁護士のサポートを受けることで、経営者は本業に集中でき、精神的な負担も軽減されます。
また、承継の形態によって弁護士の役割は異なります。親族内承継の場合は、遺言書や生前贈与契約の作成、種類株式の設計など、後継者に経営権を集中させるための法的な工夫が中心となります。
一方、M&Aによる第三者承継の場合は、守秘義務契約(NDA)の締結、株式譲渡契約や事業譲渡契約の作成・交渉、クロージング手続きの支援など、取引の安全を確保するための法務支援が重要です。どちらのケースでも、弁護士の関与により法的リスクを最小限に抑え、スムーズな承継の実現が期待できます。
事業承継を弁護士に依頼するデメリット
弁護士に依頼する際には、費用面での負担が発生します。依頼内容によっては、着手金や報酬金が高額になるケースもあるため、経営資源に限りがある中小企業にとっては慎重な判断が求められます。
また、弁護士にはそれぞれ得意分野があるため、事業承継の経験が乏しい弁護士に依頼すると、期待したサポートが受けられない可能性もあります。さらに、親族間での話し合いに弁護士が入ることで、かえって交渉が硬直化し、感情的な対立を深めてしまうケースも考えられます。
こうしたリスクを回避するためには、依頼前に費用体系や実績、対応方針を十分に確認することが重要です。
事業承継を弁護士に依頼した場合の費用相場
弁護士に事業承継を依頼する際には、どの程度の費用がかかるのかを事前に把握しておくことが重要です。
費用の内訳としては、主に「相談料」「着手金」「報酬金」の3つがあり、依頼する内容や事務所によって金額に差があります。
相談料
事業承継について弁護士へ相談する場合、最初にかかるのが相談料です。多くの法律事務所では30分あたり5,000円〜10,000円程度が相場であり、相談時間によって加算されます。一部の事務所では初回無料相談を実施しているケースもあり、事前に確認することで無駄な出費を避けることができます。
着手金
弁護士に正式な依頼をする際に必要なのが着手金です。これは業務の結果に関わらず支払う固定の費用であり、事案の規模や複雑さによって金額が異なります。一般的には30万円前後からが多く、経済的利益の5%〜8%を目安とする事務所もあります。着手金は法的支援の出発点となる費用であり、契約前に明確な見積もりを求めることが大切です。
報酬金
業務の成果に応じて支払う報酬金は、弁護士費用の中でも最も変動幅が大きい項目です。報酬金は「成功報酬」とも呼ばれ、事業承継の成果や合意内容に基づき、得られた経済的利益の数%を基準に計算されるのが一般的です。金額の目安としては、経済的利益の数%〜10%程度を基準とする事務所もあります。
報酬金については、依頼前に成果報酬の算定基準をしっかり確認し、納得したうえで契約することがトラブル回避につながります。
事業承継に強い弁護士(法律事務所)の選び方
事業承継を円滑に進めるには、信頼できる弁護士を選ぶことが大切です。しかし、弁護士にも得意分野があるため、誰でもよいというわけではありません。事業承継を扱う弁護士には、相続・事業継承に強い弁護士とM&A専門の弁護士に大きく分かれる傾向があります。
相続・事業継承に強い弁護士は、親族内承継や従業員承継の場合に適しており、相続法や会社法に精通しています。一方、M&A専門の弁護士は第三者承継の場合に適しており、企業法務や取引法に強みを持っています。ご自身の承継の形態に合わせて、適切な専門性を持つ弁護士を選ぶことが重要です。
本章では、事業承継に強い弁護士を見極めるために確認すべき5つのポイントを解説します。
事業承継の実績が豊富な弁護士を選ぶ
事業承継に強い弁護士を選ぶうえで最も重要なのは、実績の有無です。実務経験が豊富であるほど、複雑な事例にも柔軟に対応できるからです。
たとえば、自社と同規模・同業種の承継案件を多数こなしている弁護士であれば、具体的なアドバイスやスムーズな進行が期待できます。実績のある弁護士に依頼すれば、安心して事業承継を任せられます。
相続・M&A・契約法務に精通しているか
事業承継は、相続対策、M&Aスキーム、契約法務など複数の分野にまたがる手続きです。それぞれの領域に精通していないと、最適な承継方法の提案やリスク管理が十分にできません。
実際に、遺言や贈与といった相続関連から、株式譲渡契約やデューデリジェンスまで幅広い対応力が必要とされます。総合的な法務スキルを持つ弁護士に依頼することで、安心して任せられる体制が整います。
税理士や公認会計士など他の専門家と連携できるか
事業承継では、法務に加えて税務や財務の対応も欠かせません。弁護士単独では対応が難しい場面が多いため、他の士業と連携できる体制があるかが重要です。
たとえば、自社株評価や納税シミュレーションが必要な場合、税理士や会計士との協働が不可欠となります。ワンストップで対応できる弁護士であれば、手間をかけずに質の高い支援を受けられます。
事業承継に関するトラブル対応の経験があるか
承継計画があっても、現実にはトラブルが発生することがあります。相続人同士の対立や、契約トラブルといった事案に備えるには、紛争対応の経験がある弁護士を選ぶと良いでしょう。
調停や訴訟になった際にも、冷静に対応できる弁護士がいれば、損失を最小限に抑えられます。万一のときに備え、トラブル対応力のある弁護士を選ぶことで、経営者は安心して承継を進められます。
企業の将来を見据えた長期的な支援が可能か
事業承継は一度きりのイベントではなく、その後の経営にも影響を与える長期的なプロセスです。一過性の対応ではなく、将来的に顧問契約を結び、継続的に支援してもらえる弁護士であれば安心です。
顧問契約を通じて承継後も法的な相談ができれば、経営者や後継者にとって大きな安心材料になります。中長期の視点で企業を支える弁護士を選ぶことが、安定した事業運営につながります。
まとめ|信頼できる専門家へ相談を
事業承継は企業の未来を左右する重要なタイミングであり、法的リスクや複雑な手続きが伴います。弁護士に依頼することで、契約書の整備やトラブル防止、M&A支援など多角的なサポートが受けられます。
費用面や専門性の見極めは必要ですが、信頼できる弁護士を選ぶことで、安心して承継を進めることが可能です。早期に専門家へ相談し、将来を見据えた事業承継の準備を進めましょう。
CINC Capitalは、M&A仲介協会会員および中小企業庁のM&A登録支援機関として、M&Aのご相談を受け付けております。業界歴10年以上のプロアドバイザーが、お客様の真の利益を追求します。M&Aの相談をご希望の方はお気軽にお問い合わせください。
この記事の監修者

CINC Capital取締役執行役員社長
阿部 泰士
リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。