CINC CapitalはCINC(証券コード:4378)のグループ会社です。
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業種
- 公開日2025.04.21
- 更新日2025.04.21
アパレル業界のM&Aや事業承継の現状と動向|事例も紹介
日本のアパレル業界は、成長の一途をたどる中で市場構造の変革を迎えています。少子高齢化や消費スタイルの変化に対応するため、アパレル企業は事業承継やM&Aを積極的に検討しています。
本記事では、アパレル業界の事業承継やM&Aの現状と動向を詳しく解説します。また併せて具体的なM&A事例を紹介します。
目次
アパレル業界の現状や動向
アパレルは衣服や既製服を指し、アパレル業界は既製服のビジネスにかかわる業界全体のことを指します。
アパレル業界は技術の進化と多様性のある時代の到来と共に、大きな変化と多くの企業の参入が起こっています。
東京商工リサーチの調べによると2023年のアパレル小売業の利益は、新型コロナウイルスの感染が広まった2021年と比べ、およそ2,000億円以上伸びています。
【引用】東京商工リサーチ「2023年「アパレル小売業」業績調査 アパレル小売業の業績」
少子高齢化が進む日本ではあるものの、新型コロナウイルス流行から回復傾向にあることと、以下の要因があり、売上が伸びています。
- 物価や賃金の上昇
- EC※販売の需要増加
- 外国人(観光客・移民・留学含む)のブランド品購入 など
特にEC市場の規模拡大は売上が伸びる大きな要因となっています。
経済産業省の調べによると、EC市場規模(すべての職種・業界)は毎年上昇しており、2023年の規模は、2014年と比べておよそ7兆8,717億円上昇しています。
同時にEC化に取り組む事業も増加しており、2023年のEC化率は2014年と比べ、2倍以上となっています。
EC市場規模の拡大は流通経路に変化を与えます。この変化に対応した事業展開やM&Aは大変重要です。
※EC…「Electronic Commerce」の略で、日本語では電子商取引という意味です。 インターネット上で商品やサービスの売買を行う取引全般を指します。
【引用】経済産業省「2023年 物販系分野の BtoC-EC 市場規模及び EC 化率の経年推移」
アパレル業界の事業承継やM&Aの必要性
アパレル業界ではM&Aを検討する上で、2つの点に着目する必要があります。
- 流通構造がある
- シーズンや流行にあわせてニーズが変化する
特に「シーズンや流行にあわせてニーズが変化する」は理解しておく必要があります。
例えば、ある企業に強みとなるブランドがあったとします。そのブランドが今は売れていても、流行が去り、翌年には売れなくなることも考えられます。
常に市場に変化があることを十分に理解し、先見力を持って事業戦略を練ることが大切です。
また、経済産業省が情報提供している「流通構造」の理解は大切です。この流通経路は「川上」「川中」「川下」※の大きく3つで構成されています。
-
川上:繊維原料の製造
(綿花栽培、化学繊維メーカー等) -
川中:糸・生地の製造、縫製加工
-
川下:アパレルメーカー、小売店
※アパレル業界以外の製品業界は、川上を原材料の製造・生産(素材メーカー等)、川中を中間製品の製造・加工(製造業者等)、川下を最終製品の販売(小売業者等)とします。アパレル業界は少し異なります。
よく話題となるニュースがアパレル企業同士のM&Aですが、川下同士でのM&Aだけでなく、流通構造を理解し、この流通構造全体を押さえたM&Aを検討することが必要です。
通常、川上・川中にあたる企業は独立した状態です。ここに何かトラブルなどがあると流通が止まったり、流通コストの変動があったりする可能性があります。
川上・川中に該当する企業とM&A・事業の提携を行えば、安定して供給したり、コスト削減につなげたりすることもできます。
サプライチェーン※を意識したM&Aは、競争が激化するアパレル業界で事業を存続させるために重要な戦略です。
※サプライチェーン…原材料の調達から生産・加工・流通・販売により消費者に提供されるまでの一連の流れ
【引用】経済産業省「繊維・アパレル産業における環境配慮情報開示ガイドライン」
【2024年】アパレル業界のM&Aの事例
ここでは、2024年に実施されたM&A事例を紹介します。
各事例を参考にして、自社のM&Aに活かしていきましょう。
yutoriが株式会社えをかくを子会社化
アパレルECを運営する株式会社yutoriは、株式会社えをかくの全株式を取得し、完全子会社化しました。(2024年11月)
株式会社えをかくはアパレルブランド「over print」を展開し、一躍有名となったブランドです。Z世代に向けたプリントTシャツやパーカーを強みとしており、海外展開もしていました。
一方、株式会社yutoriも「Z世代の強化」を掲げていたため、その親和性からM&Aに至りました。
サザビーリーグが株式会社newnのコヒナを譲受
ライフスタイルブランドを展開する株式会社サザビーリーグは、株式会社newnの「コヒナ(COHINA)」の事業を譲受しました。(2024年9月)
株式会社newnが運営していた小柄女性向けのD2Cアパレルブランド「コヒナ(COHINA)」は、身長150cm前後の女性に向けて2018年に立ち上げたブランドです。
「悩み解決型」ブランドとしてSNSやECを中心に有名になりました。
一方、株式会社サザビーリーグはRon Herman、Afternoon Tea、ageteなどの有名ブランドを複数展開する大手企業です。
「コヒナ(COHINA)」は今後も事業を大きくするために、株式会社サザビーリーグのノウハウと相性が非常に良いことを踏まえ、M&Aに至りました。
アダストリアがTODAY’S SPECIALとGEORGE’Sを子会社化
株式会社アダストリアは、「DEAN & DELUCA」や「CIBONE」を運営する株式会社ウェルカムから、「TODAY’S SPECIAL」「GEORGE’S」の2ブランドを買収しました。(2024年7月)
株式会社アダストリアは約30ブランドを運営している大手アパレル企業です。GLOBAL WORKやniko and…などの有名ブランドを持つ株式会社アダストリアは2024年には売上高と営業利益が過去最高となりました。(国内3位の売上と利益)
新型コロナウイルス流行以降、より一層ニーズが高まっているとされる雑貨業態をさらに強化したいと考えていたところ、ウェルカムの雑貨ブランドに将来性を感じ、「TODAY’S SPECIAL」「GEORGE’S」を買収しました。
このM&Aは、アパレル業界から視点を変え、雑貨に目をつけた点が非常に注目されました。
【2023年以前】アパレル業界のM&Aの事例
ここでは、2023年以前に実施されたM&A事例を紹介します。
TSI HDがETRÉ TOKYOを譲受
株式会社TSIホールディングスは、株式会社3ミニッツのブランド「ETRÉ TOKYO」を譲受しました。(2020年7月)
株式会社3ミニッツが運営していた「ETRÉ TOKYO」は20~30代女性向けD2Cブランドです。3ミニッツが開催した次世代インフルエンサーオーディションがきっかけで誕生したETRÉ TOKYOはデビュー週に1,000万円の売上を達成しました。
ETRÉ TOKYOのミレニアル世代の顧客層の獲得やD2C市場でのデジタルマーケティング手法の活用をTSIホールディングスが期待をし、M&Aに至りました。
オンワードHDが株式会社サンマリノと資本業務提携
株式会社オンワードホールディングスは株式会社サンマリノの発行済み株式の4%を取得し、資本業務提携を行いました。(2021年1月)
株式会社サンマリノは繊維専門商社です。現在はアジアや欧米にも事業を展開する会社で、原料・素材の取り扱いだけでなく、ブランドマーケティング事業も行っています。
当時、株式会社オンワードホールディングスは変化の激しい消費者のライフスタイル・ファッション市場に適応するべく、競争力の源泉である企画・生産基盤を一層強固なものとする取り組みを進めていました。
そして、サンマリノと提携を行ったことで企画・生産構造改革をさらに加速させることに成功しました。「川下」と「川上」の提携で生産性が向上した成功事例です。
アツギが株式会社レナウンインクスを会社化
アツギ株式会社は株式会社レナウンインクスの全株式を取得し、譲受しました。(2020年8月)
株式会社レナウンインクスは、若い女性向けの衣料品事業を行う株式会社レナウンの子会社で下着や靴下を製造販売していました。。譲渡が成立した当時、民事再生手続き中だった株式会社レナウンインクスはスポンサー探しに難航していました。
一方、アツギ株式会社は当時、事業構造のバランスの早急な改革を必要としている状況でした。そのような中でレッグウェアと親和性の高い下着や靴下を扱っているレナウンインクスが親和性が高いと判断し、その後に譲受しました。
レナウンインクスの子会社化はアツギにとって事業の競争力を一層高める結果となりました。
まとめ|アパレル業界は市場・チャネルの変更に対応したM&Aの実施で飛躍の可能性
アパレル業界における市場・チャネルの変革に対応するためにM&Aを検討・実施することは大きな飛躍のチャンスとなります。
アパレル小売企業(川下)同士のM&Aだけでなく、サプライチェーン全体(製造元や流通会社など)を意識したM&Aを実施することで、安定的な経営と売上向上につなげることが可能です。
今後もアパレル業界はM&Aの重要性が増すと予測されます。抑えるべきトレンドや新たな市場の動向を常にチェックし、柔軟に対応する準備を怠らないようにしましょう。
CINC CapitalはM&A仲介協会会員および中小企業庁のM&A登録支援機関として、M&Aのご相談を受け付けております。業界歴10年以上のプロアドバイザーが、お客様の真の利益を追求します。M&Aの相談をご希望の方はお気軽にお問い合わせください。
この記事の監修者

CINC Capital取締役執行役員社長
阿部 泰士
リクルートHRマーケティング、外資系製薬メーカーのバクスターを経て、M&A業界へ転身。 日本M&AセンターにてM&Aアドバイザーとして経験を積み、ABNアドバイザーズ(あおぞら銀行100%子会社)では執行役員営業本部長として営業組織を牽引。2024年10月より上場会社CINCの100%子会社設立後、現職に就任。